理学療法ジャーナル 51巻6号 (2017年6月)

特集 理学療法士のはたらき方

EOI(essences of the issue)
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 理学療法士はプロフェッションと言えるのか.そもそもプロフェッションとは何か.超情報化社会は人々の価値観や生き方に影響を及ぼしている.医療を取り巻く社会は時代とともにさま変わりし,理学療法士のはたらき方は医療制度をはじめ,社会環境の変化に大きく左右されながら今に至っている.女性理学療法士も多くなった.理学療法士は個々の多様性に合わせて生活の充実を図る一方で,プロフェッションとしての資質の向上を図り,組織の一員として組織の成長に貢献していく責務をもつ.

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はじめに

 「プロフェッション」(profession)という言葉を聞いて何を連想するだろうか.プロ野球選手は野球球団と契約を締結し,年俸をもらって職業的に野球をプレイする選手だが,これは職業ではなく趣味で野球をするアマチュア(amateur)と対比した言葉である.日本語の「専門家」という言葉はプロフェッションと同じ意味だろうか.英語にあるエキスパート(expert)やスペシャリスト(specialist)という言葉との異同はどこにあるのだろうか.

 欧米では伝統的に弁護士,医師,聖職者という3つの専門職がプロフェッションとされ,ドイツでは,プロフェッションに相当するものとして「自由業」(der freie Beruf)という言葉が用いられている.また,学問的には「プロフェッション」という概念を巡ってさまざまな研究がなされ,世界通用語となっており1),細部までまったく同じというわけでないが,大枠では共通了解事項が認められている.本稿では,先行研究に従いプロフェッション概念の歴史からひも解いていきたい.

自己実現と理学療法士 永冨 史子
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はじめに

 私たちにとって理学療法士は職業であり,理学療法にかかわる何らかの活動を仕事として生活している.「はたらくこと」は,個人や家族の食い扶持を稼ぐ手段である.それは理学療法士だけでなく,はたらく人すべてにあてはまる.

 「自己実現」は,人間欲求の最高段階と位置づけられている1).ゆえに崇高で,ポジティブな印象がある.逆に,立ち止まり,悩んだり,何か困難な課題を抱えている状況は,自己実現にはほど遠いイメージがある.常に前向きにがんばらなければ,自己実現とは言えないのだろうか? 欲求としての自己実現と理学療法,そして理学療法士としてはたらくことがどのように結びつくのか,考えてみたい.

組織と理学療法士 大垣 昌之
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はじめに

 理学療法士は患者・利用者の活動性を上げ,社会参加を支援する専門職であるが,医療現場,介護現場においては,医療・介護サービスを提供している専門職と捉えることができる.どの病院,施設においても地域のなかで果たすべき「理念」や「目標」をもって運営されており,所属している理学療法士を含めた職員は,果たすべき「理念」や「目標」に向かって,よりよい医療・介護サービスを提供しなければならない.

 理学療法士は一人で仕事をすることはなく,医師,看護師,作業療法士,言語聴覚士,医療ソーシャルワーカー,事務職など多職種と集団となって仕事をすることが基本である.その集団は,一定の秩序のもとでそれぞれの専門性を発揮している.つまり理学療法士として仕事をするということは組織のなかで仕事をすることである.本稿では組織とは何か,組織に重要なものは何かについて理学療法士の立場から述べる.

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はじめに

 日本の理学療法士は,以前は男性が多く,女性は圧倒的に少なかった.しかし,次第に女性の割合が大きくなり始め,現在は男性6:女性4となっている1).よって,職場における女性の比率も高くなってきていることが推測できるが,男性に比べ,女性は結婚,出産・育児,介護などのライフイベントにより,望むと望まざるとにかかわらず,職場環境によっては,働き方を変えなくてはならないことが多い.それは現代社会のように核家族が一般的であり,親・親戚などのサポートがない方が多い状況では,女性にとって,より深刻な問題となる.

 一方,職場の視点では,性別に関係なくよい人材(財)を雇用したいと考えているが,女性にはライフイベントに伴う時短勤務,休職(産前産後休業,育児休業),退職などがいつ起きるかわからないため,それによる影響を考えざるを得ない.職場としては現実に職場を管理・運営していかなくてはならないため,女性の雇用を躊躇したり,敬遠したりすることが生じているとも推察される.このような状況のなかで,女性理学療法士が活躍し,働き続けていくためにはどのようなことが必要か,働く個人と職場の視点から,産業・組織心理学の知見を引用しながら,以下に述べる.

