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Ⅰ.はじめに
日本における肺がん死亡率および罹患率は,喫煙者世代の高齢化に伴い,ますます増加傾向にあり,がん死亡原因の男性第1位,女性2位を占めている1).早期発見が難しいことから,発見時にはすでに進行している場合が多く,患者やその家族への精神的負担が大きい.
進行肺がんの治療の中心は,化学療法となる.近年,肺がん化学療法は,遺伝子変異の有無による治療選択,高齢者への抗がん剤レジメンの適応など飛躍的に発展し,医療者・患者ともに新たな治療のパラダイムに直面している.治療の場も外来や短期入院に移行しつつあり,肺がんの治癒は難しいという厳然とした事実はありながらも,長期に化学療法を継続しながら日常生活を営む肺がん患者が増加することが予測される.
化学療法を継続していくためには,不確実な長い治療期間の中,副作用と闘わなければならず,副作用や日常生活におけるセルフケアが重要である.進行がんの場合,化学療法による効果判定を繰り返しながら治療を継続するため,患者は先の見えない闘病過程において,症状の変化,抗がん剤の変更や中断,治療効果を知る怖さ,身近な患者仲間の死,経済的問題など,日々の出来事から生じるさまざまな苦痛を抱えている2).特に,2次治療以降の化学療法を受ける患者は,新たな薬剤の副作用や原発病巣・転移巣による症状の出現および増悪だけでなく,治療が無効というバッドニュースを体験し,身体的・精神的にも消耗する.したがって,進行がんで化学療法を繰り返す患者は,QOLを維持し,治療を継続していくことができるように,繰り返し治療を受ける心身への影響に配慮しながら,疾患・治療に伴う療養生活上の問題に対して主体的に取り組んでいく力が必要となる.
化学療法を受けるがん患者の主体的な取り組みに関連した先行研究は,症状マネジメント3)や対処行動4)〜7)の視点から明らかにされている.初回治療を受ける肺がん患者を対象とした研究4)では,対処行動として問題中心的コーピングと情動中心的コーピングを組み合わせながら,治療に取り組んでいることが報告されており,副作用対策と家族を含めた援助の必要性が示唆されている.
しかし,2次治療以降の化学療法を継続する肺がん患者を対象とした研究は蓄積されていない.近年における肺がん治療の進歩を考慮すると,2次治療以降の化学療法を受ける進行肺がん患者に焦点を当て,療養生活にお ける患者の主体的な行動や意思を理解し,化学療法を継続している進行肺がん患者の療養支援を検討することが必要である.そこで本研究は,化学療法を継続している進行肺がん患者の療養生活における主体的取り組みを明らかにし,看護支援を検討することを目的とする.
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