耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89巻10号 (2017年9月)

特集 レーザー治療の最前線—コツとピットフォール

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POINT

●1961年にルビーレーザーが網膜剝離に対する光凝固治療に応用されて以降,医療用レーザー装置の開発・発展とともに広く使用されるようになった。

●耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域においては,最初にアルゴンレーザーとCO2レーザーが臨床応用され,その後,半導体レーザー,ルビーレーザー,Nd:YAGレーザー,Ho:YAGレーザー,KTP/YAGレーザーなどが使用されるようになった。

●同領域では,主にレーザーのもつ,切開・凝固・蒸散の特性をいかした低侵襲手術に幅広く利用されている。

●レーザーを安全かつ適切に臨床応用するためには,このようなレーザー光の光学特性をよく理解する必要がある。また使用に当たっては,保守管理を定期的に行う,機器の仕様を正確に把握する,十分な安全対策を施す,手術適応を考慮することが重要である。

《耳・鼻領域》

レーザーによる鼓膜切開 佐々木 亮
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POINT

●OtoLAMTMは鼓膜切開(鼓膜開窓)を行うことができるCO2レーザー装置である。

●通常の鼓膜切開より穿孔開存期間を長く保つことができるため,急性中耳炎や滲出性中耳炎の治療に有用であると考えられる。

●全身麻酔下の鼓膜チューブ挿入術と比べると外来で施行可能であり,簡便な手技である。

●OtoLAMTMは突発性難聴のステロイド鼓室内注入療法の際に大変有用である。

中耳手術へのレーザーの応用 神崎 晶
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POINT

●レーザーは内耳への機械的な影響を最小限にとどめることができ,アブミ骨手術,鼓室形成術における振動を与えない耳小骨操作,真珠腫の蒸散などに有用である。

●焼灼の際は,内耳に熱が伝わらないこと,骨の炭化を最小限にすることが肝要である。

●医療用レーザーは多種存在するが,中耳の特性を考慮して選択する。

●レーザーを用いて低侵襲に鼓膜や耳小骨の微細な可動性を簡便に測定できる方法としてLaser doppler vibrometry(LDV)があるが,現段階では保険適応外である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年9月)。

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POINT

●内耳手術では,①膜迷路に破綻をきたさない,②内外リンパに影響を与えない,③fibrosisなどで内リンパ腔の閉塞を起こさないことが大切であり,アルゴンレーザー手術はそのいずれも満たす。

●アルゴンレーザーの波長特性を用いて,卵形囊斑,球形囊斑の選択的迷路破壊術を行う。

●アルゴンレーザー手術では,聴力の保存が可能である。

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POINT

●アレルギー性鼻炎のうち,重症の花粉症,最重症のくしゃみ・鼻漏型および鼻閉・充全型では,手術療法も推奨されている。

●アレルギー性鼻炎に用いられるレーザーには,CO2レーザー,Diodeレーザー,KTPレーザー(Nd:YAGレーザー),Ho:YAGレーザー,アルゴンプラズマ,超音波振動ナイフ(ハーモニックスカルペル,ソノサージ),ラジオ波凝固装置(コブレーター)がある。

●レーザー手術を行う際には,その適応と特徴を十分に理解し,使用するレーザーの特性に合わせた照射法を選択することが重要である。

●また,レーザー治療を行うには,患者のみならず,術者や周囲の医療スタッフに対する合併症予防にも十分配慮する必要がある。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年9月)。

