耳鼻咽喉科・頭頸部外科 93巻1号 (2021年1月)

特集 好酸球性副鼻腔炎up-to-date—病態解明と最適な治療をめざして

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎の病態には,外来環境因子に対する自然免疫,獲得免疫反応による2型炎症の誘導が関与している。

●自然免疫による2型炎症反応が病気の発症に関与し,獲得免疫による2型炎症反応が病態の慢性化・難治化に繋がっている。

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POINT

●慢性副鼻腔炎など多因子疾患の環境的要因の1つに,ヒトと共存する微生物叢(マイクロバイオーム)が存在する。

●慢性副鼻腔炎のうち,好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎は異なるマイクロバイオームである。

●好酸球性副鼻腔炎では細菌叢のバランス異常(dysbiosis)をきたしている。

●黄色ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌エンテロトキシンは慢性副鼻腔炎の病態に関与している可能性がある。

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎のほかにも,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)やIgG4関連疾患など鼻粘膜にTh2優位の炎症(type 2炎症)が存在する病態では,鼻ポリープを生じることがある。

●本邦では早くからtype 2炎症や好酸球浸潤に注目した診療が行われていたが,ヨーロッパ鼻科学会のPosition Paperでも,このtype 2炎症の有無に注目した分類を提唱するようになった。

●近年,central compartment atopic disease(CCAD)という疾患概念が提唱された。呼吸上皮腺腫様過誤腫(REAH)との合併も報告されている。アレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎との相違を含め,今後症例が蓄積され,疾患概念が整理されることが期待される。

《保存治療》

局所療法のコツと注意点 伊藤 伸
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POINT

●好酸球性副鼻腔炎は,局所の保存的治療での根治は困難であり,内視鏡下副鼻腔手術(ESS)による病変の除去と,局所療法を含めた術後の管理が重要である。

●局所ステロイド治療としては,①鼻噴霧用ステロイド,②滴下式ステロイド点鼻薬が挙げられる。喘息を合併し吸入ステロイドが使用されている症例では,③吸入薬の経鼻呼出が有効である。

●術後の再燃症例では,鼻内処置と局所ステロイドの併用も効果が期待できる。

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎の病態形成因子は,Th2サイトカインとシステイニルロイコトリエンである。

●ロイコトリエン受容体拮抗薬は,鼻噴霧ステロイド薬と併用したほうが著効する。

●副腎皮質ステロイド薬の全身投与は,急性増悪期や術後に限った短期間投与が原則である。

●副腎皮質ステロイド薬の副作用とその予防策について紹介する。

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POINT

●近年,生物学的製剤であるデュピルマブが開発され,2型炎症反応により引き起こされる好酸球性副鼻腔炎の症状を抑える効果が期待されている。

●臨床試験では,デュピルマブ群はプラセボ群に比して統計学的に有意な有効性が認められたが,有害事象が生じる可能性についても十分に留意する必要がある。

●今後の課題として,自己注射の取り扱いや医療費助成制度などについても理解を深めることが重要である。

《手術治療》

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎は難治性・易再発性であり,内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)の難度も高い。

●根治的なESSを行うためには術前マネジメントも重要である。

●気管支喘息の合併例が多いが,術前に適切な診断・治療が施されていない症例が少なくない。

●European Position Paperにおいて経口ステロイドの術前使用が推奨されており,円滑かつ安全にESSを完遂するうえで有用性は高いと考えられる。

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎(ECRS)患者に対する内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)でも,通常の手順や方法と変わらない。area management,building block concept,蝶形骨洞前壁の分類など,keyとなるコンセプトを理解する。

●ECRS患者の特性の理解も重要で,ポリープの処置,嗅裂の処置,好酸球性ムチンなどの処置は重要である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月)。

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎は嗅裂病変を伴うことが多く,その外科的処置は嗅覚改善の観点からも今後ますます重要になると考えられる。

●嗅裂は狭い空間であり出血も多いため,視野の確保が難しい。そのため病変の切除が不十分となりやすく,逆に粘膜の過剰切除による医原性嗅覚障害のリスクも伴う。

●手術操作のポイントは,篩骨洞の開放を行いながら少しずつ嗅裂の視野を広げること,出血を適切にコントロールすること,マイクロデブリッダーと鉗子を上手に使い分けて丁寧に病変を除去することである。

●術後の再発や癒着が容易に起こるため,術中操作だけではなく,術後のパッキング方法と外来での定期的な処置まで一貫した管理が重要である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2024年1月)。

