JIM 18巻12号 (2008年12月発行)

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特集　医師のためのビジネス・スキル

今月のQuestion & Keyword Index 18巻12号 , 2008年12月 , pp.987

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より早く，より的確に内容をとらえるために，QuestionとKeywordによるIndexをご利用ください．それぞれ各論文の要点を示す質問とキーワードで構成されています．

Question

Q1　ビジネス・スキルは，管理職にある医師だけが勉強すればよいのではないでしょうか？　988

Q2　リーダーに一番大切なことは何ですか？　993

Q3　ネゴシエーションの基本スキルは何？　996

Q4　会議を運営する時に一番気をつける点は？　1000

Q5　メンタリングとは何ですか？コーチングや進路相談とは違うのでしょうか？　1004

Q6　私たち医師にとってのウェブ2.0のメリットを教えてください．　1008

Q7　タイム・マネジメントをうまくできるようになりたいのですが？　1012

Q8　キャリア開発論について，詳しく学びたいのですが．　1014

Q9　多忙な診療を続けているプライマリ・ケア医．そこに突然，講演の依頼がきました．講演（プレゼンテーション）当日まで，どのように準備を進めていくとよいですか？　1017

Q10　エッセイに書く内容はどうやってみつけるのですか？　1022

Q11　PDSA cycleとは何ですか？　1025

Q12　書店でビジネス書を選ぶコツは？　1028

Q13　バランスシート思考とはどういうことか？　1032

医師のためのビジネス・スキルをどう学ぶか―faculty developmentの視点から岡田　唯男 18巻12号 , 2008年12月 , pp.988-992

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そもそもビジネススキルとは何か

　ビジネス・スキルもしくはbusiness skillといった言葉をネットで検索してみると，その定義や，そこにどのような能力が含まれるのかについては一定したものがないとすぐにわかる．しかしどうやら対人関係（チームワーク，交渉能力，友好関係づくり，リーダーシップ），自己管理・推進（積極性，仕事，時間管理），仕事力（情報収集，問題解決）といった内容に集約されるようである．

One more JIM 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1038-1040

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Q1　リーダーとマネジャーの違いは何ですか？

A1　“Do the right things.（正しいことを行う）”“Do the things right.（物事を正しく行う）”という言葉の対比があります．前者はリーダー，後者はマネジャーの役割です．リーダーシップは，自らが正しいと信じることを実践し，結果としてそれにチームがついてくること，マネジメントは，チームが正しく機能するために動かしていくことだと考えられます．

　ただし，「マネジャー」＝管理者ととらえられることが多いですが，「マネジメント」とは本来，組織の使命・目的を果たすために，組織のメンバーがその力を発揮できるような仕組みをつくって，高度な成果を上げることで，日本語の「管理」そのものを指す言葉ではないとされます．

（舩木　良真→p993）

【組織管理】

リーダーシップとチームワーク―自らをリードすることから始める舩木　良真 18巻12号 , 2008年12月 , pp.993-995

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Case

在宅医療における多職種チーム連携

　在宅医療は，患者の生活の場で提供されるという性質上，患者自身の意思や希望を最優先して治療方針などが決められるのが理想だ．

　ここでは医師のほかに，訪問看護師やケアマネジャーといった介護系のスタッフら多くの人間が関わる．所属も異なり，さまざまな職業観や専門知識をもつ関係者が連携しなければならない場合でも，大切なのは各自がそれぞれの職業倫理（J1）に基づき，患者と真摯に向き合い，プロフェッショナル（J2）として与えられた役割を担うこと．そのチームワークをまとめるためには，「患者はどのような価値観をもち，どのような情報やサービスを必要としているか」に常に立ち返ることだ．

ネゴシエーション・スキル一瀬　直日 18巻12号 , 2008年12月 , pp.996-999

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ネゴシエーションって何？

　もともとビジネスの場面で多用されてきたのがネゴシエーション・スキル，つまり「交渉術」であることは容易に想像できるだろう．しかし，自分たちの日常生活を振り返ってみると，実に多くの場面でこのスキルを利用していることに気づくだろう．働いていれば上司とも同僚とも部下とも駆け引きをしている．家族がいれば，妻や夫，子どもたちと駆け引きをしている^1）．このように，双方向性のコミュニケーションのプロセスであり，自分が誰かから何か得たい時や，あるいは逆の場合にいつでも起きているものが，ネゴシエーションである（図1）^2）．

