胃と腸 31巻2号 (1996年2月)

今月の主題 いわゆる表層拡大型大腸腫瘍とは

序説

表層拡大型大腸腫瘍 長廻 紘
  • 文献概要を表示

 大腸腫瘍が数多く診断されるようになると,従来の教科書的記載に合致しない病変が少なからず見つかるようになってきた.丈が低くて広い面積を占める腺腫もその1つである.実態をそのまま表現する表層拡大型腫瘍という用語をとりあえず当てて,そこからミクロ,マクロの整合性のある病変が抽出できるのか,雑多なものの集合にすぎないのかをとりあえず検討してみようというのが本特集号の趣旨である.

 表層拡大型大腸腫瘍とは耳慣れない用語であるが,“大腸腫瘍のうち丈が低く凹凸変化が少なく(平坦),かつサイズの大きいもの”という仮の定義をスタートにして考えていきたい.表層拡大型腫瘍は基本的には良性である(サイズが大きいにもかかわらず,形が整っているということは良性とほぼ同義語,腺腫内癌は含まれる).

  • 文献概要を表示

要旨 表層拡大型大腸腫瘍について定義の検討を行い,その臨床病理学的特徴を求めた.長径3cm以上の非有茎性早期癌の肉眼型を主体とする大腸腫瘍52例を対象として,腫瘍径を長径3cm以上,短径3cm以上,長径5cm以上,短径5cm以上の4群に分け,肉眼所見ならびに組織学的所見について検討した.組織学的に同じ性質を有する腫瘍群をある一定の大きさで分けることは難しいが,4群の中では短径5cm以上の群が最も特徴的な所見を示した.表層拡大型の英訳であるsuperficial spreading typeには丈が低いまま拡がる腫瘍としての意味が強いが,高さの定義を決めることが難しいことから今回は大きさだけの定義とし,短径5cm以上を表層拡大型大腸腫瘍とした.その定義は胃に類似したものである.臨床病理学的特徴は,①m癌が多く,②Ⅱa型が主体であり,③表面模様は顆粒が主体のものが多く,④組織学的には非全層性の所見が認められる管状腺管主体の高分化腺癌である.更に,検討結果から表層拡大型腫瘍に付けられている様々な名称について考察を加えた.

  • 文献概要を表示

要旨 30mm以上の表層拡大型大腸上皮性腫瘍100例を用いて,その本態,形態形成機序および深部進展を検討した.100例のうち,腺腫が14例,m癌が43例,sm癌が14例,進行癌が29例であった.腺腫を有する病変が85%(85/100)で,純粋癌15%はすべて低異型度分化型癌を有していた.したがって,表層拡大型腫瘍は少なくとも85%以上の例で腺腫由来,残りは低異型度癌由来と推定される.表層拡大型大腸腫瘍は,管状構造の腫瘍として発生し,それが置換発育をすることで,管状絨毛構造となり,腸管の蠕動が弱い部(直腸に55%,盲腸と上行結腸にそれぞれ17%)の粘膜内を側方進展して,脳回状,結節状,顆粒状,絨毛状の病変になると考えられた.粘膜下以深への進展は,腺腫内に低異型度癌が発生し,後者の中に高異型度癌が発生して,これが浸潤するのが主経路と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 側方発育を主体とする10mm以上の腫瘍をLSTと総称し,その中でも30mm以上のものを表層拡大型腫瘍として検討した.LST221病変中30mm以上は33病変(14.9%)を占めた.LSTは色調の変化に乏しく,大きさの割りに高低差がなく,存在診断が非常に難しいものが多い.特にnon-granular typeはそれが顕著であり,何回かの内視鏡検査の中で初めて発見されることがある.大きな表層拡大型ではより存在診断が難しいものがある.内視鏡検査時に,常にこのLST病変を念頭に置いて血管透見像や表面の不整などを見逃さないよう,詳細に観察することが大切である.LSTの中で顆粒均一型は他の形態に比べsm癌はほとんど存在しないために,腫瘍が大きくとも積極的に内視鏡切除すべきである.結節混在型や,非顆粒型は表面構造の消失,硬さ,pit patternのamorphismやV型の有無,更に超音波内視鏡所見などを参考にして治療を選択すべきである.表層拡大型腫瘍はLSTの中でも特に側方進展の顕著なものである.pit patternはⅢL型で組織学的には腺管腺腫が主体であるが,辺縁は非顆粒型ではⅢL-2群のlateral spreading growthを示す.このpit patternはⅡa+depと一部共通するものである.組織学的には,腫瘍腺管は正常腺管を取り巻き,表層のみで側方進展し,二層構造を呈する.

