近年,膵癌の早期発見が叫ばれるようになり,積極的な開腹診断の必要性が強調されるにつれ,術中診断法として膵生検が注目されるようになった.しかるに,従来より行なわれてきたincisional biopsyやneedle biopsyは診断信頼性,合併症,手術時間の延長などの点で充分に満足できるものではなかった.一方,乳腺,甲状腺などの表在性臓器に対するaspiration biopsyが確立されるとともに,膵に対しても術中aspiration biopsy(fine needle aspiration biopsy)が試みられるようになった.
われわれも,昭和44年以来,膵癌や慢性膵炎に対して積極的に施行し,その有用性についてはしばしば報告してきた1)3)4).さらに,昭和47年,これら術中膵aspiration biopsyで得た成績をもとに消化管fiberscopeを利用して,開腹を要せず施行可能な膵aspiration biopsy(非手術的膵aspiration biopsy)を開発した.膵頭部,あるいは膨大部穿刺にはfiberduodenoscopeを用いた経十二指腸的膵頭部aspiration biopsy(FDS-Asp.Bx.と略)を,膵体尾部穿刺にはfibergastroscopeを利用した経胃的膵体尾部aspiration biopsy(GFB-Asp.Bx.と略)を行なっている.