胃と腸ノート
胃潰瘍癌のレントゲン像(9)
安井 昭
1
1順天堂大学消化器外科
pp.1598
発行日 1974年12月25日
Published Date 1974/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111719
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図1は症例4(Ⅱa+Ⅱc様pm癌)の立位正面充盈像である.軽度atonischな胃であるが,それにしても胃角小彎の変形とその対側大彎線の切れ込み,およびその口側および幽門側大彎の壁の硬化像は一見しただけで異常である.すなわち胃角を中心にして相当広い範囲に,しかも大彎にまでおよぶ病巣がひそんでいることが想像されるわけであるが,厳密な意味での質的診断はできない.しかし一見してわかるようにこの充盈像からはもはや早期癌は望み難く,中期癌以上のものとして精査する必要がある.
そこで質的診断をするために図2のような背臥位第1斜位による二重造影法を行なったところ,胃角やや後壁の矢印の部に深い潰瘍性病変があり,それに向かって周囲から多数のしかも肥大した皺襞の集中を認める.これらのすべての皺襞は細かい分析をする必要もないくらい癌特有の所見を充分にあらわしている.また,幽門側方向(Antrum)に芋虫様に肥大した皺襞の塊りが認められるが,その幽門附近との境界は明瞭に境されている.
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