理学療法ジャーナル 52巻6号 (2018年6月)

特集 地域に広がる心臓リハビリテーション

EOI(essences of the issue)
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 日本における心臓リハビリテーションの健康保険適用は,1988年に急性心筋梗塞を対象とした「心疾患理学療法料」として始まった.当時は身体ディコンディショニングを予防する早期離床が主な目的であったが,その後は早期社会復帰や長期予後の改善,QOLの改善が目的となり,疾病管理プログラムへと進化した.そして今,社会の高齢化とともに,医療から介護,地域へ心臓リハビリテーションの場が広がろうとしている.本特集では,地域に広がる心臓リハビリテーションの先駆的な活動をしている施設の先生方に現在の取り組みを解説していただいた.

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はじめに

 長い歴史のある本邦の心臓リハビリテーションは,これまでに経験したことのない少子高齢化という環境変化に直面している.本邦で心臓リハビリテーションが健康保険適用承認されて30年を迎える今年,筆者が医師以外で初めて日本心臓リハビリテーション学会学術集会の大会長を務めることとなった(図1).これまで本邦の心臓リハビリテーションの発展を支えてきたすべての人に感謝し,リハビリテーションの崇高な理念と尊厳を尊びながら,これまでの心臓リハビリテーションの発展について敬意をもって振り返り,高齢化率が40%に到達すると予想されるこれからの30年を展望してみたい.

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はじめに

 新潟南病院(以下,当院)では2013年4月より「独歩プロジェクト,Discharge Of elderly Patients from hosPital On the basis of their independent gait:DOPPO」を推進している1〜3).DOPPOプロジェクトは身体的フレイル(Frailty)を伴った高齢入院患者の独歩退院をめざす病院づくりである.そのリハビリテーション活動が本体である.ここでは,本プロジェクトをスタートさせるに至った背景や目的,リハビリテーションの特徴,そして成績・成果のみならず,意義や限界,担当療法士への期待,さらに今後の展望についても概説したい.

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はじめに

 現在,急性期病院では入院期間の短縮化が進められており,急性期治療が終了し状態が安定すれば,早期に自宅退院となるケースが多い.特に心疾患患者は,目に見える手足の障害が認められないため,急性期治療が終了すると十分な身体機能やADLが回復しないまま,早期自宅退院を余儀なくされるケースも少なくない.山田ら1)は急性心不全患者の急性期治療と並行して早期から心臓リハビリテーションを行っても,退院時の移動動作能力は入院時と比較して有意に低下すると報告している.また本邦における心臓外科手術後の多施設研究の結果2)では,術後早期より心臓リハビリテーションを行っても約7%の患者は急性期病院入院中に歩行自立まで回復しないことも報告されている.その背景には,高齢心疾患患者の増加に伴い,脳血管障害や運動器疾患など重複障害を有する患者や,フレイル,サルコペニアを有する心疾患患者が増加していることが影響しているものと思われる.

 十分な身体機能やADL能力が回復しないまま自宅に退院すると,身体活動量の低下や転倒などにより,再入院につながる可能性もある.またいったん自宅に退院すると,通院が困難であったり,マンパワーの不足や施設基準など施設側の受け入れの問題もあり,本邦の外来心臓リハビリテーション継続率は先進諸国のなかでも際立って少ない現状にある3).在院日数や診療報酬,人員に関する問題などの理由から,急性期病院だけでdisabilityを有する心疾患患者に対するリハビリテーションを十分に行うことは難しく,在宅復帰までのプロセスを完結するのには限界がある.

 急性期病院と在宅の中間に位置する回復期リハビリテーション病院は「ADL能力の改善」,「在宅復帰率の向上」という明確なアウトカム改善のために,リハビリテーション専門職による専門的かつ集中的なリハビリテーション医療を提供する病院である.今後もdisabilityを有する心疾患患者が増加することが予測されるなか,急性期病院と回復期リハビリテーション病院の心臓リハビリテーションを基軸としたシームレスな連携の構築は,患者の在宅・社会復帰はもちろんのこと,病院の機能分化や医療費増大の抑制,さらには病院完結型医療から地域全体で支える地域完結型医療への転換においても極めて重要と思われる.本稿では回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの現状を紹介するとともに,その実践方法や急性期病院・在宅(後方施設)との連携,さらに回復期リハビリテーション病院における心臓リハビリテーションの効果と今後の課題について概説する.

