呼吸と循環 25巻11号 (1977年11月)

巻頭言

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 Kay博士はニュージーランド,カンタベリー大学工学部教授である。彼は大戦中から潜水艦のソナーなどを研究している超音波装置の有名な研究者であるから,御存知の方も多いと思う。最近は盲人用超音波メガネなどでジャーナリズムにもとりあげられている。人間的にもすばらしい方だが,彼の発明になる数々の装置もME機器として仲々魅力のあるものが多い。6月中旬,数年ぶりに彼を東京に迎え,持参した超音波心弁膜疾患鑑別診断装置(仮称)を拝見する機会を得た。

 この装置は小型テープレコーダーくらいの大きさで,中に超音波発振装置,エコー受信装置,電池などが内蔵されている。この発射超音波はノコギリ波(周波数は不明)により周波数変調されている。発射超音波と受信エコーの周波数差Δfは,被検対象物と振動子との距離により変化するから,これを可聴音に変調すれば,対象物との距離を出力音周波数(ピッチ)の相違として検出することができる。また対象物が動けば,これに伴なってピッチが変る。対象物が壁のような単純な面であれば,出力はほぼ純音となる。しかし反射面が凹凸のある複雑な構造ならば,それを反映して複雑な音色を呈する。

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 血管の生理機能における平滑筋の役割は,筋収縮と弛緩による血管の縮小および拡張現象,すなわち血圧調節の維持に関与することである1)〜5)。この調節機構は筋細胞自身の変化と共に神経,ホルモン,autacoidその他の化学的調節をもうけている。

 他の平滑筋と同様に血管平滑筋の収縮を発生する機序には細胞内自由Ca++の増加が関係しウサギ肺動脈では10-7M以上の濃度に上昇すれば収縮を発生する(平田雅人,未発表)。この濃度は消化管平滑筋の例としてよく用いられる結腸紐(taenia coli)よりも1/5〜1/10低い濃度である6)。この自由Ca++を増加させる機構と部位については充分な知見が得られてはいないし,さらにCa++によって活性化される平滑筋の収縮蛋白の部位についても現在2つの仮説がある。すなわち,1つはmyosinのlight chainに存在するphosphokinaseを活性化するという機構である。これはKendrick-Jones達が軟体動物の筋(斜紋筋)の収縮機構はtropomyosinが存在するにもかかわらずmyosinのlight chainが活性化されるのが直接原因であると推測した7)

講座

呼吸ガスとしてのN2 吉田 稔
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 大気中に78.09%存在するN2ガスについては,長い間呼吸生理学の分野では研究上の興味,関心の対象外にあり,種々の呼吸ガスの中にあっては,まま子stepchild扱いにされて来たといえよう1)

 元来N2ガスは有害,有毒なガスmephitic gasと考えられ(Rutherford,1772),これによっては生命を保つ事ができない所からLavosierはN2をAzote (Nitrogenの古名)とも呼んだ。つまりN2は生体のガス交換に必要なO2を希釈するためにのみ存在しているのであって,生体の種々の代謝機構にとって何ら有用性を持たず,かつ生理学的にもその重要性は見出されていなかった。

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 超音波を用いてはじめて心臓病の診断に成功したのは,SwedenのEdlerらである。それは1950年代のことであり,僧帽弁狭窄で僧帽弁前尖エコーが特徴的な拡張期プラトーを呈することがすでに報告されている1〜4)。しかしながら,1960年代の後半に到るまで,超音波はもっぱら僧帽弁エコーのみを検査対象としていた。心エコー図が僧帽弁エコーから脱皮するきっかけは,Feigenbaumらの心のう液貯留の超音波診断(1965年)に始まるが,何と言5)っても心エコー図により心室中隔,左室後壁などの左室エコーが同定されたことが,現在の心エコー図発展につながるものといえる。1969年,Poppら6)は心室中隔エコーの同定にはじめて成功し,心エコー図による右室・左室径計測のきっかけを作った。さらに心エコー図の意義を決定的にしたのは,Diamondら7)により心房中隔欠損で心室中隔の奇異性運動(paradoxical motion)が認められることが明らかになったことである。このDiamondらの業績以来,心室中隔奇異性運動を呈する種々の疾患が,相次いで報告されるようになり,心エコー図診断の中における心室中隔運動の位置は,弥が上にも高まってきた。