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吉尾 本日は各方面でご活躍中のベテランから中堅リーダーの3名の理学療法士の方々にお集まりいただきました.本座談会では,プロフェッションとして理学療法士はどうあるべきか,理学療法士としてはたらくということはどういうことか,みなさんと意見交換してみたいと思います.

 社会情勢の変化や人々の価値観の変化に伴い,私たちを取り巻く環境も大きく変わってきています.また,資料(図1),表1))からもわかるように,理学療法士の国家試験合格者は10年前から倍増して毎年約10,000人に上り,年齢・性別分布にも変化がみられます.そういう時代にあって,理学療法士としてどのようにはたらいたらよいのかを考えてみましょう.まずは自己紹介を兼ねて,ご自身の歩みをお話しください.

連載 超音波で見る運動器と運動療法Q&A・第6回

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Question

 68歳,男性,右利き.転倒し道路に左手をついて受傷.橈骨遠位端骨折の診断を受け,整復なしにキャスト固定後リハビリテーションがオーダーされた.受傷後3か月のエコー所見を示す(手関節背側走査).何が生じているか?

とびら

これからの目標 柳田 健志
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 私は子供のころから医療職になりたいと思っていた.ただ漠然とであるが,病院で白衣を着て働くことが夢であった。父親が歯科技工士として歯科医院に勤めていた影響なのだと思う.ただ,どの職種なのかはまったく想像できなかった.理学療法士という職業に巡り合わなければ,臨床検査技師か診療放射線技師になっていたと思う.

 三十数年前に理学療法士になったときは,今の若い理学療法士と同じように,早く一人前の理学療法士になれるよう自己研鑽に励んだ.入職した当時は一人職場の理学療法士も多く,理学療法士がまったく在籍していない施設も数多くあった.幸いなことに,私は先輩の理学療法士にも恵まれ多くのことを教えていただいた.しかし,当時の看護師も含めた他職種の認識は,「リハビリテーションって何」,「理学療法士って何をする人,何ができるの」という程度であった.「理学療法の専門性」を啓発する必要があった時代では当然かもしれないが,リハビリテーションの用語や考え方などを院内に徐々に広めていくこととなった.他職種が知らない言葉を使うこと(教えること)が,一つの教育となっていた時期もあったと思う.また,そのような言葉を使えるようになることが「理学療法の専門性」を高めることだと思っていた.

新人理学療法士へのメッセージ

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はじめに

 理学療法士国家試験に合格された皆様,おめでとうございます.皆様が国家試験のために猛勉強をして詰め込んだ知識を今後も完璧に維持するには並大抵の努力では足りません.人間は忘れる生き物です.お互いに頑張っていきましょう.

 さて,以下に連なる文章は,あくまで私個人が現時点で新人理学療法士の皆様に伝えておきたいと思っていることです.日本全国の理学療法士の先輩方が同じことを伝えたいはずだとか,絶対にこうあるべきだというものでもありません.人としても理学療法士としてもまだまだ未熟な私が2年というまだまだ少ない臨床経験をもとに書いたものですので,それを踏まえたうえでお読みいただけると幸いです.

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研究大会の概要

 2017年2月10日,11日に回復期リハビリテーション病棟協会第29回研究大会in広島が開催されました.研究大会の会場は,2016年5月に元アメリカ合衆国大統領であるバラク・オバマ氏が訪問されたことで一層の注目を集めた原爆ドーム・平和記念公園に隣接する広島国際会議場および近郊の広島市文化交流会館でした.

 2施設を借り切って開催されたことからもわかるように大盛況で,開会式から大ホールはほぼ満席でした.参加者数は3,200人余りで,主な職種別割合は医師6%,看護師28%,理学療法士31%,作業療法士18%,言語聴覚士5%,ソーシャルワーカー4%となっており,看護師に並んで理学療法士の参加が多い学会でした.

甃のうへ・第47回

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 私は理学療法士であり,基礎研究者です.基礎研究を始めるきっかけは,リハビリテーションの治療や介入方法を考える際に,病態組織へのそれらの効果や生体反応がわかっていなかったからです.「この方法が患者にとって最適か」と不安を抱えながら理学療法を行うのが性格的に合わなかったので,自分で調べてみようと,大学院に進学して基礎研究領域に飛び込みました.当時,基礎研究をされている理学療法士はほとんどおらず,医学系研究や生命科学系研究領域で基礎研究の“いろは”を学びました.大阪大学研究員のときに出会った「中枢神経損傷後の神経可塑的変化」の研究から,病態メカニズムに沿った理学療法治療の可能性にワクワクしました.現在は「脳梗塞後の痙縮発症メカニズム」について研究しています.