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変貌する外来心臓リハビリテーション

 心臓リハビリテーションは,「心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し,基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制あるいは軽減し,再発・再入院・死亡を減少させ,快適で活動的な生活を実現することをめざして,個々の患者の『医学的評価・運動処方に基づく運動療法・冠危険因子是正・患者教育およびカウンセリング・最適薬物治療』を多職種チームが協調して実践する長期にわたる多面的・包括的プログラム」と定義されている1)

 心臓リハビリテーションの効果とエビデンスレベルは高く,全身の動脈硬化進行プロセスのあらゆるフェイズに有効な治療であり,急性心筋梗塞,開心術後,大血管術後,慢性心不全,狭心症,末梢動脈疾患において,必ず行われるべき治療となっている2).依然,本来適応となる患者への導入率は低いものの,日本心臓リハビリテーション学会の努力などにより心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準が緩和され,ようやく入院中の心臓リハビリテーションを実施する急性期病院が増えていたところである3)

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はじめに

 心臓リハビリテーションとは,「心血管疾患患者の身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し,基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制あるいは軽減し,再発・再入院・死亡を減少させ,快適で活動的な生活を実現することをめざす」1)と定義されている.その定義から考えると,在宅の場で行うことも例外ではないと考えられる.ゆみのハートクリニック(以下,当院)では,特に心不全患者が住み慣れた自宅で最期まで穏やかに生活できるように,多職種心不全クリニックとしてさまざまな取り組みを行っている.心不全患者に対する訪問心臓リハビリテーションもその取り組みの1つである.

 心不全患者の臨床経過と管理のねらいを図1に示した2).心不全は急性増悪を繰り返しながら徐々に心機能を低下させ最終的に死に至る慢性疾患である.そのため,心不全管理の目標は,① 心機能の低下を可能な限り緩徐にすること,② 急性増悪の頻度を抑えること,③ 急性増悪の程度を抑えることである.よって訪問心臓リハビリテーションも良好な心不全管理に貢献することに寄与しつつ,患者自身が「心不全とともにその人らしく生活すること」をめざしてさまざまな取り組みを行っている.本稿では在宅心不全患者に対する理学療法士による訪問心臓リハビリテーションに関して,症例をまじえて解説する.

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はじめに

 東京都健康長寿医療センター(以下,当医療センター)では2011年より高齢者の健康寿命延伸に関する取り組みを実施,継続している.この取り組み実施の背景には,リハビリテーションにおける保険算定期間を終了した後の重症化予防,再発予防のための受け皿施設が少ないといった医療が抱える課題や,超高齢社会を迎えたことによるフレイル高齢者の早期発見・対策に取り組む事業が少ないといった地域社会が抱える課題が挙げられる.当医療センターは地域中核高齢者専門公的医療機関であることから,これらの課題解決を目的に健康寿命延伸事業に取り組んできた.本稿では,心臓リハビリテーションを応用した高齢者健康寿命延伸事業の取り組みについて紹介する.

とびら

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 世の中はますます慌ただしくなるのだろうか.リンダ・グラットン著『LIFE SHIFT』(東洋経済新報社)によると,2007年に日本で生まれた子供の50%が107歳まで生きるそうだ.この超長寿社会に対応すべく一億総活躍社会の実現のため,さまざまな将来ビジョンについての提言が出ている.働き方改革,第4次産業革命,人づくり革命など「改革」,「革命」と大仰な言葉,さらに,ベーシックインカム,プライマリーバランス,Society5.0,人工知能(AI),シンギュラリティ,仮想通貨,ワークライフバランス,健康寿命の延伸,全世代型社会保障,アジア健康構想などの言葉が跋扈している.人は洪水のように襲ってくる情報をどれだけ理解できるのだろうか.

 インターネットの普及により,誰もが簡単に,途轍もなく大量でしかも高度な内容の情報にアクセスすることができるようになった.各国諜報機関が集積するインテリジェンスのソースは95%以上が公開情報であるという.

新人理学療法士へのメッセージ

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はじめに

 今春,新しく理学療法士になられた皆さん,国家試験合格おめでとうございます.これからは社会人として公私ともに責任ある立場で過ごしていかなくてはなりません.そのような皆さんに,考える機会となればと,私なりに考えていることをお伝えしたいと思います.

