日本がん看護学会誌 31巻1号 (2017年12月)

  • 文献概要を表示

Ⅰ.緒言

 がん治療の1つである化学療法は,生存期間や寛解期間の延長に寄与してきた.その結果,副作用や生活の質(quality of life,以下QOL)への影響を評価することが重要となってきている1).よって,医療者は化学療法の効果を最大限に引き出し,副作用症状を最小限に抑えるマネジメントが必要とされる.しかし,タキサン系抗がん薬,ビンカアルカロイド製剤,白金製剤などの神経毒性のある薬剤で治療を受けている患者にみられる化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy,以下CIPN)は,発症すると患者のQOLを低下させ,マネジメントが困難であると指摘されている2)

 CIPNの発症率は,化学療法のレジメン,用量,併存疾患によって異なる.CIPNの予防や軽減に対するエビデンスの確立された治療法はなく,抗がん薬の減量や中止によりCIPNの症状の進行を抑えている現状がある2)

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,外部照射による放射線療法を受けるがん患者に対するがん放射線療法看護の質評価指標を開発することである.

 文献検討に基づき,がん放射線療法看護の質評価指標原案を作成し,専門家パネルによる質的な内容妥当性の検討から原案を修正した.さらに,全国のがん放射線療法看護認定看護師128名に項目の関連性と重要性に関する質問紙調査を実施し,Item-level Content Validity Index(以下,I-CVI),Scale's Content Validity Index(以下,S-CVI/Ave)から量的に内容的妥当性を検討した.

 その結果,外部照射におけるがん放射線療法看護の質評価指標は【治療選択に関する意思決定支援】【安全・安楽な治療の提供】【セルフケアを高める支援】【がんと共に自分らしく生きる支援】の4の構成要素,15の上位項目,62項目で構成された.すべての項目が採用基準である0.78以上のI-CVIをもち,上位項目,構成要素,質評価指標全体のいずれも0.90以上のS-CVI/Aveを確保した.十分な内容的妥当性を備えたがん放射線療法看護の質評価指標を開発した.

 質評価指標は,適切な目的に向け意図的にケアを実践しているかを自己評価でき,問題を改善するための適切な目標設定につながる.さらに,看護師の育成に向けた教育的ツールとして活用することで,教育体制の整備や具体的な教育支援の実現が期待される.

  • 文献概要を表示

要旨

 がん薬物療法において副作用の患者報告アウトカムを得る評価基準の開発を最終目標とし,本研究は,副作用全般の評価基準の開発に向けて,最初の取り組みとして汎用性のある副作用13項目について医療者評価と患者評価を得た.そして,臨床における有用性と,副作用項目の追加・拡大について検討した.

 第1段階は,文献検討などから原案を作成し,がん薬物療法に関わるスペシャリストら(1回目86人,2回目224人)の意見を基に修正・洗練を行い,副作用評価基準(案)を作成した.第2段階は,がん薬物療法を受ける患者に,この副作用評価基準(案)を用いて副作用を自己評価してもらい,患者評価を基に修正・洗練した.第3段階は,再度,がん薬物療法に関わるスペシャリストら40人に表現やGrade分類の適切性の確認を依頼し,コンセンサスを得てGrade 0〜3の4段階評価を得る13項目の副作用評価基準の完成とした.

 患者評価は,20人(年齢中央値65歳)を対象にインタビュー調査から得た.自己評価した感想から,【副作用の振り返り・予測】【体調管理】【医療者とのコミュニケーション】【記録の負担】の4カテゴリーを抽出した.

 副作用評価基準の開発は,患者の体調管理や医療者とのコミュニケーションの促進,医療者の副作用の効率的な把握や細やかな支持療法の介入に有用である.副作用項目の拡大に向けて,患者評価を積極的に受ける項目と難しい項目の種別,それに合った評価の工夫を見出せた.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究は,子宮頸部前がん病変と診断された女性の受診経過における体験を明らかにし,子宮頸部前がん病変と診断された女性の継続した受診を支える看護支援を検討することを目的とした.高度異形成または子宮頸がんの最終診断がついた女性10名を対象に,参加観察,面接調査,記録調査よりデータ収集を行った.得られたデータを“前がん病変の診断から手術適応の診断”“手術適応の診断から最終診断”の2つの時期に分類し,時期ごとに質的分析を行った.