会議の方法草場　鉄周 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1000-1002

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Case

　とある昼下がりのこと，あなたは重い足取りで会議室に向かう．「また会議かぁ．診療だけで手一杯なのに，こんなことまでさせられて嫌になっちゃうなぁ．そもそも院長からこの委員会を主催するよういわれたのだけれど，一体何のメリットがあるのかな？」ともやもやとした思いでいつもの席に着席．

　事務方は資料を配付して延々と報告を実施．議長のあなたは「何かありますか？」と声をかけるも反応なく，次の議題に．2番目の議題では，看護師長の一方的な意見表明が延々と続き，誰も制御することなく予定の30分を超過．参加者のいらだちは募るも，どうしようもなく重い空気が漂う．「勝手にやってくれよ！」と舌打ちしつつ，あなたもいらだちを隠せない．かくして会議はまだまだ続く……．

スタッフ・同僚へのメンタリング小嶋　一 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1004-1007

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Case

　今年からあなたの勤務する病院で，後期研修医A君が循環器の専門医となるべく勉強しています．職場にも慣れ，仕事も順調にこなし，専門知識の吸収にも優れた研修医として指導医からの評価も高いようです．しかし循環器指導医C先生からあなた（総合診療科指導医）に「A君は循環器だけでなく，もっと幅広く診療ができるようになりたいと思っているようだ．うちも人が足りないし困っているんだが，一度相談にのってあげてくれないか」といわれました．

　あなたはあまり研修医A君のことを知りません．まずはA君について院内から情報収集を行いました．同僚の研修医にも同じように総合診療への転科希望について話しているようです．またC先生との個人的な人間関係のまずさも耳に入ってくるようになりました．

　あなたは直接A君と話し，メンタリングを行うことでA君がなぜ総合診療への転科を希望するに至ったか理解しました．また彼の総合診療のイメージが現実とかなりかけ離れていることにも気づきました．そのうえであなたはA君にいくつかメッセージを伝え，A君は循環器の専門医を目指しつつ総合診療の勉強も並行して行う道を選ぶようになりました．A君はそれ以来あなたと定期的にメンタリングの機会をもち，C先生との関係も少しずつ改善されているようです．

【自己啓発】

ウェブ2.0の活用阪本　直人 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1008-1010

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　では，ウェブ2.0ツールを使うと，どんなことができるのでしょうか？当施設など（筑波大総診，亀田ファミリークリニック）で実践している内容をアレンジして紹介します．

　診療の傍ら，レジデント教育なども行う中堅医師であるJIM先生．タイム・マネジメント（p1012参照）をしながら，うまくウェブ2.0を活用しています（各ツールの特徴となるキーワードは，文章中の色太字で強調しています）．

タイム・マネジメント菅野　哲也 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1012-1013

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　私は研修病院で総合内科の指導医をしている10年目の医師です．はっきりいって人より物事を始めるのが遅く，タイム・マネジメントについて常に悩んでいます．今回は，私が本で読んだり，人から教えていただいたりしたいくつかの方法のなかで，自分が実践してよかったと思うものを皆さんにご紹介したいと思います．

医師とキャリア開発喜瀬　守人 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1014-1016

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　医療を取り巻く状況の変化に伴い，医師のキャリアのあり方も変革期を迎えている．ほとんどの医師が卒業してすぐに医局に入局し，その体制下でキャリアを形成していた時代は，過去のものになりつつある．初期臨床研修の必修化，女性医師の増加，価値観や生活スタイルの多様化などのさまざまな要因から，キャリア形成も流動化・多様化してきている．

　キャリア開発論はよりよいキャリア形成のための理論であり，主にビジネスの世界で扱われているが，キャリア形成の多様化は医師にとっても共通の課題である．キャリア開発論にはさまざまな理論があるが，本稿ではそのうちのいくつかを取り上げる．また，キャリアの記録としての履歴書（Curriculum Vitae：CV）についても説明する．

