消化器内視鏡 34巻8号 (2022年8月発行)

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特集　好酸球性消化管疾患のすべて

序説　好酸球性消化管疾患星原　芳雄 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1326-1327

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はじめに

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders：EGID）はEoE（好酸球性食道炎，eosinophilic esophagitis）とEGE（好酸球性胃腸炎，eosinophilic gastroenteritis）から構成されるが，これらにもoverlapともいえる両者の症状ないし所見を有する患者がみられ，確定診断は決して容易ではない。EoEではきわめて特徴的な内視鏡所見がみられるが，その確定診断には生検が必須条件の一つである^1）。そもそも食道には好酸球が少なく，生検で15個/HPF以上の好酸球の浸潤がみられ，これらの内視鏡所見があればEoEと確定できる。しかし，非常によく類似した内視鏡所見を呈し，生検部位や生検数が妥当であると考えられるにもかかわらず，好酸球浸潤を認めない場合は小池ら（1364頁）が記載しているリンパ球性食道炎を疑う必要がある。

［総論］

好酸球性消化管疾患の分類と動向石村　典久 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1328-1335

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要　旨

好酸球性消化管疾患（EGID）は二次的な要因を除く，消化管への病的な好酸球性浸潤が原因となる疾患の総称であり，難病に指定されている。食事や空気中の抗原に対するアレルギーが病態として重要と考えられており，障害される部位によって好酸球性食道炎（EoE）と好酸球性胃腸炎（EGE，non-EoE EGID）に大別される。EoEの有病率は世界的に上昇していることが示されており，多くの臨床研究をもとに治療についての国際ガイドラインも作成されている。一方，non-EoE EGIDは，病名の呼称や診断基準，治療についての統一されたガイドラインは作成されていないのが現状である。2021年にEGIDの病名の取り扱いに関する国際会議が行われ，胃～大腸に病変がある場合はEGEではなくnon-EoE EGIDと表現することや病変部位によって好酸球性胃炎（EoG）などの各臓器別の病名を用いることが合意された。今後，EoEとnon-EoE EGIDについての病態の相違や抗体製剤を含めた治療に関するエビデンスが蓄積されていることが望まれる。

好酸球性消化管疾患の病態木下　芳一 , 佐貫　毅 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1336-1342

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要　旨

好酸球性消化管疾患の病態は完全に解明されているわけではないが，食物を中心とする外来抗原に対する慢性的なアレルギー反応が消化管において持続することが原因となって発症する疾患であると考えられている。消化管のすべての部位に病変がみられ，複数の部位に病変がみられることも稀ではない。このため，消化管のどのセグメントに発症する好酸球性消化管疾患も共通の病態を有すると考えられている。共通の病態としてはILC2を中心とした自然免疫とTh2型の免疫反応の過剰活性化が関与していると考えられている。ただ，扁平上皮粘膜で覆われている食道と円柱上皮粘膜で覆われている胃腸では，一部では異なった病態が関与していると考えられている。実際，好酸球性食道炎は若い男性に多いが，好酸球性胃腸炎はあらゆる年齢の男女にほぼ均等に発症しており，臨床的にも複数の差異が認められる。

消化管組織の好酸球浸潤藤原　美奈子 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1343-1348

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要　旨

食道から直腸に至るまでほぼすべての消化管粘膜に好酸球は存在するが，その数は多くなく，通常，上皮内浸潤はみられない。食道に限局した好酸球浸潤を示す疾患，好酸球性食道炎（EoE）は組織学的に，食道上部・中部・下部いずれの場所でも15/HPF以上の好酸球上皮内浸潤を認め，好酸球の脱顆粒や上皮下に線維化を伴うことを特徴とする。EoEと鑑別を要する胃食道逆流症（GERD）では，好酸球浸潤は下部食道に限局し，浸潤する炎症細胞は多彩で，好酸球の脱顆粒や上皮下の線維化通常はみられない。一方，胃や腸管粘膜の好酸球浸潤は正常でも20/HPF以上の好酸球浸潤を認めることがある。セリアック病や炎症性腸疾患，寄生虫感染症などではさらに多くの好酸球浸潤を認めることがあり，好酸球性胃腸炎（EGE）の生検組織診断は容易ではない。EoE，EGEいずれも複数箇所の生検組織像と臨床情報をあわせて総合的に考える必要がある。

幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドラインのポイントと問題点鳥谷　洋右 , 永塚　真 , 大泉　智史 , 森下　寿文 , 春日井　聡 , 梁井　俊一 , 松本　主之 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1349-1353

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要　旨

2020年，本邦の厚生労働省好酸球性消化管疾患研究班より「幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン」が発表され，今後好酸球性消化管疾患診療の標準化と進歩が期待されている。好酸球性食道炎に関してはエビデンスレベルの高い文献がある一方で，好酸球性胃腸炎については十分なエビデンスがないのが現状であり，今後本邦を中心とした臨床データの集積が期待される。

［各論　好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎］

好酸球性食道炎の診断阿部　靖彦 , 佐々木　悠 , 水本　尚子 , 梅原　松樹 , 八木　周 , 小野里　祐介 , 上野　義之 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1354-1360

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はじめに

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders：EGIDs）はおもに食事抗原に対するTh2優位の過剰な免疫応答（非IgE依存型アレルギー）により消化管局所で好酸球主体の慢性炎症が発生し機能障害をきたす疾患の総称で，病変が食道に限局する好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）と消化管に広く病変をきたしうる好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis：EGE）とに大別される。近年，EoEは成人の嚥下障害の原因として関心が高まっている。本稿ではEoEの診断を中心に述べる。

《TOPICS》好酸球性食道炎の拡大内視鏡・超拡大内視鏡所見熊谷　洋一 , 川田　研郎 , 田久保　海誉 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1361-1363

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はじめに

　好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）は，海外では1990年代に疾患概念が確立されていたが，本邦では1998年に最初に報告され2010年ごろより報告数が増加した比較的新しい疾患である。診断の組織学的必須条件は食道粘膜の生検で食道上皮への好酸球浸潤が15個以上/HPF（400倍視野）である。他にEoEの組織学的特徴として基底層の肥厚，乳頭の延長，上皮細胞間隙の開大，粘膜固有層の線維化などがあげられる。

《TOPICS》リンパ球性食道炎小池　智幸 , 前嶋　隆平 , 宇野　要 , 藤島　史喜 , 正宗　淳 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1364-1367

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はじめに

　リンパ球性食道炎（lymphocytic esophagitis：LyE）は，2006年に新たな疾患概念として，上皮内顆粒球の浸潤を認めずおもに食道上皮乳頭周囲へのリンパ球浸潤が認められる慢性食道炎として報告された^1）。しかしながら，LyEは胃食道逆流症（gastroesophageal reflux disease：GERD）の概念に含まれるか，好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）との鑑別をどうするのかなどについて議論があるなど，いまだ確立した診断基準がなく^2），特に本邦からの報告はきわめて少ないのが現状である^3）。