 その結果,子宮頸部前がん病変と診断された女性の受診経過における体験は,【前がん病変という曖昧な状態に戸惑う】【子宮頸がんへの進行を阻止するための手段を講じる】【見通しを立て安心感を得るために情報を求める】【安寧を脅かす情報に動揺する】【他者との関係に疑念を抱き孤立する】【励みとなる他者の存在が支えとなる】【最終診断の結果を受け止める】という,7のコアカテゴリーに集約された.“前がん病変の診断から手術適応の診断”の時期は前がん病変の事実を受容していくことが,“手術適応の診断から最終診断”の時期は治療を終え安心感を得る一方で,新たな脅威に立ち向かうことが示された.

 子宮頸部前がん病変と診断された女性の継続した受診を支える看護支援は,前がん病変の診断やウイルス感染の事実と向き合い,受け入れられるようにすること,妊孕性や術後の性生活について夫やパートナーと話し合い,生活を再構築できるように促すことが必要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,化学放射線療法を受けているがん患者のレジリエンスを明らかにすることである.対象は入院して化学放射線療法を受けており,治療に前向きな姿勢で臨んでいる研究参加の同意が得られたがん患者6名である.データ収集は,記録調査法と半構造化面接法を用いて行い,得られたデータを質的内容分析した.

 その結果,化学放射線療法を受けているがん患者のレジリエンスは,【化学放射線療法の継続に向けて動機づける】【患者としての務めを果たす】【苦痛を和らげる方法を獲得する】【化学放射線療法とその副作用を受け入れる】【自分を守る】【患者仲間に助けられる】の6カテゴリーに分類された.これらは,治療の完遂という目標に向かって動機づけや役割意識で自分を奮起させたり,副作用症状に伴う苦痛に対処する積極的な力と,負担に感じることを受け流したり,他者から助けてもらうという受け身な姿勢による力を組みあわせ限られた期間を乗り切る力であった.

 これらのことから,化学放射線療法を受けているがん患者への看護として,限られた期間を治療の完遂という目標に向かって治療意欲を高めたり,苦痛への対処方法やサポート資源の獲得を促す援助が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,終末期がん患者を抱える家族員の予期悲嘆へのケアを実践している一般病棟で勤務する看護師の認識を明らかにすることである.

 一般病棟に勤務する看護師12名に半構成的面接を行い,語られた内容を質的帰納的に分析した.その結果,一般病棟で勤務する看護師は,【後悔のない看取りをサポートすること】を重視し,【予期悲嘆へのケアの基盤となる人間関係の大切さ】【予期悲嘆に伴う苦痛・苦悩を抱える家族員の力を高めるケアの大切さ】を認識していた.一方で,【予期悲嘆へのケアの困難さ】【看取り後に残る看護師自身の後悔】を認識しており,コミュニケーション能力などの看護師個人の資質向上だけでなく,予期悲嘆へのケアを組織的に提供する体制づくりや,自らのケアを客観視する力を養っていく必要性が示唆された.また,一般病棟で勤務する看護師が認識していた【看取り経験から得られた看護師としての成長】を促進するために,生と死について考えたり,終末期がん患者とその家族員をケアした体験を意味づけたりできる機会を得ることを支援していく必要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,初発乳がん患者が告知を受けてから小学生の子どもに罹患に伴う情報を伝えることを決断するまでのプロセスを可視化し,子どもに伝える時の看護支援の在り方を検討することである.小学生の子どもを持つ初発乳がん患者14名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的帰納的分析を行った.伝える決断のプロセスは,がん患者ががん診断による衝撃を受けながらも,子どもの唯一無二の母親であるという意識のもと,母親役割を遂行するために子どもに罹患に伴う情報を伝えることに至る体験であり,母親役割の強化・停滞要因が影響していた.子育ての経験を活かした,これまで通りのコミュニケーションスタイルをとることで,子どもに情報を伝えることを可能にしていた.患者が母親役割を果たす強化要因を早期に把握し,強化要因を強化する支援が必要である.また,母親の存在意義を認め,子どもが持つがんのイメージを理解し,自信をもって子どもに罹患に伴う情報を伝えるための看護システム構築の必要が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,子育て中にがんで配偶者を亡くした母親が死別後に子どもと生きていく生活の中での体験を明らかにすることである.対象者4名に,半構造的面接法によりデータ収集を行い,質的記述的研究法に基づき分析を行った.結果は6つのカテゴリーに分類された.子育て中にがんで配偶者を亡くした母親の体験は,【1人で子育てをする孤独感】【子どもの前で悲しむ姿を見せられない】【子どもとの関係に戸惑う】【子どもがいることで助けられる】【周りの人に支えられる】【思い出と共に子どもと前向きに生きる】の6つであった.母親は1人で子育てをする孤独感の中で,死別体験をした子どもとの接し方への戸惑いを感じていた.母親は,「子どもがいたら普通に過ごしていかなければいけない」と,自らの悲しみを表出できず,子どもと父親の死について話すことはできなかった.また,子どもに病状をはっきりと伝えないことは,死別後の悲嘆反応に影響するため,子どもも親の看取りに参加でき,納得できるお別れができるように看護師が配慮することが必要である.父親を亡くした子どもと,子育て中に配偶者を亡くした母親という2つの悲嘆を親子で乗り越えることへの支援の必要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 研究目的は,外来通院する造血細胞移植後早期の患者のライフコントロールはどのようなものなのかを明らかにし,移植後に外来通院をする患者のライフコントロールを支える看護の示唆を得ることである.

