日本がん看護学会誌 30巻3号 (2016年12月)

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要旨

 研究目的は,初めてがんと診断され手術を受けたがんサバイバーのゆらぎを明らかにすることである.初めてがんと診断され,胃を切除したサバイバー20名を対象に,半構成的面接法にて,がん診断以降の気持ちや体験について調査した.分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,以下のような結果を得た.

 がんサバイバーのゆらぎは【がん罹患と治療で心が打ち拉がれる】という強く激しい揺れの状態から始まるが,その状態に留まるのではなく【がん治癒や回復を目指して最良を尽くす】力,【がん罹患を受け止める心の準備をする】力,【がん治癒への希望を見出す】力を順次動員させ揺れを収束しようとする.しかし,ゆらぎが生じる前の過去の記憶により【がん罹患前の自己への羨望】を生じさせる.〈健康であった過去の自己を羨む〉は,強く激しい揺れに逆戻りする危うさがある反面,〈手術前を目指した回復への願い〉は,揺れを収めようとする力の動員を促進させる.このようにゆらぎは,後戻りや新たなゆらぎが生じるなどスパイラル的な変化の過程である.また,ゆらぎは【命の存在する価値ある時間の意識化】を生じさせ,今を生きることを鮮明にさせ【がん罹患と治療で心が打ち拉がれる】の後に順次動員させる【がん治癒や回復を目指して最良を尽くす】【がん罹患を受け止める心の準備をする】【がん治癒への希望を見出す】【がん罹患前の自己への羨望】を鮮明に浮かび上がらせる.

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要旨

 本研究の目的は,転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素を明らかにすることである.本研究では,納得とは「高齢がん患者が治療に対して,能動的に認知的かつ感情的に受容した状態」と定義する.研究方法は質的記述的研究デザインで、がんに対して治療を選択した現在治療過程にある65歳以上の転移のある高齢がん患者20名を対象に半構造化面接法を実施した.結果,転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素として,【自分を救おうとする強い意志】【生きるための治療であるとの確信】【治療の可能性への期待】【信じて任せられる最善の治療であるとの判断】【周りへ報いたいとの希求】【治療を含めて生ききる人生の受け容れ】の6つのカテゴリーが抽出された.

 これらの転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素の特徴として,1つは患者自身の価値が治療状況に反映していることが示唆された.2つ目として,自己の利害にとらわれずに周りの人達の気持ちを察し,それを自分の気持ちや意志として汲み取る特徴が推察できた.3つ目として,治療だけでなく,自分の人生に対するあり方や生き方も含めた今の状況に対する受け容れでもある特徴が示唆された.それは,病期が進んだ状況でのライフサイクル最終段階にある高齢者のもつ特徴が表れていた.また,これらの要素は転移のある高齢がん患者が生きてきた中で培われたものでもあり,その人の生き様や今の状況に患者がコミットできるように支援することも納得に導いていく看護となることが示唆された.

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要旨

 本研究の目的は,セカンドオピニオンを受けた女性乳がん患者の初期治療選択過程を明らかにし,看護実践への示唆を得ることである.セカンドオピニオンを受けて初期治療選択をした女性乳がん患者24名を対象とし,半構造化面接にてデータ収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した.その結果,患者の初期治療選択過程は,『疑念が拡がる』および『疑念が晴れる』をコアカテゴリーとする過程であった.【乳がんに命をもっていかれる】との危機感を抱いた患者は,【命と女性であることの価値を量る】【これまでの生活を維持できる治療法を模索する】〈氾濫した情報にのみこまれ収拾がつかない〉過程を経る一方,【この医師には命を託せない】【何も聞けず・わからず・解決できず】との過程を経る場合もあった.いずれの場合も【治療法選択の決め手が見つからない】ため〈他に頼る手段がない〉〈身近な人に勧められる〉ことで,セカンドオピニオンを求めた.セカンドオピニオンを受けた後【先の見通しが立ち腹をくくる】ことができ,【命と女性であることの価値を量る】【何も聞けず・わからず・解決できず】に戻る場合があるものの【医療者の力で混迷から脱却する】【合点のいく治療法を見つける】ことで治療法選択に至っていた.