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●研究会の概要

 2018年3月11日,AP西新宿にて第3回 精神・心理領域理学療法部門研究会が開催された.広島都市学園大学の甲田宗嗣先生を学会長とし,“今後の精神科理学療法を考える”をテーマに,丸一日にわたってシンポジウムと19演題の口述発表がなされた(ポスター発表はなし).第1回の研究会の参加者は43名だったが,今回は93名が参加していた.発表7分,質疑応答7分と討議の時間がしっかり確保されていたにもかかわらず,多数の意見が噴出し,座長が話せない時間が続いた.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

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 システマティックレビュー(systematic review:SR)は,PI(E)CO(P:患者,I:介入,E:曝露要因,C:比較,O:アウトカム)として定式化された疑問に関連する研究を選択し,選択された研究を批判的に吟味して,これらからデータを集めて分析する,系統的で明確な方法を用いるレビューである.批判的吟味とは,研究の質,すなわち方法論的問題(risk of bias)の有無や程度を評価することである.データは質的に分析する場合と量的に分析する場合があり,後者の手法にメタアナリシスがある.

 メタアナリシス(meta-analysis:MA)は,複数の臨床研究が示した統計量を,データのばらつきの度合いで重みづけしてから統合する統計学的手法である.MAには,アウトカムの測定に使用された尺度の水準や統計量により複数の方法がある.MAを用いたSRの結論は主観の余地が少なく,反証可能性が高まる.SRの主な手順を以下に示す.

オリパラ関連企画 理学療法士が知っておきたい重要なスポーツ動作・6

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はじめに

 ダンスにはクラシックバレエ,ソーシャルダンス,フォークダンス,モダンダンス,民族舞踊などさまざまある.本稿ではそのなかで,理学療法士が現場でよく遭遇するであろうクラシックバレエ(以下,バレエ)に焦点を当て,その特徴的な動作について足部障害を関連づけながら紹介する.

入門講座 筋力トレーニング・2

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はじめに

 「中枢性運動障害に対する筋力トレーニング」,「痙縮筋に対する筋力トレーニング」といった表現にどれくらいの理学療法士が違和感を覚えるであろうか.本邦では脳卒中片麻痺例における麻痺肢の筋力トレーニングは,強い努力によって痙縮を増悪させ,異常運動パターンを増強してしまうため禁忌と考えられてきた1).しかしながら2000年代以降,麻痺肢に対する筋力トレーニングは,痙縮を増悪させることなく麻痺肢の筋力を改善させることが明らかにされ2,3),「脳卒中治療ガイドライン2015」でもグレードAと強く推奨されている4).このように近年,脳卒中片麻痺例の麻痺肢に対する筋力トレーニングの重要性が見直されてきている.

 本稿では,まず脳卒中片麻痺例における麻痺側下肢の筋力低下の特徴について述べ,科学的かつ臨床的な視点から麻痺側下肢の筋力評価の方法,筋力トレーニングの実際について紹介する.

講座 理学療法に関するガイドラインupdate・3

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はじめに

 厚生労働省は2017年7月に,平成28年簡易生命表の概況を発表した1).それによると日本人の平均寿命は,男性が80.98歳,女性が87.14歳となった.この数値は世界トップレベルであり,年次推移からみても高齢化は進展し続けている.また,同省の平成28年国民生活基礎調査では,高齢者が骨折・転倒により要支援,要介護となる割合は,それぞれ15.2%,約10.8%を占めている(図1)2).特に高齢者のなかで発生頻度が高い大腿骨近位部骨折3)に関しては,2007年の本邦の調査で,男性3万1300人,女性11万6800人,計14万8100人と推計されている4).さらに,最近の調査(2012年)5)では,約19万人と推計されており,数値のうえでは増加傾向にある.このように高齢社会を迎えた本邦において大腿骨近位部骨折の予防と治療は重要課題の1つとなっている.そこで本稿では,「大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン,改訂第2版」6)(以下,ガイドライン)の内容を踏まえて,エビデンスに基づいた実践理学療法のポイントについて解説する.

