耳鼻咽喉科・頭頸部外科 93巻3号 (2021年3月)

特集 カラーアトラス 基本から学ぶ病理組織の見方

《病理診断の基本の「き」》

HE染色標本の見方 小島 伊織
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POINT

●病理診断にあたっては,病理学総論の用語で表される大まかな病態を考えてから,具体的な疾患について検討する。

●HE染色標本の観察は,弱拡大で正常組織像との違いを見出すことから始まる。

●①どこに病変があるか?②正常とどのように異なるのか?③異常な細胞・構造物は何か?という順で考える。

●所見は,組織学・病理学総論の用語で表現できるようにする。

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POINT

●病理診断はHE染色が基本ではあるが,必要に応じて適切な特殊染色や免疫染色を追加してより正確な診断を目指している。

●特殊染色,免疫染色の目的は,腫瘍分類,良悪性や脈管侵襲の評価,時に遺伝子異常の間接的な証明など多岐にわたる。

●免疫染色の重要性は高まっているが,完璧ではなく,慎重な解釈が求められる。

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POINT

●分子病理診断は,病理診断の補助と分子標的薬の選択に用いられている。

●がん遺伝子異常は,遺伝子変異,遺伝子増幅,融合遺伝子,蛋白過剰発現の4種類に大別される。

●中咽頭癌におけるヒトパピローマウイルス感染は病期の決定や治療方針に影響を与える。

●粘表皮癌,分泌癌,唾液腺導管癌では治療選択に分子病理診断が用いられつつある。

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POINT

●耳疾患における病理組織診断の目的は,感染,炎症の原因特定,腫瘍性病変の鑑別である。

●病理組織の検体採取は鉗子やメスなどを用い,解剖学的構造に留意して組織を挫滅させないようにできるだけ大きな組織を採取する。

●中耳貯留液の細胞診で中耳の病態を診断できることも多い。

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POINT

●執刀医が積極的に病理検体の切り出しに参加することで,病理学への理解が深まる。

●真菌症では真菌の組織浸潤の有無をみる。

●内反性乳頭腫を疑ったら複数箇所の生検を行う。

●血管炎の所見があった場合はNK/T-cell lymphomaの可能性も考え鑑別する。

●悪性黒色腫や嗅神経芽細胞腫は免疫染色を駆使して診断していくことが求められる。

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POINT

●ベーチェット病は病理所見より臨床所見が診断に重要である。

●天疱瘡群は表皮内水疱を形成し,類天疱瘡群は表皮下水疱を形成する。

●扁平苔癬では上皮突起の鋸歯状伸長や,基底層直下の帯状リンパ球浸潤が特徴的である。

●鼻性NK/T細胞リンパ腫はHE染色のみでの診断は難しい。

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POINT

●喉頭の病理組織を理解するにはその正常構造,特に発声器官としての声帯の層構造を理解することが重要である。

●重層扁平上皮の異形成/上皮内癌には複数の分類法が存在するため,その取り扱いにあたっては,病理医との緊密な連携が大切である。

●扁平上皮癌は,高分化・中分化・低分化に分類されるが,予後との相関については議論が分かれる。

●喉頭乳頭腫では,重層扁平上皮の乳頭状隆起性増殖を認める。

●喉頭アミロイドーシスでは,上皮下の間質にアミロイド蛋白の沈着を認める。

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POINT

●臨床所見,検査所見,手術所見を含め総合的に検討する。

●病理レポートのみでなく,術者自身でプレパラートの確認をすることで理解が深まる。

●1972年の第1版以降,1991,2005,2017年に改訂されたWHO唾液腺腫瘍分類の変遷についても留意しておく。

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POINT

●炎症性疾患・腫瘍性疾患のいずれも,いわゆる“細胞異型”だけでは鑑別できない。

●乳頭癌では特徴的な核所見が診断に不可欠である。

●濾胞腺腫と濾胞癌は被膜浸潤・血管浸潤および転移の有無により分別される。

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POINT

●リンパ腫は明らかに増加しており,40年前に比べて罹患数が7倍となり,悪性腫瘍中第8位になった。特に濾胞性リンパ腫は同期間で患者数が28倍にもなっている。

●リンパ腫が疑われても真のリンパ腫は7割程度であり,非リンパ腫例,特に悪性腫瘍性疾患をしっかりと鑑別する必要がある。

●針生検は有力な検査方法であるが,全体像が把握できない場合がしばしばあり,その限界を知るべきである。また,複数個採取してフローサイトメトリーなどのデータを得ることは,正確な診断が得られる可能性を明らかに増加させる。

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POINT

●頸部には多様な軟部腫瘍が発生する。

●良性腫瘍には,シュワン細胞腫,脂肪腫,リンパ管腫などがある。

●悪性腫瘍には,滑膜肉腫,横紋筋肉腫などがある。

●病理診断の基本は,組織所見を読み解くことである。

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Summary

●アレルギー性鼻炎の有病率は高く,特に近年はスギをはじめとする花粉症の増加が顕著で,かつ低年齢化が進行している。

●アレルギー性鼻炎の治療法選択に関し,海外では鼻噴霧用ステロイド薬の単剤投与が第1選択で,併用療法は推奨されていない。日本では重症度に応じ,併用療法も含めた薬剤選択が提示されている。鼻噴霧用ステロイド薬の抗炎症作用ならびにシステマティック・レビューも考慮すると,鼻噴霧用ステロイド薬を第1選択とするのが妥当と考える。