  • 文献概要を表示

要旨 組織学的に管状腺腫(癌)や絨毛管状腺腫(癌)で,大きさ3cm以上,高さがⅡa型相当までの,水平方向への発育傾向の強い表層拡大型大腸腫瘍24病変を対象に臨床病理学的事項を検討した.男女比9:15,平均年齢64.6歳,直腸,横行結腸と盲腸に多く(直腸9病変,S状結腸1病変,下行結腸1病変,横行結腸5病変,上行結腸3病変,盲腸5病変),腺腫8病変,m癌11病変,sm癌5病変であった(sm浸潤病変21%).表面性状から①結節集簇様病変(18病変),②villous feature(1病変),③非結節(5病変)の3型に,更に結節集簇様病変を均一群(10病変),大小不同群(7病変)と相対的陥凹群(1病変)の3群に細分類した.均一群(腺腫5病変,m3病変,sm11病変,sm31病変)は腺腫が半数を占め,大小不同群(腺腫1病変,m5病変,sm1病変)ではm癌が最も多かった.これに対し,非結節群(腺腫1病変,m2病変,sm11病変,sm31病変)ではsm癌の頻度が高く,sm3癌の1病変は腺腫成分のない癌であった.また,病変の一部に隆起や陥凹成分を認める混合型(14病変)では腺腫例はなく,m癌3病変,sm癌5病変,mp癌5病変とa2癌1病変と,sm以上の浸潤を示す病変の頻度が高かった(79%).また,表層拡大型腫瘍の浸潤癌のうち生検で腺腫や腺腫内癌と判定される病変がみられた.治療法として結節集簇様病変型の均一群と大小不同群はまず内視鏡的切除を,非結節群では深達度診断の後に治療法を,混合型では外科的切除を行ったほうがよいと考える.

  • 文献概要を表示

1.表層拡大型の系譜

 私は,原則として,大腸でこの用語を使用することには抵抗がある。むしろ,反対である.まず,その理由について記す.表層拡大型なる日本語は,おそらく,superficial spreading typeと英語に訳されるであろう.少なくとも,この用語は,Stout1)のsuperficial spreading type of carcinoma of the stomachにその起源があることに疑問の余地はない.そして,Stoutにならった表層拡大型胃癌については,本誌でも既に,8巻10号(1973年)にその特集が組まれている.

 Stoutは,当時,早期癌を意識してこの用語を用いており,おそらく,これと同義語のように考えていたのではないかと思われる.すなわち,当時は,早期癌の肉眼的スペクトラムが多彩ではなかったから,早期癌すなわちsuperficial spreading typeという発想につながったものであろう.

  • 文献概要を表示

 大腸腫瘍のX線・内視鏡所見を表現する用語として,「大腸癌取扱い規約」において形態分類がされている.しかし大腸腫瘍にはしばしば例外的な形状を呈するものがあり,例えば背丈が高くならず水平方向に発育する病変(水平発育型大腸病変)も確認されている.前述の規約では“villous patternを呈する病変に対しては,(Is-v様)のように表現する”と記載されているが,はたして“Is-v様”とする表現形で皆に理解してもらえるものかどうか疑問であるし,実際の学会発表などに用いられている分類についても,解釈に差違がある.

