胃と腸 46巻4号 (2011年4月)

今月の主題 大腸鋸歯状病変と癌化

序説

  • 文献概要を表示

 本特集号の目的は,鋸歯状病変の病理診断基準を確立し,鋸歯状病変の癌化の危険性を評価するために,癌化病変の臨床的,病理学的,分子生物学的特徴を明らかにすることである.

 他誌の序説であるが,酒井1)は“基底膜が鋸歯状をなす,鋸の歯というより,なだらかに波打った曲線を形成する病態が存在する.これには過形成の結果生じる過形成ポリープと腫瘍としての腺腫とがある.鋸歯状腺腫は後者であり,あくまでも良性の腫瘍性増殖を指すはずである.10年前LongacreとFenoglio-Preiserの提唱以来,にわかに脚光を浴びるようになったが(Am J Surg Path 14 : 524-537, 1990),混乱してよくわからないのが本音である.その後Fenoglio-Preiserは過形成ポリープ,通常の腺腫(腺管腺腫,絨毛腺腫,腺管絨毛腺腫を含めて),平坦型腺腫,鋸歯状腺腫,過形成ポリープ混在腺腫について個々に説明し(胃と腸 33 : 817-823, 1998),組織学的に杯細胞の未成熟,表在性の核分裂,核小体の存在,好酸性の原形質などが特徴的と述べているが,どうも釈然としない”と述べている.

  • 文献概要を表示

要旨 鋸歯状ポリープは,過形成性ポリープ,鋸歯状腺腫,SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),混合型ポリープに分類されるのが一般的である.これらのポリープの病理診断は,本邦ではいまだ一定のコンセンサスを得るには至っていないが,特にSSA/Pの診断の混乱は目立っている.SSA/Pの病理組織像の特徴は,(1) 腺管底部のL字状所見,逆T字状所見,(2) 腺管の拡張,(3) 不規則な分岐像,などである.このポリープの分子発生メカニズムは,BRAF変異,CIMP(CpG islands methylation phenotype)-high,MSI(microsatellite instability)で特徴づけられる.一方ki-ras変異,CIMP-low,MSS(microsatellite stable)と密接に関連している別経路も指摘されている.鋸歯状ポリープの最終的な病変はMSI陽性大腸癌とされてきたが,近年の検討で,MSS癌の場合もあることが明らかになってきた.鋸歯状ポリープは臨床病理学的,分子病理学的にも従来のadenoma-carcinoma sequenceとは異なった経路である.

  • 文献概要を表示

要旨 癌併存大腸広基性鋸歯状腺腫/ポリープ(sessile serrated adenoma/polyp ; SSA/P)37例49病変の以下のような臨床病理組織学的特徴を抽出できた.(1) 高齢女性の右半結腸の広基性病変が多い,(2) 粘膜下層浸潤(SM)癌が多い,(3) 粘膜内(M)癌とSM癌では腫瘍全体の大きさに差はないが,癌部の大きさはSM癌が有意に大きい,(4) serrated type dysplasiaを伴う例が多い,(5) 低異型度分化型腺癌が多い,(6) conventional type carcinomaを伴う例は,M癌ではSM癌に比し有意に少ない,(7) 粘液癌併存例が比較的多い,(8) 癌腺管構造の特徴をみるとM,SM癌ともに鋸歯状構造を示す例が多いが,M癌では小型の腺管形成が多く,SM癌では篩状構造が多くみられる,(9) 小型の円形核を有する例が多い,(10) SM癌においても癌間質の炎症細胞浸潤は軽度で,線維化のない例が多い,(11) SSA/P部分の組織所見では腺底部の鋸歯状変化,分岐腺管,表層微小乳頭状増生巣,拡張腺管,水平腺管が多く観察された.以上より,癌併存SSA/Pはconventional typeの腺腫内癌とは異なる臨床病理学的特徴を有する特異な腫瘍と考えられる.

  • 文献概要を表示

要旨 現時点では大腸鋸歯状病変の病理分類はHP(hyperplastic polyp),SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),TSA(traditional serrated adenoma)と大きく3つのカテゴリーに分類するのが一般的である.特にSSA/Pは右側結腸のMSI陽性大腸癌の前駆病変として現在注目されている病変であり,内視鏡における大腸鋸歯状病変の診断意義は高い.筆者らの検討では,通常観察においての3者の鑑別点として病変の局在,大きさ,肉眼形態が挙げられた.すなわちSSA/PはHP,TSAに比して有意に右側結腸に多く,SSA/PとTSAはいずれも10mm以上でHPに比して優位に大きかった.またTSAはHP,SSA/Pに比して松毬様所見と二段隆起所見が有意に多く認められた.