【医師に求められるビジネス・スキル】

プレゼンテーション・スキル―多忙なプライマリ・ケア医も活用できるプレゼン作成の原則齊藤　裕之 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1017-1021

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Case

　紅葉で色づいていた山景色も次第に裸木に変わり，今年も冬の訪れを感じはじめていた頃，メディアは毎年恒例のノロウイルス騒動で賑わっていた．「老人保健施設で10人のノロウイルスの感染患者が診断されました．うち1人は強い脱水症状で……」と報道が加熱するにしたがい，クリニックや老健施設では何だかソワソワした雰囲気が漂っている．

　そんなある日，嘱託医をしている老健施設の所長から「うちでもノロウイルスの対策を立てていこうと考えているのですが，まずは先生のほうから職員向けに勉強会をしてもらえませんか？」と連絡の電話がかかってきた．昨年も同様の勉強会を開催したが，参加者の反応がイマイチだったため少し迷いもあったが，今年はプレゼンを工夫して開催してみようと，その依頼を引き受けた．勉強会は2週間後，どのように準備を進めていこうかと考えることにした．

ライティング・スキル松村　真司 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1022-1024

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　医師の業務のなかで，「書く」という作業はかなりの部分を占める．臨床ではカルテ記載，診療情報提供書，介護保険の主治医意見書など多くの部分において臨床上の情報を要約し記載することが求められる．

　また，ある程度キャリアを積むと，自分の診療経験を症例報告として，あるいは行った研究の成果を学術論文として発表することも求められる．さらに，管理的な立場になればこれらの管理業務のための必要書類を作成することも多くなる．大学など学術研究機関や教育機関に所属する場合は，学術分野でのアウトプットが直接評価の対象となるので，これらのスキルを獲得することはキャリア形成に直接関わるため重要である．しかし，臨床業務を主体とする医師であっても，いわゆる依頼原稿の作成から，医師会や地域の広報誌への寄稿に至るまで，さまざまな分野で多くの文章を書くことが求められる．

　これらの文章作成に対するスキルは多岐にわたり，本稿ですべてを網羅することは不可能であるので成書を参照されたい．むしろ，スキルというより，文章作成上のコツについて私見を交え述べてみたい．

診療の質改善をどう行うか田頭　弘子 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1025-1027

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　日常の医療現場では，個々の疾患の対応についてのみならず，診察の待ち時間，経営においても質の改善が求められています．本稿では，スタッフ全体で取り組む質改善の方法をご紹介します．

医師にも勧めたいビジネス書―読み取り方の工夫で，立派な医療の本に大変身！佐藤　健一 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1028-1030

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医療に役立つビジネス書はたくさんある

　読んでいるのは医学書，もしくは小説がほとんどという方はいませんか？

　「ビジネス書は自分には関係ない」「書かれていることが難しそう」と敬遠している方も多いかもしれません．しかし，医療も人と人とのつながりのなかで行われています．そう考えると，医療界で用いられているスキルが，ビジネス書のなかで扱われているのも当然のことでしょう．そして，内容も実践的ですぐに役立つものが増えてきました．また，読み比べることで1つの事柄を多様な視点から分析することもできます．そこで本稿では，私がこれまで読んだビジネス書や類する書籍から役立ちそうな数冊を選び，自分なりに内容をどう読み取って日々の医療に役立てているかを紹介したいと思います．

【スペシャル・アーティクル】

財務諸表の基本的な読み方立川　幸治 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1032-1035

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なぜ財務諸表を知らねばならないのか

　学ぶ必要について納得できないものを学ぶのは誰にとっても苦痛である．また，役立たないとわかっていることを学ぶのは無駄である．だからこそ，その必要性や有用性を知ることから学習は始まる．それゆえ，なぜ財務諸表を学ぶのか．そこから本稿をはじめたい．