 「胃と腸」第27巻4号において,表面が結節状で水平発育する病変に対して,“結節集簇様大腸病変”と呼称することが提唱された.そのとき筆者らの記載した文章1)を再現すると,“大腸ポリープのうち,腸管の水平方向に向かって発育し,背が高くならず扁平であり,表面が結節様ないし粗大顆粒様の凹凸を呈する病変が存在する.病変の一部に癌が併存していることもあるが,多くは病理組織学的にtubulovillous adenomaないしtubular adenomaであり,典型的なvillous tumorとは肉眼的にも組織学的にも異なる.このような病変の定義は各報告者の間で必ずしも一致しておらず,今日まで顆粒集簇様病変とかⅡa集簇様病変,creeping tumor,花壇様隆起などの名称で報告されてきた.まるで絨毯を敷いたような形態を呈するこのような一連の大腸病変に対して‘結節集籏様病変’と呼称する”となっている.これだけの文章で,この種の病変のすべてが網羅されているとは確信できないが,それでも読者に1つの考え方を提起できたものと思う.

  • 文献概要を表示

 大腸の腺腫や早期癌などの腫瘍性病変の中には,頻度は低いが水平方向に比較的大きな発育を示す病変がある.従来からこのような病変は,Ⅱa集簇様病変,creeping tumor1),顆粒集簇型病変,結節集簇様病変2)などと種々の名称で呼ばれてきた.最近,結節集簇様病変に加えて,少数ではあるが表面型腫瘍で水平方向に比較的大きく発育する病変があることが知られつつある.このような表面型腫瘍も含めて表層拡大型大腸腫瘍に関するわれわれの意見を述べる.

  • 文献概要を表示

1.はじめに

 表層拡大型大腸腫瘍という言葉に対応する明確な定義はまだ存在しない.しかしながら日常の診断の場では,まれに広い面積を持ち,比較的に腫瘍の高さの低い症例に遭遇することがある.これらの症例の多くは,結節集簇あるいはLST(lateral spreading tumor)などの名称で呼ばれることが多いが,大きさは規定されておらず比較的小さな腫瘍が多い.この特集の表層拡大型腫瘍は,3cm以上と大きさの要素があるために,上記の結節集簇あるいはLSTと呼ばれている症例とは異なる特徴を持つ可能性がある.

 今回は,特集の企画の趣旨にのっとり,3cm以上で表層拡大型腫瘍とはどのようなものか,あるいはこの腫瘍を分類する必要があるのか否かを知るために,腺腫および早期癌で長径3cm以上の症例について検討した.

  • 文献概要を表示

 本号では表層拡大型大腸腫瘍を3cm以上に側方へ進展した腫瘍としている.自験例から3cm以上の腫瘍をみると,この大きさの腫瘍の98%以上は進行癌であった.しかし,3cm以上の病変でも少ない割合であるが,進行癌でない腺腫または早期癌がみられる.今までこのような大きな表層拡大した病変を代表するものとして絨毛腫瘍をその1つとして挙げることができる.絨毛腫瘍は絨毛様の腫瘤で粘液に覆われていることが多い.X線的にも粘液がない状態では絨毛による毛羽立ち像を認める.また,病変表層から粘液の分泌により病変の性状を明瞭に描出することが難しいことがある.病変の基底部の側面像で一見,腸壁の変形様の毛羽立ち像を認めることがある.絨毛腫瘍は絨毛腺腫から成る病変でその一部に腺癌もみられる.以上述べたような特徴が絨毛腫瘍にある.ところが,3cm以上側方に進展した病変には絨毛腺腫ばかりでなく,本誌第27巻4号で特集した結節集簇様病変がある.この病変では管状腺腫または絨毛腺腫から成る病変と,これらの腺腫が混在した病変があった.

 自験例で3cm以上側方に進展した病変から表層拡大型の病変について述べる.順天堂大学病院と昭和大学豊洲病院で経験した3cm以上側方に進展し,その大部分が表面型であった病変は28病変(Table 1)であった.つまり,通常にみられる2型の進行癌は含まないことになる.3cm以上側方に進展し,大部分が表面型であった病変の一部に,1cm以上の結節状に腫大した部分をみた病変を腫瘤性とした.また,小結節状の表面性状から成る丈の低い病変を集籏性とした.この集簇性とした病変の特徴はほぼ同じような大きさの小結節から成り,腸壁に変形を認めなかった.この集簇性で4.5cmの病変で陥凹があっても,陥凹面にも小結節状の模様を認めた病変では腺腫であった.