好酸球性食道炎の治療藤原　靖弘 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1368-1372

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Ⅰ．治療目標と評価

　好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）は食道症状と食道上皮内好酸球浸潤〔高倍率視野に15個以上，≧15/high power field（HPF）〕を伴う慢性アレルギー疾患である^{1, 2）}。病期は炎症期と線維化期に分けられ，線維化が進行すると狭窄が出現し，食物嵌頓のため緊急内視鏡下摘出が必要となる。治療の目標は，①わずらわしい症状を改善し，患者のQOLを向上させること，②合併症としての線維性狭窄を予防すること，である。治療は薬物治療（酸分泌抑制薬，コルチコステロイド，抗アレルギー薬，生物学的製剤など），アレルゲン除去療法（成分栄養，多種除去食），拡張術に分けられる。治療評価については，明確なコンセンサスは得られていないが，症状，内視鏡所見，組織学的所見を総合して判断する^3）。表1に治療効果判定の目安を示す。症状はEoEに特異的な自己記入式質問紙票を用いることで客観的に評価できるが，研究や治験に限定され日常臨床的ではない。内視鏡像のグレードシステムであるEndoscopic Reference Score（EREFS）は比較的簡便であり，一般日常臨床でも使用可能である。スコア2以下となれば寛解とされ，スコア0で正常粘膜＝完全寛解と判定できる。組織学的所見はEoEに特異的なスコアシステムも報告されているが，煩雑であり生検材料の状態により判定できないこともあるため一般的でない。上皮内浸潤好酸球数の評価は15/HPF未満を寛解とする場合が多い。より厳格に判定すべきとして，6/HPF以下に設定している報告もある。正常の食道粘膜では好酸球は0～1/HPFであることから，1/HPF以下であれば完全寛解といえる。これらの3項目のなかでは，治療目標を考慮すると症状改善度を重視すべきと思われる。ただし，日常的な疾患である機能性消化管疾患合併も症状に関連する場合があり，EoE症状との鑑別が難しいことが課題である。

《Note》無症候性食道好酸球浸潤の位置づけ小澤　俊一郎 , 末木　良太 , 見本　雄一郎 , 若尾　聡士 , 佐藤　公 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1373-1375

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はじめに

　好酸球性食道炎は内視鏡医における疾患の認識が広がり，健診内視鏡でも経験する機会が増加している^1）。典型的な内視鏡像を有するもののなかには全く無症状の症例もあり，内視鏡像のみでは治療方針が判断できないことも多い。本稿では当院の健診内視鏡にて発見された有症状，無症状の食道好酸球浸潤を紹介し，その位置づけに関して述べる。

《Note》食道運動機能障害と好酸球との関連高橋　一也 , 佐藤　裕樹 , 中島　尚 , 水野　研一 , 寺井　崇二 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1376-1381

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はじめに

　一次性食道運動機能障害には食道アカラシアやジャックハンマー食道（jackhammer esophagus：JE）が含まれる^1）。これら疾患は高解像度食道内圧検査（high-resolution manometry：HRM）によってシカゴ分類にもとづき診断される。しかしながら，その病態については不明な点が多い^{1, 2）}。近年の治療技術の進歩，とりわけ経口内視鏡的筋層切開術（per-oral endoscopic myotomy：POEM）の開発によって，食道アカラシアを中心とした一次性食道運動機障害をより低侵襲かつ効率的に治療することが可能となった^{3, 4）}。またPOEMにより，これまで内視鏡的アプローチが難しかった食道筋層での検体採取とその評価が容易になり，食道アカラシアやJEといった疾患の食道筋層の病理組織に関する報告が増えている^5～9）。これらの一次性食道運動機能障害で食道筋層への好酸球浸潤を認める場合があり，病態との関連が注目される。

《Case》好酸球性食道炎の狭窄症例鈴木　悠悟 , 菊池　大輔 , 布袋屋　修 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1383-1385

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内視鏡所見の概要

　好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）は，食道上皮への好酸球の浸潤による慢性炎症を背景に，食道に機能的，器質的障害をきたし，さまざまな消化管症状や特徴的な内視鏡像を呈する疾患である。

《Case》広範な食道裂創を認めた好酸球性食道炎赤松　泰次 , 植原　啓之 , 市川　徹郎 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1386-1387