  • 文献概要を表示

要旨 大腸鋸歯状病変は,近年の病理組織学および分子生物学的検討により,HP(hyperplastic polyp),SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),TSA(traditional serrated adenoma)に分類されることが提唱されている.SSA/P,TSAは癌化の可能性を有するが,pit pattern診断を含めた内視鏡的な特徴についての詳細な報告は少なく,今回,同病変に対する内視鏡診断の可能性とその治療方針を明らかとすることを目的に検討した.SSA/Pにおいて,HPとの鑑別には,10mm以上の病変径と病変表面の強い粘液付着という通常内視鏡所見を上回る有意なpit pattern所見は認めなかったが,NBI拡大観察での拡張・蛇行した血管VMV(varicose microvascular vessel)が有用であることが示唆された.TSAは,Is型でIIIH型pitを,Isp,Ip型でIVH型pitを呈することが多く,その診断には,pit patternを用いることで容易であった.大腸鋸歯状病変の診断には,通常内視鏡所見に上記の拡大内視鏡所見を加えた総合的な診断のもと,内視鏡切除を決定することが現時点では妥当である.

  • 文献概要を表示

要旨 当センターにて内視鏡的切除を行った大腸鋸歯状病変群のうち,拡大内視鏡所見と病理組織標本の対比が可能であった症例を対象に,表面微細構造別に臨床病理学的所見を検討した.拡大内視鏡所見については,工藤・鶴田分類におけるII型pitの他に新たな4つの亜分類(仮称)を創設して加えた.大腸鋸歯状病変群の病理組織学的特徴として腺管の拡張,分枝像,腺管下部での水平方向の拡張などが挙げられ,同一病変内であっても腺管の形態に多様性があるとされている.自験例による解析結果では,これらの病理組織像に対して拡大内視鏡でも呼応した変化としてとらえられることができ,鋸歯状病変群の表面微細構造と病理組織診断の間である程度の相関が認められ,一部特徴的知見も得られた.今後さらなる検討を進めて,大腸腫瘍の発育進展や大腸癌発生メカニズムの解明につながることを期待したい.

  • 文献概要を表示

要旨 画像強調観察(IEE)を用いて,大腸鋸歯状病変の内視鏡上の特徴所見について検討を行った.病理組織所見上,鋸歯状構造を有し,その組織学的所見から過形成性ポリープ(HP),鋸歯状腺腫(TSA),SSAP(sessile serrated adenoma/polyp)の3者に分類して検討した.AFI観察では,色調変化なく正常周囲粘膜と同様であるものをgrade 0とし,腫瘍性病変でマゼンタ調に色調変化を来すレベルをその強弱からgrade 1~3として,4段階に分けて検討を行った.NBI拡大観察の検討では慈恵血管模様分類を用い,また併せてsurface patternでも特徴的所見につき検討した.AFI,NBI拡大観察における感度,特異度,正診率の比較を行った.AFIの検討では色調変化のないgrade 0をHPの指標として,それ以上に色調変化を来す病変がSSAPもしくはTSAとすると,その感度は68.4%,特異度54.7%,正診率49.4%であった.一方,NBIの検討では血管拡張のない1型をHPの指標として,それ以上の2型および3V型を来す病変がSSAPもしくはTSAの血管模様と考えると,その感度は100%,特異度31.5%,正診率は48.6%であった.

  • 文献概要を表示

要旨 鋸歯状病変について最新のWHO分類では,SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)がHP(hyperplastic polyp)やTSA(traditional serrated adenoma)とともに挙げられているが,その癌化における意義や癌化の危険性についてはいまだ未解決の問題が多い.また,SSA/Pの診断は病理医間でも一致せず,診断基準も明確なものがないため,その癌化のポテンシャルについて解析を行ううえで,診断基準の確立が課題であった.今回,大腸癌研究会のプロジェクト研究「大腸鋸歯状病変の癌化のポテンシャル」において,SSA/Pの診断基準が提案された.SSA/Pの組織像を構築するための本質的変化は上皮の鋸歯状化と陰窩のcompartmentalizationの異常であり,それによりこれまで報告されてきた種々の組織学的特徴を示すことが判明した.よって,その本質的変化に基づいた最も重要である組織所見は,(1) 陰窩の拡張,(2) 陰窩の不規則分岐,(3) 陰窩底部の水平方向への変形(逆T字・L字型陰窩の出現)であり,これらのうち2個以上を有するものをSSA/Pとすることが妥当であると考えられた.この診断基準をもとに鋸歯状病変を分類し,臨床病理学的特徴と癌化率を解析し,SSA/Pの取り扱い基準を確立することが今後の課題である.

