胃と腸 43巻6号 (2008年5月)

今月の主題 大腸の新しい画像診断

序説

大腸の新しい画像診断 芳野 純治
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 消化管の画像診断は本誌の大きなテーマの1つであり,これまで繰り返し検討されてきた.X線・内視鏡所見を切除標本のマクロ像や病理組織像と対比し,所見の成り立ちを解析することにより診断が進歩した.超音波内視鏡が開発され診断法として確立されようとしたときも同様の過程をたどった.大腸の画像診断において病理組織像に立脚したX線検査と内視鏡検査は診断の基本である.

 新しい診断学はこれまでの診断学に比してより正確で,より容易に,より安全に,より低侵襲であることを求めて開発されてきた.これらは従来の診断学により細かな検討を加えるか,新しい手段(方法)を開発することにより組み立てられている.それには新しい発想の転換とそれを支える科学技術の進歩があったとも言える.一方,それらが診断学として評価されるには,これまでと同様に病理所見との対比を十分に行うことが求められる.

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要旨 大腸腫瘍性病変に対するnarrow band imaging(NBI)の有用性について概説した.要約すると,①腫瘍発生に伴う粘膜表層の血管新生を高いコントラストで捉えることで,病変境界の視認性が向上し,病変拾い上げ診断能の向上が期待されているが,まだ,一定のコンセンサスが得られていない.②腫瘍・非腫瘍の鑑別が可能である.非腫瘍(特に表面型の過形成性病変)はNBI観察では茶褐色に描出されないので容易に鑑別できる.③regularなpit pattern(Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ型)の間接的診断(色素拡大内視鏡観察の代用)が可能である.NBI観察ではpit間介在粘膜表層の微小血管は茶褐色に強調されて描出される.一方,血管のないpit部分は白く抜けて描出されることに基づく.(4)微小血管の不整像・太さ・分布の乱れなどを捉えることによって早期大腸癌の異型度・浸潤度診断が可能である.以上,大腸のNBI観察は拡大機能と併用することで多くの臨床的有用性を発揮する.

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要旨 narrow band imaging(NBI)内視鏡は光源の波長をヘモグロビン吸収特性領域に狭帯域化した画像強調内視鏡である.潰瘍性大腸炎におけるNBI観察では,活動期粘膜の腺口開口部や絨毛状粘膜が明瞭となり,緩解期粘膜では血管構築の判定が可能となる.さらに,NBI拡大観察により活動期粘膜では腺口開口部と絨毛状粘膜がより明確に区別され,緩解期粘膜の血管は規則的な蜂巣状血管と不規則血管に大別できる.一方,潰瘍性大腸炎に合併する腫瘍性病変では大小不同のある不整絨毛状粘膜が観察される.以上のように,NBI内視鏡検査を用いることで,潰瘍性大腸炎の病態が血管および腺管構造の点から細分化可能であり,それらの中から腫瘍性病変の拾い上げも可能と思われる.

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要旨 最近開発されたFICEは,画像処理により通常白色光から分光画像を生成し,選択した3つの分光画像をRGB信号に割り当てることにより,血管像やpit patternを強調する.大腸内視鏡検査では,①遠景像が明るく,②微小血管の視認性が向上し,③FICE画像へ瞬時に切り替わる,という特徴があり,表面型腫瘍やLST-NGの存在診断での有用性が期待される.腫瘍と非腫瘍の鑑別は,病変表層の微小血管模様に注目することにより可能である.SM高度浸潤癌の診断には,NBIの血管診断学が応用可能であろう.選択する分光画像の自由度は広いので,臓器や目的に応じてcustomizeすることにより,今後さらに発展する可能性がある.

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要旨 近年,新しいautofluorescence imaging (AFI)システムが開発され,消化器領域に応用されるようになってきた.AFIを用いると正常の大腸は強い自家蛍光が検出されるため鮮明な緑色として捉えられるが,腫瘍や炎症などは自家蛍光が減弱するため暗紫色として捉えられる.われわれは便宜上,AFIで捉えられる病変の色調を自家蛍光の強い順にG (green)からGP (green/purple),PG (purple/green),P (purple)の4段階に分類し,評価を行った.大腸腫瘍では過形成性ポリープはGからGPを呈するのに対し,腺腫や癌はPGからPを呈し,病変の質的鑑別が可能であった.しかし腺腫,早期癌,進行癌の鑑別は困難であった.潰瘍性大腸炎では病理学的活動性が高いとPまたはPGを呈し,活動性が低いとGまたはGPを呈する傾向にあり,また数値化を行うことによって,より客観的に評価できると考えられた.