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症例提示

　60歳台男性。数年前から嚥下時に喉の詰まる症状を自覚していた。2021年8月，食事摂取の際に喉の詰まる感じがあり，水を飲んでも症状が改善しなかった。無理に吐こうとしたところ吐血を認めたため，当院へ救急搬送された。身体所見では頻脈を認める以外にバイタルサインは異常なかった。Mallory-Weiss症候群を疑って上部消化管内視鏡（EGD）を施行したところ，図a，bのごとく，食道中部から下部にかけて約10cmにわたる広範な裂創を認めた。裂創内に一部血液の付着がみられたが，活動性出血はなかった。また，食道全体に気管内腔に類似した多発輪状溝が観察された。通常のMallory-Weiss症候群でみられる裂創とは病変範囲や部位が明らかに異なり，好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）が背景に存在することを疑って，周辺の食道粘膜より鉗子生検を行った。生検組織所見では，図cのように食道上皮内に高倍率の1視野20個以上の好酸球浸潤を認めた。以上より，EoEに伴う食道裂創と考えられた。胸部CTでは縦隔気腫の所見はなく，食道穿孔はなかった。入院加療とし，絶食，補液，ボノプラザン20mg/日投与による保存的治療を行い，第3病日より経口摂取を開始して第7病日に退院した。退院後もボノプラザンの投与は継続し，1カ月後にEGDを再検したところ裂創は図dのように瘢痕化していた。その後以前みられた喉の詰まる症状は消失し，経過は良好である。

好酸球性胃腸炎の診断小林　清典 , 金澤　潤 , 別當　朋広 , 石戸　謙次 , 池原　久朝 , 横山　薫 , 草野　央 , 林田　浩明 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1389-1393

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はじめに

　消化管に好酸球を主とした炎症細胞浸潤に伴う慢性炎症が持続することにより，多彩な臨床症状や形態変化を生じる疾患を好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorder：EGID）と総称する^1）。EGIDは主たる病変部位が食道の好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）と，食道病変の有無にかかわらず胃から大腸を中心に病変を認める好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis：EGE）に分類される。EGEはKajiser^2）により初めて報告され，本邦では木滑ら^3）の報告が最初とされる。

《Column》好酸球性胃腸炎の小腸絨毛の変化今枝　博之 , 宮口　和也 , 松本　悠 , 塩味　理恵 , 小林　威仁 , 大庫　秀樹 , 都築　義和 , 山田　健人 , 中元　秀友 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1394-1396

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はじめに

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders：EGIDs）は，好酸球の消化管局所への異常な集積から好酸球性炎症が生じ，消化管組織が傷害され，機能不全を起こす疾患の総称である。部位により好酸球性食道炎，好酸球性胃炎，好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis：EGE），好酸球性大腸炎に大別されるが，明確に区別できない部分があることから好酸球性胃炎，好酸球性大腸炎はしばしばEGEに包括される。小腸の内視鏡観察として，深部小腸を観察する場合にはカプセル内視鏡やバルーン内視鏡による観察が必要となるが，上部消化管内視鏡では十二指腸を，大腸内視鏡では終末回腸を観察することができる。

好酸球性胃腸炎の治療石原　俊治 , 沖本　英子 , 石村　典久 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1397-1402

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はじめに

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders：EGIDs）は，食物アレルギーなどが原因となり，好酸球が消化管壁に異常に浸潤することによって誘発される慢性炎症性疾患である。EGIDsは，食道に限局して好酸球浸潤が認められる好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE）と，食道病変の有無に関係なく全消化管に病変が起こりうる好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis：EGE）に分類される。近年，本邦ではEGIDsが増加傾向にあることから，臨床現場における本疾患に対する注目度は高まり，2020年には厚生労働省好酸球性消化管疾患研究班によって「幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン」（以下，診療ガイドライン）が公表された^1）。

《Note》好酸球性胃炎松本　啓志 , 笹平　百世 , 梅垣　英次 , 塩谷　昭子 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1404-1407

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はじめに

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders：EGIDs）は，全消化管へ多数の好酸球が浸潤し，慢性炎症を引き起こす。EGIDsは好酸球浸潤を認める部位によって分類され，胃に認めるものはeosinophilic gastritis（EG）と呼ばれている。

《TOPICS》難治性好酸球性胃腸炎の特徴石原　眞悟 , 栗林　志行 , 浦岡　俊夫 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1408-1411

