胃と腸 20巻5号 (1985年5月)

今月の主題 食道静脈瘤の硬化療法

主題

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要旨 食道静脈瘤の治療法として①門脈への流入血流量の減少(動脈結紮法,脾摘),②静脈瘤血流に対する迂回路の作製(門脈減圧手術,選択的門脈減圧手術,副血行路新生促進),③門脈系と食道静脈瘤の分離(食道静脈瘤直達手術,内視鏡的硬化療法,静脈瘤塞栓術),④出血部位除去(胃全摘,食道全摘)などが実施されてきたが,理論的な根拠を持って治療が進められるようになったのは,WhippleらのPresbyterian学派の研究業績によるものである.静脈瘤の治療は,古典的対症治療(直達手術),非選択的シャント手術を経て,現在は選択的シャント術,直達手術,内視鏡的硬化療法の3者が並行して行われているが,いずれも今なお,完成された治療法ではなく,その適応,優劣についても議論がある.今後更にそれぞれに理想的な治療法への改良が必要であろうが,今後の治療法の開発を考えるに当たっては,Whippleらによって確立された門脈圧亢進症の概念,門脈系副血行路動態の分析と共に,最近明らかにされつつある静脈瘤領域のhyperdynamic stateをも考慮して進めていく必要があろう.

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要旨 食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法施行例の予後について,内視鏡的栓塞療法を施行した肝硬変症を原疾患とする食道静脈瘤症例231例(急性出血例34例,待期的治療例90例,予防的治療例107例)の生存期間,再発率および遠隔死因から検討した.その結果,本治療法後の食道静脈瘤出血率は3.0%(7/231)であり,本治療法後の予後は比較的良好であると思われた.しかし,再発率が10.8%(25/231)であるので,本治療法には長期的治療効果があるとは言い難いと思われた.本治療法では治療効果延長のための再治療は容易で,かつ遠隔死亡例の死因の中に本治療法が直接関与したものはないので,本治療法を食道静脈瘤の“分割治療法”と考えたい.

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要旨 食道静脈瘤例の緊急止血および出血予防と静脈瘤の荒廃を目的として138例434回の内視鏡的硬化療法を施行した.手技は1%Aethoxysklerolの静脈瘤外および内の併用注入法である.緊急内視鏡時に活動性出血を示したのが23例あった(噴出性出血は9例)が,20例の止血に成功し,87%の止血率であった.硬化療法後の静脈瘤の縮小,消失(荒廃)は89%の症例(78/88)に認められた.特にF1以下まで荒廃された症例(68例)では再出血は4例(6%)と低率であった.硬化療法後の累積生存率は,手術適応基準内の58例では1年97%,2年94%,3年87%,5年82%であり,手術不能と判定された62例では1年56%,2年32.8%,3年12.8%であった.

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要旨 近年,食道・胃静脈瘤に対する内視鏡的硬化栓塞療法が普及し,緊急止血のみならず,持続的な静脈瘤消去効果も期待しうるものとなっている.われわれは1983年から無水アルコール,ヒトトロンビン,1%Aethoxysklerolを血管内に注入するETP法を行っており,現在までに183例(723回)に施行した.緊急止血率は93.8%であり,158例86.3%がほぼ完全に静脈瘤の消失をみた.肝不全で死亡したものは8例4.4%である.嚥下困難感や軽度の疼痛などのほか,重症合併症はない.長期予後をみると,6か月後に軽度の静脈瘤が再発したものが4.7%,12か月で8.9%であり,再出血を来したものは2例である.まだ問題点は残っているが,将来,内視鏡的硬化栓塞療法が食道・胃静脈瘤の治療の第一選択となると確信している.

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要旨 内視鏡を用いて食道静脈瘤内に直接塞栓凝固剤を注入する食道硬化療法を施行後,何らかの原因で死亡した剖検例12例について検討した.エタノールアミンが静脈瘤内に十分量注入された症例では,粘膜下層の静脈瘤の完全な消失がみられた.しかし,長期経過観察例では粘膜下層の静脈が消失しても粘膜固有層に新たな拡張した静脈の出現がみられた.一方,エタノールアミンが適確に静脈瘤内に注入されずparavascularに注入された症例ではUl-Ⅲ~Ⅳの深い潰瘍を形成し,その潰瘍の変化は通常の食道潰瘍に比し,広範囲で炎症細胞浸潤も強かった.

