耳鼻咽喉科・頭頸部外科 66巻5号 (1994年5月)

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 喉頭に発生する非上皮性の良性腫瘍は非常にまれである。仮声帯に発生した線維組織球性腫瘍の症例を経験したので供覧する。

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 はじめに

 人工内耳というと,今日わが国ではコクレア社製の22チャンネル型のものが,使用される機器の全体を占めている。この場合電極は,正円窓またはその近くの基底回転鼓室階に開窓して蝸牛に挿入される1)。挿入による機械的操作でらせん靱帯の圧迫や断裂,結合組織の増生,骨らせん板の破壊や骨増生などがおこることが知られている2,3)。挿入後長期の例は報告されていないが,これまでの症例では,らせん靱帯の損傷や骨の増生はらせん神経節細胞の明確な減少をきたしていないが2,3),以前よりらせん器の破壊は神経の樹状突起やらせん神経節細胞の減少をきたすといわれている4)

 電極挿入に際しては,内耳の損傷をできるだけ少なく,しかも電極を抵抗なく深く挿入したい。この報告では挿入部位となる正円窓付近から蝸牛基底回転の解剖,基底回転と顔面神経迷路部の関係について,主として実体顕微鏡下に観察した結果を述べる。

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 はじめに

 Galvanic body sway test(以下GBSTと略す)は,前庭系の検査のなかで,内耳障害と後迷路障害を鑑別し得る有力な検査と考えられている。しかし,この検査法は,被験者固有の不規則な重心動揺波形の上に電気性身体動揺を重ねる検査であるために,全例において鮮明な波形が得られるとは限らず,またすべての波形成分が安定して得られるわけではない。これまでに各波形頂点が,2峰性となったり,平坦化し計測が困難となる例もあり反応の判定に苦慮する場合があった。今回,著者はGBSTの再現性を向上させるために刺激回数,刺激時間,刺激電流を変えて比較検討し,興味ある知見を得たのでここに報告する。

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 はじめに

 中耳根治手術の術後耳に対する聴力改善手術は,アブミ骨底板が固着した例では困難であると考えられている。しかし,原理的には,1)鼓膜を再建し正常粘膜で覆われた中耳腔を再建できること,2)アブミ骨の底板を除去して鼓膜の振動を内耳へ伝達すること,の2点を実現すれば聴力を改善することができる。

 中耳根治術後耳に対して,鼓膜と正常粘膜で覆われた中耳腔を再建する方法としては,著者らは全中耳再建術1)を実施し良好な結果を得ている。また,慢性中耳炎に対するアブミ骨手術は,鼓室硬化症を対象としていくつかの報告2〜6)があり,その有効性は確認されている。したがって,中耳根治術後耳に対しても十分な聴力改善を得られる可能性がある。

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 緒言

 高齢化社会の到来とともに,今後耳鼻咽喉科領域においても生理的な老化現象への対応の増加が予想される。そのため,厚生省長寿科学総合研究“高齢者の聴覚障害に関する研究班”(以下,高齢者聴覚研究班と略)は,こうした状況への対応の一歩として,高齢者の聴力の実態調査をおこなった1)。その結果,高齢者が聴力の低下とともに,耳鳴による「きこえにくさ」を訴えることが少なくないことが明らかとなった。そこで,今回私どもは前述の実態調査をもとに老人性難聴と耳鳴との関係について検討し,生理的な聴力閾値の上昇が耳鳴に及ぼす影響について考察をくわえた。

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 はじめに

 聴器癌は頭頸部悪性腫瘍のなかでも比較的まれな疾患である。しかも早期発見が遅れるケースがしばしばあり,現在においても予後不良となることが多い。また聴器は感覚器であり,解剖学的にも複雑な形態をとっており,さらに側頭骨内を隣接して重要な血管や神経が走行しているため,治療上多くの問題が生じるのが現状である。今回われわれは,過去14年間に12例の聴器癌を経験したので,臨床症状,治療法,予後を中心に文献的考察を加えて報告する。

