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私は物を作ることが好きである。といっても,工作して物を作るのではない。オリジナルな物を色々作るのである。ネクタイであり,ネクタイピンであり,カレンダーであり,CD,本である。私の研究は,内耳の生理学と形態学である。特に,走査電子顕微鏡での内耳の形態学的研究はミクロの世界である。ミクロの世界には,多くの夢と造形の美がある。内耳の微細形態の精巧さにはは他の如何なる器官にも勝る調和と神秘がある。私は内耳,特に前庭器,半規管の生理について研究していた。摘出した半規管を機械的な内リンパ流動で刺激した際,前・後の垂直半規管と外側半規管では,反応様式が異なることを発見し,これがEwaldの法則を電気生理学的に証明した初の仕事となった。この仕事が,後の内耳形態の研究につながり,1968年にまだ広く市販されていない走査電顕に出会うことになったのである。この電子顕微鏡に憑かれて内耳超微細立体構造を観察して,かれこれ25年になる。この間書いた著書は,『内耳走査電顕アトラス』金原出版1980,『前庭器の形態,機能と病態』西村書店1984,“Atlas of the Ear”MTP Press 1983,“The Ves—tibular Organs”Kugler & Ghedini 1988などである(図1)。著書の他に,内耳形態の美しさを造形にしたいと思って作ったのがネクタイピンであり,日本基礎耳科学会総会(1984年)では耳石のモデルをネクタイピンにして各座長の記念品とした。日本気管食道科学会総会(1988年)では,甲状軟骨をモデルに同じくネクタイピンを作った(図2)。今回,前庭機能異常の国際シンポジウム(1994年1月広島)では,全膜迷路をデザインしたネクタイをイタリアでプリントした(図3)。また毎年,外国へのクリスマスカードははその年の最も美しいと思った内耳の写真を送った(図4)。12年たったので,これをカレンダーにして世界中の友人に配った。1992年,あまりリクエストが多いので,もう1年,1993年のカレンダーも作った(図5)。1992年のカレンダーにはは英国の詩人キーツの詩“Beauty istruth, truth beauty”,“美は真実 真実は美なり”という言葉を引用した。このカレンダーはは外国の多くの研究者に高く評価され,保存してくれており,講義に使ってくれている人もある。
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