臨床実習サブノート どうする? 情報収集・評価・プログラム立案—複雑な病態や社会的背景の症例・3

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はじめに

 脳卒中患者は学生の臨床実習においてだけでなく,理学療法士になってからも受け持つことが多くあります.しかし,脳卒中という疾患は年齢,性別,合併症などによっては治療の方法や経過も大きく異なります.また,自宅退院を考えるうえで疾患のみならず,社会的情報を考慮することはとても重要であると言えます.なぜなら,現在,高齢化率の上昇,核家族化の進行,生涯未婚率の上昇により,独居の高齢者数が年々増加しており,高齢者のいる世帯数のうち27.1%は独居であることが報告されているからです1).この数値は今後も上昇を続け,2036年には33.3%に達する2)とされており,高齢者のいる世帯の3分の1が独居世帯という社会を迎えると言われています.

 このように独居の患者数は年々増加しているため,自宅退院後に介護者がいないことが想定できるかと思います.また,脳卒中患者の自宅退院の条件として日常生活活動(activities of daily living:ADL)が影響すること3〜9)が数多く報告されており,ADLが低いほど自宅退院が困難となり,認知機能が低いほど自宅退院が困難になる10)と言われています.さらに,自宅退院には同居人数の重要性も報告3,5,7)されており,独居高齢者は非独居高齢者と比べ,日常生活での見守りや支援を得にくいため,独居が自宅退院を阻害することが容易に想定できます.高齢かつ独居といった社会的情報だけでも考慮することは多くあります.

 本稿では,ラクナ梗塞急性期の独居生活を考えるうえで知っておかなければいけない点や評価の進め方について,私なりの考え方や工夫点を述べていきます.臨床実習において少しでもお役に立てれば幸いです.

甃のうへ・第59回

5年間を振り返って 橋田 璃央
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 私は理学療法士になって5年が経ちました.振り返ってみると,1年目から臨床ではさまざまな症例を経験し,また臨床以外にも研究や学生指導,地域活動への参加など幅広い分野を経験することができています.なかでもまだ入職して駆け出しの頃,難渋症例に対して多職種でリハビリテーションの介入をしたことは今でも印象に残っています.その患者さんは,呼吸不全を呈し人工呼吸器装着の離脱に難渋していました.私はもともと呼吸理学療法に興味があり,3学会合同呼吸認定療法士の取得や,呼吸器分野や周術期リハビリテーションに関する研修会へ参加などを積極的に行っていましたが,実際の臨床場面でアセスメントや治療を行うことにはまだ自信をもてていませんでした.しかし,その患者さんを担当した際に思いきって担当医に離床の提案と具体的な理学療法の内容について相談をしました.そこで共通の目標を設定し,それに向かって進むため,リハビリテーションの時間に合わせて医師や看護師,臨床工学技士,理学療法士が集合し,離床の介入を行うことが決まりました.実際のリハビリテーション場面において多職種で介入することで,カンファレンスとは違い,その場でコミュニケーションがとれ,悩むことがあればその都度各々の専門分野からの意見をいただきながらリハビリテーションを実施することができました.結果,人工呼吸器は離脱し,患者さんは身の回りの生活動作が可能となり無事自宅へ退院することができました.

 実際の医療現場では,マンパワー不足などの問題があります.しかし今回,1人の患者さんに対して毎日一緒にアプローチできたことはとても貴重な経験であり,またさまざまな専門分野から意見が聞けたことは新たな視点をもて自分自身の成長につながりました.一方で,理学療法士として自信をもって他の職種に自分の意見を伝えることができなかったことも痛感しました.

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要旨 [目的]聴覚リズム刺激を併用した歩行介入が脳性麻痺児の歩行に及ぼす即時効果を予備的に検討した.[方法]対象は,4〜10歳の脳性麻痺児6名とし,聴覚リズム刺激ありと聴覚リズム刺激なしの2条件での歩行介入を実施した.その介入前後で10m歩行路を自由な速度で歩行させ,周期時間,歩行速度,立脚期の割合,ステップ長,ストライド長,歩行率を測定した.[結果]聴覚リズム刺激なしの条件では介入前後で立脚期の割合が有意に減少し,歩行速度が有意に増加した.一方,聴覚リズム刺激ありの条件では介入前後において,周期時間,ステップ長,ストライド長が有意に増加し,立脚期の割合と歩行率は有意に減少した.[結論]今回の結果は,聴覚リズム刺激を併用した歩行介入が歩行パフォーマンスの改善に寄与することを示唆する.