 研究を始めてから,時間に追われる毎日.研究世界は目まぐるしく,ひと息ついているとあっという間に置いていかれます.大学院や研究員当時は,競争から遅れることへの恐怖のなか,毎日休みもなく研究室に通って実験をしていました.そんな濃い時間を過ごせたおかげで今があると思います.

1ページ講座 理学療法関連用語〜正しい意味がわかりますか?

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●はじめに

 2014年度の診療報酬改定において平均在院日数の短縮,入院早期からのリハビリテーションの推進等が高度急性期・一般急性期の基本的な考え方として挙げられ,理学療法士を病棟に配置することで,入院期間が短くなる,ADLが向上するといった効果が注目された.

 そこで,一般病棟入院基本料,特定機能病院入院基本料(一般病棟)または専門病院入院基本料の7対1病棟,10対1病棟について,専従のリハビリテーション専門職等を配置した場合の評価として「ADL維持向上等体制加算」が新設された1).この加算は患者1人につき25点が入院した日から起算して14日間算定でき,2016年度の診療報酬改定では80点へ増点された.

 この加算を算定するには,退院または転棟時のADL(Barthel Indexにて評価)が入院時と比較して低下した患者の割合が3%未満であること,院内で発生した褥瘡(DESIGN-R分類d2以上)を保有している入院患者の割合が1.5%未満であるというアウトカム評価を満たす必要がある.また,算定条件1)のなかには専従のリハビリテーション専門職が提供できる疾患別リハビリテーション料は1日6単位まで2)とあり,理学療法士をはじめとするリハビリテーション専門職には,疾患別リハビリテーションにとらわれない新たな働き方が求められている3)

1ページ講座 障がい者スポーツ

CPサッカー 浦山 聖剛
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 CPサッカー(正式名称:脳性まひ者7人制サッカー)とは,国際的にはfootball 7-a-sideと呼ばれ,ヨーロッパや南米で盛んに行われています.日本の競技人口はわずか100名ほどですが,脳性まひの方がパラリンピックをめざすアスリートスポーツとして,また,健康増進や楽しみとしての生涯スポーツとして少しずつですが認知されてきました.

 競技対象となる選手は,脳性まひだけでなく,脳血管障害後遺症や外傷性脳障害など脳に起因する麻痺などがあり,歩行が可能な方とされます.

入門講座 「はじめて」への準備(臨床編)・6

はじめての家族指導 本田 祐一
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はじめに

 団塊の世代が後期高齢期に入る2025年を目途として,地域包括ケアシステムの構築が推進されている1).また,75歳以上人口の増加に伴い,入院を必要とする高齢者が増加すると予想され,入院需要の増加に対し,平均在院日数を短縮する施策が打ち出されている.これらのことから,今後は急性期病床から直接自宅退院するケースや,回復過程にある患者が自宅退院するケースが増加すると予想される.このような状況のなかで,病院から在宅へスムーズに移行するためには,医療機関と地域医療(在宅)との密な連携が必須である.特に高齢患者や介助を必要とする患者では退院後のADLが低下する可能性が高いとされており2,3),介助指導や疾病管理など在宅ケアスタッフはもちろんのこと,家族への指導や情報提供が重要となる.

 そこで本稿では,医療機関から自宅退院する患者の家族指導として,介助指導,ホームプログラムの指導,疾病管理の指導という3つの視点で,その指導方法と内容について,臼杵市医師会立コスモス病院(以下,当院)での取り組みを踏まえ述べる.

講座 運動と分子生物学・2

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はじめに

 運動が健康をもたらすことは疑いようのない事実である.世界保健機関が発表した死に至るリスクのなかで,運動せず不活動でいることは,主な死因の4番目に挙げられており(表1),運動が健康促進効果を有することは,さまざまな疫学研究からも明らかにされている.

 一般に運動の健康効果は,「運動することで体脂肪が減少し,脂肪細胞から炎症性サイトカインの分泌が減少し,体内で起きている慢性的な炎症が改善することでもたらされる」という説明がされており,運動による健康増進効果は,脂肪が減少したことによる副次的なものとして捉えられている.しかし,運動は脂肪の減少以外に,より積極的な健康効果を有していることも示されている.

