耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89巻9号 (2017年8月)

特集 自宅でできるリハビリテーションのレシピ

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POINT

●めまいが強いと,そのまま安静を取り続け,めまいが慢性化した難治性の状態に陥る。

●めまい患者では,ふらつきによる不安や転倒の危険を考慮して,発作が激しいときは安静臥床を勧め,座位が可能になれば,座位で体を動かすことを推奨するとよい。

●立位によるめまいリハビリテーション(以下,めまいリハ)を行う際には,周囲に物がない固い平らな場所を確保し,必ず介助者を横に置いて転倒防止に努める。

●めまいの主な原因である前庭機能障害では,めまいリハにより小脳の中枢代償が促進され,回復に大きく寄与する。

●めまいに悩んでいる患者に薬物治療以外の治療法として,めまいリハを是非伝えてほしい。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年8月)。

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POINT

●人工内耳装用小児および成人の聴覚リハビリテーションについて概説した。

●言語習得後失聴成人に対しては,本人の希望や社会的なニーズを考慮して,語音聴取能の改善を主眼においた系統的アプローチによる聴取訓練を行う。

●言語習得前失聴小児に対しては,難聴の原因や残存聴力の程度,認知・動作性知能などに見合った語音聴取能や言語発達の獲得を目標に指導・訓練を行う。

●言語習得前失聴小児では,親とのふれ合いに始まり,生活全般にわたる活動や遊びが聴覚リハビリテーションの場となる。

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POINT

●耳鳴のリハビリテーションとは,耳鳴による心理的苦痛・生活障害を改善させる医療的介入であり,その方法には耳鳴の説明(カウンセリング)と音響療法がある。

●耳鳴による心理的苦痛・生活障害を直接的かつ効果的に把握するために,「耳鳴があることで一番困ることとは何ですか?」という問診を行うとよい。

●耳鳴患者の心理的苦痛・生活障害の内容に応じて,耳鳴の説明(カウンセリング)の内容と音響療法(補聴器,SG付き補聴器,家庭でできる音響療法など)を使い分ける。

●患者が耳鳴の説明を正しく理解することはリハビリテーションにおいて必要不可欠であるが,患者が理解不十分の場合に説明のイラストや動画などを用いて自宅で理解を深めることは治療効果の向上に寄与する。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年8月)。

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POINT

●末梢性顔面神経麻痺患者に対するリハビリテーションの対象は,全体の21%程度である。

●リハビリテーションの対象症状は,麻痺の残存,病的共同運動,顔面拘縮(安静時非対称性)である。

●表情筋ストレッチ,バイオフィードバック,選択的筋力強化,拮抗運動が指導を要する中心的な手技である。

●閉瞼障害や瞬目不全,摂食機能障害などに伴う日常生活上の問題に注意し,心理的な配慮も必要である。

●リハビリテーション期間は,発症より1年間程度は必要である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2018年12月)。

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POINT

●嗅覚リハビリテーション(Olfactory training)は神経性嗅覚障害においてはエビデンスレベルが高い治療法であるが,本邦では名称も含めていまだ確立されていない。

●嗅覚リハビリテーションは患者自身で施行可能な,安全で簡単な治療法である。

●使用する嗅素は,少なくとも1種類は三叉神経刺激のあるものを選択し,12週ごとに嗅素を変えたほうが3年後の段階でよりよい効果が期待できる。

●本邦において治療法として確立するためには,日本人に馴染みのある嗅素を用い,臨床研究を行う必要がある。

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POINT

●顎関節の主要症状3症状のいずれかを欠き,めまい,耳痛,頭痛,肩こりなどを主症状とする症例がある。

●視診と問診で顎運動の診断は可能であるが,画像診断には開閉口時の顎関節が有用である。

●耳痛のみの軽症例では,手指による下顎骨筋突起と上顎骨との間隙のマニュピレーションと呼ばれているマッサージのみで耳痛が消退することがある。

●民間療法として割り箸を咬ませる方法が知られているが,あまり勧められない。

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POINT

●リハビリテーションとは,機能訓練と同義ではなく,治療的アプローチ,代償的アプローチ,環境改善的アプローチ,心理的アプローチからなり,これらを融合させて患者の生活の質を維持向上,最大の幸福を目指す医学である。やみくもに訓練をあてはめるのではなく,病態把握は勿論のこと,患者・介助者ニーズや患者予後と経時的変化を見極めて,上記のアプローチを認識しつつ適切に使い分けることが大切である。

●嚥下障害の潜在因子の1つは加齢である。加齢変化の病態を捉え,抗加齢に有用と考えられる簡便なリハビリテーションの意義と方法,施行時の注意点について述べる。

●地域社会で嚥下調整食の互換性を保つために,統一基準化や『嚥下パスポート』などについて紹介する。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます。

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POINT

●医療機関で行う音声障害のリハビリテーションには,声の衛生指導と発声訓練がある。

●声の衛生指導としては,声帯に悪影響を及ぼす生活習慣や生活環境を見直すよう指導する。

●発声訓練は大きく症状対処的音声治療と包括的音声治療に分けられ,患者の喉頭の状態や発声方法を確認したうえで,患者に適したものを選択する。

●自宅でできる声帯の緊張を緩める発声訓練として,トリル,チューブ発声法がある。

●自宅でできる声帯の緊張を高める発声訓練としては,プッシング法,頭位変換法がある。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年8月)。

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POINT

●頸部郭清術後は副神経が障害されて,僧帽筋が麻痺する可能性がある。

●副神経が温存されていれば通常僧帽筋麻痺は改善するが,6か月〜1年程度の期間を要することが多い。

●僧帽筋麻痺に対するリハビリテーションの目標は,不動による肩関節拘縮や癒着性関節包炎を予防すること,不適切な使用による過負荷で痛みの誘発を予防すること,肩凝りなどの自覚症状を緩和すること,などである。

