胃と腸 47巻6号 (2012年5月)

今月の主題 経鼻内視鏡によるスクリーニング

序説

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 「胃と腸」誌の主題に経鼻内視鏡を取り上げることは今回が初めてである.経鼻内視鏡は大学病院やがんセンターなどの施設で用いられることが少なく,日常臨床で経鼻スコープに触れる本誌編集委員も少ない.他方,健診センターや実地医家の使用は増加しており,前橋市胃がん内視鏡住民検診1)では32%が経鼻内視鏡で実施されていた.経鼻内視鏡に関しては前処置の工夫や経鼻ルートでの挿入方法に論議が集中し,消化管の観察方法や診断能に関しての報告は散発的であった.この結果,検査医,施設や地域の間で差が大きく,一部のエキスパートを除いてレベルの低い経鼻内視鏡画像しか得られていない.

 ルーチン検査,スクリーニング検査といった出自の異なる言葉が用いられる.両者ともに病巣が発見された後に性状診断を目的に実施される精密検査に対応した用語である.胃病巣の拾い上げを目的として,標準的な手法で実施する初回検査は1970年代までX線検査が主体であった.

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要旨 近年,第一線の医療機関を中心に経鼻内視鏡は急速に普及し続けている.現在本邦で行われている年間約1,200万件の上部消化管内視鏡検査のうち,約300万件(約25%)が経鼻内視鏡によるものと推計される.その比率は年々高まる傾向にあり,診断能は経口内視鏡と経鼻内視鏡との間に差はなく,今後スクリーニング検査の主流になっていくものと思われる.当面,高い受容性と安全性が求められる胃がん検診の逐年検査に活用されていく可能性が高い.一方,CCD,光源,スコープ軟性部を構成する部材の改良や開発,画像強調機能の技術も進んでおり,経鼻内視鏡の性能の向上に伴い,活用される分野も漸次拡大してゆくものと思われる.しかし,前処置法やスコープの操作法に混乱がみられ,経鼻内視鏡は二極化する傾向がみられる.今後,機器の改良とともに,経鼻内視鏡に特化した専門医養成や認定制度,ガイドラインの策定が検討課題になるものと思われ,教育研修システムの確立が急がれる.

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要旨 2002年に宮脇らが極細径スコープによる経鼻内視鏡検査を始めて10年が経過しようとしている.この間に経鼻内視鏡は急速な普及を遂げるとともに,そのスコープ性能,特に画質は長足の進歩を遂げている.しかしスコープの極細径化や経鼻挿入によって生じたいくつかの問題点を抱えているのも事実である.当院では2007年に経鼻内視鏡センターを開設し,独自の工夫を加えながら人間ドックを中心に経鼻内視鏡を活用している.現在使用している極細径スコープEG-530NWやEG-580NWの画質は経口内視鏡に匹敵するものであり,当院人間ドックでの経鼻内視鏡胃癌発見率も経口内視鏡のそれと差がないという結果であった.経鼻内視鏡の特性を熟知したうえで検査を行えば,スクリーニングには十分な診断能を有する検査法であると考えられる.

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要旨 血清H. pylori IgG抗体とpepsinogen値による血清ABC分類は簡便に胃癌リスクをスクリーニングできる.低リスク(血清A)群を除外し,血清B,C,D群に対し経鼻内視鏡スクリーニングを行うことが科学的かつ効率的な胃癌対策である.経鼻内視鏡は年々進化しており,画質は十分容認できるレベルにあり,胃癌発見率も経口ハイビジョンスコープと遜色ないデータが得られた.また血清ABC分類にはグレーゾーンがあるため,血清ABC分類に内視鏡ABC分類を整合させることが重要である.除菌前の血清ABC分類と除菌前後の内視鏡ABC分類を加味することにより胃癌リスクをより確実に推定できる.中,高リスク群や除菌群は専門医による囲い込みが必要である.

