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書評「日本の医療費―国際比較の視覚から」
西 三郎
1
1愛知みずほ大学人間科学
pp.202
発行日 1996年2月25日
Published Date 1996/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103943
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著者の二木 立氏は,臨床医で経済学者で,それぞれの分野で一流であり,特に後者としての氏は,現在のわが国での実証分析研究の第一人者であると筆者は思う.古くは,リハビリテーションでは上田敏と,社会科学では川上武と,医療経済学では江見康一らと共編著・翻訳をし,現在では,医療経済学に関する多くの単著を発刊し,それも売れる本を書いている.その背景には,科学的実証研究に基づいているからと言えよう.
「まえがき」に“日本の医療費問題を国際比較の視角から実証的かつ批判的に検討し”,いわゆる“神話”“常識”を覆している.例えば,第1章で人口の高齢化,社会的入院が医療費増加の主因でないこと,第2章で医療技術進歩が単純に医療費増加をするのでなく,医療費抑制策により操作され,過度の医療費抑制が“医療の質”を低下させること,第3章ではリハビリテーション医療の原価計算より,承認施設は好転し非承認施設では悪化していること,第4章では地域ケアの普及と医療費抑制とが直接結びつかないこと,第5章では医薬品に関してマクロ経済学から薬価の高いこと,また新薬の技術評価を含めて臨床経済学研究の遅れていること,第6章では80年代の医療法人病院チェーンの急増と勤務医師の給与水準の低下が現在も続いていること等を実証している.
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