 研究デザインは,現象学を基盤とする質的記述的研究であり,データ収集は18名の参加者に半構成的面接法を用いて行った.分析はGiorgiの記述的現象学的方法を参考に行った.

 分析の結果,3の大テーマ,7の中テーマ,20のテーマを見出した.外来通院する移植後早期の患者のライフコントロールは,「患者が不確実な状況の中で生存するために強い危機感をもち,【これからの生活に目安をつけ(る)】て生活する.そして,周囲の人の支援なしで生きることが困難である中,今の生活を営むために【他者との隔たりの中で生活する】.さらに,再発や厳しい予後を意識しないように【生活していくために気持ちの均衡を保つ】ことである」と理解できた.

 ライフコントロールは,移植片対宿主病(GVHD),再発などによる不確かな状況を理解したうえで,これからの生活がどうなるのかを患者が予測し,自らを律していたことが特徴的であった.看護師は患者の行為をライフコントロールの視点で捉え関わることで,患者に具体的な行為のイメージと,これからの生活の目安を促すことができると考える.また,患者が自らを律することで無理が生じていないか確認し,患者を支援する必要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:がん患者の抑うつ状態を早期発見するためのアセスメントツールを開発する.

研究方法:研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.アセスメントツール(以下,AT)28項目は文献から選定し,DSM-Ⅳ-TR大うつ病エピソードとの適合を検討した.内容妥当性を,がん看護または精神看護専門看護師5名を対象にした修正デルファイ法で確認した.パイロットスタディ(以下,PS)で評定者間一致率を,本調査で項目選定,構成概念妥当性,基準関連妥当性および内的整合性を確認した.がん治療目的で入院している20歳以上の患者に対し,看護師は日勤帯に7日間,ATを用いて評価した.基準関連妥当性の確認のために患者にはBDI-Ⅱの記載を依頼した.

結果:修正デルファイ法の結果,ATは24項目となり,4段階評価に1〜4点の得点を付した.PSで患者27名を15名の看護師がATを用いて評価し,評定者間一致率は93〜100%であった.本調査では377名の患者を79名の看護師がATを用いて評価した.項目選定分析で21項目となり,検証的因子分析による適合度指標はGFI=0.768,α係数は0.932であった.BDI-Ⅱ重症度分類別のAT合計得点に有意な差を認め(p<0.05),基準関連妥当性を確認した.

考察:開発したATの内容妥当性,評定者間信頼性,構成概念妥当性,信頼性および基準関連妥当性が確認できたが,重症度を判別する精度が課題となった.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:本研究の目的は,薬物療法を受ける造血器腫瘍患者の口腔トラブルの実態と,患者が症状をどのようにマネジメントしている明らかにすることである.

方法:対象は,造血器腫瘍により薬物治療を受けている患者であった.方法は,症状マネジメントモデルを概念枠組みとした半構成的面接を行い,口腔トラブルの症状体験やマネジメントを収集した.また,口腔内の状態,QOL,自己効力感,セルフケア能力の評価を行った.薬物療法1コースの1週目から4週目までの変化を分析した.