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 並木(司会) 食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法,いわゆるinjection sclerotherapyは既に45年前から始められ,いろいろな変遷を経て今日に至りましたが,最近この治療法についての関心が非常に高まり,これを行っている施設も増えてきました.そこで今日は,この問題を座談会で取り上げてみようということになりました.

 実際に本法をよくやっておられる先生方として外科2人,内科2人のほかに病理の立場から荒川先生においでいただいております.荒川先生は門脈圧亢進の病態,それに伴う食道静脈瘤について病理の立場から長年研究しておられますので,こういった治療方法がいかなる意義を持つか,またどういう問題点があるか,などをお話し願いたいと思います.

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〔症例の見どころ〕Im,右後壁,15×10mm,深達度mmの早期癌である.患者は50歳,男性.来院9か月前より熱いものを飲み込む際に,軽い前胸部痛を感じていたが放置していた.外来における初回のX線検査で,中部食道右側壁の伸展不良と同部の複線化を認め,“食道隆起性病変,癌疑い”と診断した.その後の内視鏡検査および生検にて癌と確診し手術した症例である.本症例のX線所見をみると,病変を正面像で捉えるより,側面像で捉えたX線像のほうが,異常所見を指摘しやすいことがわかる.このことは食道微細病変のX線診断において共通しており,拾い上げ診断では,辺縁およびその近傍粘膜の異常を読み取ることが重要である.

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 昨年7月26日から3日間,国立がんセンターでWHO国際胃癌情報センターの第3回総会が開催された.

 今回から新たに加入した米国,中国,韓国,フィリピンはもちろんのこと,代表者が変更した国もあって半数ぐらいが入れ替わったので新鮮な会となった.WHO西太平洋地域事務局長の中島宏先生,WHOジュネーヴ本部癌部門の主任Dr.Stjerns Wärdも参加した.日本からは,胃癌研究会の梶谷鎧会長をはじめ45名が参加した.

胃癌診断と天気予報 中澤 三郎
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 昨年の秋のことである.ある会議で胃癌診断の成績について話が出た.初めは胃癌の深達度診断は現在でも半分くらいしかできないのではないかということであったが,次第に初回診断のほうに話題が移り,X線検査,内視鏡検査でも80%前後しか能力がないなど,初回診断の評判は頗る悪かった.X線診断もこれだけ多くの人が熱心にやっているのだからもっと向上してもよさそうだし,内視鏡診断にしても胃カメラからファイバースコープへの進展,それも側視,直視,斜視の出現など診断能が高まるはずなのにこのありさまである.まあ,胃生検という手段を誰でもが使えるようになったので“つまんで出れば良いし,出なければnegativeだ”という安易な気持ちに流れることによるのだろう.

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 内橋克人の「幻想の『技術一流国』ニッポン」(新潮文庫)に,「リスク高く,道のりの遠い『基礎研究』は欧米に任せ,自らはその成果のみ鵜の目鷹の目で探し回った.西にモノになりそうな技術あり,とみれば羽音高く飛んでいって,口についばんで持ち帰り,自社の開発技術者たちの前に投げてみる.たちまち『応用研究』,『開発研究』が開始される」(ママ)という高度成長期の口本の技術開発の姿勢が指摘されている.われわれ臨床研究者にも,たいへん痛烈な言葉である.文献の渉猟の目は,なにかNeuesはないかと「鵜の目鷹の目」である.

 電子内視鏡(electronic endoscope)の開発において,超LSI王国といばっている日本が,その技術を内視鏡の世界にもってこれなかった学際的視野の狭さを,このたびも思い知らされた.だから,このところ憂麿である.H2プロッカーの開発でも,いかんなく日本の開発技術の後進性,創造性のなさが示されているが,電子内視鏡でもすぐ「追いつけ」,「追いこせ」が始まるだろう.そして,またたく間に,より優れたものに改良されるだろうと思っている.

