胃と腸 31巻1号 (1996年1月)

巻頭言 「胃と腸」編集委員会
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 「胃と腸」第31巻第1号を皆様のお手元にお届けするにあたり,編集委員一同から御挨拶を申し上げます.

 「胃と腸」は昨年をもって,創刊から30周年の節目を迎えることができました.本誌がここまで継続することができましたのも,ひとえに読者の皆様からの熱い御支援の賜であると,編集委員一同,深く感謝しています.

今月の主題 胃MALTリンパ腫

序説

胃MALTリンパ腫 中野 浩
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 早期胃癌の診断が軌道に乗ったころ,胃疾患の検討会ではⅡcと鑑別を要する病変としてRLH(reactive lymphoreticular hyperplasia)がもてはやされていた.当時はⅡcとの鑑別がつかず,また病変内の潰瘍が難治性で,自覚症状も持続するということから胃潰瘍同様,手術されることが多く,切除胃の肉眼所見が出揃うこととなった.そして,X線・内視鏡診断,また頼りにされるようになった胃生検診断も手伝い,両者の鑑別は厳密な検査,読影により比較的容易になされるようになっていった.

 その後,胃潰瘍の手術が下火になるに従い,いったんRLHと診断すると手術を躊躇し,経過を観察する例も増加した.その中には比較的短期間に進行した悪性リンパ腫の所見を呈する例があったが,このような例の初回生検標本を再照会すると,最初から悪性リンパ腫と言ってもよい例もあった.また,かなりの経過後に悪性リンパ腫の所見を示した報告例も散見され,そのような例を見るにつけ,これは生検だけに頼っては危ないという実感が臨床側に生じた.

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要旨 胃のMALT型marginal zone B-cell lymphoma(MZBL)(別名,MALTリンパ腫)の組織診断基準とその運用,低異型度と高異型度のMZBLは肉眼所見(肉頗型など)を異にすること,MZBLの診断と生物学的悪性度を正確にするには,それに応じた肉眼所見の部から材料を採取すること,MZBLと推定される病変やHelicobacter pylori除菌で腫瘍が消失したと考えられるMZBLには,B細胞とT細胞免疫染色は不可欠であることを述べた.

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要旨 胃生検で経過観察された後に胃全摘が行われた,胃MALTリンパ腫の3例を提示し,経過中の生検組織像の見直しを通して得られた,生検診断での注意点,着目すべき点,生検診断の限界について触れた.MALTリンパ腫のH・E染色標本を用いての生検組織診断で最も問題となるのは,①異型リンパ球の認識,②小型リンパ球あるいは形質細胞が粘膜全層に浸潤している病変の評価,③複数回の生検の総合的評価,の3点であろう.①に関しては,核のくびれや小さいながらも核クロマチンが濃縮せずに核小体が見られるような核を,われわれの施設では重視している.②に関しては,この所見だけではMALTリンパ腫の診断根拠とならないが,RLHを含めたリンパ増殖性疾患を念頭に置くための手掛かりとなると考えられ,経過中に同じ部位からより有意な所見が得られれば,MALTリンパ腫を積極的に疑う必要がある.③に関しては,1回の生検で,例えば5検体中に1検体,明らかなcentrocyte-like cellやlymphoepithelial lesionなどの有意な所見が見られ,次の生検で同じ部位から5検体中2検体に有意な所見が見られたような場合の評価である.それぞれの回に単に異型リンパ球の記載のみにとどめたり,いたずらにRLHの診断を繰り返すのではなく,それまで得られた生検標本を見直しつつ総合的に判断することが肝要と考えた.

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要旨 胃原発MALTリンパ腫の診断は,臨床医のみならず病理医にとっても難しい.今回,外科的切除が行われたMALTリンパ腫15例を低悪性度10例,高悪性度5例に分類し,生検材料を病理学的に検討した.低悪性度MALTリンパ腫の生検診断に重要な組織学的所見は,細胞浸潤の程度,lymphoepithelial lesion,細胞異型の有無であった.診断上鑑別を要する病変として,良性炎症性病変,印環細胞癌,低分化腺癌,形質細胞腫,他の悪性リンパ腫が考えられた.更に,良性炎症性病変との鑑別にサザンプロット法による遺伝子解析が有用と思われた.高悪性度MALTリンパ腫の生検診断は容易であったが,肉眼形態からも低悪性度病巣内に高悪性度病変が存在することが推察可能であった.

