耳鼻咽喉科・頭頸部外科 93巻2号 (2021年2月)

特集 新型コロナウイルス感染症—備え,守り,治す

《耳鼻咽喉科医に必要な基礎知識》

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POINT

●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は人獣共通感染症で,原因であるSARS-CoV-2は,おそらくコウモリからヒトに伝播された。

●SARS-CoV-2のスパイク蛋白質はfurinで活性化されることで補助受容体(NRP1)に結合できるようになり,このことがACE2受容体への結合効率を高める。

●SARS-CoV-2の主要な感染経路は飛沫感染であるが,空気感染や接触感染の可能性もゼロではない。

●SARS-CoV-2のウイルス学的特徴と感染様式を理解し,COVID-19対策に役立てる。

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POINT

●胸部画像所見は,両肺末梢側の浸潤影・すりガラス影が特徴的である。

●診断のゴールドスタンダードはPCR検査で新型コロナウイルスを検出することである。

●抗原検査は迅速かつ簡便であるが,感度が低く,ときに偽陽性がみられる。

●抗体検査は過去に感染したことを意味するものであり,現在の感染を意味するものではない。

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POINT

●COVID-19の病態はウイルスの活動と宿主の免疫反応に大別される。

●抗ウイルス薬,抗炎症薬といった治療方法はある程度型が定まりつつあるが,明確な治療効果を示す治療法は確立していない。

●ワクチン開発は急速な進歩を遂げており希望はあるが,過度な期待はするべきではない。

●重症化を防ぐことが今後の薬物療法の課題である。

《耳鼻咽喉科診療における対応,注意点—①外来》

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POINT

●COVID-19の診療において,上気道感染症の専門家である耳鼻咽喉科医がプライマリケアの場で果たすべき責務は大きい。

●感冒症状や嗅覚障害・味覚障害のある患者をトリアージし,適切な感染防御策を講じたうえで診察する。感染が強く疑われる患者や,重症化リスクがある患者の場合は,病原体検査の施行,あるいは近隣の「診療・検査医療機関」と連携する。

●耳鼻咽喉科診察室では,処置などにより咳やくしゃみが誘発される可能性があり,飛沫感染・接触感染に対する環境整備のほか,エアロゾルを介した感染への対策も必要である。

処置・検査 上羽 瑠美
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POINT

 耳鼻咽喉科診療ではさまざまな処置や検査を行うが,それぞれの感染対策を講じる際に重要なこととして,以下の3つの視点から考えることがポイントである。

●患者の新型コロナウイルス感染状況

●診療地域における新型コロナウイルス感染状況

●検査や処置がエアロゾルを発生させる手技(aerosol generating procedures)かどうか

小児の診療と学校健診 小森 学
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POINT

●小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者は上気道症状が比較的少なく,無症候性キャリアも多いとされる。

●小児特有の成長発達に伴った,適切な時期の適切な対応・処置・手術が求められる。

●成人同様にエアロゾル発生の有無に従って標準PPEとfull PPEを使い分けて処置を行う必要がある。

●インフルエンザを強く疑う場合においても,発熱患者では常にCOVID-19を疑う必要がある。

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POINT

●オンライン診療の歩みと現状について解説する。

●新型コロナウイルスの感染流行に伴い,オンライン診療制度の変更がなされた。

●耳鼻咽喉科でもオンライン診療が活用されつつあり,その限界にも留意しつつ創意工夫していく必要がある。

《耳鼻咽喉科診療における対応,注意点—②手術》

鼻科手術 近藤 健二
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POINT

●全身の手術のなかでも鼻科手術は特にウイルスに曝露されるリスクの高い手術である。

●日本耳鼻咽喉科学会の新型コロナウイルス感染症対応ガイドを参照し,自施設の感染地域区分と当該手術の手術区分を考慮して対応を決める。

●術前の検査でPCR陽性の場合は待機手術は行わない。緊急性の高い手術はfull PPE(個人防護具)で陰圧室を用いて行うことが推奨される。

●術前検査でPCR陰性であっても,標準的な防護を怠らない。

耳科手術 野口 佳裕 , 赤松 摩紀
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POINT

●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では,エアロゾル感染が生じうる。

●ドリルを用いる骨削開は,エアロゾルが発生する手技(aerosol generating procedures:APG)である。

●手術を「緊急性のある耳科手術」「APG耳科手術」に分類し,地域ごとに対応を検討する。

●飛沫,エアロゾルの飛散軽減のため,手術用顕微鏡の対物レンズと術野をドレープで覆う方法が報告されている。

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POINT

●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の気管切開は,生命に関わる感染症に対峙することや,不慣れな個人防護具装着のため,一般的な環境における気管切開とは異なる。

●手術時のエアロゾルの発生に対する感染防御対策が必要不可欠である。

●十分な感染防護策のもと,関係部署と綿密な連携およびシミュレーションを行うことにより安全で確実な手技となりうる。

頭頸部腫瘍手術 中島 寅彦
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POINT

●地域の新型コロナウイルス感染状況に応じた手術適応の検討を行う。感染が蔓延している地域においては,良性腫瘍,進行が緩徐な頭頸部がんなど待機できる疾患では,感染が収束するまで手術を延期する。

