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特集 好酸球性消化管疾患のすべて
[各論 好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎]
《Case》広範な食道裂創を認めた好酸球性食道炎
Eosinophilic esophagitis causing a long laceration
赤松 泰次
1
,
植原 啓之
2
,
市川 徹郎
3
Taiji AKAMATSU
1
,
Hiroyuki UEHARA
2
,
Tetsuro ICHIKAWA
3
1長野県立信州医療センター内視鏡センター
2長野県立信州医療センター消化器内科
3長野県立信州医療センター病理・臨床検査科
キーワード:
好酸球性食道炎
,
食道裂創
,
食道穿孔
Keyword:
好酸球性食道炎
,
食道裂創
,
食道穿孔
pp.1386-1387
発行日 2022年8月25日
Published Date 2022/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000000293
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症例提示
60歳台男性。数年前から嚥下時に喉の詰まる症状を自覚していた。2021年8月,食事摂取の際に喉の詰まる感じがあり,水を飲んでも症状が改善しなかった。無理に吐こうとしたところ吐血を認めたため,当院へ救急搬送された。身体所見では頻脈を認める以外にバイタルサインは異常なかった。Mallory-Weiss症候群を疑って上部消化管内視鏡(EGD)を施行したところ,図a,bのごとく,食道中部から下部にかけて約10cmにわたる広範な裂創を認めた。裂創内に一部血液の付着がみられたが,活動性出血はなかった。また,食道全体に気管内腔に類似した多発輪状溝が観察された。通常のMallory-Weiss症候群でみられる裂創とは病変範囲や部位が明らかに異なり,好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)が背景に存在することを疑って,周辺の食道粘膜より鉗子生検を行った。生検組織所見では,図cのように食道上皮内に高倍率の1視野20個以上の好酸球浸潤を認めた。以上より,EoEに伴う食道裂創と考えられた。胸部CTでは縦隔気腫の所見はなく,食道穿孔はなかった。入院加療とし,絶食,補液,ボノプラザン20mg/日投与による保存的治療を行い,第3病日より経口摂取を開始して第7病日に退院した。退院後もボノプラザンの投与は継続し,1カ月後にEGDを再検したところ裂創は図dのように瘢痕化していた。その後以前みられた喉の詰まる症状は消失し,経過は良好である。
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