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はじめに

　「幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン」^1）によれば，好酸球性胃腸炎治療の第一選択としてプレドニゾロン（PSL）などの全身作用ステロイドの経口投与が行われ，ほとんどの症例で一時的に病状が軽快するが，60％程度で再発があるとされている。ステロイド治療で寛解の得られないステロイド抵抗症例，一時的に寛解が得られてもステロイド減量中に再発または中止後頻回に再発するステロイド依存症例では，治療に難渋する場合も少なくない。本稿ではステロイド依存またはステロイド抵抗の経過がみられた症例を難治例と定義し，その特徴についてこれまでの報告をもとに概説する。

小児における好酸球性消化管疾患新井　勝大 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1412-1418

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Ⅰ．好酸球性消化管疾患

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders：EGIDs）は好酸球の消化管局所への異常な浸潤に伴う炎症の結果，消化管の機能不全を起こす疾患の総称である。

［各論　その他の好酸球関連消化管疾患］

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症（EGPA）と消化管病変江頭　信二郎 , 蔵原　晃一 , 大城　由美 , 南　満芳 , 岡本　康治 , 田中　貴英 , 池上　幸治 , 清森　亮祐 , 鳥巣　剛弘 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1419-1424

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はじめに

　好酸球性多発血管炎性肉芽腫症（eosinophilic granulomatosis with polyangiitis：EGPA）は，気管支喘息を主とするアレルギー性疾患の先行，末梢血における好酸球増多と血管炎症候群を3主徴とする原発性全身性血管炎である^1）。EGPAは血管炎症候群の一部分症として小腸などの消化管に潰瘍性病変を呈することが知られている^2）。

好酸球増多症候群（HES）の消化管病変と好酸球性消化管疾患（EGID）森山　智彦 , 森　康雄 , 加藤　光次 , 川床　慎一郎 , 鳥巣　剛弘 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1425-1430

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はじめに

　消化管に好酸球が異常集積することで炎症が引き起こされる好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorder：EGID）は，新生児～小児における食物蛋白誘発胃腸炎，幼児～成人の好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis：EoE），好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis：EGE）の総称であるが^1），われわれ消化器内科医が遭遇するのはおもにEoEとEGEであろう。EGID，特にEGEではしばしば末梢血の好酸球増加を認めるが，そのような症例では好酸球増多症候群（hypereosinophilic syndrome：HES）の一臓器症状である可能性も考慮する必要がある。HESは末梢血の好酸球数増加に加え，好酸球浸潤による臓器障害がある病態として，1975年にChusidらによって診断基準が作成された^2）。長年にわたり，原因不明の好酸球数増加をきたす病態を包括する概念として用いられてきたが，近年の分子生物学の進歩によってHESの分子異常や病態の解明が進んだことで定義や分類が変遷し，分子標的薬を含めた新しい治療法も報告されている。本稿ではHESの診断と分類，治療について概説し，HESでみられる消化管病変について述べる。

好酸球浸潤をきたす腸管感染症中村　元 , 勝木　伸一 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1431-1436

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はじめに

　好酸球増多を認める疾患は数多く存在するが，原発性好酸球増多症と種々の基礎疾患に続発して生じる二次性好酸球増多症に大分される。二次性好酸球増多症の原因疾患として寄生虫感染症が，特に発展途上国を中心に数多く認められる。本邦においても寄生虫感染症はかつて国民病とされていたが，戦後衛生状況の改善や検査・駆虫薬の導入によりその数は激減した。しかしながら現在でも，海外渡航者の増加に伴う輸入感染症，食品輸送技術の発展や食文化の変化に伴う食品由来感染症，ペットブームに伴う動物由来感染症などとして，寄生虫感染症はいまだ見過ごすことのできない疾患であると考えられる。病原体となる寄生虫により感染経路や感染部位はさまざまであるが，一般的に好酸球増多を引き起こす寄生虫は多細胞性の蠕虫であり，単細胞性の原虫感染では好酸球増多は認められない^1）。