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要旨 近年,頭頸部表在癌の治療においては,全身麻酔下彎曲型喉頭鏡による喉頭展開で,下咽頭~食道入口部までの広い視野が得られるようになり,大きな変化をもたらした.彎曲型喉頭鏡導入前後において,導入前(1996~2007年)では術前に発見できず,術中発見した症例は36例49病変中3例(8.3%)3病変であったが,導入後(2008~2011年)では36例69病変中17例(47%)23病変と有意に増加した(p=0.0002).経鼻内視鏡ではValsalva法を行うことで良好な視野が得られ,経口内視鏡では従来死角となっていた下咽頭輪状後部~後壁~食道入口部までの広範囲の観察が連続的に可能となった.今後,偽陰性例を減らすための標準的な観察法となる.

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要旨 経鼻内視鏡による胃癌スクリーニングの精度について,人間ドック健診を専門とする当施設の成績を検討した.(1) 胃癌発見率は経鼻内視鏡群のべ17,205人中0.23%,通常径内視鏡群のべ15,305人中0.22%と差を認めなかった.(2) 経鼻内視鏡検診で診断された胃癌39例のうち,“発見から遡り3年以内に経鼻内視鏡検診で胃癌なしと診断された症例”を偽陰性と定義すると11例が該当した.偽陰性率は28.2%,画像見直しで前回は指摘困難と考えた2例を除くと23.1%であった.これらの結果は通常径内視鏡での検討を含めた諸家の報告と大差なく,経鼻内視鏡は胃癌発見率および偽陰性率の点でも有用と考える.

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要旨 自施設で施行した胃内視鏡検診を対象に,経口用内視鏡を使用した経口群と経鼻内視鏡(以下,経鼻)を用いた経鼻群に分けて,診断精度について比較した.胃癌発見率(経口群0.37%,経鼻群0.30%)および早期癌率(経口群86.7%,経鼻群87.5%)に有意差はなかったが,逐年検診群を対象とすると,経鼻群の粘膜内癌率(63.6%)は経口群(100%)に比べて有意に低かった.前回検査の見直しから,経鼻群の見逃しは11例中6例あり,5例は経鼻で見逃された.経鼻の偽陰性率は34.4%,前回検査で所見指摘困難であった5例を除くと18.8%となった.以上から,さらなる診断精度向上のためには経鼻の特性に基づいた検診手法の確立が必要と考えられた.

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経鼻内視鏡によるスクリーニングの基本

 内視鏡によるスクリーニングの最大の目的は救命可能な癌,さらには被験者のQOLを重視し内視鏡治療可能な早期癌の発見である.そのためには胃全体を網羅した観察・撮影を行うこと,さらに撮影の際には客観的な写真撮影を行うこと,各部においてできる限り正面視した観察を行うことが重要である.以前の細径内視鏡では光量不足,解像度の低さのため近接観察,撮影を行うことも多かったが,最新の細径内視鏡ではほぼ欠点が克服されたため,通常径の内視鏡と同じ方法で行っている.本稿では筆者が行っている経鼻内視鏡によるスクリーニング法について解説する.

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はじめに

 経鼻内視鏡の内視鏡診断も,原則として非拡大経口内視鏡診断と同様である.細径経鼻内視鏡と高解像度経口内視鏡(high-resolution endoscopy)による胃腫瘍(gastric neoplasia)の診断において,診断感度は細径経鼻内視鏡は58.5%に対して,経口内視鏡では78%と有意に劣ると近年報告された1).この検討は,細径経鼻内視鏡の通常観察(白色光)のみである.一方,筆者らの検討において,細径経鼻内視鏡でもインジゴカルミン色素内視鏡観察を併用することにより,食道・胃癌の高い発見率を得ることができた2).ただし,通常径経口内視鏡に比べ,解像度,内視鏡の操作性,さらに使用する生検鉗子などのデバイスが劣ることが多く,多少の工夫を併用したほうが診断能は明らかに向上する.以下,食道,胃に分けて述べる.