　そもそも財務諸表を知る目的は2つに大別できる．見せることと，読むことだ．

　見せる相手は，銀行など融資家，あるいは投資家，さらに税務署や役所などさまざまである．ちなみにあまり知られていないが，現在，医療法人は医療法の規定にしたがって，その規模の大小にかかわらず，すべて決算書を税務署のみならず都道府県へも提出しなければならない．そして，それら決算書は閲覧を求めれば誰にでも公開されることになっている．つまり，読者のあなたも，勤務先が医療法人ならば，経営成績が院内で開示されていなくともその決算書を見ることはできるのである．今はそれを見るためには県庁まで行かねばならないが，遠からずそのデータベース化を図る誰かが出てくるかもしれない．

医師の起業―起業したい医師へのメッセージ平　憲二 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1036-1037

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　私が医療に関する調査事業をコアとする会社「プラメド」を起こしたのは，2005年4月のことでした．今年で4年目になりますが，あっという間でした．

　それまでになじみのなかった職種の方々と仕事をし，それなりに失敗と成功を繰り返しながらも，今日まで事業を継続できていますが，これは多くの方々に支えていただいたお陰です．私はビジネス経験ゼロからのスタートで，ほぼすべての仕事においてサポートを必要としていたので，事業の継続を支えてくれる仲間が重要であることについて強く実感しています．そして，継続を支える自分のなかのものも重要であることを強く感じています．

　本稿では，「起業したい医師へのメッセージ」ということでお題をいただきましたので，後者の「継続を支える自分のなかのもの」にフォーカスを当てて，私見を述べてみたいと思います．

Editorial

家庭医，ビジネス書に出会う藤沼　康樹 18巻12号 , 2008年12月 , pp.975

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　今月号の特集は「医師のためのビジネス・スキル」であるが，執筆していただいた方の多くは若手の医師である．

　この2年くらい，彼らに触発されて，僕自身ビジネス書を時々手に取るようになった．

感染症が見える！　グラム染色に基づく抗菌薬療法[24]【最終回】

グラム染色で菌がみえない呼吸器感染症谷口　智宏 , 遠藤　和郎 18巻12号 , 2008年12月 , pp.978-981

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症例：60歳女性, ADLは自立.

主訴：呼吸苦.

【現病歴】前日に内科定期外来を受診し，とくに変わりはなかった．しかし翌日に悪寒と呼吸苦が出現したため，救急車にて救急外来を受診した．患者の居住地ではインフルエンザが流行していたが，本人はワクチンを希望せず，接種していなかった．胸痛はなし．

【既往歴】糖尿病（HbA_1c 7.0）と慢性心房細動（心エコーでは駆出率0.4）で内科通院. 白内障術後で眼科通院. アレルギーなし．内服薬；経口血糖降下薬（SU薬）とワーファリン^®．

【生活歴】現在禁煙しているが1年前まで喫煙1箱/日．機会飲酒．

【身体所見】身長155cm，体重78kg．バイタルサイン；血圧150/100mmHg，脈拍140/分（不整），呼吸数28/分，体温37.2℃，SpO₂ 91％（室内気）．全身状態；起座呼吸にて不良．頭頸部；貧血・黄疸なし，内頸静脈怒張あり．胸部；喘鳴（wheeze）を呼気に聴取, 湿性ラ音（crackle）なし．心音；不整，心雑音なし．腹部；平坦軟，圧痛なし．背部；CVA（肋骨脊椎角）叩打痛なし．四肢；下腿浮腫軽度あり．

【検査所見】血液検査；WBC 11,000/μl，Hb 11.7g/dl，Hct 37.4％，Plt 174×10⁴/μl，Na 141mEq/l，K 4.0mEq/l，Cl 103mEq/l，BUN 12mg/dl，Cr 0.6mg/dl，Glu 174mg/dl，AST 31IU/l，ALT 32IU/l， CRP 0.5mg/dl，トロポニンT陰性．

胸部X線；心拡大と肺うっ血あり（図1）．心電図；心房細動あり．ST変化なし.

【来院後経過】急性心不全と考え，血管拡張薬と利尿薬静注を開始し入院させた．病棟に上がり体温を測定すると39.2℃に上昇し，黄色痰を喀出したため，喀痰塗抹と鼻腔インフルエンザ抗原を調べた.