結果:対象者14名全員がなんらかの口腔トラブルを体験し,そのうち11名が口腔内乾燥や唾液の減少,5名が口腔粘膜炎を認めた.多くの対象者が一時的に口腔内の状態の悪化がみられたが,改善がみられなかった対象者は14名中2名と少数であった.遷延する高度の血球減少や身体状況の悪化,セルフケア能力が低い対象者にOAG(Oral Assessment Guide)スコアの悪化がみられ,医療者の介入の必要性が高かった.

 対象者が取り組んでいる口腔トラブルへの対処方法は,過去の口腔トラブルの体験から獲得した方略や,口腔ケアの習慣が強く影響しており,口腔内に違和感が現れたら含嗽を追加するなど,血球や身体の変化に応じた適切な対処を実践していた.しかし,QOLは全体的に低く,一部の対象者に自己効力感の低下がみられ,取り組んでいる効果が実感できていないことが分かった.

  • 文献概要を表示

要旨

 本研究の目的は,がん患者とその子どもを支援するプログラムの中で,患者同士の対話をもったならば,どのような対話の特徴があるのかを明らかにすることである.親子参加型のがん患者支援プログラムに参加した24名の母親同士の対話内容を研究データとし,質的帰納的分析を行った.分析の結果,対話の中で母親は,【がん・治療に伴う不安の表出と共有】【母親としての悩みの共有】【他者のがん理解に関する情報共有】【がん体験をプラスへ転換する気持ちの共有】を行っていた.子どもをもつがん患者同士が集まることで,治療や将来についての身体的な悩みのみならず,母親役割遂行上の悩み,子ども・家族や地域の人たちのがん疾患への理解の困難さ,同病者ならではの容姿に関する忌憚のない気持ちを表出し共有していた.子どもをもつという共通の環境にあるがん患者同士が語り合う機会をもったことで,母親としての悩みを互いに共有し,情緒的・情報的サポートの場として活かされていた.

  • 文献概要を表示

要旨

目的:本研究は,上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)による皮膚障害を抱える非小細胞肺がん患者が直面している日常生活への影響を明らかにすることである.

方法:ゲフィチニブまたはエルロチニブを使用し,外来通院している非小細胞肺がん患者9名を対象とした.半構成的面接を実施して得たデータは,Berelsonによる内容分析を参考にした舟島の手法を用いて質的帰納的に分析した.

結果:皮膚障害による日常生活への影響は7つのコアカテゴリに分類された.参加者は,【疼痛や掻痒を伴う苦痛】と【症状に対する不安や外見上の苦痛】を抱え,治療を進めていく過程で【症状出現による日常生活の不便】や【対処後も続く苦痛】があった.また,【皮膚障害悪化の不安】を抱えることで【症状をコントロールするための行動】を実践していたが,【皮膚障害に対する必要な支援を求める】内容として症状に関する情報や家族の支援も必要としていた.

結論:皮膚障害を抱えることで身体的苦痛を抱え,社会生活にも影響を及ぼしていた.セルフケアの実践が症状の改善に繋がらずスキンケアを中止していた参加者がいた一方,皮膚障害の見通しをもつことでケアを継続できていた参加者もいた.看護者は,治療導入時から皮膚障害の特徴を患者と共有することでセルフケアを継続できるように思考の転換を図り,治療開始後も皮膚状態のアセスメントや日常生活の指導を継続していく必要性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨

 外来化学療法看護は,がん治療の外来への移行に伴い期待が高まる一方,生活上の問題に踏みこんだ看護支援の不足が指摘されている.そこで本研究は,外来化学療法を受けるがん患者が生活の中で大切にしていることを支える看護プロセスを明らかにし,看護実践の示唆を得ることを目的とした.

 研究参加者は,臨床経験5年以上,かつ外来化学療法看護経験1年以上の看護師とした.半構成的面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリーに基づいて分析を行った.研究参加者は14名であり,外来化学療法看護経験は平均3.5±1.7年であった.分析の結果,【その人らしくあるための生活を整える】をコアカテゴリとする看護プロセスが見出された.外来化学療法室看護師は,【生活の様子を感じとる】ことに始まり,患者の生活の様子を踏まえて【その人らしくあるための生活を整える】支援をする.さらに状況に応じて,その時々の患者の【揺らぐ思いにつきあう】関わりや,医療従事者間の【支援をつなぐ】役割を果たす.そして,自らの【看護を振り返る】.以上のプロセスは患者の病状や思いに添って変化する.