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要旨 (1)病理組織学的に胃原発性悪性リンパ腫と診断された79例について肉眼型と組織型を比較した.腫瘤形成型の大部分は組織学的に高悪性度リンパ腫であり,表層拡大型の多くは低悪性度リンパ腫であった.(2)低悪性度リンパ腫であるMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫の特徴ならびに臨床的位置づけを明確にするために表層拡大型悪性リンパ腫および悪性リンパ腫と鑑別が必要なリンパ腫類似病変,すなわち良・悪性境界領域病変3例,ALH(atypical lymphoid hyperplasia)7例,BLH(benign lymphoid hyperplasia)5例を対象に肉眼所見,X線所見ならびに内視鏡所見を検討した.(a)X線所見:多数ないし密在する大小顆粒状陰影と散在する小陰影斑は良・悪性境界領域病変,MALTリンパ腫,ALHに多く,不整網状陰影は良・悪性境界領域病変,MALTリンパ腫に多く認められた.しかし,組織学的な悪性度との間に有意な関係はみられなかった.(b)内視鏡所見:白色調粘膜の中の発赤斑や易出血所見は各病型に認められ,悪性度の判定指標にはならなかった.敷石状所見は良・悪性境界領域病変とALHに多く見られたが,MALTリンパ腫には40%と少なかった.以上のことから,今のところ各病型は表層拡大型の低悪性度リンパ腫として包括して位置づけるべきで,前述したX線所見や内視鏡所見は表層拡大型の低悪性度リンパ腫に共通した特有な所見の1つと解釈すべきであると思われた.

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要旨 1988年以降の非腫瘍性RLH,低悪性度および高悪性度MALTリンパ腫を対象とし,3群のX線・内視鏡・超音波内視鏡(EUS)像を検討した.X線・内視鏡上,凹凸顆粒状粘膜,多発びらん・潰瘍は3群に共通して認められたが,低悪性度MALTリンパ腫は易出血性,Ⅱc様陥凹の頻度が高く,他所見も合併し多彩な像を呈した.高悪性度MALTリンパ腫は上記に加えて粘膜下腫瘍様隆起,耳介様周堤を高率に認めた.EUS上,非腫瘍性RLHが単独所見(第2,3層の肥厚)のみが多いのに対し,低悪性度MALTリンパ腫は2,3の所見が複合したものが優勢で,高悪性度MALTリンパ腫では低エコー性腫瘤形成に他の2,3の所見が複合して認められた.所見の共通性から非腫瘍性RLHが低悪性度MALTリンパ腫の前段階である可能性が示唆され,MALTリンパ腫群のほうで,所見がより多彩,複合化する傾向を認めた.H.Pylori感染率は非腫瘍性RLHで100%,低悪性度MALTリンパ腫で70%,高悪性度MALTリンパ腫では50%であった.また,低悪性度MALTリンパ腫でも深達度sm深部以上になるとリンパ節浸潤は高率であった.以上の結果から,非腫瘍性RLHと低悪性度MALTリンパ腫の鑑別診断は,臨床上極めて重要であり,多彩なX線・内視鏡所見とEUS所見を組み合わせることによってある程度可能であることが示唆された.

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要旨 胃MALTリンパ腫22例と反応性リンパ腫(RLH)12例を対象にして両疾患の鑑別方法を中心に検討した.内視鏡所見および鉗子生検所見では両者を明確に区別することが困難な症例が認められた.一方,診断目的で施行した内視鏡的粘膜切除法(EMR)により,MALTリンパ腫の6例中5例(83.3%),RLHの4例中4例(100%)で確定診断が可能で,EMRによるjumbo biopsyは有力な診断方法と考えられた.また,MALTリンパ腫に対する遺伝子診断の感度は60.0%,特異度100%,正診率76.0%で,感度はやや低いものの特異度に優れ,補助診断法として有用と思われた.Helicobacter pylori(以下H.pylori)の陽性率はMALTリンパ腫で95.2%,RLHでは100%と高率で,除菌治療によって著明に改善した症例を認めたことから,H.Pyloriは両疾患と深い因果関係があることが示唆された.様々な方法を用いても鑑別が困難な場合は,H.Pyloriの存在を確認してまず除菌療法を行い,治療効果をみることが第1選択の治療法と考えられる.