喀痰グラム染色；多核白血球（PMN）2＋，菌なし（図2）．

喀痰抗酸菌染色；抗酸菌陰性．

鼻腔インフルエンザ抗原検査；A，Bとも陰性．

What's your diagnosis?[72]

念ずれば通づ深田　唯史 , 宮川　卓也 , 高木　幸夫 18巻12号 , 2008年12月 , pp.983-985

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病歴

患者：施設入所中の78歳女性．

主訴：入院1カ月前から続く発熱．

現病歴：入院1カ月前から37℃台の発熱があった．近医受診し抗菌薬を処方されたが改善がみられなかったため，入院7日前に当院外来を受診した．発熱以外とくに身体所見はなかった．血液所見WBC 13,100/μl，CRP 20mg/dl，尿所見正常，胸部CTは異常なかった．レボフロキサシン処方され経過観察となったが，その後も37℃台が続いたため精査目的で入院となった．陰性所見：感冒症状，腹痛，下痢・便秘，排尿時痛，頭痛，食欲不振，体重減少，関節痛．

　入院後潜在的感染巣の検索目的に腹部CT撮影したところ，放射線科より憩室炎があるが腫瘍の可能性も否定できないため，スクリーニングの必要があるとのコメントをもらう．

既往歴：48歳時に子宮筋腫で全摘術施行．75歳時に第2腰椎圧迫骨折．76歳時に脳梗塞，左大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術施行，関節リウマチ．

内服薬：バイアスピリン^®100mg，チザノン^®カプセル150mg×2，センナリド^®12mg，クリノリル^®100mg×2．

生活歴：施設入所中．下肢の筋力低下があり車いすを使用．排便はポータブル使用，夜間はオムツ使用．飲酒喫煙なし．家族歴：特記事項なし．

JIMで語ろう

専門医からジェネラリストへ―専門医からみたジェネラリストとは？なぜジェネラリストに転身したのか？臺野　巧 , 竹口　文博 , 吉川　哲矢 , 松村　真司 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1042-1050

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◆かつて日本のジェネラリストたちは，何らかのスペシャリストとして専門をもち，開業したり地域の病院へ赴いたりするなかで必要に迫られてジェネラリストの仕事をしてきた．つまり，はじめから「ジェネラリスト」のコースを歩んできた人は少数派だったといえる．

　しかし最近は，卒業後2年間の初期臨床研修があり，そのままジェネラリストのコースを最終的なキャリアパスに選ぶ医師が増えている．一方で，専門医として活躍したのちにジェネラリストに「転身」する医師がジェネラリストの世界に感じるギャップも変化してきているようだ．本座談会では，今まさに専門医からジェネラリストへの転身の過程にいる3人の先生をお迎えした．

シネマ解題　映画は楽しい考える糧[18]

「母たちの村」浅井　篤 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1051

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女性の尊厳―「女子割礼」をめぐって

　本作品は，現在もアフリカ地方で行われている女性性器切除（FGM：female genital mutilation）とその悪しき慣習を打ち破ろうと立ち上がった女性たちの物語です．総合診療というよりは国際保健に分類される問題かもしれませんが，人々の健康維持を生業とする医師としてはぜひ知っておかなければならないテーマだと思い取り上げました．残念ながら今も根絶されていない女性差別と人権無視の存在を心に留めておくためにも重要な1本です．

　物語は，西アフリカのある村に住むコレという女性のもとに，女性性器切除から逃れるために4人の少女が助けを求めて駆け込んで来るところから始まります．コレ自身，少女時代に受けた性器切除のせいで2人の子どもを死産し，3人目は心窩部にまで至る腹部正中切開で出産しなければなりませんでした．彼女は，自分の娘にはそんな思いは決してさせないと，村の掟に逆らい性器切除をさせませんでした．それを知っていた少女たちが彼女に保護を求めたのです．4人をかくまったコレは原題にもなっている「モーラーデ」を宣言し，自分の家の門に縄を張ります．モーラーデとは「そこに逃げ込めば何人の力も，法の力も及ばないという避難所」という意味をもった言葉で，窮地に陥った人が，ある人物・家族や王国に保護を求めることを意味します．「駆け込み寺」に似たようなものかもしれません．