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 緒言

 耳鼻咽喉科領域で取り扱う多形腺腫(混合腫瘍)は唾液腺原発の腫瘍が大部分である。

 外耳道に発生する多形腺腫は比較的まれで,その報告はあまりない。今回われわれは,多形腺腫と診断した外耳道腫瘍の1例を経験したので報告する。

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 はじめに

 腫瘍,外傷,外耳道手術などにおいて耳甲介部の再建が必要とされる場合,その陥凹した形態や,周囲組織の可動性の不足などから,再建が困難な症例も少なくない。われわれは耳甲介部の再建に耳介後部の皮膚を利用した皮下茎皮弁を利用し,良好な結果を得ているので報告する。

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 緒言

 甲状腺機能亢進症などの甲状腺機能の異常による眼球突出はしばしば経験される。眼窩内容物の著明な増大は種々の眼症状を引き起こし,視力障害に至ることが知られており,甲状腺視神経症と称せられている1)。治療として全身的な副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤の投与が効果的であるが,これらの保存的治療に抵抗を示す場合には外科的な眼窩減荷術が適応となる2)。近年,慢性副鼻腔炎の外科的治療法として内視鏡を用いた鼻腔および副鼻腔手術が確立し,従来のCaldwell-Luc手術に比較して多くの利点が明らかとなっている3〜5))。さらに,他の鼻副鼻腔疾患においても,内視鏡下鼻内手術の応用が進んでいる。眼窩減荷術に関してKennedyら6)は内視鏡を用いて経鼻的に試み良好な成績を報告している。今回,われわれは眼窩減荷術を内視鏡を用いて,鼻内経由にて施行し,その有効性を確認した症例を経験したので報告する。

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 緒言

 下咽頭・頸部食道癌は頭頸部癌のなかでも予後不良な疾患で,集学的治療の進歩した現在でもその5年累積生存率は40%前後であるのが現状である。不良な予後の原因は,症状発現が遅く,早期発見される症例が少ないことや,頸部リンパ節転移・遠隔転移が多いことが挙げられる。したがって本疾患の早期例を扱う機会は少なく,進行例の治療が中心であることから,集学的治療において根治的手術療法の占める役割は大きいといえる。

 本疾患の根治的治療はその病変占拠部位の特徴から,喉頭を合併切除せざるを得ないことが多く,患者のquality of life(QOL)を満足させることが難しい疾患である。QOLを考慮して,若干の施設で喉頭を温存する切除・再建も行われているものの1),依然として不良な予後を考えると,現時点では確実な広範囲切除が優先される傾向にある。

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 緒言

 喉頭の先天的奇形のなかでも,二裂喉頭蓋(bifid epiglottis)は極めて稀な疾患で,本邦ではわれわれの検索した範囲では望月ら1)と立花ら2)の2報告例をみるのみである。また国外では,Montreuil3)がはじめて二裂喉頭蓋の1例を報告して以来,Stoolら4),Michaelら5),Healyら6),Grahamら7)の報告が続き,合計16例が報告されている。

 最近われわれは,この稀な二裂喉頭蓋に,粘膜下口蓋裂と両母趾末節より遠位端の欠損を併せ持った1症例を経験したので,若干の考察を加え報告する。

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 はじめに

 血友病の患者は出血により死亡する危険を常に有している1,2)。とくに口腔底部や咽喉頭部の出血は,失血により致命的になるだけでなく,気道とその周辺部への圧迫,浮腫により,窒息をきたすことがあるので,速やかな止血を要する。今回われわれは気道とその周辺部に血腫をきたした血友病の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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 はじめに

 Warthin腫瘍は,唾液腺腫瘍の中でも特有な組織像を示す良性腫瘍の1つである。1972年に発表されたWHO唾液腺腫瘍の分類1)ではadeno-lymphomaの名称で分類されているが,本論文では一般的に用いられているWarthin腫瘍という名称を用いることにする。本腫瘍は耳下腺に好発するといわれるが,多形腺腫に比べ少ないとされており,全耳下腺腫瘍の5〜10%を占めるに過ぎない。耳下腺原発の場合,多くは一側性,孤立性に発生するが,時に両側発生や同側の多中心性発生のこともある。また,耳下腺を含めた唾液腺内のみならず,耳下腺近傍リンパ節や頸部リンパ節からの発生をみることもある。1991年〜1993年の間にわれわれは両側性Warthin腫瘍の5症例を経験したので報告し,文献的考察を加える。