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要旨 IsaacsonらがMALTリンパ腫の概念を提唱して以来,胃のリンパ増殖性疾患の診断は大きく変わりつつあるが,その確定診断は定義の明確さに比べて容易ではない.今回,RLHと診断された24例を彼らの基準に準じて見直し診断し,low-grade MALTリンパ腫,AL(atypical lymphoid cell proliferation)とされた12例の自然経過を検討した結果,low-grade MALTリンパ腫8例中4例,AL 4例中全例が生検上,慢性胃炎の像を呈するようになった.更にMALTリンパ腫およびALと診断された10例に対してH.pylori除菌を施行し,6例が生検上,慢性胃炎の像を呈した.また,遺伝子診断の可能性をIgHおよびbcl 2-JH再構成,p53,APC,DCCのLOHについて検討した結果,IgH再構成が補助診断に有用であることが示唆された.以上の結果を踏まえ,現時点でのリンパ増殖性疾患の臨床的取り扱いについても言及した.

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要旨 近年増加傾向がみられる胃悪性リンパ腫の中で,MALTリンパ腫について議論される機会が多くなっている.過去28年間に経験した胃悪性リンパ腫111例のうちMALTリンパ腫は33例(29.7%)であった.この33例を検討した結果,胃の全体を占める症例が21例(63.6%),腫瘍最大径の中央値は17cm,深達度はsm26例(78.8%),mp5例,ss2例,リンパ節転移はn1(+)21.2%,n2(+)18.2%,計39.4%,D2以上のリンパ節郭清は31例(93.9%),全摘が25例(75.8%)であった.1例が再発死亡したが5年生存率は85.4%であった.MALTリンパ腫は腫瘍径が大きくリンパ節転移率が高いが,適切な手術によって良好な治療成績を得ることができた.

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〔患者〕67歳,男性.主訴:便通異常.現病歴:1995年7月,排便異常を訴えて来院.注腸検査で直腸のカルチノイドを指摘され,切除が必要であると診断された.入院時理学的所見:直腸診で右前壁に固い腫瘤を触知した.また,カルチノイド症候は認められなかった.臨床検査成績:CEAなどの腫瘍マーカーに異常はなく,尿中・血漿5-HIAAの定量も正常であった.

〔大腸内視鏡所見〕肛門縁から11cmの部位に母指頭大の粘膜下腫瘍の形態を示す半球状の隆起性病変が認められた(Fig.1a).隆起の表面は平滑で,やや黄色調を呈し,血管透見像が認められた.隆起頂部に発赤した不整陥凹を伴っており(Fig.1b),同部位からの生検でカルチノイドと診断された.拡大観察(Fig.1c)で腫瘍全体は正常上皮のパターンを呈していたが,特に頂部の陥凹周囲ではpit間は開大し,上皮の菲薄化が認められた.

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〔患者〕33歳,女性.1994年1月ごろから4~5行/日の下痢があり,同年8月近医を受診し,当科へ紹介された.痔核があり,諸検査でアフタ様病変のみから成るCrohn病が疑われたが,確診を得ず,薬物療法(salazosulfapyridine 3g/日)で経過をみた.1995年1月初めから下痢(10行/日),39℃の発熱,体重減少(3kg/月)と増悪をみたため同月9日当科入院となった.

〔初回大腸X線所見(1994年8月)〕全大腸に中央に1~2mmのバリウム斑を伴う小透亮像(矢印)を散在性に認めた(Fig.1a,b).

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 阪神・淡路大震災は兵庫県南部に甚大な被害をもたらし,芦屋市に限っても死者4百余名,全世帯の50%の家屋が全半壊,一部損壊を加えると90%にも及ぶ壊滅的打撃を受け,市民の精神的負担は計り知れないものであった.当院は定床272床,上部消化管内視鏡検査2,400例(年間)の中規模公立病院であるが,芦屋市の北側高台にあり東は西宮市,西は神戸市に隣接し,今回の震災では最も被害を受けた地域にある.しかし幸いにして建物自体の損傷は少なく,被災患者の対応に追われたが,消化管出血を伴う胃潰瘍患者の入院が目立った.