  • 文献概要を表示

要旨 2003年7月~2010年12月の間に内視鏡的に完全切除された10mm以上の鋸歯状病変220病変を,WHOの病理診断基準に基づきTSA,HP,SSA/Pに分類する見直し診断を行った.LHP(large hyperplastic polyp)に相当する病変は195病変であり,そのうちHPが77病変(39.5%),SSA/Pは118病変(60.5%)であり,現時点ではLHPはSSA/Pと同一病変ではないと言わざるをえない結果であったが,右半結腸のLHPに限ってはSSA/Pと同義とした臨床的取り扱いでよいものと考える.これら鋸歯状病変の内視鏡的特徴は,TSAは松毬様隆起(pine cone appearance)とIVH型pit,SSA/PはHPに比べ,右半結腸に好発することや開大II型pitとIIIH型pit(fernlike pit)を伴う隆起成分の目立つ病変であることと考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)は病理組織学的にHP(hyperplastic polyp)に類似しているが,構造異型や細胞増殖帯の異常などから,HPとは独立した病変として認識され,右側結腸に好発し,serrated-neoplastic pathwayを介するMSI陽性大腸癌の前癌病変として注目されている.しかし,その病理組織診断基準が明確でないため,混乱が生じている.筆者らの経験では,幼若化したHPの鋸歯状腺管がTSA(traditional serrated adenoma)様に好酸性となり,加えて若干の構造異型を伴うもの,すなわちHP with young epitheliumと診断すべき病変はTSAとの鑑別が困難なことがあり,その結果SSA/Pと診断されている印象を受ける.鑑別困難な病変に対する逃げ道的な診断であるSSA/Pは,基本的に必要のない分類と考えているが,診断がつけられない病理医には必要であろう.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は50歳代,女性.主訴は下血.大腸内視鏡検査にて上行結腸に35mm大の褪色調を呈する扁平隆起性病変を認めた.中心部には10mm大の結節性隆起を伴っていた.拡大内視鏡観察では肛門側扁平隆起部にII型pit,口側扁平隆起部にIVH型pit,結節性隆起部にはVI軽度不整を認め,SA(serrated adenoma)in HP(hyperplastic polyp)と診断した.結節性隆起部に粘膜内癌の存在を疑い,内視鏡的粘膜下層剝離術にて一括切除した.病理組織学的所見では肛門側扁平隆起部にSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp),口側扁平隆起部にTSA(traditional SA),結節性隆起部にSCa(serrated carcinoma)を認めた.本例はSSA/PとTSAを併存し,TSAからserrated pathwayを経て発生した腺癌と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は72歳,男性.便潜血反応陽性のため施行した下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に10mm大の広基性隆起性病変を認めた.病変は丈の高い隆起部と低い部分から成り,丈の低い部分はII型に類似したpitがみられたが,NBIでは網目状の微細血管パターンが観察された.丈の高い隆起部では大小不同な管状pitが密に分布しており,一部では辺縁に不整を伴うpitの混在を認めVI軽度不整pitに相当した.さらにNBIでも不整な表面模様と微細血管パターンがみられた.腺腫あるいは鋸歯状病変に合併した粘膜内癌と診断し,内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理組織所見は丈の高い隆起部に一致して粘膜下層へ浸潤する管状腺癌を認めた.丈の低い部分は鋸歯状腺管から成り,細胞異型は軽度であったが腺底部では腺管密度が増加し,不規則な分岐や拡張を伴う腺管の構造異常を認めたためSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)と診断した.本病変はSSA/Pに合併した粘膜下層浸潤癌と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は74歳,男性.上行結腸癌,S状結腸癌術前内視鏡検査で直腸Raに10mmの,病変口側と肛門側に小結節状隆起を伴う丈の低い正色調の扁平隆起を認め,HP(hyperplastic polyp)と診断され経過観察となった.1年後,術後followの内視鏡再検査で,病変は20mmと増大し隆起成分も増大していた.SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)にSA(serrated adenoma)またはTA(tubular adenoma)を伴う病変と診断し,内視鏡的粘膜下層剝離術にて一括切除した.病理所見では,丈の低い隆起はSSA/Pで口側小隆起成分はTA,また肛側隆起成分はSAであった.まだ症例数は少ないが,本症例のように右側結腸のSSA/Pとは異なり,左側結腸のSSA/PからはSAやTAを併発する経路が存在する.平坦なHPの中に周囲にSAを伴う癌が存在する症例や,SAの癌化が左側に多いという事実を踏まえると,左側のSSA/Pに関しては,右側のようにde novo型の癌化ではなく,SAまたはTAを介して癌化していく可能性が示唆される.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は80歳代,男性.便潜血反応陽性を契機に大腸内視鏡検査を施行したところ,多発する隆起性病変を認め,当院に紹介となった.横行結腸に生じた,肉眼型がそれぞれ(A)IIa+IIc様,(B)Is+IIa様,(C)Is様を呈する病変であり,内視鏡的に病変AとBはSM深部浸潤癌,病変Cは大腸鋸歯状病変と診断し,横行結腸切除術を施行した.切除病変は病理組織学的に,(A)HP(hyperplastic polyp)と浸潤先進部は粘液貯留を伴うSM massive癌,(B)SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)を伴うSM massive癌,(C)SSA/Pと診断した.また,ムチンコア蛋白発現では鋸歯状病変部と癌部はともに胃腸混合型の粘液形質を有する病変であり,大腸鋸歯状病変からの癌化が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は67歳,男性.難治性下痢のため来院し,下部消化管内視鏡検査で全大腸に発赤斑を伴う浮腫状・顆粒状粘膜を認めた.内視鏡所見から炎症性腸疾患が疑われたが,生検組織中にT細胞マーカー陽性の異型リンパ球浸潤がみられた.小腸内視鏡を含む全消化管の精査により胃・十二指腸,空腸および回腸にも大腸病変と同様の多彩な病変が確認された.空腸生検組織中にHTLV-1 proviral DNAが陽性であったことから,成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)と診断した.消化管の広範囲に及ぶ炎症性疾患様のびまん性病変の鑑別疾患として,ATLLを含む悪性リンパ腫を念頭に置くことが重要と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 小腸内視鏡検査後の小腸X線造影用ゾンデ(福大筑紫式と呼称)を考案し,その使用成績を明らかにした.対象はCrohn病15例,非特異性多発性小腸潰瘍症1例で,小腸内視鏡検査後,福大筑紫式小腸X線造影用ゾンデで造影し,内視鏡観察不能な口側・肛門側の病変の有無,性状,範囲などを検討した.小骨盤腔内に高度狭窄があるCrohn病の1例を除く14例で,広汎に良好なX線二重造影が得られた.描出された病変は,狭窄,潰瘍,アフタなど様々であり内視鏡で観察できない小腸の評価に簡便で有用であった.