 これまでほとんど運動をしなかったヒトが,毎日20分ほどの運動をすることで,肥満の指標として知られているボディーマス指数(Body Mass Index:BMI)が高くても,死亡に対するリスクが減少する1).つまり,運動は体重減少という目に見える変化を伴わなくとも,積極的に全身性に何らかの健康効果を有していると考えられる.

 運動時に中心的役割を果たすのが骨格筋である.骨格筋は,これまで「運動するための器官(運動器)」として捉えられており,過去の骨格筋に関する研究のほとんどが,「運動器の機能」に関するものであった.しかし,最近では骨格筋が全身の代謝に積極的に関与する「代謝調節の器官」として認識されるようになってきた.最も有名なのは,骨格筋が全身の糖代謝に重要な役割を果たしている例である.運動がⅡ型糖尿病の予防や改善に効果があり,全身の糖代謝に関与していることは,複数の疫学調査や動物・ヒトを用いた実験により以前から知られていたが,運動による糖代謝改善のメカニズムについては,長年の間,明らかにされていなかった.それが明らかにされたのは1990年代にadenosin 5′-monophosphate-activated protein kinase(AMPK)が,細胞内エネルギーセンサーとして働き,その活性化が筋への糖取り込み促進の鍵となることが発見されたことによる2).運動(=骨格筋の収縮)により骨格筋細胞内エネルギーが低下すると筋細胞内のAMPKが活性化され,糖取り込みを促進する経路が活性化されることで骨格筋への糖取り込みが増加し,血糖値が低下する3).運動から血糖値低下に至る一連のメカニズムが明らかにされたことで,骨格筋が全身の糖代謝に関与する重要な代謝器官であるとの理解が深まった.また,運動による糖取り込みの経路は,インスリンによる経路とは異なっており,インスリン抵抗性の症状を有するⅡ型糖尿病患者であっても,運動は糖取り込みを促進させる.そのため,Ⅱ型糖尿病予備軍や糖尿病患者に,運動によって糖尿病を予防・改善しようとする「運動療法」の分野でも骨格筋が注目されている.

 骨格筋の適切な量の維持が寿命と関連することも報告されている.デンマーク人を対象とした研究では,大腿の直径が大きいほど(大腿の太さ=筋肉量と考える),死亡に対するリスクが減少することが明らかにされている4).また,悪性腫瘍が進行すると筋が萎縮してしまう悪液質の症状を呈するが,実験的に腫瘍を移植したマウスに筋萎縮を抑制する薬剤を投与し続けると腫瘍は成長していくにもかかわらず,薬剤を投与しないマウスに比べ筋量が維持され寿命が有意に延長する5).これらの結果は,筋量の維持が寿命と何らかの関係があることを示している.最近になって,これら筋量の維持による健康効果が,骨格筋から分泌される生理活性因子によりもたらされているのではないかという研究が行われるようになってきた.骨格筋から分泌される生理活性因子は総称してマイオカイン(myokine;ミオカインと記載されているものもあるが,本稿ではマイオカインとする)と呼ばれている.マイオカインは,「骨格筋に発現し,分泌され,作用する蛋白質性のもの」として定義されているが6),最近では,アミノ酸の代謝産物などの低分子量のものもマイオカインとして作用するとの報告もあることから7),蛋白質性分子に限定されるものではないと思われる.これらのマイオカインは,さまざまな臓器とコミュニケーションをとりながら,生体の調節を行っていると考えられているが(図1),マイオカインの研究の歴史はまだ浅く,その全貌はいまだ明らかではない.本稿では,これまでに明らかになっているマイオカインの機能について概説する.

臨床実習サブノート 歩行のみかた・3

変形性股関節症 永冨 孝幸
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はじめに

 変形性股関節症は関節軟骨の変性・摩耗により関節の破壊が生じ,反応性の骨増殖(骨化・骨棘など)を特徴とする疾患で,原疾患が明らかでない一次性股関節症と何らかの基礎疾患に続発して起こる二次性股関節症の2つに分類されます.本邦では先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全を基礎疾患とする二次性股関節症が全体の約80%を占めていると報告されています1)

 変形性股関節症患者の多くは長期罹患を強いられており,疼痛や歩行困難などを主訴に病院を受診します.理学療法にて変形した骨形態の改善を図ることは困難ですが,除痛,移動能力改善・歩行能力改善を目標とした理学療法が実施されます.また,保存療法に抵抗する場合には人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)を中心とした手術療法が選択され,術後に理学療法を実施していきます.