  • 文献概要を表示

 消化管上皮性腫瘍における表層拡大型という表現は,1942年にStout1)が,大きさに比べ深部浸潤が少なく,粘膜内を側方進展する胃癌を“superficial spreading type of carcinoma of the stomach”と記載して以来,わが国において臨床的にもよく用いられるようになった.その大きさや丈の高さおよび深部浸潤度の共通した定義はないものの,表層拡大型胃癌として数多くの研究報告がなされてきた2).食道においても“目立った隆起や陥凹がなく,長軸方向に5cm以上の拡がりを示す表在型癌を表層拡大型食道癌とする”と「食道癌取扱い規約」で定義され3),報告例が増加している.すなわち,消化管における表層拡大型腫瘍とは,垂直方向よりも管腔壁に沿って側方進展を主とする上皮性腫瘍の総称として理解される.

 表層拡大型という表現を大腸に適応する場合,できるだけ上部消化管において用いられてきた臨床病理学的特徴と共通していることが望まれる.したがって,表層拡大型大腸腫瘍とは,腫瘍の高さに比べ,腸管壁に沿って水平方向へ発育進展する傾向の強い大腸上皮性腫瘍で,ある程度の管腔を占拠したものとなる.この概念からすると,明らかな隆起を混在せず水平方向に拡がった形態の結節集簇様病変が含まれる(Fig.1).この腫瘍は顆粒ないし結節状隆起が集簇し,側方への発育傾向が強く,10cmを超えてもなお粘膜内にとどまる傾向がある4).欧米において,同様の肉眼形態を示す腫瘍は“carpet lesions of the colon”5)として紹介されているが,わが国と同じく大きさの割りに悪性度の低い組織学的特徴が述べられている.

  • 文献概要を表示

 一般に大きさ30mm以上の大腸の無茎性腫瘍はその95%以上が進行癌であるとされている1).また,表面陥凹型大腸腫瘍の発見の増加とともに,小さなうちから粘膜下層以下へ浸潤し,進行癌へと進展する経路が明らかになりつつある2)3).一方,表面型大腸腫瘍の中には大きさが30mm(大腸の直径が約30mmである)を超える大きな腫瘍でも,その大きさに比べて深達度が浅い病変も多数発見されている4)5)

 食道・胃においては表層拡大型癌の概念,定義,生物学的特徴は比較的明確にされている6)が,大腸における“表層拡大型大腸腫瘍”の概念や定義は明らかでない.そこで大腸の直径が約30mmであることから,villous tumorを除いた最大径が30mmを超える(大腸の半周を超える)表面型腺腫,または早期癌を今回は“表層拡大型大腸腫瘍”と定義し,その臨床像からこの表層拡大型大腸腫瘍という分類の意義について検討した.

  • 文献概要を表示

 筆者の印象では“表層拡大型大腸腫瘍”とは,腫瘍の丈はあまり高くならず,丈の低いⅡa,Ⅱb,Ⅱc様の形態のまま拡がっていく性格のもので,粘膜下層への浸潤をしないか,し難いものを指していると思われる.従来使われてきた肉眼分類でこれに当てはまるものとしては,結節が集簇し花壇状に隆起した結節集簇様病変1)が挙げられるが,それ以外にも結節状の凹凸のはっきりしない,表面は平滑に近い病変も存在する.

 このような形態を呈する病変に“表層拡大型大腸腫瘍”という名称を与えるとすればその定義をどのようにするか,またこの名称が本当に必要なのかの検討が必要である.そこで従来われわれが表面隆起型,結節集簇型(3結節以上),表面陥凹型と分類してきた病変2)を対象にして検討を加えた.