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はじめに

 苦痛を伴わない内視鏡検査として,経鼻内視鏡検査が普及しつつある.しかしその歴史は浅く,前処置,挿入手技,画質,操作性など様々な課題が山積している.筆者らは,経鼻内視鏡として使用されている極細径内視鏡を,経口内視鏡として使用してきた.今回,その経緯,利点と課題,および今後の展望について述べてみたい.

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経鼻内視鏡検査の適応と前処置

 当センターの上部消化管内視鏡検査では,高画質のハイビジョン内視鏡GIF-H260,Q画質のGIF-PQ260,比較的低画質の経鼻用極細径内視鏡GIF-N260,XP260N,XP260NSを用いている.胃癌リスクが高い受診者には高画質の経口内視鏡での検査を勧めているが,咽頭反射が特に強い場合は本人の希望も考慮して経鼻内視鏡を勧めている1)

 前処置は,プロナーゼなど服用時に0.05%硝酸ナファゾリン液を両鼻腔に噴霧し,10~15分後,内視鏡室にて4%塩酸リドカイン液9ml+0.1%ボスミン液1mlの混合液を両鼻腔に噴霧する.さらにゼリーを塗布した綿棒または16Frネラトンカテーテルで,鼻腔の通過状態を確認する.カテーテルは約1~2分留置する.以上の鼻腔内の確認処置は内視鏡医が施行している.

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はじめに

 経鼻内視鏡には,経口内視鏡と異なるスコープ特性があり,それらを熟知して検査することが正しい診断につながり,見逃しが少なくなるなど検査精度の向上1)にもつながっていく.筆者は2004年4月から経鼻内視鏡でのスクリーニングを行っているが,本稿では現在行っている経鼻内視鏡の前処置から終了までの検査手順,撮影法などを記した.

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前処置

 経鼻内視鏡は粘液の影響を受けやすい.粘液の粘度を低下させるため粘液溶解薬を使用する.当科では,検査開始10分前に,ジメチコン80mg,プロナーゼMS® 2万単位,重曹1g,水100mlの混合液を服用した後,後屈姿勢で0.05%硝酸ナファゾリンを両側の鼻腔に数滴(約0.15ml)ずつ点鼻している.検査開始直前に仰臥位にて,通りのよいほうの鼻腔に2%リドカインjellyを約4ml注入する.2%リドカインjellyを少量塗布し8%リドカインsprayを2回撒布した16Fr.ネラトンカテーテルを鼻腔内に約8cm挿入,90秒間留置後抜去し,左側臥位で鼻腔挿入を行っている(2分間鼻腔麻酔)1)2).鎮静薬や鎮痙薬は使用していない.

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はじめに

 上部消化管領域における内視鏡検査は,近年めざましく発展しており,特に患者にとって負担が軽いとされる経鼻内視鏡は,患者ニーズの高まりもあり,わが国において爆発的に普及した.当科では2009年に経鼻内視鏡を導入し,主に人間ドック希望者に対し,同検査を施行している.

 本稿では経鼻内視鏡によるスクリーニング検査を施行するに当たり,当科で留意している事柄について述べたい.

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要旨 〔症例1〕は40歳代,男性.経鼻内視鏡を用いた人間ドックの胃癌スクリーニング検査にて前庭部大彎に0-IIc病変を認めた.生検にて高分化型腺癌の診断で,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行い,病理診断はType 0-IIc,tub1,5×5mm,pT1a(M)の微小胃癌であった.〔症例2〕は40歳代,男性.経鼻内視鏡を用いた人間ドックの胃癌スクリーニング検査で胃角部前壁に0-IIa+IIc様病変を認め,生検で高分化型腺癌の診断でESDを行い,病理診断はType 0-IIc,tub1,4×3mm,pT1a(M)の微小胃癌であった.経鼻内視鏡を用いた胃癌スクリーニングにおいて,経鼻内視鏡の特徴を十分理解し,基本に忠実で丁寧な観察を行うことで,微小胃癌の発見も可能であり,通常内視鏡検査とほぼ同等の診断精度を得ることができると考えられる.