JIM Report

2007年12月から2008年1月に経験した成人の流行性胃腸炎の臨床像渡辺　幸治 , 柴山　直樹 , 灰本　元 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1052-1055

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　2007年12月初旬から例年のごとく流行性胃腸炎が流行したが，遷延例が多く，輸液が必要な患者が多くみられた．遷延例に行った消化管エコーでは典型的なキーボードサイン（J1）がみられ，腹部X線検査では多くの症例にニボー像がみられた．また，聴診上腸雑音も減弱していたので麻痺性腸閉塞と診断できた．

　2007年12月1日～2008年1月31日における当院の流行性胃腸炎患者数の推移を図1に示す．この二相性の流行はすでに報告があるノロウイルスの分布ときわめて類似しており^1～4），症状，徴候も類似していることから^2，5～8），その原因はノロウイルスが中心と考えられた．

　成人のノロウイルス胃腸炎の臨床像を主眼に置いた文献では，簡単な有症状率が記載されているのみで^5，6），詳しい臨床像や麻痺性腸閉塞の合併について報告はほとんどなかった．そこでわれわれが経験した典型的な症例を2例提示し，麻痺性腸閉塞を合併しやすい遷延例の臨床像を報告する．

レジデントCase Conference

進行する歩行困難と会話困難にて紹介搬送となった65歳女性内藤　祥 , 仲里　信彦 , 高江洲　怜 , 中村　優理 , 島袋　渡 , 篠原　直哉 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1056-1060

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Case

患者：65歳，女性．

主訴：歩行困難，微熱，会話困難．

既往歴：①統合失調症（感情障害が強い），②左前頭葉髄膜腫の術後（55歳），③急性壊死性胆囊炎にて胆囊摘出術（今回の入院の2カ月前），④僧帽弁狭窄症（中等度）．

生活歴：①ADL は自立しており買い物なども可能，②息子3人と暮らす，③喫煙・飲酒歴なし．

服薬歴：炭酸リチウム（200mg） 6錠分3，カルバマゼピン（100mg）1錠分1，フェニトイン（100mg）2錠分1，クロナゼパム（0.5mg）2錠眠前，レボメプロマジン（25mg）1錠分1，トリヘキシフェニジル（1mg）3錠分3，センノシド（12mg）2錠眠前．

現病歴：2カ月前の手術にて入院した際には，患者のADLは自立しており精神状態も安定していた．その退院後も自宅で息子3人と一緒に暮らし，しばらくは問題なかった．しかし，今回入院の1カ月前から，患者の喋り方が遅くなり，加えて徐々に歩き方もぎこちなくなり，歩行困難となってきた．入院2週間前には，トイレに行くこともできずに大量の尿失禁と下痢がみられるようになった．さらに全身倦怠感も訴え，食事摂取も低下してきた．これら症状は次第に増悪し，来院前日には，ベッド上で寝たきりの状態となった．また，独語やお経を繰り返し唱えるなどの異常行動が出現し，会話も困難となった．そのため，家族が心配して，患者を主治医のいる精神科へ受診させたところ，微熱と嘔吐がみられたことから，内科的疾患の有無の精査目的に当院へ患者紹介された．紹介状には最近の薬剤変更などの記載はなかった．内服薬は家族により，前日までどうにか投与されていた．

入院時身体所見：血圧120/70mmHg，心拍数65/分，呼吸数24/分，体温37.4℃，SpO₂ 95％（室内気）．全身状態は不穏でお経を唱えている．結膜に貧血や黄染なし，頸部リンパ節腫脹なし，頸部硬直は明らかではない，甲状腺腫大なし，頸静脈波の上昇なし，口腔内は著明に乾燥・咽頭発赤なし，呼吸音は清・左右差なし，心音は整・心雑音なし．腹部は膨満し，腸蠕動音はやや亢進，心窩部から右季肋部にかけて圧痛あるが反跳痛や筋性防御はみられない．下腿浮腫なし．皮膚は乾燥．