 いずれにおいても変形性股関節症患者は長期罹患のため代償的な歩行動作を学習していることが多く,患者の本質的な問題点を評価・把握し,理学療法を展開していくためには歩行分析が重要です.本稿では変形性股関節症患者(保存・手術)の歩行分析とその後の評価のポイントについて述べます.

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次号予告

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 2016年に札幌で開催された第50回日本作業療法士学会の会場に到着し,真っ先に書籍コーナーで本書を買い求めた.探すつもりであったがその必要はなく,一番目立つところに山積みにされていた.書籍展示の担当者に聞いたところ,「本学会での書籍販売としては一番の売れ行きです」とにこやかに紹介していたのが印象的であった.

 本書に惹かれた理由は,副題の「作業療法士のための自分づくり・仲間づくり・組織づくり」という文言に心が動いたからである.

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 このたび,医学書院から『生きている しくみがわかる 生理学』が上梓されました.著者は,医学生理学界の重鎮である信州大学名誉教授(特任教授)の大橋俊夫氏と,新進気鋭の生理学者で東北医科薬科大学教授の河合佳子氏です.大橋俊夫名誉教授は循環生理学の泰斗で,同じ医学書院から出版されている大書『標準生理学』(第8版,2014年)の編者でもあります.

 本書のタイトルは,生理学者からすれば同語反復に思えますが,著者の意図はまさにそこにあることが,一読してわかります.著者の長年にわたる生理学教育の経験から,学生さんの多くは,体系的な知識が網羅された生理学の教科書を読みこなして,「生きているしくみ」を理解することが次第に難しくなってきているとの思いがあるのではないでしょうか.ましてやその学生さんらが将来医師や医療従事者となったとき,果たして患者さんに対して疾患の成り立ちや症状の「しくみ」などを適切に説明できるのだろうかという老婆心が,本書執筆の動機の一つであると思います.

文献抄録

編集後記 吉尾 雅春
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 連合学会として一区切りの第52回日本理学療法学術大会が5月12〜14日の間,千葉県の幕張メッセ等で開かれました.「理学療法士の学術活動推進」という全体テーマで,さらに各分科学会が独自のテーマを掲げて進められました.例えば日本運動器理学療法学会では「エビデンス(EBM)構築の臨床的意義」,日本神経理学療法学会では「神経理学療法領域における理学療法士の責任」として開催されました.この道に通じる専門家であると公言している理学療法士は責任を全うしているか,その向上を図るために精力的な学術活動を,真摯な臨床活動を行っているか,自らに問いかけるよい機会になったのではないかと思います.日本における理学療法士の誕生以来,その資質の向上を願ってともに歴史を重ねてきた本誌にとっても感慨深い学術大会になりました.来年度より各分科学会による学術大会が各地で開催されますが,明日からの理学療法士の指針になるよう展開されることを期待しています.

 さて,今月号の特集は「理学療法士のはたらき方」というテーマで企画しました.医療を取り巻く社会は時代とともにさま変わりしてきました.超情報化社会になって便利になった反面,個人情報の管理など危険と隣り合わせで日常生活を行わなければならない時代になっています.人々の価値観や生き方も変化し,また理学療法士のプロフェッションとしての受け止め方も時代の流れとともに変わってきているようにみえます.そこで,歴史的にプロフェッションの代表とされる弁護士の髙澤文俊氏にプロフェッションとは何か,新時代のなかでプロフェッションとしてどうあるべきか解説していただきました.理学療法士はプロフェッションとしての資質の向上を期し,組織の一員としてその成長を果たしていく責任があります.その組織の環境も価値観もまた多様です.また,そのような社会のなかで理学療法士自身の自己実現に向けて個々の多様性に合わせた生活の充実を図ることも必要です.女性理学療法士も多くなり,さまざまな課題がそこには存在します.これらの課題について永冨史子氏,大垣昌之氏,岩﨑裕子氏に論じていただきました.張本浩平氏,松葉好子氏,渡邊亜紀氏と交わした座談会と合わせてご覧ください.一概に語れることではありませんが,本特集をきっかけに理学療法士のはたらき方について考えていただければ幸いです.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
51巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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