●小児期に発症したアレルギー性鼻炎はなかなか寛解せず,小児期からのアレルギー性鼻炎の管理は重要であり,アレルゲン免疫療法は考慮すべき治療選択肢である。日本における二大アレルゲンであるスギとダニの皮下および舌下免疫療法が出揃い,さらに自宅で手軽にできるスギとダニの舌下免疫併用療法の安全性が確認された現在,この併用療法も多くの施設で実施されるようになってきた。

●2019年12月,重症のスギ花粉症治療薬としては世界初の抗IgE抗体治療薬となるオマリズマブが承認された。標準的治療に抵抗性を示すスギ花粉症に対する効果が期待される。

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はじめに

 乳腺相似分泌癌(mammary analogue secretory carcinoma:MASC)は,今まで乳頭囊胞型,濾胞型,一部の微小囊胞型の腺房細胞癌とされていたものが,2010年にSkálováら1)によって乳腺分泌癌と組織的に類似していることが示され,新たに提唱された疾患である。今回われわれは,耳下腺のMASCを診断・治療したため,若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 口腔癌のリンパ節転移好発部位はレベルⅠ(オトガイ下・顎下リンパ節)〜Ⅲ(中内深頸リンパ節)で,レベルⅥ(前頸部リンパ節)への転移は稀である。今回,前頸静脈リンパ節に転移をきたし,特異な臨床経過をたどった下歯肉癌を経験したので,その病態について文献的考察を加え報告する。

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 私は脳神経外科医として顕微鏡手術を学び,現在も手術を継続している。北大脳神経外科で初めて内視鏡手術が行われたのは,下垂体腺腫の手術だったと記憶している。私の部下が初めて下垂体腺腫に対して内視鏡手術を行ったときのことは今でも鮮明に覚えている。私は術衣に着替え顕微鏡と共に手術室内に待機した。手術が難航した際には顕微鏡手術に切り替えるつもりだったからだ。当時の内視鏡は今よりも解像度が低く,内視鏡手術用の道具も限られていた。顕微鏡手術の倍の手術時間と出血量を要したが,私は一度も手術を替わろうとは思わなかった。自分がどんなに工夫しても顕微鏡下手術では見えなかった海綿静脈洞壁や鞍上部がモニターに映し出されていたからである。

 ウォーモルド先生が執筆された本書には内視鏡下手術の利点,特に優れた可視性を最大に生かした手術手技が網羅され,しかもその1つひとつが細部に至るまでしっかりと書かれている。例えば内視鏡下髄液漏閉鎖術の章で紹介されるバスプラグ法などは脂肪の採取の部位,糸のかけ方,使用する道具,術後の管理,腰椎ドレーンを入れた場合はその排液量までが細かく記載されている。「賛否が分かれるかもしれないが」とただし書きをつけた上で,ウォーモルド先生の手技が紹介されている。本書を読んでいると,このような細かな手術手技や術後管理を学びにかつてはお金と時間を費やして海外にまで行ったのに,と思われる諸兄も多いはずである。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

あとがき 丹生 健一
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 私ごとですが,昨年,還暦を機に受けた人間ドックで腹部にパラガングリオーマ(傍神経節腫)がみつかり,年末に摘出手術を受けました。お陰様で術後経過は順調で,年始より従来通り働いています。術前に血液検体を用いた遺伝子検査ではSDHBの遺伝子異常は認められず,病理標本の免疫組織染色でもコハク酸脱水素酵素(SDHB)は正常に発現しており,再発や転移の可能性は低いようです。ご存知の通り,傍神経節腫は頸動脈小体にも発生します。悪性度の予測や遺伝相談のため,患者さんには多施設共同研究としてSDHB遺伝子検査をお勧めしてきましたが,まさか自分が検査を受けるとは思ってもみませんでした。

 残念ながらSDHB遺伝子検査はいまだ保険適用となっていませんが,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の様々な疾患で免疫染色や遺伝子検査・分子病理診断が,鑑別診断や治療効果・予後予測に実臨床レベルで欠かすことができないものとなってきました。ということで,今月号は「基本から学ぶ病理組織の見方」と題して,最新の病理組織の見方・病理組織報告書の読み方を基礎から学んでいただくように企画しました。総論では,著書『スパルタ病理塾』で有名な小島伊織先生(大同病院病理診断科)にHE染色標本が読める楽しさを,続いて診断病理総合データベース『いむーの』を運営する伊藤智雄先生(神戸大学病理診断科)には様々な特殊染色/免疫染色について,唾液腺癌の大規模多施設共同研究を推進している稲垣宏先生(名古屋市立大学臨床病態病理学)には分子病理診断についての解説をお願いし,各論では各領域のエキスパートの先生に代表的な病理組織の見方をご執筆いただいています。さらに,本号では山梨大学名誉教授 増山敬祐先生のアレルギー性鼻炎の総説も掲載しており,大変充実した内容となっております。皆様,ぜひご通読ください。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
93巻3号 (2021年3月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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