神経学的所見：脳神経所見で明らかな異常なし，腱反射亢進減弱は明らかでない，異常反射なし．両上下肢で筋トーヌスの亢進あり，筋強剛あり．

入院時検査所見：血算；WBC 11,600/μl，Hb 11.2g/dl，Hct 32.4％，MCV 91fl，Plt 34.1×10⁴/μl．生化学；Na 133mEq/l，K 2.5mEq/l，Cl 97mEq/l，Ca 8.0mg/dl，Mg 2.7mg/dl，TP 7.7g/dl，BUN 24mg/dl，Cre 2.2mg/dl，AST 78IU/l，ALT 50IU/l，γ-GTP 163IU/l，ALP 600IU/l，s-Amy 277IU/l，CPK 30IU/l，T-Bil 0.5mg/dl，BS 123mg/dl．動脈血液ガス検査（室内気）；pH 7.504，PaCO₂ 28.1torr，PaO₂ 119.0torr，HCO₃^- 21.9mEq/l，AG＝14．一般尿検査；比重1.008，pH 7.5，尿糖（－），尿蛋白（1＋），尿潜血（2＋），ケトン（2＋），ビリルビン（－）．髄液検査；細胞数 1/μl，髄液蛋白 34mg/dl，髄液糖 79mg/dl．薬物血中濃度；フェニトイン 9μg/ml（有効血中濃度10～20），カルバマゼピン 1μg/ml（有効血中濃度4～12）．

胸部X線写真：心拡大あり，明らかな肺炎像や肺うっ血所見なし．

心電図：右軸偏位，反時計回り方向回転，I，aVLおよび前胸部誘導（V1-4）にかけて陰性T波と著明なQTc（0.67sec）延長を認める（図1）．

私的小児科外来診療学入門[18]

咳嗽の診かた加藤　英治 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1062-1069

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　咳嗽は発熱，腹痛，下痢と並んでありふれた症状です．咳嗽はいかめしい表現なので一部を除いて，ここでは保護者や患児が通常使う言葉である咳と表記します．

　子どもの咳の大部分は急性上気道炎によるもので，時の経過とともに治癒します．しかし，親が寝る頃に子どもが咳き込むと，子どもの咳が気になって親は眠れなくなります．また，咳が長引くと親は肺炎を心配します．とかく子どもの咳は親の悩みの種になります．

となりの総合診療部[46]

独立行政法人国立病院機構京都医療センター総合内科小田垣　孝雄 , 小山　弘 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1070-1071

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　国立病院機構京都医療センターは病床数600床の高度先進医療を担う総合病院であり，主要な診療科は揃っている．内分泌・代謝疾患の準ナショナルセンターであり，成育医療の基幹医療施設，癌拠点病院でもある．また救命救急センターは京都府の3次救急を担っており，緊急度・重症度の高い症例が集まってくる．臨床研修医は2学年で24名（うち，京大病院協力型研修医4名）が在籍している．

Update'08

日本コーチ協会主催「Coaching 2008」参加記―ビジネス界との交流を通じて齊藤　裕之 18巻12号 , 2008年12月 , pp.1031

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　2008年9月20日，東京都千代田区の都市センターホテルで日本コーチ協会主催「Coaching 2008」が開催された．今年で第10回目となる本大会は約500名の参加者で当日は賑わった．参加者の顔ぶれはさまざまでありプロコーチとして個人や企業コーチを本業としている人のほか，公立学校の教員，大手食品メーカーの事業部長，企業の人材開発部に勤める人，起業家，アナウンサーなどで，これほど参加者の背景が多様な集まりもないだろう．しかし参加者のそれぞれはコーチングを会社運営や人材開発，または教育の現場で活用しており，その共通概念のもとで活発な意見交換が行われる．私も医学教育の一環と組織運営を学ぶために2年前からコーチングの継続トレーニングを受けている．今回，本大会当日の様子と参加した感想を報告する．

　本大会のプログラムは午前中の基調講演，午後の分科会の二部構成となっており，各会場は多くの参加者で1日中賑わう．当日の主な内容を以下に示す．

基本情報

JIM
18巻12号
(2008年12月発行)

電子版ISSN：1882-1197 印刷版ISSN：0917-138X 医学書院

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