 外来化学療法を受けるがん患者が生活の中で大切にしていることを看護師が支えるためには,患者の生活と化学療法の影響をあわせてその人の生活全体として捉えた看護支援が重要であることが示唆された.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 日本における肺がん死亡率および罹患率は,喫煙者世代の高齢化に伴い,ますます増加傾向にあり,がん死亡原因の男性第1位,女性2位を占めている1).早期発見が難しいことから,発見時にはすでに進行している場合が多く,患者やその家族への精神的負担が大きい.

 進行肺がんの治療の中心は,化学療法となる.近年,肺がん化学療法は,遺伝子変異の有無による治療選択,高齢者への抗がん剤レジメンの適応など飛躍的に発展し,医療者・患者ともに新たな治療のパラダイムに直面している.治療の場も外来や短期入院に移行しつつあり,肺がんの治癒は難しいという厳然とした事実はありながらも,長期に化学療法を継続しながら日常生活を営む肺がん患者が増加することが予測される.

 化学療法を継続していくためには,不確実な長い治療期間の中,副作用と闘わなければならず,副作用や日常生活におけるセルフケアが重要である.進行がんの場合,化学療法による効果判定を繰り返しながら治療を継続するため,患者は先の見えない闘病過程において,症状の変化,抗がん剤の変更や中断,治療効果を知る怖さ,身近な患者仲間の死,経済的問題など,日々の出来事から生じるさまざまな苦痛を抱えている2).特に,2次治療以降の化学療法を受ける患者は,新たな薬剤の副作用や原発病巣・転移巣による症状の出現および増悪だけでなく,治療が無効というバッドニュースを体験し,身体的・精神的にも消耗する.したがって,進行がんで化学療法を繰り返す患者は,QOLを維持し,治療を継続していくことができるように,繰り返し治療を受ける心身への影響に配慮しながら,疾患・治療に伴う療養生活上の問題に対して主体的に取り組んでいく力が必要となる.

 化学療法を受けるがん患者の主体的な取り組みに関連した先行研究は,症状マネジメント3)や対処行動4)〜7)の視点から明らかにされている.初回治療を受ける肺がん患者を対象とした研究4)では,対処行動として問題中心的コーピングと情動中心的コーピングを組み合わせながら,治療に取り組んでいることが報告されており,副作用対策と家族を含めた援助の必要性が示唆されている.

 しかし,2次治療以降の化学療法を継続する肺がん患者を対象とした研究は蓄積されていない.近年における肺がん治療の進歩を考慮すると,2次治療以降の化学療法を受ける進行肺がん患者に焦点を当て,療養生活にお ける患者の主体的な行動や意思を理解し,化学療法を継続している進行肺がん患者の療養支援を検討することが必要である.そこで本研究は,化学療法を継続している進行肺がん患者の療養生活における主体的取り組みを明らかにし,看護支援を検討することを目的とする.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 人口の高齢化により,日本や欧米における高齢がん患者は増加の一途をたどっており,2030年にはすべてのがんの70%が65歳以上の年代に発生することが予想されている1).これまで,高齢がん患者に対する積極的な治療,特に化学療法は,老化による腎・肝機能などの生理機能の低下や,有害事象の生活への影響などを考慮し,積極的には行われないことが多かった.しかし昨今では,治療レジメンや支持療法の進歩によって,高齢がん患者に対しても化学療法による生存期間の維持・延長が期待できるようになりつつある.高齢患者を対象にした治療の実績が不足していることから,治療の有効性に関する情報が欠如し不利益が生じているとされ,高齢という理由だけで治療の対象から除外すべきではないとして,米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)では,2005年に高齢者がん治療のガイドラインを作成して現在もアップデートを続けており2),高齢がん患者が化学療法を受ける例は今後も増え続けると考えられる.高齢がん患者にとって治療における重要な目標のひとつは,QOLの維持または回復3)であり,化学療法と生活のバランスをとりながら,QOLを保つための看護支援が必要とされる.