鏡下咡語

研究と創作 原田 康夫
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 私は物を作ることが好きである。といっても,工作して物を作るのではない。オリジナルな物を色々作るのである。ネクタイであり,ネクタイピンであり,カレンダーであり,CD,本である。私の研究は,内耳の生理学と形態学である。特に,走査電子顕微鏡での内耳の形態学的研究はミクロの世界である。ミクロの世界には,多くの夢と造形の美がある。内耳の微細形態の精巧さにはは他の如何なる器官にも勝る調和と神秘がある。私は内耳,特に前庭器,半規管の生理について研究していた。摘出した半規管を機械的な内リンパ流動で刺激した際,前・後の垂直半規管と外側半規管では,反応様式が異なることを発見し,これがEwaldの法則を電気生理学的に証明した初の仕事となった。この仕事が,後の内耳形態の研究につながり,1968年にまだ広く市販されていない走査電顕に出会うことになったのである。この電子顕微鏡に憑かれて内耳超微細立体構造を観察して,かれこれ25年になる。この間書いた著書は,『内耳走査電顕アトラス』金原出版1980,『前庭器の形態,機能と病態』西村書店1984,“Atlas of the Ear”MTP Press 1983,“The Ves—tibular Organs”Kugler & Ghedini 1988などである(図1)。著書の他に,内耳形態の美しさを造形にしたいと思って作ったのがネクタイピンであり,日本基礎耳科学会総会(1984年)では耳石のモデルをネクタイピンにして各座長の記念品とした。日本気管食道科学会総会(1988年)では,甲状軟骨をモデルに同じくネクタイピンを作った(図2)。今回,前庭機能異常の国際シンポジウム(1994年1月広島)では,全膜迷路をデザインしたネクタイをイタリアでプリントした(図3)。また毎年,外国へのクリスマスカードははその年の最も美しいと思った内耳の写真を送った(図4)。12年たったので,これをカレンダーにして世界中の友人に配った。1992年,あまりリクエストが多いので,もう1年,1993年のカレンダーも作った(図5)。1992年のカレンダーにはは英国の詩人キーツの詩“Beauty istruth, truth beauty”,“美は真実 真実は美なり”という言葉を引用した。このカレンダーはは外国の多くの研究者に高く評価され,保存してくれており,講義に使ってくれている人もある。

講座 頭頸部外科に必要な形成外科の基本手技・6

骨の縫合と移植 上石 弘
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 はじめに

 骨縫合は目的とする骨片に穴をあけ,鋼線を通し,締結して所定の位置に骨片を固定する操作である。骨折の治療,手術の到達路,顔面骨や頭蓋骨の移動,骨移植の際に必要な基本手技である。骨片の固定手段には鋼線による縫合のほか,ミニプレート固定,ネジどめ,K鋼線によるピンニングなどがあるが,前二者の使用頻度が高い。一般に骨縫合は骨固定と同義的に用いられており,本編では,鋼線による骨固定法とミニプレートによる固定法についてその基本手技とコツを解説した。一方,骨移植は骨縫合の手技を用いて骨の欠損部を修復する操作であり,これには遊離骨移植,有茎骨移植,血管柄付遊離骨移植,骨付遊離皮弁などがある。最近の傾向として,術野に近い部位からの骨移植,移植骨片の血行,術中体位変換の要否,donorの変形や醜形の防止などが術式の選択基準になっている。本項では最も利用頻度の高い遊離腸骨移植と有茎骨移植について解説した。

講座 頭頸部外科に必要な局所解剖・15

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 消化管という中空器官の壁は,原則として粘膜・筋層・漿膜(外膜)の3層からできている。粘膜と筋層をくらべると,小腸のように分泌と吸収の場では粘膜に特徴があるし,食道のように飲食物の運搬を業とする区間では筋層の重要性が相対的に増加する。咽頭も同様であり,しかも筋層は周囲の骨格にも付着を獲得するので,多彩な配置を示している。咽頭筋が胃や腸の筋層と異なるところは,胃と腸では平滑筋でつくられ,内輪外縦の層構成をとるのに対し,咽頭では,横紋筋性で,内縦外輪であることである。この項では,咽頭の壁構成,主として筋層の分化について略述しよう。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
66巻5号 (1994年5月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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