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要旨 本邦で使用可能な造影剤であるLevovistTMおよびSonazoidTMを用いた大腸の造影超音波に関して概説した.LevovistTMを使用する場合は間欠送信によりマイクロバブルを破壊して信号を得るflash echo imagingを用いることが多く,またSonazoidTMの場合は低音圧ハーモニックイメージングを用いてリアルタイムに観察することが多い.これらの手法により簡便かつ非侵襲的に大腸壁の微細循環を描出することが可能であり,腫瘍性疾患においてはその鑑別や悪性度評価,炎症性疾患では活動性の評価,さらに消化管出血や虚血の評価に応用が可能であると考えられ,日常臨床における高い有用性が期待される.

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要旨 大腸領域においても細径超音波プローブによる3D EUSが広く活用されている.直腸領域ではより広い範囲の検索のために直腸肛門用3D硬性超音波プローブが開発されている.ヘリカル走査の情報から表面構築像を含むすべての観測モードにおいてリアルタイム表示が可能になった.表面構築像および複数断層像の3D解析は癌最深部の検索,リンパ節転移診断などに有用と考えられる.完全任意断層面の解析が実現し,有茎性病変の連続した頭茎部の描出により癌の粘膜下層浸潤度レベル診断が可能になった.他分野技術の応用により体内移動する断層面の位置および方向情報を表現できれば,専用機を含むすべてのEUS機器の3D化を期待しうる.

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要旨 大腸のCT三次元表示はCT colonographyと総称され,欧米では大腸スクリーニングへの応用が盛んに研究されてきた.multi-slice CTの登場によるCT三次元画像の高精細化を背景として,既にCTを用いて大腸を診断することは世界的な概念となった.また欧米では,デジタルCT画像データを活用した大腸ポリープのコンピュータ支援検出やデジタル前処置法の研究が進められている.術者の技量に検査の質が大きく依存する大腸内視鏡検査と異なり,CT colonographyのデジタル診断画像には客観性・再現性があり,検査方法として標準化の可能性が高い.multi-slice CTの優れた検査処理能力を生かし,効率よく病変の拾い上げが可能な三次元表示法を開発することで,CT colonographyによる効果的な大腸スクリーニングの構築が期待される.

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要旨 1994年にViningらによってCT colonographyが発表されて以来,欧米ではCT colonographyの有用性が数多く報告されてきた.しかし,前処置や検査時に被検者が強いられる苦痛,X線被曝など,いくつかの問題点がある.これらの問題点を改善する大腸スクリーニング法としてfecal tagging法を用いたdark lumen MR colonographyがWeishauptらによって報告された.本稿では,fecal tagging法を用いたdark lumen MR colonographyの有用性を自験例を交え報告した.また,近年画像診断法の進歩は急速であり,今後より高画質なvirtual MR colonographyが得られるようになると思われる.

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要旨 大腸癌はFDGが良好に集積する腫瘍の1つである.しかし,PETは空間分解能に劣るため,早期癌の検出には限界がある.一方,PET/CTではこの弱点が改善され,病変の解剖学的位置が明瞭になるので有用性が向上する.臨床的には局所診断というよりも転移診断,再発診断への有用性が高く,特に予期せぬ部位への転移や再発診断においては,ほかの画像診断に比べて優れている.PET/CTに造影CTを加えると,さらに有用性が高まる.また,PET/CTにCT angiographyや仮想内視鏡などの三次元画像を組み合わせると新たな“術前マッピング”として有用な画像情報を得ることができる.

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 endocytoscopy (XCF-260EC1,Olympus)で観察した大腸上皮性病変129病変の画像を解析し超拡大内視鏡EC分類を行った.EC0aおよびEC0bは非腫瘍性病変であり,陽性的中率が100%であった.EC1~EC3は腫瘍であり,主として内腔スリット形成および核の濃染から分類した.その結果EC1a群においては,91.4%が低異型度腺腫であり,EC1bは76.9%が高異型度腺腫であった.EC2は高異型度腺腫M癌,SM癌と様々であるがEC3はほとんど(97.4%)がSM massive癌であった.enodocytoscopyは,通常内視鏡観察,拡大内視鏡観察,超拡大内視鏡観察までを簡単に1本の電子スコープで連続的に観察可能であり,かつ生きた腫瘍細胞そのものの細胞異型・核異型の診断が可能である.さらに,生きた腫瘍細胞の動き,血管血流も観察できる.500倍倍率の超拡大内視鏡EC分類により,既存の内視鏡診断学のレベルを越えた,新たなより精度の高い診断が可能となった.