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要旨 患者は70歳代,男性.健診での経鼻内視鏡検査で早期胃癌と観察診断すべき病変を見い出したが,生検ではGroup 1であり悪性細胞は得られなかった.直ちに経口内視鏡で再生検を行い高分化管状腺癌と診断されたため,ESD(内視鏡的粘膜下層剝離術)を施行した.切除標本の病理学的所見ではgastric adenocarcinoma,pType0-IIc,20×10mm,tub1,pT1a(M),ly0,v0,HM0,VM0,UL(-),であった.経鼻内視鏡検査は生検操作に難渋することがあるため画像所見がいっそう重要であり,想定される生検組織診断が得られなかった場合には,時間を置かず経口内視鏡での再検査を実施すべきであると考えられた.

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 〔患 者〕 70歳代,男性.

 〔現症歴〕 4年前から狭心症のため近医で内服加療中であった.2010年8月の定期上部消化管内視鏡検査で食道に異常を指摘され当科に紹介となった.その際の内視鏡検査で胃前庭部にも病変を指摘された.

 〔通常内視鏡所見〕 前庭部大彎に大きさ約8mmの白色調扁平隆起を認めたが(A部,Fig. 1a),周囲には萎縮粘膜が存在しており腸上皮化生との鑑別が困難であった(Fig. 1b).引き続きNBI併用拡大内視鏡観察を行った.

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 筆者が大学を卒業したのは1975年であるが,その年の1月号を取り上げたい.「胃と腸」誌発刊10年目のその年,8月に芦原温泉で開かれた福井県胃腸疾患懇話会夏期講座に参加し,画像診断に触れる最初の機会を得た.しかし,あまりに高邁な議論に唖然とし,癌研高木國夫先生やがんセンター佐野量造先生が話された内容のほとんどが理解不能であった.ともかくも,画像診断は重要ということだけは頭に入れて帰ることができた.

 医局ではもちろん,指導医からも教えてもらうことができないため,当年の1月号にさかのぼって「胃と腸」誌の購読を開始した.陥凹型胃癌の所見を学ぼうとしている初学者にとっては,ひだの先細りや棍棒状腫大などの意味するところが何かといったことが知りたかったわけであるが,そのような記述は少なかった.とりわけ,1月号の馬場らの論文「陥凹性早期胃癌のX線所見と病理組織所見の比較」には打ちのめされた.描出される画像所見に,分化型癌と未分化型癌で差異があると論述されていた.まだ,数例しか早期胃癌病変を見た経験がなく,十分な描出ができない身にとっては,はるか彼方の空を飛ぶ野鳥の種類を判別できるかのように生々しく記述してあることに愕然とした思いを抱いた.さらに,近年になっても英文誌に意義が論じられている内視鏡的色素撒布法に関して記述があり,中村恭一先生の胃癌の場に関しての研究論文が掲載されているといった具合に,画像診断の新たな展開を刻む号であった.

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要旨 患者は63歳,女性.呼吸苦を主訴に当院を受診し,心臓左房腫瘍を発見し,心臓血管外科にて完全摘除し,病理組織学的にMFH(malignant fibrous histiocytoma)と診断した.術後4年目に心窩部不快感で当科を受診し,上部消化管内視鏡にて十二指腸主乳頭の前壁側に10mm大の扁平な粘膜下腫瘍を認め,同腫瘍からの生検にてMFHの十二指腸転移と診断した.患者・本人の希望により経過観察し,術後に発症していた心不全・呼吸不全の悪化により,術後6年1か月に永眠した.剖検で,十二指腸腫瘍は70mm大に増大し,形態は有茎性の粘膜下腫瘍へと変化していた.心臓原発MFHの十二指腸転移の1例を,文献的考察を加えて報告する.