早期胃癌研究会

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 1995年10月度の早期胃癌研究会は,渕上(松山赤十字病院消化器科)と小平(帝京大学第1外科)の司会で,10月18日(水)に開催された.

〔第1例〕79歳,男性.大腸マラコプラキア(症例提供:札幌北楡病院消化器科鈴木岳).

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 1995年11月の早期胃癌研究会は,第35回「胃と腸」大会として第37回日本消化器病学会大会の前日の11月8日に名古屋市中小企業振興会館(吹上ホール)で開催された.司会は芳野(藤田保健衛生大学第2病院内科)と中野(藤田保健衛生大学消化器内科)が担当し,5例が供覧された.

〔第1例〕75歳,男性.早期食道癌(症例提供:岐阜大学放射線科 鈴木雅雄).

レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う

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 消化管ポリープの内視鏡治療にあたって,大きい有茎性病変を切除する際,蜂巣らの考案した留置スネアを用いて,前もって止血操作を行ったうえで切除することは偶発症の予防に有効である.われわれも大腸の有茎性ポリープに対して留置スネアによる治療を試みた際,高周波スネアと留置スネアが絡まって離脱困難になった1例を経験したので報告し,その対策などについて討論してみたい.

症例 62歳,男性排便時に新鮮血下血を認めるようになったため当院を受診した.注腸X線検査を行ったところ,S状結腸に大きさ15mmの広基性ポリープ,および大きさ5mmの亜有茎性ポリープが指摘された(Fig.1).内視鏡治療を行うためにスコープを挿入したところ,大きいポリープは分葉し,太い茎を有するポリープであることが判明した(Fig.2).ポリープが大きく,治療にあたって出血することが危惧されたため,留置スネア(HX-20およびMH-477)でその基部を緊縛した後,切除を行うことにした.

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要旨 患者は60歳,男性.胃潰瘍の経過観察の目的で行われた近医の内視鏡検査で食道の異常を指摘されたため来院した.食道造影所見では,Imの全周性に及ぶO-Ⅱc型表層拡大型表在癌の所見で,辺縁の壁硬化・伸展不良を認めた.内視鏡所見では,陥凹内の凹凸不整とトルイジンブルー斑状濃染部を認め,推定深達度m3と診断した.術後病理所見では,深達度m1の中分化扁平上皮癌の中に,狭い範囲で粘膜下層深部への類基底細胞癌成分の浸潤が見られた.

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要旨 患者は64歳,男性.注腸X線検査で,大きさ2.5×1.5cmの浅い陥凹性病変を描出し,内視鏡検査では,褪色調の粘膜を呈する陥凹部と,その口側に恒常性のある小隆起を認めた.帯域強調処理および超音波内視鏡検査を行い,Ⅱc型の粘膜下層浸潤癌と診断し,腸切除術を施行した,病理組織学的検討では,陥凹部は高分化型の粘膜内癌であり,小隆起部は粘膜下層へのわずかな癌の浸潤と,リンパ濾胞の増生と膿瘍の形成による構成であった.小隆起部はすべてが癌の浸潤ではなく,深達度診断を行ううえで,注意を要する形態であった.表面型早期大腸癌の浸潤を考えるうえで,興味深い症例であると考えられた.

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要旨 患者は61歳,男性.腹痛を主訴に来院し,腹部X線検査で腸閉塞と診断され入院した.注腸X線検査,小腸造影検査で回盲部に比較的表面平滑な隆起性病変を認めた.大腸内視鏡検査で回盲弁に嵌頓した,表面平滑で一部びらんを伴う発赤調の粘膜下腫瘍様病変を認めた.生検でカルチノイド腫瘍の診断を得,右半結腸切除術を施行した.回盲部は小腸悪性リンパ腫の好発部位であり,同部位のびらんを伴う発赤調の粘膜下腫瘍様病変の診断においては,悪性リンパ腫とカルチノイドの鑑別診断に特に留意すべきと考えられた.また,消化器系カルチノイドにおける造影CT検査および腹部血管造影検査は,病変の進展形式を的確に把握するうえで有用であることが示唆された.

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欧文目次

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 消化器癌の中で最も手術が難しいものの1つで,しかも一般に治療成績が非常に悪いのが肝門部胆管癌である.この癌の手術において世界的に抜群の成績を上げておられ,わが国で最もaggressive surgeonの誉れ高い名占屋大学第1外科・二村雄次教授と東海病院長・早川直和の名コンビが,ちょっと変わったすばらしい手術書を刊行された.