●放射線療法,化学療法など,代替となりうる治療法の適応も十分に検討して手術適応を決める。

●術前の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査結果,地域区分,手術区分に加え,各治療施設の体制も考慮し,十分な感染予防策をとる。

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はじめに

 腺様囊胞癌(adenoid cystic carcinoma:ACC)は,1856年にBillrothらにより初めて円柱腫(cylindroma)として報告された腺癌の特異的1亜型であり,頭頸部腫瘍の1〜2%を占める。耳下腺,顎下腺などの大唾液腺に加え,口腔,鼻副鼻腔,口蓋,喉頭などの小唾液腺で発生するものが60〜70%と報告されているが,そのうち下咽頭における発生はきわめて稀である1〜3)

 今回われわれは,下咽頭に発生したACCの1症例を経験したので,若干の考察を加えてここに報告する。

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はじめに

 過剰歯は小児歯科領域では比較的よく遭遇する歯の発生異常で,渡辺1)は1.48%,荻田ら2)は1.67%の発生率であるとしている。歯の萌出方向については,正常な萌出方向をとるものは順生,正常な萌出方向と逆の方向をとるものは逆生とされている。部位では上顎の正中である正中過剰歯が多いが,上顎小臼歯や下顎小臼歯,上顎洞内に存在するものもあり,鼻腔内の発生はきわめて稀である。上顎洞や鼻腔内に転位するのは逆生歯牙に相当し,耳鼻咽喉科の日常診療で遭遇することはほとんどない。

 今回,近医耳鼻咽喉科で鼻腔内腫瘤を指摘され当院に紹介後,鼻腔内過剰逆生歯芽の診断で内視鏡下に摘出した症例を経験したので報告する。

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はじめに

 生石灰は安価で吸湿力が強いため,煎餅や海苔などの乾燥剤として使用されるほか,水と反応すると100℃以上の高温を発生するため,日本酒や弁当の加温剤などにも利用されている1)

 われわれは,菓子と間違えて乾燥剤の生石灰を誤飲したが,その直後に吐き出したため,保存的治療にて幸い後遺症なく完治できた1例を経験した。しかし,生石灰を多量に誤飲していれば,強アルカリ性や発熱による粘膜腐食作用で呼吸困難や食道狭窄などの重篤な合併症をきたすおそれがある。そのため,今回生石灰の危険性についてあらためて注意喚起する目的で,自験例に若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 軟骨腫の頸部における発生は1%未満と報告されている1)。さらに,喉頭原発の軟骨系腫瘍は非常に稀であり,その発生率は0.2〜1.0%である2)

 今回,われわれは喉頭蓋前間隙(pre-epiglottic space)に発生した軟骨腫の1症例を経験したので,若干の考察を加えてここに報告する。

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はじめに

 好中球減少症は末梢血好中球の絶対数が1500/μL未満と定義されているが,500/μL未満では易感染性が問題となる。自己免疫性好中球減少症(autoimmune neutropenia:AIN)は自己好中球に対する抗体により好中球減少をきたす疾患であり,その多くは乳幼児期に発症し,軽微な細菌感染を反復するが重症化することは少ないとされている1)。発症機序については,ウイルス感染時などに同抗体が産生され発症する可能性が推定されている1)が,感染症をきたし血液検査を行ったときに偶然発見される場合が多い。

 今回われわれは,頸部膿瘍を契機に診断された乳児AINの1例を経験したので報告する。

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 内視鏡下鼻副鼻腔手術のバイブルであるP. J. Wormaldの原著『Endoscopic Sinus Surgery』の初の邦訳が本書である。P. J. Wormaldは世界でも屈指のrhinologistとして名高く,彼が心血注いで書き続けている原著は第4版まで刊行され,改訂されるごとに手術アプローチやコンセプト,周術期管理に至るまで進化を続けている。もちろん,本書は最新の第4版の邦訳である。内視鏡やナビゲーションなどデバイスの進歩とともに内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術における知識や技術のアップデートが必須であるが,原著を十分に理解するには,多忙な臨床医にとって『言語』という壁が敷居を高くしていた。このたび,P. J. Wormaldのspirit(魂)を受け継ぐ北大の先生たちの手によって待望の訳書が発刊されると聞き,彼の金言をより身近なものとして感じられることに胸が躍った。

 あえて紹介するまでもないかもしれないが,P. J. Wormaldはオーストラリアを中心にworld wideに活躍するtop surgeonである。また彼は手術のみならず研究者の顔も持ち,国際誌に330以上の論文を掲載している類まれなるrhinologistでもある。

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あとがき 鴻 信義
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 厳寒の候,皆様いかがお過ごしでしょうか。

 このあとがき,クリスマス直前の寒い夜に書いています。今まさに新型コロナ第3波の真っ只中。連日あちらこちらで新規感染患者さんが報告され,また医療スタッフの感染も以前より増えており,ウイルスがこれまでより身近に迫っていると実感しています。1日でも早い終息を願うばかりです。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
93巻2号 (2021年2月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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