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要旨 動悸と浮腫を主訴とした29歳女性で,その後28か月間経過をみているMénétrier病の1例を報告した.検尿正常,便潜血反応陽性で,低蛋白血症,低Ca血症,鉄欠乏性貧血,無酸症を伴っていた.胃X線,内視鏡検査で穹窿部から体下部にかけて巨大皺襞を,幽門前庭部には萎縮性変化を認めた.胃生検で腺窩上皮の過形成と強い細胞浸潤像を認めた.蛋白漏出試験では高値を示した.以上の所見より低蛋白血症を伴うMénétrier病と診断した.治療にはトラネキサム酸は全く無効で,臭化プロパンテリン療法でTP量の上昇を認め,更に臭化プロパンテリンとシメチジンとの併用療法でTP量は上昇を示した.その後シメチジン単独療法を行ったが,TP量は8か月間にわたり漸減した後,著明な上昇を示し,現在は安定した値であり,肥厚していた胃壁および胃の大きさの正常化,巨大皺襞の改善,皺襞ならびに皺襞間表面の顆粒状変化は消失した.現在患者はシメチジン療法により正常な日常生活を送っている.筆者らは低蛋白血症を伴うMénétrier病では,外科的治療の前に,臭化プロパンテリン,シメチジンによる単独あるいは併用療法を試みるべきであると考えている.

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要旨 患者は20歳男性で下痢,口腔内潰瘍,陰部潰瘍のため入院した.下痢は3か月,ほかは1か月持続した.入院時X線,内視鏡検査では回腸から直腸まで,びまん性に多数の小潰瘍があり,左側結腸では周堤を伴う不整形の浅い潰瘍を認めた.また,部分的には潰瘍が縦配列を示し,縦走潰瘍像を呈した.入院後,100日間prednisolone,salazosulfapyridineなどによる保存的治療を続けたが,大量下血が改善しないため,大腸亜全摘を施行した.病理組織学的検査では,潰瘍はUl-Ⅱの浅い潰瘍で炎症の主体は粘膜内に限局しているが,潰瘍底部にあたる部分では炎症細胞浸潤は漿膜にまで達していた.以上の所見より縦走潰瘍,全層性炎症,更にアフタ性潰瘍を初期病変とした小腸・大腸Crohn病と考えた.自験例のごとき縦走潰瘍の初期と思われる所見は今後Crohn病を検討するのに際して興味ある事象と考えた.

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要旨 患者は41歳の女性で主訴は悪心.胃X線検査にて前庭部に巨大な軟らかい感じの隆起性病変を認め,内視鏡検査では表面平滑な粘膜下腫瘍様隆起で,表面に小さく浅い潰瘍形成をみた.広基性病変であるが頭部は移動性があり,一部は十二指腸球部へ出たり入ったりしていた.術前に悪性リンパ腫を疑い手術を行った.切除胃の肉眼所見では,10×10cmの大脳回転を思わす巨大な隆起性病変であり,隆起部を持ち上げると,隆起の茎部は約5cmと広く,胃粘膜の皺襞の上に乗っかっており,有茎性であることがわかった.また一部に浅い潰瘍を認めた.割面では腫大した皺襞に一致して,粘膜下層を中心とする肥厚を認めた.組織学的には粘膜の底部から粘膜下にかけて線維性の結合組織の増生と線維芽細胞の増加が認められた.線維は細く,かつ巻くような配列もみられ,神経線維を思わせる像であったが,線維の硝子化などは認めなかった.その中に好酸球が多数浸潤しており,組織学的には典型的な胃好酸球肉芽腫であった.

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要旨〔症例1〕17歳,女性.1983年2月16日,就眠前にdoxycycline 1錠を水なしで服用.翌朝より前胸部痛が出現.食道内視鏡検査にて切歯より30cmの食道に不整形の潰瘍を1個認めた.第30病日には潰瘍は治癒していた.〔症例2〕52歳,男性.1983年10月28日,就眠前にdoxycycline 1錠を少量の水で服用.夜間に前胸部痛出現.食道内視鏡検査にて切歯より28~30cmの食道に円形の浅い潰瘍を3個認めた.第10病日には潰瘍は治癒していた.1個の錠剤の服用によって多発性潰瘍ができるのは,就眠中の体位の変換,食道の蠕動などに伴う薬剤の移動によると考えられた.本邦報告例17例を集計し,自験2例を加えた19例について若干の検討を行った.

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要旨 消化管重複症の中でもまれな管状型の食道重複症を経験したので報告する.患者は51歳,男性.肝硬変および糖尿病にて外来通院中に嚥下時の咽頭牽引感を訴えたため,食道造影および内視鏡検査を施行した.食道造影検査で,上部食道,下部食道,更にEG junctionにて相互に交通した,2本の管腔構造を認めた.内視鏡検査では,同様の所見が得られ,副食道と思われる管状構造においては更に2か所の隔壁を認めた.内視鏡直視下の粘膜は,2本の管腔構造とも正常食道と変わりなく,ルゴール染色にても同様に染まり,生検にても両者とも重層扁平上皮を示した.以上より管状型の食道重複症と診断した.

