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私は理学療法士になって5年が経ちました.振り返ってみると,1年目から臨床ではさまざまな症例を経験し,また臨床以外にも研究や学生指導,地域活動への参加など幅広い分野を経験することができています.なかでもまだ入職して駆け出しの頃,難渋症例に対して多職種でリハビリテーションの介入をしたことは今でも印象に残っています.その患者さんは,呼吸不全を呈し人工呼吸器装着の離脱に難渋していました.私はもともと呼吸理学療法に興味があり,3学会合同呼吸認定療法士の取得や,呼吸器分野や周術期リハビリテーションに関する研修会へ参加などを積極的に行っていましたが,実際の臨床場面でアセスメントや治療を行うことにはまだ自信をもてていませんでした.しかし,その患者さんを担当した際に思いきって担当医に離床の提案と具体的な理学療法の内容について相談をしました.そこで共通の目標を設定し,それに向かって進むため,リハビリテーションの時間に合わせて医師や看護師,臨床工学技士,理学療法士が集合し,離床の介入を行うことが決まりました.実際のリハビリテーション場面において多職種で介入することで,カンファレンスとは違い,その場でコミュニケーションがとれ,悩むことがあればその都度各々の専門分野からの意見をいただきながらリハビリテーションを実施することができました.結果,人工呼吸器は離脱し,患者さんは身の回りの生活動作が可能となり無事自宅へ退院することができました.
実際の医療現場では,マンパワー不足などの問題があります.しかし今回,1人の患者さんに対して毎日一緒にアプローチできたことはとても貴重な経験であり,またさまざまな専門分野から意見が聞けたことは新たな視点をもて自分自身の成長につながりました.一方で,理学療法士として自信をもって他の職種に自分の意見を伝えることができなかったことも痛感しました.
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