胃と腸 図譜

  • 文献概要を表示

1 概念,病態

 Dieulafoy病変とは極めて小範囲の浅い潰瘍と粘膜下層の露出動脈の存在ならびに動脈破綻を来す病変である.比較的まれな,消化管出血を来す病態で,1898年,フランス人医師,Dieulafoy1)により初めて報告された.

 従来,胃体上部に多く発生すると考えられ,小腸での報告例は少ないとされていたが,近年,画像検査の進歩により報告例が増加している.胃・小腸以外にも,食道・空腸・回腸・結腸・直腸と全消化管でその発生を認める.Dieulafoy潰瘍と表現されることもあるが,同義である.病理組織学的には,Ul-IIまでの浅い潰瘍性病変で粘膜下に拡張,蛇行する動脈が認められ,その一部が粘膜を貫通する.診断は内視鏡検査によりなされることが多いが,血管造影や出血シンチグラフィで診断されることもある.

早期胃癌研究会

  • 文献概要を表示

 2010年3月の早期胃癌研究会は3月17日(水)に笹川記念会館国際会議場にて開催された.司会は井上晴洋(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)と田中信治(広島大学内視鏡診療科),病理は九嶋亮治(国立がん研究センター中央病院病理)が担当した.3例目終了後,2009年早期胃癌研究会最優秀症例賞の表彰式が行われ,福岡大学筑紫病院消化器科・岸昌廣先生による「低蛋白血症に下痢を伴った1例」が表彰され,症例の解説が行われた.

2011年1月の例会から 斉藤 裕輔
  • 文献概要を表示

 2011年1月度の早期胃癌研究会は1月19日(水)に東商ホールで開催された.司会は斉藤裕輔(市立旭川病院消化器病センター),病理を九嶋亮治(国立がん研究センター中央病院臨床検査部病理)が担当した.

学会印象記

第7回日本消化管学会総会 天野 祐二
  • 文献概要を表示

 余寒の京都にて,2011年2月18~19日に第7回日本消化管学会総会学術集会が開催された.会長吉川敏一先生(京都府立医科大学消化器内科学)のもと,“『何でも呑みこむ』消化管学”をテーマに斬新な企画を多数盛り込んだ興味ある学会であった.小生,この度の集会では,教育講演を依頼されていた関係で,前夜の会長招宴より出席させていただいた.この会の冒頭,吉川会長より「この学会はいずれ内視鏡学会や肝臓学会と同等な立場のものにしたい」との挨拶があったが,それを受けて寺野彰理事長より,本学会は会員数も4,000人を超え,今後はJDDWへの参画も睨んだ運営を行っていきたいとの決意表明がなされた.確かに今回の集会は,入場者数2,348人(演題応募数610題)と過去最高のものであり,その勢いたるや相当なものであると感じられた.