《口腔・咽頭領域》

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POINT

●咽頭領域では主にCO2レーザーやKTPレーザーが,腫瘍切除や血管性病変の光凝固などに用いられている。

●中咽頭がんや下咽頭がんに対するCO2レーザーを用いた顕微鏡下レーザー切除術の有用性の報告は多数なされている。

●経口的ロボット手術においても,ファイバーガイドCO2レーザーが近年切除デバイスとして用いられている。

●ファイバーガイドCO2レーザーを用いた軟性内視鏡下日帰り手術は,倫理委員会の承認が必要であるが,咽喉頭疾患に対する有用性が期待できる。

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POINT

●レーザーを用いた唾石の破砕術併用は,内視鏡単独では摘出困難な大きい唾石や平滑でない唾石などへの適応拡大に寄与する手技である。

●本邦では唾液腺管内視鏡専用の手術機器のすべてを入手することができないため,一部は他科で使用しているもので代用する必要がある。

●腺管損傷や神経損傷をきたさないよう,照射部位,方向,出力の程度には細心の注意を払う。また,慎重な操作を心掛け,急性・晩発性の合併症をきたさないよう注意する。

●唾液腺管内視鏡は,低侵襲治療への期待や保険収載に伴い,今後さらに普及していくことが予想される。

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POINT

●LAUP手術は手術適応が問題となる。

●扁桃肥大なし,AHI<5/h,若年齢(<30歳),非肥満者(BMI<25kg/m2)の成人いびき症患者がLAUP手術の対象となる。

●狭窄部位より下方を切除する術式であり,閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)治療には繋がらない。

●術後疼痛,および口蓋垂と軟口蓋の拘縮・瘢痕化という副作用が生じうる。

●デイサージャリーを行うにあたり,①術前に睡眠検査(PSG)を行うこと,②術日の術後ケアができる診療体制とすること,③術後フォローを行うこと,の3つが必須である。

《食道・頭頸部領域》

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POINT

●喉頭蓋の腫瘍では,喉頭蓋に糸を通し舌正中から口側に軽く牽引すると視野展開しやすい。

●前交連の腫瘍は輪状軟骨弓部付近を頸部前下方から,声帯下面の腫瘍は声帯膜様部上面の外側を圧迫すると明視しやすい。

●レーザー照射前には,誤照射に対して患者を保護する。

●喉頭腫瘍の特性と喉頭内腔からの解剖(inside-out anatomy)を把握したうえで,喉頭機能を重視した手術を心掛ける。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年9月)。

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POINT

●食道がん化学放射線療法(CRT)後の局所遺残再発病変の治療において,遠隔転移がなければsalvage外科治療だけでなく,salvage内視鏡治療が適応となる症例がある。

●食道がんCRT後の局所遺残再発病変に対するレザフィリン®およびPDレーザを用いたsalvage PDTは有望な治療法である。

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はじめに

 口腔底,オトガイ部,顎下部に発生する囊胞性疾患として類皮囊胞,ガマ腫,囊胞状リンパ管腫,正中頸囊胞などが挙げられる。術前診断としてCT,MRI,頸部超音波検査,細胞診などが有用であるが,診断に難渋し術前診断と術後診断が一致しないことも稀ではない。われわれは過去15年間でオトガイ部に発生した腫瘤の手術を13例経験した。そのうち口外法(頸部外切開)により摘出した巨大な類皮囊胞例を呈示し,そのほか12例を含め文献的考察を加え報告する。

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はじめに

 ドロップアタックは,姿勢を維持する筋の脱力または脚の筋の異常収縮によって生じる,突然の転倒である1)。心原性,脳血管性,てんかん,心因性,前庭性などさまざまな原因で生じるが,原因が同定できることのほうが少なく,2/3の症例では原因不明である。メニエール病の経過中に認められる前庭性のものはドロップアタック全体の約3%にすぎない2)。前庭性ドロップアタックはTumarkinによって最初に報告されたためTumarkin otolith crisis3)とも呼ばれている。Balohら4)は10年以上の経過で175例のメニエール病患者の12人,Blackら5)は200例中11例に認めたと報告しているように,メニエール病の10%に認めるとする報告が多い。前庭性ドロップアタック発作の特徴は,