胃と腸 図譜

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1概念,病態

 胃内分泌細胞癌は高異型度の腫瘍性内分泌細胞から構成され,急速に発育して早期より転移を来す予後不良の高悪性度癌である.「胃癌取扱い規約第14版」では特殊型の1つとして示されている.胃内分泌細胞癌の組織発生は分化型腺癌が先行的に発生し,内部に生じた腫瘍性内分泌細胞が急速に発育・進展する機序が推定されており,WHO分類1)では神経内分泌成分が70%以上のものを神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma),30~70%のものをmixed adeno-neuroendocrine carcinomaと呼称している.「胃癌取扱い規約」では,神経内分泌成分の多寡を分類には採用せず,内分泌細胞胞巣形成を示すものを内分泌細胞癌と称しており,量的に優勢な組織像に基づいて亜分類するという規定に相反する場合も発生する.発生頻度は胃癌全体の約0.6%で,やや男性優位が目立つ程度である2)

画像診断道場

早期大腸癌の深達度診断 田中 信治
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症 例

 患 者 : 60歳代,男性.

 主 訴 : 特になし.

 家族歴 : 特記事項なし.

 既往歴 : 高脂血症.

 現病歴 : 人間ドックで便潜血陽性を指摘された.近医の大腸内視鏡検査でS状結腸に約10mm大の隆起性病変を認めた.生検で高分化型腺癌と診断され,精査加療目的で当科へ紹介となった.

 病理学的所見 : 特記所見なし.

 血液検査所見 : 特記所見なし.

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 2011年7月23日に第12回臨床消化器病研究会がグランドプリンスホテル新高輪で開催された.「消化管の部」と「肝胆膵の部」に分かれ,「消化管の部」では主題1.大腸 : 「潰瘍性大腸炎に合併する腫瘍性病変の診断と治療」,主題2.食道 : 「食道扁平上皮癌の深達度診断」,主題3.胃 : 「潰瘍をきたす胃病変の鑑別診断」の3セクションが行われた.

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 JDDW(Japan Digestive Disease Week)2011は10月20日(木)から福岡で開催された.福岡国際会議場を中心に4施設,14会場,4日間にわたって開催される国内最大級の学会である.学会印象記の執筆依頼は“食道領域を中心に”という要請であった.出発前にプログラムをチェックすると,食道の話題が中心となる主題はパネルディスカッション15「食道癌に対する内科的治療と外科的治療の接点」とワークショップ20「咽頭癌と食道癌の効率的な観察法」の2つで,他には,消化器内視鏡学会特別企画4「内視鏡学会ESDガイドラインを目指して : Part1 : 食道癌,Part2 : 胃癌」であった.多岐にわたる内容を可能な限り網羅するプログラム作成を試みていることは承知であるが,主題数が80を数える学会規模からするといささか拍子抜け感は否めなかった.

 学会初日(20日)の午前中は通常勤務し,午後に空路で福岡へと向かった.一か月前の時点で既に直行便は満席だったため,伊丹経由で福岡入り,通常の倍以上の移動時間を要し,早速,巨大化したJDDWの洗礼をうけた.10月末の福岡はわずかに肌寒く,秋のもの寂しき叙情も相俟って,水炊きが心に染み入る季節である.大型低気圧が停滞し,期間中は生憎の空模様であったが,会場内は人波であふれ,熱気に包まれていた.

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 前夜のドラゴンズセントラルリーグ制覇の興奮も覚めやらぬまま,2011年10月19日午後,空路福岡に入った.今回のJDDW(Japan Digestive Disease Week)は木曜日から日曜日までの4日間にわたり,消化器全般を網羅するようにぎっしりとプログラムが組まれていた.その一方で,今回から消化器病学会は演題数や日程の都合で一例報告はほとんど採用されなくなった.そのため研修医や若手医師などに発表の機会を与えるには,少し工夫が必要になってくると思われる.また,JDDWではいつも感じることであるが,受付時にいただける抄録集のCD-Rは現場での使い勝手が悪いため,欧米の学会のように事前にiPadやiPhoneに全プログラムがダウンロードできるように配慮していただけるとありがたい.あの重い抄録集を2冊も3冊も持ち歩かなくていいようにぜひ改善をお願いしたい.