 本稿では,化学療法を受ける高齢がん患者のQOLを保つ支援を検討するため,化学療法を受ける高齢がん患者のQOLの実態や,QOLに関連する要因について明らかにすることを目的とした文献レビューを行った.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.緒言

 終末期におけるがん患者は,生命予後が数週間となった終末期中期の頃に身体的苦痛が増強し,日常生活行動に障がいが現れるため,日常生活で多くの援助を必要とする.このように,身体症状の悪化は,希望の阻害要因となることが示唆されている1)

 希望は,患者が精神的な圧迫や困難な状況を処理する際に,前進する強さと勇気を与える2).病人が病気や苦難の圧迫に立ち向かうために,希望を体験するよう病人を援助することは看護師の役割である3).希望に関する先行研究として,希望の内容4)5),希望の促進・阻害要因1),ならびに希望をアセスメントする客観的指標6)について明らかにされてきた.一方で,看護介入は,希望を促進するための介入プログラム7)について調査されているものの,長期間に渡り,グループセッションを行うプログラムのため,身体機能が低下する終末期中期のがん患者を対象とする場合は,その実践が困難と予測される.加えて,終末期における医療の現状をめぐっては,Miyashitaら8)の調査より,看護師の知識・技術の不足が質の良い看護を提供するうえで障がいとなる報告が認められた.以上の先行調査より,希望を支える看護を明らかにすることは,新たな知識と技術に関する知見となることが期待される.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 がん医療の進歩による集学的治療で,がん患者の生存率,治癒率が向上し,治療後の人生におけるQOLの維持が重要視されている.他方,生殖医療技術の進歩から,受精卵凍結,卵子凍結,卵巣組織凍結などが選択肢として普及しつつある.従来,検討されることのなかった小児がんの子ども達や,生殖期にがんに罹患した若い成人に,将来の妊孕性への配慮の必要性や女性が妊娠・出産を望むことができる手段が出現している.しかし,がん・生殖医療の歴史はまだ浅く,2006年頃から米国では関連学会が,がん患者の生殖機能の保護に関するガイドラインを作成し,日本でも徐々に学会の会告や指針が明文化され,専門外来による対応が始まった.2015年には専門学会が設立された1)2)

 オンコロジーナースは患者が,がん医療と生殖医療ともに混乱なくリプロダクティブヘルスの選択ができるように案内役となるナビゲーションサービスの役割を果たす必要があるといわれている3).ところが,がん・生殖医療に関する教育は,がん看護の基礎教育,専門教育,継続教育,どの看護教育領域においても不足している.Goossensら4)は,医師に比べて看護師の多くは患者と妊孕性温存療法について,ルーチンに話していないと指摘する.69%のがん治療医が患者と話しているのに対し,看護師は14〜17%であった.患者との話を妨げる因子は,妊孕性温存の手順やガイドラインに関する知識や訓練がない,優先度が低いとする態度,話すうえでの居心地の悪さ,話す役割はないという意識,患者の関心がないという印象,がん治療を遅らせることへの否定的態度などであった.Kingら5)によれば,乳がん患者の妊孕性温存療法に関する知識は医療チームメンバー間で差があり,腫瘍専門医に比べ,外科医や専門看護師(clinical nurse specialist)は,知識が少なかった.大月らの調査6)では,65名のがん看護に携わる看護師のうち,妊孕性温存療法の相談を受けた者は16.6%であり,また65名全員が妊孕性温存療法を知ることで患者・家族の看護支援に活かせると回答した.田中らの調査7)では,がん医療領域の医師8名,看護師94名の全員が妊孕性温存療法について患者説明の必要性を認めたが,医師7名は患者の背景(年齢,性別,婚姻の有無など)で説明するかどうか選別していた.全体に知識不足を感じており,知識があれば説明できると答えた.このように,知識や意識の不足が指摘されているが,ナースの知識や意識,経験への影響要因,具体的な学習ニーズに関する情報が十分に得られているとはいえない.本研究の意義は,今後,オンコロジーナースに対する妊孕性温存療法の教育プログラムを構築し,運用するために必要で役立つ知見が得られることにある.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.緒言

 乳がん患者は年々増加し,女性の臓器別がん罹患率では第1位となっている.乳がんの罹患率上昇の背景には,女性のライフスタイルの欧米化が存在しているといわれ,初潮年齢の若年化,閉経年齢の高齢化,肥満による体内の高エストロゲン環境が,乳がんの発生を増加させていると推察されている.特に,閉経後の体重増加は,乳がんのリスクをあげるといわれ,河合1)の日本人を対象とした疫学的研究結果においても,BMI(body mass index)が高いほど閉経後乳がん罹患リスクが高くなる傾向を認めている.