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 ニュージーランドの最北端ノースランド州での7人制ラグビー(以下,セブンス)チームへの帯同経験とニュージーランドの理学療法について報告する.

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目次

文献抄録

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 観察に基づく動作分析能力の修得は,理学療法士に必須であり,学生が臨床実習で最も苦労する課題である.また,駆け出しの頃は対象者の自然な動きの観察ですら難題であり,動作の速さや方向などの複合的な反応の分析となるとお手上げ状態になってしまう.一方,臨床現場の教育者や熟練者ともなるとハンドリングをさらに加えて空間的,時間的反応の変化に対して,五感を駆使して動作分析を展開する.

 筆者自身は,己の身体の動きや健常者の分析すらままならないことを幾度となく体験してきた.この体験を経ずして動作分析能力を修得できる学生や理学療法士はおそらく少数派であろう.その訳は,動作分析の統合過程に直感や非科学的要素(信頼性や妥当性の危うさ)が存在するのは,ヒトの動作や歩行,日常生活活動には不確定な要因(その場の明るさや温度などの環境条件,感情など)が含まれていて,それらの要素を含めて仮説検証を実践するためと考えられる.設問の解答に選択肢が提示されていて,必ず正解にたどりつけるわけではないことが動作分析の特徴である.

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 リハビリテーション栄養についてはすでに多くの出版物がありますが,看護師向けは本書が初めてと聞いて意外に感じられる人も多いでしょう.リハビリテーション栄養という考え方は,本書をまとめた若林秀隆先生から発信され,すでに全国的に定着してきており,2017年には日本リハビリテーション栄養学会が発足しました.その過程で,医原性サルコペニアと呼ぶべき状態が生じていることを認識し,予防するべきであるというメッセージが出されています.

 本書は,装丁やフォントがおしゃれで,A5判,244ページながら手にしやすい価格に設定され,専門書というハードルを下げてとても読みやすいものになっています.しかし,その中身は濃く,総論から各論(疾患別リハビリテーション栄養)まで網羅されています.特に半分の紙面を割き,10疾患を挙げ,疾患概要,エビデンス,症例についてまとめている「第3章 疾患別リハビリテーション栄養」は本書の魅力であり,症例は「リハビリテーション栄養アセスメント」「リハビリテーション栄養ケアプラン」「介入後の経過」で構成され,看護の実際,ゴール達成状況などが項目を立てて整理され,リハビリテーション栄養を実践するための臨床思考過程がとてもよくわかる内容になっています.つまり,本書は職種を超えて最新のリハビリテーション栄養を実践するための指南書になるわけです.

編集後記 高橋 哲也
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 「理学療法ジャーナル」第52巻第6号をお届けします.今回の特集は「地域に広がる心臓リハビリテーション」です.心臓リハビリテーションが本邦で健康保険適用承認されて30年.私が理学療法士の免許を取得してから29年ですので,私は日本の心臓リハビリテーションの歴史とともに歩んできたと感じています.私が理学療法士として働き始めたときには,急性心筋梗塞後のリハビリテーションが最も盛んで,急性期治療による安静臥床の弊害としての運動耐容能の低下に加え,心疾患という命にかかわる病気をもつ患者に対するリスク管理,嫌気性代謝閾値レベルの運動処方がその関心の中心でした.しかし,健康保険適用承認後30年が経過する今,対象疾患は高齢化し,多くの患者が重複障害をもち,理学療法士の役割や活動のフィールドは大きく変わってきました.

 世界は高齢化が進んでいます.特にアジア諸国の高齢化は深刻です.米国の医学教育に影響を与えた内科医で,聖路加国際病院理事長・名誉院長の故日野原重明先生とも親交があった医師,ウィリアム・オスラー博士が「ヒトは血管とともに老いる」と述べたことはあまりにも有名です.動脈硬化は老化の最たる症状ですので,骨格筋を主たる治療ターゲットとする理学療法士にとっても心臓や血管に対する配慮がこれまで以上に必要とされているのは言うまでもありません.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
52巻6号 (2018年6月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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