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はじめに

 X線撮影装置において,従来のフィルム-増感紙による撮影系(conventional film-screen system;CFSS)に求められてきた“低被曝で高画質を得る”という課題は,デジタル方式の導入によって解決の道が開かれた.そして,各分野でソフト・ハード両面の改良が重ねられ進化中である.さらに,デジタル方式は,検査から診断のスループット向上,画像処理による描出能の向上,フィルムコスト削減,検査効率の向上や機器の多目的利用による検査・診断・治療コストの削減,ネットワーク対応,データの一元管理,遠隔医療への発展等を実現させながら普及している.

 本項では,当院で用いている東芝製直接変換型flat panel detector(FPD)搭載Cアーム型X線透視装置(MDX8000A)について,新しい注腸X線撮影装置としての画像とCアームの有用性を中心に概説する.

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大腸内視鏡挿入困難例への応用

 大腸内視鏡検査は,内視鏡自体の改良や挿入技術の進歩により,挿入率の向上,挿入時間の短縮,被験者への負担軽減が進んでいる.しかしながら,熟練した術者であっても,腹部手術や放射線治療よる癒着,婦人科疾患などの影響のため,既存の大腸内視鏡では挿入が困難で被験者に苦痛を与えたり,結果的に盲腸までの挿入が不可能であったりする症例も少なからず存在する.

 S状結腸では,直線化しようとすると強い痛みが生じる症例や,ループが形成されて,挿入するとそのループが大きくなるだけで深部への挿入ができない症例がある.また,横行結腸では,横行結腸中部がM字状に下腹部まで垂れ下がって,癒着のため引き上げきれない(直線化できない)ために挿入困難になる症例を経験する.

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はじめに

 日本において小腸用カプセル内視鏡PillCamTM SB(Given Imaging Co. Ltd.)が原因不明消化管出血に対して2007年10月に保険適応となった.しかし欧米では既に2004年に食道用カプセル内視鏡PillCamTM ESOが認可され,さらに2006年には大腸用カプセル内視鏡PillCamTM COLON(Fig. 1)が欧州で認可を受け発売を開始している.将来の大腸スクリーニング検査として期待される大腸用カプセル内視鏡の現況について報告する.

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はじめに

 イスラエルのGI View社より,ディスポーザブルの自走式大腸内視鏡スコープAer-O-ScopeTMが開発され,2006年に発表された1)2).動画サイトYou TubeTM(http://www.youtube.com/)でもAer-O-ScopeTMについての動画を参照可能である.文献より概要を紹介する.

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共焦点内視鏡

 近年普及してきた拡大内視鏡は100倍程度の拡大率を持ち,pit patternなど消化管粘膜の腺窩や血管などの組織構築が観察できるが,Optiscan Imaging社(Victoria,Australia)とPentax社が共同開発した共焦点内視鏡1)2)は1,000倍の拡大率で,個々の細胞レベルでの観察が可能である.Fig. 1のように通常内視鏡の光学観察部と共焦点レーザー内視鏡装置が一体化しており,内視鏡検査中に通常の内視鏡画像と共焦点画像を併行して同時に見ることができる.488 nmのアルゴンレーザーを消化管粘膜に照射し,組織中の蛍光色素の発する励起光を捉えて画像化する仕組みである(Fig. 2).520μm×470μmのスキャン画像が得られ,対物レンズの位置を動かすことで観察面の深度を変えることができ,粘膜面から250μmほどの深さまで観察可能である(Fig. 3).粘膜組織を垂直面で観察する病理組織像と異なり,共焦点内視鏡画像は水平面での観察像である.個々の細胞は白黒のコントラストで描出されるが,核と細胞質は明確に区別でき,細胞の種類を判別することも十分可能である(Fig. 4).

消化管造影・内視鏡観察のコツ

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はじめに

 胃角部小彎は病変の多い部である.特に潰瘍性病変は多いので見逃さないように撮影し読影する必要がある.