 乳がん患者の肥満や体重増加は,欧米では問題となっており,生命予後に影響を及ぼす2)3)ばかりか,心血管疾患や代謝疾患のリスク4)5)となり,心理社会的問題を含めてQOLに影響を及ぼすことが指摘されている3)6).体重増加の要因として,過剰な食事摂取7)や活動量の低下8)などが挙げられているが,化学療法やホルモン療法に伴う関節や筋肉痛が体重コントロールの障害となることが報告されている9).また,皮下脂肪が体表のリンパ管を圧迫するため,肥満は患側上肢のリンパ浮腫の誘因・増悪因子である.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 近年,人口の高齢化,ライフスタイルの多様化に伴いがんの罹患数は年々上昇傾向にある.その中で婦人科がんの罹患数も増えており,特に子宮頸がんでは若年層の増加が目立つ1).この婦人科がんの術後後遺症のひとつであるリンパ浮腫は,一度発症すると完治は非常に困難であり,進行に伴いQOLに影響を与え,身体的,精神的な苦痛,さらには経済的な負担も生じる2)3).リンパ浮腫に対しては外科的治療,保存的治療などが施行されているが,確実に完治にいたる治療法は確立されていない.そのためリンパ浮腫は発症を予防する,あるいは早期発見,早期介入により重症化しないことが重要であり,長期に渡るセルフケアを必要とする.自発的なセルフケアの実践には知識が必要であり4),リンパ浮腫予防に向けて2008年に「リンパ浮腫指導管理料」が保険収載されたことで,術後患者が予防教育を受ける機会が増えたと予測される.リンパ浮腫予防の知識と活用は,リンパ浮腫発症者の方が未発症者に比べて低い5)ため,早期からの予防行動は有用であり,知識の定着を促す教育方法6),セルフケア支援プログラムの開発7)も示されている.このような背景において婦人科がん術後のリンパ浮腫予防のセルフケアに対する思いを明らかにした研究8)はあるが,実際に婦人科がん術後の患者がどのような情報,知識を得てリンパ浮腫予防のセルフケアを実施しているかについては十分に明らかにされていない.今後リンパ浮腫予防へのセルフケア実施に向けて適切な予防指導・教育を実践するには,まずリンパ節郭清術後の患者の実態を把握し,セルフケアの実施にはどのような要因が関連するかを明らかにする必要があると考える.

 以上から,本研究では婦人科がんリンパ節郭清術後患者のリンパ浮腫予防のセルフケア実施状況とそれに関連する要因を明らかにし,今後のリンパ浮腫発症予防への一助としたい.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 第31回日本がん看護学会学術集会における国際活動委員会セッションを2017年2月4日(土)に学術集会第4会場において開催した.「香港のがん医療における中国医学の活用の実際」と題しAsian Oncology Nursing Societyの理事長であるWinnie KW So博士をお招きし,ご講演いただいた.本セッションの趣旨は,漢方や鍼灸をはじめとする中国医学は日本人に馴染みの深い伝統医学の1つであり,症状緩和の効果を実感しながらも,がん医療や看護における実際のケアでの活用については迷うことも多いため,実際に香港で中国医学がどのように活用されているのかをご紹介いただき,わが国における中国医学の活用とその可能性について示唆を得ることであった.

 当日は運営・関係者を含めて約70名の来場者があり,So博士より,上記趣旨を踏まえて,中国医学のがん看護における活用に関して香港と日本の共通点を示したり,代替療法の効果に関する最近の学術論文を紹介しながら,Holisticアプローチの重要性,看護師の基礎教育から卒後継続教育の重要性をご教授いただいた.ここに,そのご講演の概要とセッション後アンケート結果を報告する.なお,ご講演は英語(逐次通訳)で行われたが,日本語のスライド資料を配布した.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.研究の背景と意義

 日本のがん罹患率は増加の一途をたどっており,2人に1人ががんになる時代となった.がん対策の充実を目指して2007年からがん対策基本法が施行され,「がんに関する研究の推進と研究成果の普及」「がん医療の均てん化の促進」「がん患者の意向の尊重」を基本理念1)とし,がん対策が総合的かつ計画的に推進されている.がん早期発見のためのがん検診の勧奨,画像診断や病理組織診断に基づく個別化された集学的治療,多種多様な臨床試験の実施,診断期からの緩和ケアの推奨,在宅緩和ケアの推進など,この10年でがん患者や家族を取り巻くがん医療はめまぐるしく変化し,複雑化している.