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 心筋梗塞後の心筋破裂には,心室自由壁の穿孔による心臓破裂,心室中隔穿孔および乳頭筋断裂があり,特殊なものとして心室自由壁破裂後に破裂部と心膜との間に癒着を生じて起る仮性心室瘤がある。

 言うまでもなく心臓破裂はきわめて重篤な合併症であり,一たび起るとほとんど致命的であり,治療は非常に困難である。CCUの普及した今日,さらにこれらの症例に遭遇する可能性があり,早期診断ならびに早期治療が望まれる。

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 前回に示したように,Pco2に対する換気の応答はHypoxiaによって増強される。OxfordのLloyd,Cunninghamらは,その増強を双曲線として取扱った。

 ここで,DはhyperoxiaにおけるCO2応答曲線のスロープ,Bは同じくV=0でのPco2の値。Cはhypoxia刺激によりCO2応答曲線が無限大となるPO2,C+AのPO2の値でCO2応答曲線のスロープは2Dとなる。

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 RI(Radioisotope)ガスによる局所肺機能の測定法は,シンチレーションカメラの開発1)と電算機とのシステム化によって急速な進歩をとげ,定性的あるいは定量的な検査が臨床面でも広く利用されつつある。われわれは放射線医学総合研究所のサイクロトロンの始動により生産されている短寿命陽電子放出核種(11C,13N)を用いて,各種肺疾患の病態生理学的診断への応用について検討しているが,従来より施行している133Xeによる測定法2)に比較して,RI検出装置,RIガス吸入装置,呼気ガス処理法および遮蔽法など,測定機器,検査方式にはかなりの相違がある。ここでは,おもにこの2核種に大別して,それぞれの測定装置,検査法およびデータ処理の実際について,われわれの経験をのべてみたい。

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 術前肺機能検査は従来からもっぱら肺切除術における手術適応の限界をきめる目的で広く行なわれてきており,肺切除限界をあらわす各種のCriteriaが提唱され用いられてきている。

 しかし,肺切除術における術前の肺機能障害の程度と術後の呼吸不全発生頻度との関係は,retrospectiveに種々な解釈は加えることができたとしても,術後の呼吸管理の進歩した現今では,個々の症例について術前の肺機能検査成績のみからその適応限界を明確に設定することはあまり意味のないことであると考えられる。

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 原発性肺高血圧症(以下PPHと略す)とは肺および心に原因となるべき基礎疾患が証明されずに肺動脈圧が著しく上昇している一つの臨床症候群であり,現時点ではあくまでも臨床診断名である1)〜3)

 従って,確定診断のためには右心カテーテル法が必須の検査となるが,PPHはかなり稀な疾患のために血行動態について多数例を集積した研究は全く行なわれていない。

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 今日まで,多くの循環生理学者が,心拍出量の調節にさいしては,末梢血管因子は心臓因子と同程度あるいはそれ以上に重要であることを強調しているのに,末梢容量血管の機能に関する臨床的研究は,うっ血性心不全のみならず,他の心臓・血管系疾患についても,静脈圧--とくに中心静脈圧に関する研究以外ほとんどなされていない。

 しかし,実験動物で容量血管のコンプライアンス値を測定した成績はいくつかあって,Guytonら1)は犬を用いて,全静脈系における一定変化に対する容量の変化は,全動脈系における同じ圧変化に対する容量の変化の少くとも25(18〜30)倍であると報告し,また,Shoukas and Sagawa2)も犬を用いて,全循環系の血流を停止させずに,全循環血管床のコンプライアンス値を測定し,その平均値は1.96±0.10(SE) ml/mm Hg/kg体重であったと報告している。

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 Paroxysmal supraventricular tachycardia (PSVT)の発生機序に関しては異所性興奮説1)とReentry説2,3)があるが最近の電気生理学的研究ではReentryがその主体をしめている。今回我々は房室結節でのReentryに最も重要な働きをするDual AV nodal pathways4,5,6)の存在につき,房室伝導曲線5,6)を中心とし,ヒス束心電図学的に若干の検討を加えたので報告する。

基本情報

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呼吸と循環
25巻11号 (1977年11月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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