 ①立位または座位で,特別の誘因や前兆なく発症する

 ②重力によって地面に押されたり,つかれたりするような感覚を伴う

 ③突然に自分の周囲が動いたり傾いたように感じて転倒する

 ④意識消失は伴わない

ことである6)。ドロップアタックに意識消失の有無は問わないとする報告もある1)が,一般に前庭性ドロップアタックは意識消失はなく7),本邦での報告は稀である。

 今回われわれはめまいの経過中にドロップアタックを認めた心原性,前庭性の3症例を経験したので報告する。なお本論文は東京医療センターの倫理審査委員会の承認を受け(承認番号第R16-073号),内容に同意を得られた症例を対象者とした。

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はじめに

 魚骨異物では,頸部に迷入した際の摘出には時に外切開を要するが1-6),異物が微小で,周囲に炎症を伴う場合には,異物の同定・摘出に難渋する場合がある。今回われわれは,頸部に迷入した魚骨異物の摘出に術前のCTガイド下マーキングが有用であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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 著者の小松崎 篤先生(東京医科歯科大名誉教授)は,半世紀にわたりめまい・平衡障害の基礎と臨床に取り組んでこられたわが国の神経耳科学の大家であり,小生が研修医の頃からの師でもある。小生は小松崎先生よりかねてから本書を構想していることをうかがっていたが,A4判448ページの大冊の本書を手にして感慨深いものがある。

 脳波は100年,ENGは50年の歴史がある。脳波によりてんかんの大脳皮質の電気現象がわかるようになった。ENGは眼振の記録や異常眼球運動の記録により半規管,脳幹,小脳,大脳の病巣を眼球運動の電気現象として記録することで診断に大きな貢献をしてきた。

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欧文目次

バックナンバーのご案内

あとがき 丹生 健一
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 テニス界の“生きるレジェンド”フェデラー選手が絶好調です。昨年のウインブルドン準決勝で膝を負傷して以来,リオ五輪と全米オープンを含むシーズンの残り全試合を欠場。このまま引退かと心配されましたが,年頭の全豪オープンで半年ぶりに復帰すると錦織選手やナダル選手らトップクラスを次々と倒して堂々の優勝。続くマスターズ2大会でも連続優勝すると,全仏オープンをスキップ。体調万全で臨んだ全英オープンでは全試合ストレート勝ちで5年ぶり8回目の優勝を遂げ,まるで35歳にして再び全盛期を迎えたようです。対照的に長年にわたり世界ランク1位を維持してきたジョコビッチ選手が最近,調子を落としているのを見ると,過酷なツアーで蓄積した疲労や度重なる故障と決別するには時に思い切った休養が必要なのでしょう。レジェンドとは比べるべくもありませんが,就任当時40歳だった小生も,ちょっと張り切って頑張ると疲れが溜まる年齢になってきました。「ここぞ」というときに頼りになる親分で居続けられるよう,意地を張って無理をせず,教室員に頼りながらコンディショニングに気をつけたいと思う今日この頃です。

 さて,本号の特集は「レーザー治療の最前線—コツとピットフォール」です。1961年にルビーレーザーが網膜剝離に対する光凝固治療に応用されて以来,医療用レーザーの開発が進み,耳鼻咽喉科頭頸部外科領域においてもアルゴン,CO2,半導体,ルビー,YAG,KPTとさまざまな医用レーザーが各々の切開・凝固・蒸散の特性を活かして用いられています。本号では10名のエキスパートに中耳・内耳手術,鼻アレルギー,唾石,咽喉頭腫瘍などに対するレーザー治療のコツとピットフォールをご解説頂きました。中耳手術,鼻アレルギー,喉頭がんでは動画もご提供頂いていますのでスマフォで是非ご覧ください。投稿論文はオトガイ部類皮囊胞,ドロップアタック,頸部魚骨異物の3編です。こちらも是非,ご一読頂き日常診療の参考にして頂けると幸いです。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
89巻10号 (2017年9月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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