 これらから,セカンドオピニオンを受ける前に看護師による患者への面談を通して,セカンドオピニオンを求めた理由や過程の把握と,それに応じた支援,特に日常生活支援者として【これまでの生活を維持できる治療法を模索する】過程を支援する必要性が示唆された.

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Ⅰ.はじめに

 20歳から39歳までの死因順位で,がんは自殺や不慮の事故に次ぎ2位もしくは3位を占め1),若い世代であってもがんは重大な病である.19歳から45歳までの初期,成熟成人期のがん患者は,がんによって生命が脅かされ,生きるために突然,誰かに依存しなければならず,家族を残して去ることへの無念や,なぜこの自分が生き残れないのかという怒りと絶望が交錯する2).若年性がん患者の終末期に経験する症状は,倦怠感,運動機能低下,疼痛があり,3つ以上の症状を50%以上が経験し,死への恐怖,孤独感,退行,うつ病などの心理社会的な問題は避けられない3).このように,人生の意味や目的の喪失に苦悩し,さまざまな症状を呈する終末期の若年性のがん患者が自分らしく生きることを支えるためには,気遣う,意思を尊重する,存在の価値を認める,自立を助ける,そばにいるなどの終末期がん患者が捉えるケアリングが必要だと考える4)

 先行研究では,若年がんサバイバーをケアする看護師は,自分にできる力を尽くし,特別視せず関わり,患者にとってちょうど良い距離を探り士気を高めて患者に向き合う構えがあることや5),希望の存在を捉えてその実現可能性を見極め,希望を支えることが明らかになっている6).しかし,若年のがん患者をケアする看護師の認識として患者が亡くなること自体に辛さを感じ7),若年患者の終末期ケアの経験が少なく,自信がもてないことが明らかになっている8).これらの先行研究では,若年性がん患者に対する看護師の認識や希望を支える看護ケアを明らかにしたものにとどまる.

 看護師のケアリングは,がん患者がたどる軌跡の中で,相互的信頼,エンパワーメントや癒しとなり,欠くことはできない9).また,知ること,共にいること,誰かのために行うこと,可能にする力をもたせること,信念を維持することという5つのカテゴリーもしくはプロセスからなり,互いに相いれないものではないといわれ10),相手が成長し自己実現することを助けることとしてのひとつの過程であり,専心がケア(caring)にとって本質的とされる11).しかし,終末期がん患者が捉えるケアリングは明らかにされているが4),若年性の終末期がん患者に対する看護師のケアリングの様相は明らかにされていない.

 そこで,本研究は,終末期の若年性がん患者に対する緩和ケア病棟看護師のケアリングの様相を明らかにすることを目的とした.本研究によって,人生の意味や目的の喪失に苦悩し,さまざまな症状を呈する終末期の若年性のがん患者が自分らしく生きることを支える看護実践に有用な示唆を得ることができる.

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Ⅰ.はじめに

 わが国におけるがんの罹患率は男女ともに増加の一途を辿り,現在では年間30万人以上ががんで亡くなり,がん罹患の可能性は男性の2人に1人,女性の3人に1人と推測されている1).しかしながら,近年,医療技術の進歩やがん対策政策の推進により5年生存率は増加し,がんを抱えながら生活する者に対して,日常生活が円滑に送れるための支援が喫緊の課題となっている.これまでがんに関する研究では,後遺症への対処への文献2)3),治療の援助に関する文献4)が多く,生活の質を維持し,社会生活を過ごすがん患者を心身ともにサポートする研究数は少ない.

