私の一冊
「胃粘膜(1)─早期胃癌の背景として」10巻1号(1975年)
細川 治
1
1横浜栄共済病院
pp.988
発行日 2012年5月25日
Published Date 2012/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113492
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筆者が大学を卒業したのは1975年であるが,その年の1月号を取り上げたい.「胃と腸」誌発刊10年目のその年,8月に芦原温泉で開かれた福井県胃腸疾患懇話会夏期講座に参加し,画像診断に触れる最初の機会を得た.しかし,あまりに高邁な議論に唖然とし,癌研高木國夫先生やがんセンター佐野量造先生が話された内容のほとんどが理解不能であった.ともかくも,画像診断は重要ということだけは頭に入れて帰ることができた.
医局ではもちろん,指導医からも教えてもらうことができないため,当年の1月号にさかのぼって「胃と腸」誌の購読を開始した.陥凹型胃癌の所見を学ぼうとしている初学者にとっては,ひだの先細りや棍棒状腫大などの意味するところが何かといったことが知りたかったわけであるが,そのような記述は少なかった.とりわけ,1月号の馬場らの論文「陥凹性早期胃癌のX線所見と病理組織所見の比較」には打ちのめされた.描出される画像所見に,分化型癌と未分化型癌で差異があると論述されていた.まだ,数例しか早期胃癌病変を見た経験がなく,十分な描出ができない身にとっては,はるか彼方の空を飛ぶ野鳥の種類を判別できるかのように生々しく記述してあることに愕然とした思いを抱いた.さらに,近年になっても英文誌に意義が論じられている内視鏡的色素撒布法に関して記述があり,中村恭一先生の胃癌の場に関しての研究論文が掲載されているといった具合に,画像診断の新たな展開を刻む号であった.
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