好酸球浸潤を伴う炎症性腸疾患の特徴堀内　和樹 , 穂苅　量太 , 高本　俊介 , 東山　正明 , 成松　和幸 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1438-1442

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はじめに

　好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal diseases：EGIDs）は好酸球性食道炎（eosinophilc esophagitis：EoE）と好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis：EGE）に分けられ，その診断基準のなかで鑑別診断として炎症性腸疾患（inflammatory bowel disease：IBD）を除外することが記載されている。食道以外の消化管粘膜には生理的に好酸球が存在し，特に回腸末端～上行結腸にかけては豊富に存在することが知られている。そのため全大腸炎型の潰瘍性大腸炎（ulcerative colitis：UC）では，上行結腸のみの所見に注目するとEGIDsとの鑑別に苦慮することもある。しかし後述するようにEGIDsとIBDの組織像は基本的に全く異なるものであり，その違いを理解することは好酸球浸潤を伴うIBDの臨床像を理解することにもつながる。

《Note》機能性ディスペプシアと好酸球浸潤正岡　建洋 , 松垣　道博 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1443-1445

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はじめに

　胃の不調と思われる症状は専門施設に限らず，日常臨床において日々よく遭遇する症状の一つである。症状の原因を調べる目的で内視鏡検査や腹部US，CTスキャンなどの画像検査を行っても潰瘍や悪性新生物といった器質的異常は必ずしも見つからない。上腹部症状を訴える患者のうち，上部消化管内視鏡検査で器質的疾患を認めた割合は全体の1割程度とする報告もある。各種検査を施行したうえで器質的疾患，代謝性疾患，全身性疾患がなく，慢性的な上腹部症状を認める疾患は機能性ディスペプシア（functional dyspepsia：FD）と呼ばれる。FDの有病率は健診受診者で11～17％，上腹部を主訴に受診した患者は43～53％と高く，腹部症状を呈する原因を考えつつ，正確にFDを診断することが重要である^1）。

連載　臨床研究をやってみよう！・シーズン2　第3回

臨床研究のpit fall：システマティックレビュー・メタ解析の実例新倉　量太 34巻8号 , 2022年8月 , pp.1447-1452

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はじめに

　臨床研究の研究デザインにおけるシステマティックレビュー・メタ解析は，研究デザインが最も客観的な研究の類に位置づけられている。システマティックレビュー・メタ解析は，ランダム化比較試験を中心とした複数の研究の結果を解析データとして扱い，どちらの薬剤，どちらの検査法や手術法が優れているか検討を行う研究方法である。そのため客観性が高く，科学的な妥当性が高いとされている。しかし報告されている論文間において異なる結論に至ることがある。

基本情報

消化器内視鏡
34巻8号
(2022年8月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0915-3217 東京医学社

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第7位食道静脈瘤出血例に対する内視鏡治療久居弘幸,櫻井環,飴田咲貴消化器内視鏡 36巻 12号 pp. 1650-1656 (2024年12月25日) 東京医学社
第8位食道静脈瘤の内視鏡診断と治療適応入澤篤志,山宮知,永島一憲,嘉島賢,久野木康仁,佐久間文,福士耕,稲葉康記,石川学,坂本智哉消化器内視鏡 36巻 12号 pp. 1636-1641 (2024年12月25日) 東京医学社
第9位門脈圧亢進症の病理―食道・胃静脈瘤の血管構築と肝臓・脾臓の病理鹿毛政義,近藤礼一郎,草野弘宣,秋葉純,荒川正博,豊永純消化器内視鏡 36巻 12号 pp. 1626-1635 (2024年12月25日) 東京医学社
第10位内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン高須綾香,後藤田卓志消化器内視鏡 35巻 9号 pp. 1129-1135 (2023年9月25日) 東京医学社

消化器内視鏡 34巻8号 (2022年8月発行)

特集 好酸球性消化管疾患のすべて

［総論］

［各論 好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎］

［各論 その他の好酸球関連消化管疾患］

連載 臨床研究をやってみよう！・シーズン2 第3回

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