LiSA 22巻10号 (2015年10月)

徹底分析シリーズ 麻酔器

知れば臨床が面白くなる

巻頭言 稲田 英一
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麻酔器は麻酔科医にとっての必須アイテムである。その価格は,付属品,モニター類まで含めれば1千万円を優に超える。それもそのはず。麻酔器には麻酔薬投与装置だけでなく,生命維持装置,生命監視装置がついているのである。そのように重要な麻酔器なのだが,その構造や詳細な機能をよく理解している麻酔科医は少ないようである。麻酔開始前には必ず始業点検を実施するが,麻酔器の機能や,安全機構の理解なしに,その内容を理解することはできないし,トラブルが起きた際のトラブルシューティングもできない。

 安全に麻酔を実施し,患者の生命を守る麻酔器であるが,その機能の不備のために,多くの命が失われ,恒久的な脳障害が起きたりもしてきた。そうした不幸な事故から学び,麻酔器に備わる安全機構は整備されてきた。今回の徹底分析シリーズでは,最初に麻酔器の基本構造について解説した後,重要なパーツについての解説を行う。気化器や,浮子流量計(最近はデジタル式のものが多いが),酸素供給源の構造と機能について理解していただきたい。人工呼吸に必要な人工呼吸器,呼吸回路,一方向弁,APLバルブ,レザーバーバッグ,二酸化炭素吸収装置などの理解も重要である。まず,自分で麻酔器の基本構造を図に描いてから読み始めることをお勧めする。

 何よりも重要なのは,麻酔器にはさまざまな安全機構が備わっているが,それを実際に麻酔の安全に活用できるかは,麻酔科医にかかっていることである。

プレテスト
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【基本構造概観】

Q1 一般的な麻酔用循環式呼吸回路において換気装置から送り出されるガス(ベローズ駆動ガス)の量が一定のとき,新鮮ガス流量を6L/minから1L/minに減少すると1回換気量はいくら減少するか。ただしI:E比は1:1.5,換気回数は10回/minとする。

a. 500mL

b. 2L

c. 300mL

d. 200mL

e. 5L

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麻酔器の使用目的は,正確な濃度の酸素と吸入麻酔薬を含むガスで麻酔中の患者の人工換気を行うことである。麻酔器は,高圧の酸素・空気・亜酸化窒素を減圧し,適切に混合し,揮発性吸入麻酔薬を添加して,正確な濃度の呼吸ガスを供給する「麻酔器回路」と,患者に人工換気を行う「患者呼吸回路」の二つの要素からなる(図1)1)。患者呼吸回路にはいくつかのパターンがあり,その違いによって特有なトラブル発生の可能性がある。

 本稿では,代表的な三つの患者呼吸回路を取り上げる。

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毎日使う麻酔器について知ることの重要性は言うまでもない。しかし,麻酔器の上流にあるガス供給源については「詳しく知らないし,気にしたこともない」という読者諸兄姉もいるのでは。確かに,知らなくても何事もなく日常臨床は過ぎる。しかし,意識すらせず当たり前のようにお世話になっているガス供給源についても,知っておくべきだろう。プロの麻酔科医たるならば(コラム1)。

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麻酔器には酸素と亜酸化窒素の流量計*1が必ず装備されているが,酸素・亜酸化窒素・空気の3本の流量計を備える麻酔器が主流になっている(図1,2)。近年は,全静脈麻酔の施行や亜酸化窒素の使用減に伴い,亜酸化窒素を使わない施設が増えており,酸素と空気だけを備えたタイプを希望するケースもある。

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揮発性吸入麻酔薬は,保管時の状態と実際に患者に投与される状態が大きく異なる。常温で液体の薬物を気化させるために特殊な装置を必要とする,他科では類をみない薬物である。「気化」は,液体の表面から気化する「蒸発evaporation」と,液体内部からも気化が起こる「沸騰boiling」に分けられるが,沸点が低いデスフルラン(23.5℃)以外の揮発性麻酔薬では,臨床上「沸騰」現象を考慮する必要はない。気化器の構造を解説する前に,物質の相変化のうち「蒸発」現象から始めよう。

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呼吸回路の基本的な構成要素は,ガスの導管,患者の吸気需要を補うリザーバーおよび過剰ガスを回路から放出する呼気ポートあるいは呼気弁とされている。二酸化炭素(CO2)吸収剤を用いるかによって,サークルシステムと非再呼吸システムに分けられる。従来,サークルシステムは成人用,非再呼吸システムは小児用と考えられてきたが,麻酔器,特に人工呼吸器の進歩により,小児に対してもサークルシステムを用いることが増加している印象を受ける。この場合は,①コンプレッションボリュームと②装置死腔に注意が必要である。本稿ではこの2点について解説する。

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二酸化炭素吸収装置は,どの麻酔器でも「目に見える場所に」配置されています。それは,日本工業規格(JIS)で定められているから,なだけでなく,実際に目で見て色を確認する必要があるからです。しかし,見ているからといって,その中身が「セボフルランを分解するのか?」「デスフルランを分解して一酸化炭素を産生するのか?」など,詳しいことまで知っている麻酔科医はどれだけいるでしょう? そして,色が変わっていなければ,本当に使って大丈夫なのでしょうか?