 さて,1日目は暑いほどの好天に恵まれ,既にどこの会場も多くの人々で混雑していた.ポスター会場のマリンメッセ福岡のアリーナは商業展示と同じフロアで広々としてにぎやかであったが,大変蒸し暑く,日頃スーツを着慣れていない私たちにとっては辛いものがあった.しかし,そんな状況をものともせず,ポスターの前には多くの先生たちが集まり活発な討論が行われてさらなる熱気に満ちていた.私の担当した胃の基礎研究のセッション「胃─基礎3」では,EGF受容体transactivationのメカニズムの解析やDNAメチル化と胃癌の発生や進展との関連など興味深い報告が多数あった.HP(Helicobacter pylori)菌感染により異常メチル化が誘発されることは既に知られているが,EBV(Epstein-Barr virus)感染胃粘膜においても高頻度にDNAメチル化異常が起きているとの報告や,DNAメチル化異常の網羅的解析による新規胃癌関連遺伝子の検索など,現時点では臨床応用にはまだハードルは高いと思われたが,今後の研究のさらなる進展が期待される発表であった.

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 JDDW(Japan Digestive Disease Week)2011は10月20日(木)から23日(日)までの4日間,福岡国際センター・福岡サンパレス・福岡国際会議場・マリンメッセ福岡で開催された.前回のJDDWより日本消化器外科学会も加わり,以前にも増して活発な学会週間となった.勤務先の大学病院から会場までは車で片道30~40分程の近距離にあり,通常泊まりがけで学会に参加することの多い筆者らにとっては大変便利な会場設定であった.今回のJDDWは,業務の都合上2日目夕方からの参加となったが,それ以降で拝聴することのできた大腸,特に炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)についての発表を中心に報告する.

 まず,2日目(21日)のサテライトシンポジウム10「これからの潰瘍性大腸炎治療とタクロリムスが果たす役割」では,渡辺守先生(東京医科歯科大学)と緒方晴彦先生(慶應義塾大学)の司会のもとで,5人の先生方によりタクロリムスの基礎研究から使用法・長期予後に至るまでの幅広い発表があった.大規模な比較試験はまだ実施されていないが,札幌厚生病院の本谷聡先生から,潰瘍性大腸炎に対する寛解導入効果は抗TNF-α抗体とタクロリムスとで同等であるという自施設でのデータが紹介された.一方で,タクロリムスの寛解維持効果のエビデンスは得られておらず,タクロリムスにより寛解導入が得られた後には別の維持治療が必要であることが報告された.

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欧文目次

「今月の症例」症例募集
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 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

早期胃癌研究会 症例募集
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早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

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 早期胃癌研究会では,毎月原則として5例の症例が提示され,臨床所見,病理所見ともに毎回詳細な症例検討が行われている.2003年より,年間に提示された症例の中から最も優れた症例に最優秀症例賞が贈られることになった.

 9回目の表彰となる早期胃癌研究会2011年最優秀症例賞は,一宮西病院消化器内科・大橋憲嗣氏の発表した「食道上皮の著しい錯角化増殖をきたし絨毛様の形態を呈した食道扁平上皮癌の一例」に贈られた.2012年3月21日(水),笹川記念会館で行われた早期胃癌研究会の席上で,その表彰式が行われた.

学会・研究会ご案内

投稿規定

編集後記 長浜 隆司
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 本号の企画「経鼻内視鏡によるスクリーニング」を細川(横浜栄共済病院),入口(東京都がん検診センター),長浜(早期胃癌検診協会)の3名で企画した.

 「胃と腸」誌では様々な疾患や質的診断における主題が組まれることが多く,スクリーニングの主題が企画されたのは43巻8号「胃癌に対する内視鏡スクリーニングの現状と将来」以来である.今号では,昨今検診機関や実地医家を中心に急速に普及している経鼻内視鏡を,初めて主題として取り上げた.

次号予告

基本情報

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胃と腸
47巻6号 (2012年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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