●副神経が温存されている場合は,僧帽筋麻痺の回復を促すことも必要である。一方,副神経が切除されている場合は僧帽筋麻痺の回復は望めないため,他の筋で代償を図り肩関節可動域を維持することが目標となる。

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はじめに

 高Ca血症クリーゼは重篤で生命の危険を伴う電解質異常であり,原発性副甲状腺機能亢進症によるものが多い。高Ca血症クリーゼの診断基準は,①血清Ca値が15mg/dL以上に急増,②乏尿または尿素窒素の上昇,③急性の消化器,循環器および中枢神経系症状の出現,の全3項目を満たす1)ことで診断される。また,高Ca血症クリーゼは稀な病態ではあるが,副甲状腺がんを疑うべき所見の1つである。

 副甲状腺がんを疑うべき所見としては①高Ca血症クリーゼなどの激しい臨床症状のほかに,②頸部腫瘤の触知,③intact-PTH(以下,iPTH)の異常高値,④画像上,腫瘤が球形で甲状腺内に入り込む所見,⑤汎発性線維性骨炎,などが挙げられる。今回,副甲状腺腫瘍による高Ca血症クリーゼを呈した2症例を報告する。

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はじめに

 腸管囊胞は胃腸管囊胞とも呼ばれ,囊胞内面が病理組織学的に胃・腸管粘膜上皮と相同の消化管上皮で構成される囊胞である。縦隔,腹腔,腹壁,脊髄腔などに発生する,もともと珍しい疾患であり1),頭頸部領域での報告はさらに稀である。今回われわれは,下咽頭がんに対し咽喉食摘,遊離空腸移植を行った後に,頸部に発生した腸管囊胞の1例を経験したので報告する。

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はじめに

 明細胞癌は,中年以降の女性の小唾液腺に好発する腫瘍で,頻度は全唾液腺腫瘍の1.0%未満であると報告されている1,2)。病理組織学的所見から,一般的に悪性度は低いとされているが,頸部リンパ節転移や遠隔転移の報告例も存在する3,4)。唾液腺原発の明細胞癌は,2005年のWHO分類では,唾液腺原発悪性腫瘍のなかで,細胞質が淡明な細胞からなる明細胞性腫瘍のうち特異的な組織像を示さない明細胞癌NOSに分類されていたが,2017年のWHO分類(第4版)にて1つの病理型として記載された5)。文献上,硝子化明細胞癌と記載されているものが,現在の分類の明細胞癌に該当すると思われる。

 今回われわれは,経鼻内視鏡下に摘出した上咽頭明細胞癌(硝子化明細胞癌)の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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 耳鼻咽喉科の学会において京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の先生方の発表を拝聴して常に羨望することの1つに,各症例の治療経過の記録が適切に要約されていることが挙げられる。耳疾患から頭頸部腫瘍に及ぶいずれの領域においても,病歴,初診時所見,診断,保存的治療,手術といった一連の流れがとてもよく整理されているのである。その教室で行っている臨床指導(モーニングセミナー,イブニングセミナー)を凝集した本書を一読させていただき,なるほどこのようなセミナーを定期的に行い研修医や学生,メディカルスタッフをご指導されているのか,と感銘に及んでいる。

 内容に少し触れてみたい。本書は全8章と付録から構成され,最初の2章は診察の総論である。第1章は「所見のとり方」で,耳,鼻,口腔,咽頭・喉頭,頸部の診察について簡明かつ十分に要約されており,学生のOSCEから専門医の一般診療のレベルまで対応できる内容である。第2章の「主訴からみた診察の流れ」では,耳症状,めまい・平衡障害,鼻症状,頸部腫脹といった16項目の訴えに対して,「まずやるべきこと」「診療の流れ」「想定される主な疾患」が順に整理されている。耳鼻咽喉科・頭頸部外科で扱う疾病の症状が遺漏なく順に述べられており,新患外来や救急で診察を進めるうえでとても参考になる。

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欧文目次

読者アンケートのお願い

バックナンバーのご案内

あとがき 鴻 信義
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 まだまだ夏の暑さが続いていますが,いかがお過ごしでしょうか? 編集委員を仰せつかって4か月目となります。まだまだ不勉強なことばかりでご迷惑をおかけしてばかりですが,小川先生と丹生先生に温かくご指導いただきながら何とか任務をこなしています。

 さて今月の特集は「自宅でできるリハビリテーションのレシピ」です。リハビリテーションという言葉は,ラテン語のre(再び)+habilis(適した)が語源とされ,すなわち「再び適した状態になること」や「本来あるべき状態への回復」などの意味をもつとされています。また1981年にWHOは,リハビリテーションとはなんらかの原因で生じた能力低下やその状態を改善し,障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含むと定義しています。われわれ医師がかかわるリハビリテーションは,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士はもちろん,臨床心理士やソーシャルワーカーなど多数の専門職がタッグを組み,その中心にいる患者さんとその家族に対して行うチーム医療です。したがって,特にその導入期においては医療機関で行うものですが,耳鼻咽喉科が扱う摂食嚥下や感覚器などの障害に対するリハビリテーションのなかには,患者さんがそれぞれの自宅でできることもたくさんあります。本号では9名の先生方に,実際にどんなリハビリテーションが自宅でできるのか,またそのコツや指導のポイントなどをご解説頂きました。動画付きの解説もあります。是非ご覧ください。患者さんがモチベーションを高く保ちながら毎日のリハビリテーションに励まれることが,できるだけよい状態への回復につながると思います。本書がその手助けとなれば幸いです。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
89巻9号 (2017年8月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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