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麻酔薬を気体で提供するかぎり,循環式呼吸回路と一方向弁を切り離すことはできない。最近はワークステーションと呼ばれる麻酔器が出現し,些細な異常もアラームで知らせてくれる。しかし一方向弁は目で見える部分なので,麻酔科医なら五感を生かして異常を想起し,起こる前に防ぐのが使命である。

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本稿のテーマは,麻酔器に接続して使用する半閉鎖循環式呼吸回路におけるレザーバーバッグである。図1に呼吸回路を示すので,これを参照しつつ本文をお読みいただきたい。

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麻酔器をチェックするとき,まず「APLバルブ」に触れる。APLとはadjustable pressure limitingのことで,圧調整を意味する。APLバルブを調整することで,マスク換気時,あるいは自発呼吸時に,患者にかかる気道内圧をコントロールできる。麻酔の導入を行うときに,自発呼吸のときには圧をかけず,導入後には圧を高くしてマスク換気を行う。日頃,特に考えることなく使用しているAPLバルブについて,この機会に少し考えたい。

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人工呼吸器は,麻酔ガスを循環させてガス消費を節約できるように独自に進化した麻酔器用と,長期人工呼吸管理を意図した集中治療室(ICU)用の“ベンチレータ”に分化した。後者は呼気を完全に捨ててよいので機構がシンプルな非再呼吸型が多い。

 本稿では,前者の麻酔器用人工呼吸器に特化して解説する。

連載 漢方の歩き方 レーダーチャートで読み解く痛みの治療戦略:第20回

臨床応用編 緊張型頭痛 つづき 矢数 芳英
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矢:前回から臨床応用編がスタートしています。まずは,頭痛に対する漢方治療の考え方をお話しました。

荒:ファーストチョイスが有効な症例だけでなく,それが無効の場合,どう考えるのかを勉強しました。

福:ファーストチョイスがうまくいかない場合でも,自覚症状や他覚的所見などを拾って「病態チャート」を作成すると,6つの戦略(図1)のどれを使ったらいいのか,方向性が探しやすかったです。

荒:今回も頭痛ですね。

矢:その通りです。前回紹介した47.釣藤散や31.呉茱萸湯以外にも頭痛に非常に有用な処方があるので,その使い方について勉強していきましょう。

福:頭痛の患者さんは多いですし,症状も多様なので,漢方の次の一手のさらに次,さらにその次があると臨床でも頼りになります。

矢:まずは,今回の中心となる処方の復習からです。

連載

Editorial拝見
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The New England Journal of Medicine

Editorial:

Bauer KA. Targeted anti-anticoagulants. N Engl J Med 2015;373:569-71.

Article:

Pollack CV Jr, Reilly PA, Eikelboom J, et al. Idarucizumab for dabigatran reversal. N Engl J Med 2015;373:511-20.

■ワルファリンと新規経口抗凝固薬の差は?

血栓症の予防や治療には,ワルファリンが伝統的に用いられてきた。ワルファリンは,ビタミンK依存性因子である凝固第Ⅱ(トロンビン),Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子と,プロテインC・Sの活性を阻害する。ワルファリンの場合は,プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)をモニターとして使用する必要がある。最近は,ダビガトラン,リバーロキサバン,エドキサバンなどの新規経口抗凝固薬が用いられるようになってきている。新規経口抗凝固薬は,第ⅡaまたはⅩa因子を直接阻害する。

連載 ABCD sonography

DVT:下肢静脈エコー 貝沼 関志
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下肢の深部静脈血栓deep vein thrombus(DVT)は肺血栓塞栓症の最も注意すべき塞栓源である。重症肺血栓塞栓症が,急性では数日で,慢性では数週間で進行性に発生すると想定すると,初期の段階で塞栓源を見つけることにより,重症化への阻止が可能かもしれない。上大静脈から遠位の静脈は,LiSA読者には特に解説を要しないと思われるので,今回は下大静脈から遠位の静脈エコーに限って記述する。