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POINT

●好酸球性副鼻腔炎は増加傾向を認め,再発時の対応は今後ますます重要になる。

●再手術は,自覚症状・他覚的所見・保存治療への反応を考慮し総合的に判断する。

●isthmus surgeryや癒着などが再発の大きな要因である場合,積極的に再手術を検討する。

●再手術は難易度が上がるため,副損傷やisthmus surgery,癒着などのリスクを伴う。

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はじめに

 突発性難聴(idiopathic sudden sensorineural hearing loss:ISSHL)の治療として,ステロイド療法,高気圧酸素治療(hyperbaric oxygen therapy:HBOT),鼓室内ステロイド療法,ビタミンB12内服などが施行されているが,いずれも十分なエビデンスがあるわけではない。当科ではISSHLに対しては,基本的にはステロイド療法とHBOTの併用療法を施行している。しかしHBOTは,呼吸器疾患の既往のある症例,閉所恐怖症,また頻回の通院困難などを理由に施行できない場合がある。今回われわれはISSHLの治療に際して,HBOTを施行しなかった症例(以下,ステロイド療法群)を施行した症例(以下,併用療法群)と比較し,HBOTのステロイド療法への上乗せ効果を検討し,文献的な考察をふまえて報告する。

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はじめに

 頰骨骨折を含む顔面骨骨折は,頭頸部に限局した比較的軽度の外傷から,交通事故や転落などの高エネルギー外傷である全身的外傷に随伴して認められる場合まできわめて多彩である。頭頸部領域には中枢神経系に加えて聴覚,嗅覚,視覚,味覚,触覚などの日常生活に特に重要な感覚機能が集中している。また,顔面は審美的な要素も併せもつため,顔面機能と形態に著しい障害を残す可能性のある顔面骨骨折は機能面・整容面の両面からのアプローチが求められる。近年,頰骨骨折を含む顔面骨骨折の整復材料に,従来の金属製プレートに代わって生体内吸収性ミニプレートが応用されるようになってきた。今回われわれは,頰骨骨折と診断され整復後の固定に生体内吸収性ミニプレートを使用した症例を,整復のみで内固定を施行しなかった症例と比較し,臨床的な検討を行った。症例を呈示し,文献的な考察を加えて報告する。

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はじめに

 末梢性顔面神経麻痺は,単純ヘルペスウイルスの再活性化によるBell麻痺や,水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によるRamsay Hunt症候群(以下,Hunt症候群),外傷に起因する外傷性顔面神経麻痺などに分類される。これらに対し,副腎皮質ステロイド大量療法が広く用いられる。Bell麻痺やHunt症候群の場合は,抗ヘルペスウイルス薬による治療も併用される。Bell麻痺とHunt症候群で,末梢性顔面神経麻痺症例全体のおよそ7割を占める。発症早期に治療が開始されたBell麻痺の予後はおおむね良好であり,約90%以上の症例は治癒に至る。一方Hunt症候群の場合,早期に治療を施しても20%以上が難治性であるとされる1,2)

 病態の主軸は共通で,側頭骨内の顔面神経管内における神経の浮腫・虚血・絞扼と考えられている。このため,高度の末梢性顔面神経麻痺で予後不良と推測される場合は,顔面神経減荷術の適応となる例もある。

 われわれはすでに,顔面神経減荷術を行った9症例の治療成績について報告した3)。今回はこれらの報告例も含め,これまでにBell麻痺またはHunt症候群に対し当科で顔面神経減荷術を施行した24症例について検討した。

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はじめに

 鼻出血は,耳鼻咽喉科の日常診療や救急現場でよく遭遇する一般的な疾患の1つだが,出血部位の同定が難しい場合や出血部位によっては,しばしば止血に難渋し,入院対応や止血手術が必要となる。当科では過去に,2009〜2013年の5年間の鼻出血489例の臨床的検討1)を行った。今回われわれはさらにその後2014〜2018年の5年間の鼻出血症例の臨床経過をまとめ,鼻出血のリスク因子,特に難治例(入院例・再出血例・手術例)の傾向を検討したので報告する。

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 ついに,日本の多くの耳鼻咽喉科医が望んでいた本が出版された。

 言わずと知れた内視鏡下副鼻腔手術の世界的権威であり,現在のわが国の手術方法の原点と言っても過言ではない,P. J. Wormaldの著書「Endoscopic Sinus Surgery」の日本語訳版である。原著が素晴らしい本であることはわかっていたが,やはり英語なので完全には理解しにくかったという先生方にとって垂涎ものである。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

あとがき 小川 郁
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 新年明けましておめでとうございます。2021年の記念すべき第1号のあとがきを担当することになりました。2020年は様々な意味で大変な変換の年となりました。皆様はどのような気持ちで新しい年をお迎えになっていますでしょうか。100年に一度といわれる新型コロナウイルスパンデミックとの戦いのさなか,2011年に刊行した本誌増刊号「耳鼻咽喉科感染症の完全マスター」で感染症の歴史をまとめて「スペイン風邪」を話題にしたことを思いだしました。ぜひ,本年は希望に満ちた輝かしい年になることを期待したいと思います。

 さて,ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)は,開発分野における国際社会共通の目標で,2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言をもとにまとめられましたが,その後継として,2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)がにわかに注目を集めています。SDGsは国連加盟193か国が2016〜2030年の15年間で達成するために掲げた17項目の目標と169項目の達成基準からなっています。それぞれの分野でSDGsを掲げてこれからの開発目標,達成基準を定め,それに沿って行動するというものです。2020年に発表された達成度では,日本は世界で17位という現状で,より積極的な取り組みが求められています。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
93巻1号 (2021年1月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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