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はじめに
Barrett食道の定義は国際的に統一されておらず,長さの規定(すべて含めるか,1cm以上にするか),生検での腸上皮化生の証明の必要性の有無,そして,食道胃接合部(gastroesophageal junction ; GEJ)の定義,すなわち,柵状血管遠位端(the distal end of the palisade vessel ; DEPV),または,胃粘膜ひだ近位端(the proximal end of the gastric fold ; PEGF)において不一致がある(Table 1)1).しかしながら,本邦を除く諸外国のガイドラインは,Barrett食道の定義に長さの規定,腸上皮化生の確認のいずれか,またはその両方が含まれており,Barrett食道の診断に制限がかかっている.一方,本邦のBarrett食道の定義は独特で,Barrett食道の定義にいずれも不必要であり,内視鏡的に食道の下端にほんのわずか円柱上皮を認めるのみで,簡単に(生検なしで)Barrett食道の診断が可能となっており,欧米に比べて極端に高い診断率となっている(内視鏡検査受診者の20〜30%,多い施設では80%)2).また,GEJの定義も本邦が独特で,世界で唯一DEPVをもって定義している.
このようにBarrett食道の国際的に統一された定義がない状態で,今後統一を目指すために,まずは,その前段階として食道胃接合部領域(gastroesophageal junctional zone ; GEJZ)の種々の相違点に関してコンセンサスを得る目的で,2019年に京都で胃・食道接合部領域の諸問題に関する国際会議(以下,本会議)が開かれた.本会議には,菅野,上西の呼びかけで,日本人研究者13名を含む合計35名の著名な研究者が欧米,アジア諸国から参加した.本会議の構成メンバーの特徴は,食道の専門家ばかりではなく,胃の専門家も集まりおのおのの立場から討議がなされたことである.本会議のコンセンサス事項は最終的に2022年の「Gut」誌に掲載された1).
本会議では,Barrett食道の国際的な統一された臨床的な定義がない状態であったが,まず,CQ1(clinical question 1)で“概念的なBarrett食道”の定義として,“食道下端の重層扁平上皮が化生円柱上皮に置換され,発癌ポテンシャルをもつ状態”とされ,97%でstrongly agreeと圧倒的賛同が得られた1).この定義では,Barrett食道は,包括的に重層扁平上皮が化生円柱上皮に置換されたものとされ,長さ,腸上皮化生の有無に関しての制限はなく,本邦の定義に近いものとなっている.ただし,概念上はその通りでよいが,これを実際の臨床で運用しようとすると種々と問題が発生する.その最たるものは,本邦の実情のように,Barrett食道の診断が多すぎるということである.Barrett食道自体は症状がなく,その診断の意義は,あくまでも食道腺癌の発癌母地として重要であり,食道腺癌が欧米に比べ1/10〜1/20と少ない本邦において,これほどのBarrett食道が診断されていることは,過診断と言わざるをえない2).
本会議では,これまで得られたエビデンスに基づきGEJZの病態,発生,診断に関して討議し,最終的に種々の項目に関してコンセンサスを得ることができた.この中で本稿では,コンセンサスの目玉であるGEJの定義,そして新たに提唱されたGEJZの定義について解説し,今後の見通しについて考察する.

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