 序文で梶谷流二村(名古屋)道場という言葉を使われているように,両氏は消化器外科学の発展に偉大な功績を残された故・梶谷鐶先生に師事し薫陶を受けておられる.本書はその梶谷先生の教えを引き継ぎ,更なる創意工夫を積み重ね,その細部におけるノウハウを広く全国の若き外科医に教授すべく執筆された書である.助手の目で手術を追うという発想は,両氏の手術に対する考え方を端的に表しており,いかにチームプレーを重視されているかがうかがえる.

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 本書は信田重光・獨協医科大学名誉教授,中村恭一・東京医科歯科大学教授の両氏の編集で,消化管粘膜下腫瘍の診断と治療について,多くの症例を提示しながらわかりやすく解説している.本書の冒頭に,著者が順天堂大学・福田外科に入局し,細胞診のテーマで研究を始めた経過が述べられている.著者は外科教授として教職にあり学会に活躍されたほか,日本臨床細胞学会理事の要職にあり,文字どおり細胞診に一生をささげたといってよいと思われる.

 その信田教授が最初に興味を持った粘膜下腫瘍についての,長い研究生活で得られた知識と経験の集大成であるから大変価値のある,また貴重な著書である.ご本人は“この領域の医学は内視鏡診断,超音波診断およびCT,MRIなどの進歩で大きく変わったし,これからも新しい知見が加わって行くので,本書は現時点での道標にすぎない”と本書の序文で述べているが,本書の内容は十分この領域の研究者を満足させるものと思う.また文献も約500個近くが収めてあり,臨床の実際場面だけではなく,レファレンスブックとしても,関係論文の作成などを含めて大いに役立つであろう.

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 金沢大学放射線科の松井修先生の編著で,この度「肝の画像診断」が上梓された.著者とは同世代で仕事の分野も極めて似通っており,大きな関心をいだいていた折,ついに出た待望の書である.肝臓なかでも肝細胞癌の診断と治療は日本が世界に誇りうる分野の1つであり,著者を中心としたグループから発表された研究成果は間違いなく日本を代表する仕事であり,一流外国雑誌を通じて放射線科のみならず内科,外科の領域に大きなインパクトを与えている.

 本書は全5章から成る.268頁のB5判でありながら,総数229図(うち,カラー写真13枚)と18の表が使われているが,手順よく解説されており読者の関心を引きつけてやまない.内容は超音波から,CT,MRI,血管造影そしてRIにおける検査手技から肝の良性,悪性の腫瘍まで,日頃見る著者特有の緻密さと粘り強さで,ていねいに順を追って述べられている.びまん性の肝疾患は,ともすれば腫瘍性病変に隠れてしまいがちな領域であるが,肝炎,肝硬変,脂肪肝,ウィルソン病など多くの領域にわたって解説されており,その広い視野に驚かされる.引用文献は総数600を超えており,その1/4は著者らの心血を注いだ論文によって占められているのを見ると,改めて金沢大学の業績を思い知らされる.また,それらが各章の終わりにまとめて記載されており,使いやすい.

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 Gastrointestinal blood loss with low dose (325 mg) plain and enteric-coated aspirin administration: Savon JJ, et al (Am J Gastroenterol 90: 581-585, 1995)

 これまで低用量錠アスピリン(325mg,本邦ではバファリン1錠にほぼ相当)は比較的副作用がないとされてきたが,消化管出血に対する影響をアスピリン腸溶錠と通常低用量錠で比較検討を行った.

編集後記 吉田 茂昭
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 数多くの消化器がんの中で胃悪性リンパ腫ほど最近様々な知見が明らかにされ,かつての理解が一新されたものはない.特にIsaacsonらが提唱したMALTリンパ腫の概念は,腫瘍(節外性B細胞リンパ腫)の発生機序を免疫学的な機転に求めた点で画期的であり,従来,ともすればwastebasket的に用いられてきた反応性リンパ増殖症(RLH)の内容を再吟味するよい機会をわれわれに与えている.このような考えから,本号にはMALTリンパ腫を主題として取り上げ,第一線で活躍中の諸先生に執筆をお願いした.

基本情報

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胃と腸
31巻1号 (1996年1月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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