連載 ブックレビュー

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連載 読むサプリ 見るアプリ

ノビノビ 桝井 菜々子 , 八ツ橋 ヨモギ
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今日もまた長時間の立ち仕事,お疲れ様です。肩が凝り,腰は痛くなり,足もむくんできますよね。そんなときはやはり,軽い体操で身体をほぐすのが一番です。休憩時間に皆でラジオ体操をする職場もあるようですが,麻酔中にラジオ体操は,いかにもサボっているようで術者に睨まれてしまいます。そこで,「麻酔科ノビノビ体操」を提案します。手術室でよく遭遇する動きで構成されています(?)ので,手術室の日常風景に溶け込むこと請け合いです(??)。仕事熱心に見せかけて,ちゃっかりリフレッシュしましょう。

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今回は,10月21日(水)〜23日(金)に日本臨床麻酔学会第35回大会が開かれる横浜です。横浜市立大学附属市民総合医療センター 麻酔科の寺田 祥子先生に地元住民だからこそ知る名物,お土産,観光地などの情報をご紹介いただきます。旅のお供に是非LiSAを!

はへほ調music scene

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スーパーの果物売り場から西瓜が姿を消し,葡萄や梨に混じって早生のミカンも並ぶようになると,あれほど蒸し暑かった空気も秋の匂いに満たされる。葉月も半ばを過ぎて,虫の音が耳に心地良い季節である。まるで示し合わせたかのように全国各地で一斉に開かれる麻酔科医の寄り合いに向け,いつまで経っても「壁新聞」や「動く紙芝居」が完成せず,もはや虫の息の善男善女も多いことだろう。かく言う筆者,今月もまもなく廿日を迎えようというのに,ここまでの数行を書き進めるのが文字通り何行九行(?)である。冒頭でいきなり何かオモロイ事の2つ3つも書かなあかん!という関西人のDNAが,筆の運びを遅くしているわけである。

Tomochen風独記

㉒ドイツの常識(?)① 山本 知裕
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■■■暗証番号は何か

ドイツに来てまず初めにした作業の一つに,銀行口座の開設があります。その際,“ドイツの常識”に翻弄されました。日本と同じように銀行へ行って,何の問題もなく口座開設の手続きは完了しました。「数日後に,あなたと奥さんのキャッシュカードが郵便で自宅に届くので待っていてください」と言われ帰ってきました。言われた通り,数日後に私と妻の2枚のキャッシュカードが郵便で届きました。届いたカードが問題なく使えることを確認するために,翌日,仕事帰りに近くの支店へ行き,ATMにカードを入れた時点で気が付きました。《さて,暗証番号は何にしたかな…?》

 口座開設時に暗証番号を決めた記憶がありません。口座開設の際に希望する暗証番号を決めて一緒に申し込むはずだとは思うのですが,どうも記憶が曖昧です。まだドイツに来たばかりで言葉の問題も大いにあったので,口座の申請さえも一苦労。きっと,言葉の面での苦労が故に多少舞い上がっていて,暗証番号を申し込んだ流れを思い出せないのだろうと考え,私が普段使いそうな馴染みのある暗証番号をいくつか試してみましたが,どうも正解できません。といっても,そうそう何度も不正解ができるはずもなく,3回不正解の時点でカードがATMに吸い込まれてしまいました。すでに夕方だったので銀行窓口は閉まっており,仕方がないのでカードはそのままにして帰ってきたところ,なんと暗証番号を通知する文書が郵便で自宅に届いているではありませんか!どおりで暗証番号を申し込んだ流れを思い出せないわけです。口座開設時に,カードが郵送されてくることは言われましたが,暗証番号が別便で郵送されてくることは教えてもらった記憶はありません。ドイツでは常識すぎて説明されなかったのかもしれませんし,窓口の担当者は言っていたけど私が理解できなかっただけなのかもしれません。

知識をいかに体系化するか

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日本人は英語が苦手というのが定説ですが,でも果たして「英語だけが苦手」なのでしょうか。それとも「外国語は一般に苦手」なのでしょうか。「日本は島国で,外国との接触が乏しかったから…」「日本は単一民族で言語による情報交換をしなくても互いにわかり合えるから」という理屈もありそうです。確かに「男は黙って…」という風土があります。言語不明瞭な大平総理や,言語明瞭意味不明瞭な竹下総理といった首相が日本にはかつて存在しました。

 今回は,言語距離という概念を使用して,学びやすい言語やマスターしやすい言語とそうでない言語の関係を検討します。

Medical Books 自薦・他薦

『やさしくわかる!麻酔科研修』
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基本情報

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LiSA
22巻10号 (2015年10月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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