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 ABO式血液型は,1900年にK. Landsteinerによって発見され,臨床のみならず,古くから親子鑑定や犯罪捜査にも応用されてきた.近年,血液型物質抗原の研究が進み,その発現の相違は末端糖鎖構造のわずかな違いによることが明らかとなり(Table 1),また,赤血球だけでなく,ヒト各種組織内にもABH型抗原物質の存在が知られている.

 最近,われわれは胃生検標本の取り違えを,血液型物質の検索によって証明し,不必要な手術を未然に防止できた症例を経験した.

Refresher Course・15

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患者:57歳,女性.

主訴:特になし.

 患者は全く自覚症状なしに当センターの胃集団検診を受け,異常なしとされたが,年齢的に胃癌のhigh risk groupとみなされて内視鏡検査を受けることになったものである.

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撮影法

質問 ルーチンの注腸検査の撮影方法,注腸の際ルーチンに圧迫する場所など具体的に教えてください.

 丸山 原則として私は分節的に取り分けていくという方針です.大きなフィルムで全体を撮る方法はしません.同じ部位,例えば,直腸,S状結腸,あるいは,下行結腸の半分ぐらいというように,各部位を2つないし3つぐらい合わせて,その1つの部位を違った体位で最小限2枚ないし3枚撮るというのを原則にしています.

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欧文目次

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 ある時釈尊のもとへわが児に与える薬を求めに来た女があった.女は腕の中の幼児が既に死んでいるのに気づいていなかった.釈尊は女に,“昔より,かつて一度も死者を出したことのない家からケシ粒をもらってきて児に与えよ”と教えられた.女は死んだわが児を抱いて家々を訪ね歩き,ついに死とはいかなるものかを悟るに至って,初めて愛児が死んでいるということに気がついたという.釈尊が愛児の死んでいることを直接告げられなかったのは,女に対する憐憫の情からということもあろうが,それ以上に,死を理解するに至る過程を重視されたために違いあるまい.かように,“死”は人間の事象のうちでも最も普遍的かつ日常的なものでありながら,それを本当に理解することは容易なことではない.目前に繰り返される死を何度となく経験することによって初めて死を真に理解するに至る,という時間的経過が必要なことは,現代においてもなんら変わることがない.

 近年,わが国でも脳死に対する論議がしばしば大きく取り上げられているが,その多くは,臓器移植との関連においてか,または,いわゆる尊厳死をめぐる問題として取り上げられるかである.しかしこれらの視点から論ぜられるとき,脳死の認識とその判定の問題は,しばしば“死を認識すること”ではなく,“死なせること”についての議論となってしまう.

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 Fecal fat concentration in patients with steatorrhea: Bo-Linn GW, Fordtran JS (Gastroenterology 87: 319-322, 1984)

 胃腸疾患患者は脂肪便の程度が同一の場合,膵不全患者よりも激しい下痢を有するとされている.著者らは,この仮説を評価するために以下の検討を行い,脂肪便性下痢患者における便中脂肪濃度の臨床的有用性

を報告している.

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 “統計学”と聞いただけで拒否反応を示してしまう人は割合に多い.医学分野での研究に従事し,あるいは臨床実務に携わり,データを分析し,判断を迫られる人々の間でもまた然りであるようである.本書はこれらの人々にとって,統計学に対して勇気を持たせてくれる絶好の書であり,利用度の高い手引書でもある.基礎知識がなければ先へ進めない,内容をよく理解してからでないと理論も手法も応用することができない,というのはもっともであるが,ときには,他の真似を繰り返し行い,その技工を身につけてから改めて理論・知識の修得をするのも1つの方法である.本書の利用者はその意味で,たとえ統計学を学ばれたことがなくても,本書例題の解法を真似されることによって,自ら得たデータの分析・判断ができ,実務に対応ができるようになるはずである.

 本書の特色の1つは例題がまことに豊富なことである.しかも,それらのほとんどすべてが著者自らの接した臨床結果を基にしたものであるから,利用者は自分の研究課題,内容を本書例題のそれと比較し,一致点,類似点を捜すことは容易である.あとは説明文を読み,例題の解法に従えばよい.また豊富な例題と自分の問題とをつき合わせていくうちに,統計学的処理の方法に慣れ,興味を抱かれるようになるのは必然である.