  • 文献概要を表示

要旨 大腸lateral spreading tumor-non-granular typeの2例を経験したので報告する.〔症例1〕は46歳,男性.主訴は便潜血陽性.注腸および大腸内視鏡検査で,横行結腸に扁平な側方発育型腫瘍を認め,腸切除術を施行した.病理組織学的には径35×33mm,深達度mの高分化腺癌であった.〔症例2〕は61歳,男性.虫垂炎術後の経過観察をしていた.注腸および大腸内視鏡検査で,横行結腸に変形を伴い陥凹部を有する側方発育型腫瘍を認め,腸切除術を施行した.病理組織学的には径30×21mm,陥凹部でsmに浸潤した高分化腺癌であった.2症例はともに顆粒を伴わない側方発育型腫瘍であり,いずれも腫瘍辺縁の花弁状はみ出し所見と腫瘍表面に溝を伴っている点で興味深かった.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は70歳,女性.右下腹部痛で受診した.注腸X線検査では盲腸に大きな,表面が顆粒状の平坦な隆起性病変が認められた.大腸内視鏡検査では回盲弁周囲に大きな結節状隆起があり,その盲腸側には表面が顆粒状の平坦な隆起部分が見られた.生検診断は高分化腺癌であった.切除標本では,6.O×5.Ocmの大きさの結節集簇型の病変であった.病理組織診断は高分化腺癌,病変中央の部分の1か所で粘液産生を伴う癌の腺管が粘膜下層に浸潤し,固有筋層まで達していた.また,特に周辺部では絨毛管状腺腫の所見が認められ,この症例の癌の成り立ちにはadenoma-carcinoma sequenceが考えられた.そして,この症例で見られた,腫瘍が側方に広く拡がり,粘膜下層以下へはごく一部で浸潤していたという発育形式はいわゆる表層拡大型腫瘍に当てはまる.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は68歳,女性.血便を主訴として入院した.注腸造影検査で直腸に径5cmの顆粒集簇状粘膜を認め,壁の伸展性は良好であった.直腸内視鏡検査では,粘膜はびらん状で,生検では高度異型度を伴った腺管絨毛腺腫で,大きさの点から直腸切断術を施行した.切除標本では6×4cmの拡がりを示し,組織学的には,ほぼ全体が中等度の異型度を示す腺管絨毛腺腫であったが,病変の中央部に,高度異型度の部位をfocalに3か所認めた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は62歳,男性.全大腸内視鏡検査で,直腸S状部に径約30mm,周囲粘膜とほぼ同色調,表面はほぼ平滑,中央部に小結節状隆起を持つ不整形の丈の低い隆起性病変を認めた.X線では境界がほぼ明瞭で表面を細い溝で区切られた丈の低い病変として描出された.体腔内超音波検査では,中心の小結節部位に一致して,腫瘍エコーの第3層内への浸潤様所見を認め,sm浸潤が疑われたが,粘膜下に生理食塩水を局注すると第3層はきれいに分離し,小結節部位も挙上した.総合的に判断して内視鏡的切除可能と考えEMRを施行した.病理組織学的には小結節状隆起の部位でsm微小浸潤を来した高分化腺癌であった.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は55歳,女性.便潜血検査陽性の精査目的で来院した.大腸内視鏡検査で上行結腸に半周性の丈の低い隆起性病変を認め,色調は周囲健常粘膜とほぼ同色調で,表面は結節集簇様を呈し,辺縁の一部に結節の粗大化を伴っており,結節混在型と診断した.境界および表面性状は色素撒布で明瞭となった.注腸造影検査では,表面が顆粒集簇様を示す長径約5cmのⅡa型の隆起性病変が上行結腸の腹側壁に描出され,病変部腸管壁の伸展性は良好であった.生検で高分化腺癌の組織像が得られた.病変の大きさと深達度を考慮して右半結腸切除術を施行した.切除標本では,大きさ5.0×3.3cm,高さ0.8cmのⅠ+Ⅱa型病変で,病理組織検査で深達度mの早期大腸癌と診断された.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は70歳の男性.早期胃癌の手術目的で当センターに入院となった.術前注腸検査で表面型隆起性病変を指摘された.注腸・内視鏡検査で腫瘍は約30mmの極めて丈の低い平滑な表面隆起型腫瘍で,その腫瘍辺縁が外に凸の“花弁状”,ないしは“偽足様”所見を呈していた.腫瘍は一部に隆起成分を持ちsm浸潤を疑った.切除した結果,33×25mmのsm1の高分化腺癌+高度異型腺腫であった.sm浸潤は多中心性で,組織異型度は,癌との鑑別が困難な腺管が連続性に混在していた.p53の免疫染色で腫瘍全体に過剰発現を認め,K-rasの点突然変異は認めなかった.本症例と同じ表面型隆起で,腫瘍辺縁に筆者らが呼唱する“偽足様”所見を有する腫瘍群といわゆる結節集簇様腫瘍とをp53の免疫染色とK-rasの点突然変異について検索した結果も合わせて報告する.