 また,がん医療の進歩に伴い早期がんの治癒率が高まり,がんサバイバーが増加しているが,生存率が上昇してもなお,がん患者や家族のがんによるストレスは計りしれない.がん患者は,再発・転移への不安,死への恐怖,治療の有害事象に伴う身体的苦痛,人間関係の悩み,日常生活の変化,経済的問題2)など多くの困難に直面している.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 2008年(平成20年)より,がん術後のリンパ浮腫予防指導料が入院時に算定されるようになり,2010年にはさらに外来でも再指導料が算定されるようになった.そのような背景を踏まえ,日本がん看護学会では,2008年から2016年まで,看護師のリンパ浮腫予防指導のための必要な技能を習得する研修を9回実施してきた.開催当初の2008〜2010年までは,8〜6日間の研修を行ったが,その後,内容を洗練し,2011年度からは3日間のプログラム構成とし,2016年度まで開催してきた.

 これまで,リンパ浮腫の予防に対する患者教育・指導に資する看護師研修プログラムの短期的な評価として単年度ごとに調査を行ってきたが,長期的にどのような教育効果があるかは明らかになっていない.また,本研修によって受講者が各施設でリンパ浮腫予防指導を実際にどのように実施しているかの追跡調査も行っていない.そのため,日本がん看護学会,以下(当学会)が提供する「リンパ浮腫の予防・指導研修」の今後の方向性を検討するためには,研修後の長期的な教育効果を含め,研修内容および方法について評価する必要がある.そこで本調査では,研修が3日間となった2011年度から2015年度までの過去5年間の「リンパ浮腫の予防に対する患者教育・指導に資する看護師研修」の受講者が,研修終了後に修得した内容を臨床実践の場でどのように活用しているかを明らかにする.本調査の目的は,プログラムの内容・方法などの評価だけではなく,研修や研修成果が実践にどのように波及しているのかを評価することである.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 2008年(平成20年)より,がん術後のリンパ浮腫予防指導料が入院時に算定されるようになり,2010年にはさらに外来でも再指導料が算定されるようになった.そのような背景を踏まえ,日本がん看護学会では,2008年から2016年まで,看護師のリンパ浮腫予防指導のための必要な技能を習得する研修を9回実施してきた.開催当初の2008〜2010年までは,8日〜6日間の研修を行なったが,その後内容を洗練し,2011年度からは3日間のプログラム構成とし,2016年度まで開催してきた.

 これまで,本研修プログラムの短期的な評価として単年度ごとに調査を行ってきたが,長期的にどのような教育効果があるかは明らかでなく,各施設でどのようにリンパ浮腫予防指導が行われているのかの実態も明らかでない.また,2016年度より診療報酬「リンパ浮腫複合的治療料」加算の新たな動きがあった.そこで,日本がん看護学会が提供するリンパ浮腫ケアに関する研修の今後の方向性を検討するために,各施設におけるリンパ浮腫予防指導およびリンパ浮腫複合的治療を含むリンパ浮腫ケアの実態を明らかにする必要があると考え,本調査に取り組んだ.

  • 文献概要を表示

Ⅰ.はじめに

 日本がん看護学会教育・研究活動委員会では,がん看護のエキスパートナースが実践につなげることのできる知識を獲得し,具体的なケア方法を学ぶ機会を提供することをねらいとして,2014(平成26)年度より「エキスパートナース育成事業」を開始した.この事業は,がん看護のエキスパートを対象としたレベルのプログラムであり,トピック的で困難性の高い話題を取り上げ,関連する分野のがん看護専門看護師と当委員会とが協働して,2カ年で1つのテーマに取り組み運営するものである.2014〜2015年度は,「遺伝性がん患者のケアをデザインする」というテーマに取り組んだ1).今回,2016〜2017年度は「がんと就労—その人らしく生きることを支える」をテーマに取り組み,評価を得たので報告する.

基本情報

09146423.31.1.jpg
日本がん看護学会誌
31巻1号 (2017年12月)
電子版ISSN:2189-7565 印刷版ISSN:0914-6423 日本がん看護学会

文献閲覧数ランキング(
11月5日~11月11日
)