 胃角部大彎はもちろん病変が存在することもあるが,胃角部後壁,前壁病変の間接所見がみられることが多いので,撮影に際しては十二指腸との重なりを避けること,読影ではわずかな変化を見逃さない注意が必要である.

早期胃癌研究会

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 2007年11月の早期胃癌研究会は11月21日(水)に一ツ橋ホールで開催された.司会は春間賢(川崎医科大学内科学),野村昌史(手稲渓仁会病院消化器病センター),八尾隆史(九州大学大学院形態機能病理学)が担当した.また,画像診断教育レクチャーは赤松泰次(信州大学内視鏡診療部)が「胃リンパ腫診断のポイント―胃癌との鑑別診断を中心に」と題して行った.

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 2007年12月の早期胃癌研究会は12月19日(水)に東商ホールで開催された.司会は飯石浩康(大阪府立成人病センター消化器内科),平田一郎(藤田保健衛生大学消化管内科),滝澤登一郎(東京医科歯科大学分子病態検査学)が担当した.画像診断教育レクチャーは松井敏幸(福岡大学筑紫病院消化器科)が「回盲部病変―形態からみた鑑別診断の進め方」と題して行った.

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欧文目次

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 芳野純治,浜田勉,川口実の3氏によって編集された『内視鏡所見のよみ方と鑑別診断―上部消化管 第2版』がこのたび出版された.破格の売れ行きを示した初版の上梓から早くも6年が経ち,企画の意図は初版のまま,内視鏡写真の変更・追加,新しい項目や症例の追加など内容の充実が図られている.その結果,初版より頁数が約1.3倍に増加したそうであるが,日常臨床の現場で常に手元に置いておくのに適したサイズは維持されており,初版以上に好評を博することは間違いないと考える.

 消化管の形態診断学は,内視鏡,X線,病理,それぞれの所見を厳密に対比検討することによって進歩してきた.毎月第3水曜日の夜に東京で開催される早期胃癌研究会は,毎回5例の消化管疾患症例が提示され,1例1例のX線・内視鏡所見と病理所見との対比が徹底的に討論されており,消化管形態診断学の原点とも言える研究会である.この研究会の運営委員およびその機関誌である雑誌『胃と腸』の編集委員を兼務している本書の編集者3氏は,いずれもわが国を代表する消化管診断学のエキスパートである.本書は,“消化管の形態診断学を実証主義の立場から徹底的に追求していく”という『胃と腸』誌の基本方針に準じて編集されているため,掲載された内視鏡写真はいずれも良質なものが厳選されている.また,内視鏡所見の成り立ちを説明すべく適宜加えられたX線写真や病理写真も美麗かつシャープなものばかりである.

編集後記 斉藤 裕輔
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 本号は「大腸の新しい画像診断」というテーマでお届けした.病理組織の肉眼所見に立脚した注腸X線検査や拡大観察を含めた大腸内視鏡検査が大腸検査法のgold standardであることに変わりはないが,新しい画像診断法も開発が進み,その進歩が著しいことから新しい検査法の理解を深める目的で本特集号が組まれた.NBI(narrow band imaging),AFI(autofluorescence imaging),FICE(FUJI Intelligent Color Enhancement)と新しい内視鏡の技法により,大腸腫瘍の拾い上げが容易となり,深達度診断にも有用であることが示された.また,潰瘍性大腸炎の長期経過例におけるdysplasiaの拾い上げの可能性についても示された.新しい超音波検査として,造影超音波と三次元EUS(endoscopic ultrasonography)の現状についても解説いただいた.また,今後大腸癌のスクリーニングへ応用可能なCT(computed tomography)およびMR(magnetic resonance)colonographyについて現状における有用性とfecal taggingを含めた今後の可能性について示され,既に実用化されているPET(/CT)についても解説いただいた.加えて近い将来の実用化が期待されるendocytoscopyを用いたoptical pathologyについても紹介いただいた.さらに,大腸カプセル内視鏡,自走式大腸内視鏡,共焦点大腸内視鏡についても示され,今後のさらなる開発が期待される.これら新しい画像診断を用いて新たな診断学が構築されることが期待され,将来の診療に還元される日が1日も早く来ることが待たれる.

基本情報

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胃と腸
43巻6号 (2008年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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