  • 文献概要を表示

〔患者〕66歳,女性.1995年3月7日午後1時ごろ,急に冷汗を伴う腹痛が出現し,近医で下痢症と診断された.8日深夜から腹痛に加えて下血も出現したため,精査目的に小吉胃腸科クリニックを受診した.末梢血液および生化学的検査では異常はなかった.

〔下行結腸注腸X線所見〕第2病日の腹臥位充満像では下行結腸に伸展不良,狭小化,非対称性の拇指圧痕像(thumbprinting像)が見られた(Fig.1a).腹臥位二重造影像では管腔の狭小化,拇指圧痕像,transverse ridging,辺縁不整像,バリウム斑を認めた(Fig.1b).第13病日の像(Fig.2)で一部に管腔の狭小化を認めたが,下行結腸全体の伸展は良くなっていた.haustraは崩れており([の部位),遠位側には横軸方向に平行して走る4本のひだ(←の部位)を認めた.バリウム斑は見られたが,辺縁不整像はなくなっていた.第30病日の像(Fig.3)では管腔の狭小化はなく,haustraの変形,屈曲・捻れを認めた([の部位).

  • 文献概要を表示

要旨 患者は34歳,男性.微熱・上腹部痛・食欲不振による8kgの体重減少をみたため,帯広市立病院を受診した.胃内視鏡検査で胃悪性リンパ腫が疑われ,生検では確定診断が得られず当科に紹介された.胃底腺領域,前庭部を中心として胃全体にたこいぼ状隆起が多発していた.生検では非特異的炎症所見のみであった.粘膜切除による組織所見で,上皮細胞内浸潤Tリンパ球の著明な増加が観察されたが,polymerase chain reactionによる遺伝子検索では反応性のものであった.この組織所見とdiffuse varioliform gastritisの臨床像は,Haotらの提唱するlymphocytic gastritisに相当していた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は78歳,女性,主訴は悪心,嘔吐,体重減少.上部消化管X線検査で十二指腸第2部に全周性の陰影欠損を認め,血管造影では同部に微細な新生血管と腫瘍濃染を認めた.原発性十二指腸癌の診断の下に膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は9×6cm,十二指腸内腔に乳頭状に発育し,肉眼的には大腸の結節集簇様病変に類似していた.病理組織学的には大部分は低異型度から高異型度を示す不規則な腺管の増生を認める高分化腺癌で,また一部には腺腫との鑑別が困難な部位もあった.深達度は粘膜下層までで,いわゆる早期癌と考えられた.本邦での原発性早期十二指腸癌の報告は自験例を含め163例であり,なかでも自験例は最大径で,また内腔閉塞を来したまれな症例と考え,発癌に関しての若干の文献的考察を加え報告した.

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 著者のLok Tio氏はオランダ,アムステルダム医療センターの消化器部門主任のTytgat教授と長年にわたり共同研究に従事してきた超音波内視鏡の専門家であり,ヨーロッパにおける先駆者の一人に数えられており,日本にも度々来日し知人も多い.

