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本号「大腸鋸歯状病変と癌化」の企画を菅井有,八尾隆史とともに担当した.大腸の鋸歯状病変には過形成性ポリープ(hyperplastic polyp ; HP)のみでなく,腺腫(traditional serrated adenoma ; TSA)やSSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)も存在するとされているが,SSA/Pの病理診断基準は統一されておらず,消化管以外が専門の病理医も含めるとその診断は千差万別といった状態である.このような状況で臨床医はSSA/Pと呼ばれる病変をどのようにして診断し,治療を行うかについて苦渋・混乱しているのが現状である.そこで本号は大腸鋸歯状病変の病理診断基準を確立し,その癌化の危険性を評価するために,臨床的,病理学的,分子生物学的特徴を明らかにすることをねらいとして企画された.
序説では藤盛が大腸鋸歯状病変の歴史的流れを解説し,現状の問題点についても解説している.大腸鋸歯状病変の病理分類はHP,TSA,SSA/Pに分けるのが一般的であるが,菅井は混合型ポリープ(mixed polyp ; MP)も分類の骨格に入れている.TSAの診断基準は各論文でほぼ一致しているようであるが,菅井は腫瘍腺管の芽出所見(budding, ectopic gland formation)が最も重要な所見と解説している.SSA/Pの診断基準については藤盛,菅井,三富,八尾により様々な基準が紹介されているが,いまだ基準の統一はなされていないようである.しかし八尾は,大腸癌研究会プロジェクト研究「大腸癌鋸歯状病変の癌化のポテンシャル」においてSSA/Pの最も重要な組織所見は (1) 陰窩の拡張,(2) 陰窩の不規則分岐,(3) 陰窩底部の水平方向への変形であり,これらのうち2個以上を有するものをSSA/Pとすることが妥当と考えられ,プロジェクト研究のメンバー間では合意が得られたと紹介している.
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