 生活の質を維持するためには,身体面・精神面・社会面など,当事者が関与するあらゆる側面での支援が必要である一方で,抑うつはがん病期,がん種を問わず患者の15〜25%に発症するとの報告がある5)〜7).がん患者と抑うつに性差はないと考えられているが8),発生率および重症度の性別による違いは十分に検証されていない.しかし,婦人科がん術後患者においては年齢により女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下により精神面において不安という形で現れることもある.

 また,婦人科がんは,妊孕性の喪失や排泄機能に関わる問題など羞恥心により相談しにくい状況や,加えてセクシャリティなどきわめて個別的な課題があるために,支援への取り組みが十分でない現状にある.婦人科がん術後患者のQOLは,パートナーの有無,排泄障害の有無,経済問題,社会的役割変化,更年期症状,抑うつ,夫婦関係,ソーシャルサポートと影響していることが明らかとなり9),包括的な支援が示唆された.しかしながら,対象の多くは退院した者であり,外来に支援機能が委ねられるものの,十分な役割が発揮できない現状にあると推察される.

 今後,更なる検診率の向上に伴い,手術件数の増加,および術後患者は増えると推測され,術後の包括的な看護支援はよりいっそう重要になる.そのため,日本における婦人科がん術後患者の抱えている課題を詳細に把握することは有用であると考える.

 そこで,本研究では婦人科がん術後患者にどのような支援が必要かを検討するために,日本国内で発表された外来におけるフォローアップに関する文献検討を実施した.

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Ⅰ.研究背景

 膵臓がんは,喫煙・大量飲酒,糖尿病や家族性の因子がその発生に影響しているとされ,特有の症状に乏しく,他の臓器の背後に位置するなどの点から早期発見が困難で,難治性のがんである1).わが国では臓器別がん死亡数で全臓器中第4位であり,年間3万人ほどが亡くなっている2).現在,有効な治療法は少なく3),5年生存率は進行がんでは2.8%で,最新の化学療法によっても生存期間中央値はおよそ11カ月と予後もきわめて悪い4).そのため,膵臓がん患者および家族は不確かな予後の情報や治療上の困難に直面し,短期間に大きな精神的衝撃や身体的苦痛を体験するといわれており5),開発中で臨床試験(以下,治験)段階にある先進医療への期待は大きいと考える.

 現在,A大学で実施されている切除不能膵臓がんに対するがんペプチドワクチン療法(以下,がんワクチン療法)は,ワクチンと抗がん剤との併用により生存期間が抗がん剤単独療法より3.0カ月延長した6)という治験の結果が出ている.しかし,現時点では保険が適応されず,患者の経済的負担は大きい.また,外来で行われる治療であるために,交通費や宿泊などを患者自ら手配しなければならない.そのために,疾患に由来し生じる身体的な問題ばかりでなく,治療に付随する問題が生じていることが考えられるものの,自由診療で先進医療を受ける患者のニードや支援内容は明らかにされていない.

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Ⅰ.はじめに

 2015年度(平成27年度)から日本がん看護学会主催により,公益財団法人小林がん学術振興会から「がん看護専門看護師の継続教育に関する助成—がん看護専門看護師海外研修助成事業」の助成金を得て,がん看護専門看護師海外研修助成事業が実施され,今年度で2回目となる.この度,私たちは,この第2回がん看護専門看護師海外研修に,2016年9月10日から9月17日の1週間にわたり参加した.研修では,病院見学やワークショップ,シャドーイングを行い,帰国後も学びを深められるように,研修生で集まりディスカッションを重ねている.

 本稿では,「APNの実践と評価・CNSの役割機能,位置づけ」,および「サバイバーの力を引き出す多職種アプローチとプログラム」に焦点を当てて報告し,さらに今後の課題について考察した.

基本情報

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日本がん看護学会誌
30巻3号 (2016年12月)
電子版ISSN:2189-7565 印刷版ISSN:0914-6423 日本がん看護学会

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