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 Course and outcome of chronic pancreatitis: Ammann RW, Akovbiantz A, Largiader F, et al (Gastroenterology 86: 820-828, 1984)

 慢性膵炎の自然経過はまだよくわかっていない.著者らは20年間にわたって245人の慢性膵炎患者について疼痛,膵機能,石灰化,手術,生存率についてprospectiveに検討した.その結果,アルコール性石灰化膵炎145人では85%に発症から平均4.5年以内に疼痛の緩和がみられ,石灰化と膵機能障害は病悩期間が長くなるにつれて進行する.すなわち石灰化は慢性膵炎発症後5.12年,膵機能不全は平均5.6年以内,糖尿病は平均5.72年以内に起こっており,患者の3/4は約8年以内にこのstageに入る,疼痛の緩和は著しい膵機能の悪化,石灰化の増加の時期にほぼ一致している.これは痛みが膵の分泌能力に関係していることを示唆している.また,アルコール性再発性膵炎のうち主としてpseudocystによる疼痛の持続・再燃を繰り返す76人は手術がなされているが,永続的な疼痛の緩和を示した患者の割合は手術例,非手術例において同様で,その手術方法においても差異はみられなかった.

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 Cimetidine, cigarette smoking, and recurrence of duodenal ulcer: Sontag S, et al (N Engl J Med 311: 689-693, 1984)

 喫煙は十二指腸潰瘍再発の重要な因子であり,禁煙はシメチジン投与よりも再発防止には重要と考えられる.シメチジン(以下C)の長期投与が十二指腸潰瘍の再発を防止しうるか否かを検討する目的で,19施設において内視鏡で治癒を確認した370人を,C200mg1日2回就寝前,C300mg1日2回,C400mg1日1回就寝前,およびplacebo(以下P)投与の4群に分け,6か月後,12か月後には全例に内視鏡検査を施行したほか,症状再発,便潜血陽性,ヘマトクリット5%以上下降,メレナのいずれかが認められたときにも内視鏡検査を行って,12か月間経過観察した.胃液酸度を含めて,各群間に有意差はなかった.

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 Computed tomographic findings in bowel infarction: Federle MP, Chun G, et al (AJR 142: 91-95, 1984)

 腸梗塞は老齢者の多くなる現在,増加しつつある疾患であるが,診断はしばしば困難でしかも死亡率は高い.現在CTは急性の腹痛にも利用される機会が多くなってきており,本疾患に遭遇することが予想される.著者らは,7例の腸梗塞確認例のCT像から,本疾患の診断に有用なCT所見を検討した.

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 Carcinoma of the gastric remnant in a U. S. population: Schuman BM, et al (Gastrointest Endosc 30: 71-73, 1984)

 1922年Balfourが,消化性潰瘍の手術後,残胃に癌が発生したことを最初に記載して以来,現在に至るまで胃の手術が胃癌発生に対する危険因子であるか否かの論争が続いている.今回著者らは,アメリカにおける残胃癌の発生頻度の検討から,胃の手術後の経過観察について述べている.

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 Effect of painless rectal distension on gastrointestinal transit of solid meal: Youle MS, Read NW (Dig Dis Sci 29: 902-906, 1984)

 結腸過敏症や潰瘍性大腸炎などの大腸疾患患者がしばしば上部消化管症状を訴えるが,これらの症状の幾つかは,大腸の刺激によって上部消化管の運動性が反射的に抑制されるためと説明されており,動物実験で神経を介する反応であることが示唆されている.

編集後記 福地 創太郎
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 門脈圧充進症に伴う重篤な合併症としての食道静脈瘤破裂に対する非観血的止血法として,内視鏡的硬化療法は近年急速な発達を遂げ,臨床的に不可欠な治療手技として定着しつつある.しかし,その方法としては,血管内注入と血管外注入,両者併用法があり,硬化剤としても,それぞれ種々の薬剤が利用されており,更に注入量その他の細かい手技も諸家により微妙に異なっている.このような各種の治療手技の長所・短所の比較を含め,本法の長期遠隔成績,その有用性と共に,限界と副作用などを明らかにするため,本特集号が企画されたが,先年不幸にも逝去された杏林大学外科故相馬智教授が中心となられて編集企画委員会が持たれたことを報告し,故教授の御冥福を心からお祈りする次第である.

基本情報

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胃と腸
20巻5号 (1985年5月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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