 氏の研究の特徴はその豊富な検査症例数と徹底した研究態度および視野の広さにあり,人種偏見の少なくない欧米の医学界において,十分な評価を得つつあるアジア系の著名な研究者である.

  • 文献概要を表示

 著者の二木 立氏は,臨床医で経済学者で,それぞれの分野で一流であり,特に後者としての氏は,現在のわが国での実証分析研究の第一人者であると筆者は思う.古くは,リハビリテーションでは上田敏と,社会科学では川上武と,医療経済学では江見康一らと共編著・翻訳をし,現在では,医療経済学に関する多くの単著を発刊し,それも売れる本を書いている.その背景には,科学的実証研究に基づいているからと言えよう.

 「まえがき」に“日本の医療費問題を国際比較の視角から実証的かつ批判的に検討し”,いわゆる“神話”“常識”を覆している.例えば,第1章で人口の高齢化,社会的入院が医療費増加の主因でないこと,第2章で医療技術進歩が単純に医療費増加をするのでなく,医療費抑制策により操作され,過度の医療費抑制が“医療の質”を低下させること,第3章ではリハビリテーション医療の原価計算より,承認施設は好転し非承認施設では悪化していること,第4章では地域ケアの普及と医療費抑制とが直接結びつかないこと,第5章では医薬品に関してマクロ経済学から薬価の高いこと,また新薬の技術評価を含めて臨床経済学研究の遅れていること,第6章では80年代の医療法人病院チェーンの急増と勤務医師の給与水準の低下が現在も続いていること等を実証している.

  • 文献概要を表示

 多田正大先生,長廻紘先生お二人の編集された「大腸検査法マニュアル」を通読させて頂いたが,まず感じたのがその内容の豊富さである.一般にマニュアルと言えば,座右の書として持つものではなく,初心者が通読して理解し修得すれば不必要になり,打ち棄てられるものが多い.しかし“マニュアル”を冠してはいるが,この書の場合は事情が全く異なる.

 本書は,大腸検査の技術修得というマニュアル本の要素を十分に持っていながら,他方では最先端の情報までかなり突っ込んで書かれている.例えば微小大腸癌や表面型,特に表面平坦(Ⅱb)・陥凹(Ⅱc)病変までが解説され,粘膜切除の標本の取り扱いや,実体顕微鏡の方法,意義まで,将来の研究材料としても十分役立つようなところまで記載されているのである.

  • 文献概要を表示

 本書は,日本で最初に“粘膜下腫瘍”に注目してその研究をライフワークとされた信田重光教授が中心となって編集されたモノグラフで,病理学的方面を中村恭一教授が担当している.カラー図版をふんだんに収載しているから,やや高価なのはやむを得ない.

 胃細胞診の草分けである信田教授は,序文にあるように1958年に世界で初めて胃細網肉腫の細胞診による診断に成功した.その驥尾について細胞診に携わっていた筆者には印象深い報告であったが,それを契機に消化管の非上皮性腫瘍に取り組まれてから今日まで,どちらかと言えば地味な主題である粘膜下腫瘍について研究を続けてこられた.第1章は食道から大腸まで粘膜下腫瘍の全体像について,17頁にわたる信田教授の豊富な経験に基づいた含蓄ある記述である.

編集後記 牛尾 恭輔
  • 文献概要を表示

 食道と胃では表層拡大型癌(superficial spreading type of carcinoma)という用語が使われ,学問的にも市民権を得,それぞれ特集号として編集されている.

 同じように大腸でも癌を含めて,表層拡大型腫瘍というような用語が使いうるかどうか,現状の新しい知見を含めて,検討されたのが本号である.最初の試みでもあり,筆者の見解もそれぞれ違うことから,主題も「いわゆる表層拡大型大腸腫瘍」とあえて“いわゆる”という文字がつけられている.各論文の内容をみると,結節集簇様病変,側方発育腫瘍(LST)の研究と症例が多く提示されている.

基本情報

05362180.31.2.jpg
胃と腸
31巻2号 (1996年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
3月18日~3月24日
)