--------------------

欧文目次

「今月の症例」症例募集
  • 文献概要を表示

 「今月の症例」欄はX線,内視鏡写真など形態学的所見が読めるようにきちんと撮影されている症例の掲載を目的としています.珍しい症例はもちろん,ありふれた疾患でも結構ですから,見ただけで日常診療の糧となるような症例をご投稿ください.

  • 文献概要を表示

 本書は,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)の診療と研究をめざす者だけでなく,IBD専門医にも必読を勧めたい著書である.

 潰瘍性大腸炎は約135年前に,Crohn病は78年前に初めて報告されているが,いまだ原因不明で若年者に発症のピークがあり,人生を左右しかねない難治性疾患である.当然のことながら基礎的研究は細菌学的,免疫学的,遺伝子学的研究を主体に著しい進歩がみられるが,いわゆるdisease historyからみた探究は極めて少ない.本書は,治療と長期経過から病理学的所見を加味し,disease historyを詳細に観察したまさに臨床研究論文である.

  • 文献概要を表示

 噴門部とされる食道胃境界部のごく狭い範囲は,X線検査においても内視鏡検査においても観察が不十分となりやすく,病変の認識および診断,特に癌の早期発見がしばしば困難である.多くの消化管の専門家ですら経験できた症例は少なく,日常臨床検査で大きな盲点となってきた.

 編集代表である西俣寛人氏は,噴門部癌における膨大な症例の集積と多数の研究論文を発表してきた日本における第一人者であり,まさに,『噴門部癌アトラス』は待望の書と言えよう.本書で示されている多くの症例画像は,西俣氏と鹿児島南風病院グループが噴門部癌にじっくり焦点を合わせ,症例を長年にわたり追い続けた結果の集大成であり,薩摩魂の真骨頂をみせている.

早期胃癌研究会 症例募集
  • 文献概要を表示

早期胃癌研究会では検討症例を募集しています.

画像のきれいな症例で,

・比較的まれな症例,鑑別が困難な症例.

・典型例だが読影の勉強になる症例.

・診断がよくわからない症例.

  • 文献概要を表示

このたびの地震・津波で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

投稿規定

編集後記 鶴田 修
  • 文献概要を表示

 本号「大腸鋸歯状病変と癌化」の企画を菅井有,八尾隆史とともに担当した.大腸の鋸歯状病変には過形成性ポリープ(hyperplastic polyp ; HP)のみでなく,腺腫(traditional serrated adenoma ; TSA)やSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)も存在するとされているが,SSA/Pの病理診断基準は統一されておらず,消化管以外が専門の病理医も含めるとその診断は千差万別といった状態である.このような状況で臨床医はSSA/Pと呼ばれる病変をどのようにして診断し,治療を行うかについて苦渋・混乱しているのが現状である.そこで本号は大腸鋸歯状病変の病理診断基準を確立し,その癌化の危険性を評価するために,臨床的,病理学的,分子生物学的特徴を明らかにすることをねらいとして企画された.

 序説では藤盛が大腸鋸歯状病変の歴史的流れを解説し,現状の問題点についても解説している.大腸鋸歯状病変の病理分類はHP,TSA,SSA/Pに分けるのが一般的であるが,菅井は混合型ポリープ(mixed polyp ; MP)も分類の骨格に入れている.TSAの診断基準は各論文でほぼ一致しているようであるが,菅井は腫瘍腺管の芽出所見(budding, ectopic gland formation)が最も重要な所見と解説している.SSA/Pの診断基準については藤盛,菅井,三富,八尾により様々な基準が紹介されているが,いまだ基準の統一はなされていないようである.しかし八尾は,大腸癌研究会プロジェクト研究「大腸癌鋸歯状病変の癌化のポテンシャル」においてSSA/Pの最も重要な組織所見は (1) 陰窩の拡張,(2) 陰窩の不規則分岐,(3) 陰窩底部の水平方向への変形であり,これらのうち2個以上を有するものをSSA/Pとすることが妥当と考えられ,プロジェクト研究のメンバー間では合意が得られたと紹介している.

次号予告

基本情報

05362180.46.4.jpg
胃と腸
46巻4号 (2011年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)