呼吸と循環 24巻9号 (1976年9月)

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 臨床心電図学上みられる波形の変化には,今日なお電気生理学上,説明できない多くの点がある。しかし臨床心電図学の知見の進歩は,心筋生理学の発展に大きく寄与している。

 著明なU波の増大とT波の平低化,そのためのT-U波の融合と,それによる見掛け上のQT延長は低カリウム血症心電図としてよく知られている。原発性アルドステロン症や周期性四肢麻痺が屡々心電図所見の異常から診断されることもある。また低カルシウム血症によるST部の延長を主としたQT延長もよく知られている。ところが血清電解質に異常なく,著明なU波,見掛け上のQT延長を示す場合に屡々遭遇する。

綜説

血圧調節機構 入内島 十郎
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 哺乳動物の血圧は単に毛細血管に血流を流す目的には高過ぎる。毛細管の上流にある抵抗血管を通して血流を流さねばならないのでこのように高いのである。しかし,このような抵抗の存在は血圧,血流の調節のてめにどうしても必要なのである。

 血圧は血管抵抗と心拍出量によって決定されるが,特に前者が重要で,これは抵抗血管の平滑筋の活動状態によってきまる。これを調節する機構は神経やホルモンによる遠隔性のものと,局所性のものとがある。

 種々の血圧調節機構があるが,そのうち神経性のものは速やかに作動し,その他のものは反応がおそい。これらの機構の血圧を復元する能力はそれぞれの利得によってあらわすことができる。血圧調節機構のうち腎・体液機構は無限大の利得をもち,血圧レベルは最終的には腎の機能によって決定されるといわれるが,なお検討の余地があるように思われる。

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 急性心筋硬塞症により生ずる心不全の発生機序は他の心臓病によって生ずる心不全とは異なる。即ち心筋の酸素の要求に応ずるだけの酸素供給をする冠血流が急激に阻止されたという病態変化で生ずる訳である。従って心筋酸素消素消費の決定因子の是正が治療の主眼となる。これらの因子は,(1)心拍数,(2)前負荷,(3)心収縮力および(4)後負荷である。それ故にこれまでは主として,(1)心拍数の是正には薬剤および人工ペースメーカー,(2)前負荷の是正には利尿剤,水および電解質の調節,(3)心収縮力の増強には(Digitalis), dopamine, glucagon等が試みられてきた1)。しかし利尿剤は肺充血には有効でも左心機能自体を改善しないし2),Digitalisも心筋硬塞の初期には心筋虚血を強めてしまうとも報告されている3)。そこでこれまで検討されなかった(4)の後負荷の調節,即ち末梢血管拡張剤の効果が検討されるようになった4)5)6)

呼と循ゼミナール

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 一般に正常心筋線維においては,不応期は一旦脱分極を起した細胞の再分極の終了をもって終るvoltage-dependentなものであり伝導系各部位における不応期の長短はその部における活動電位の持続時間と相関している。換言すれば,活動電位の持続時間が最大の部分における不応期はやはり最大であり,Myerburgらは伝導系におけるこの最大の活動電位持続(不応期最長)を有する部分を"gate"と名付けた。すなわち彼らのいうgating mechanismとは早期興奮を起させた場合,その連結期の短縮に伴い連結期がgateにおける活動電位(不応期)の持続より短くなった場合,そこで伝導の途絶が起るというものであり,このgateはプルキンエ細胞が一般心筋に終る点より約2〜3mm中枢側に存在するとしている。すなわち房室伝導系各部位における活動電位の持続はヒス束から末梢のプルキンエ線維といくに従って長くなり上記の部分で最大となり,この部分をすぎると逆にプルキンエ線維,心筋細胞と末梢にいくに従って短縮するという。このような不応期はfrequency-dependentでありrateが増加すれば不応期は短縮するが,その変化率は伝導系各部により異なり必ずしもparallelではない。

心室中隔機能 友田 春夫
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 従来心行動に関する研究は主に左心室を主たる対象として行われ,心室中隔はその一部として扱われる傾向にあった。また中隔の位置する部位の特異性のため,在来の方法ではアプローチが困難であったこともあり,心室中隔そのものの機能については最近に至るまで十分検討されなかったといえよう。しかし最近超音波法により諸疾患における中隔運動に関する特異的な所見が続々と報告され,一方ではこれらの新知見が中隔の果している役割について,新たな疑問と混乱を提起しているように思われる。

 さて関ら1)はイヌにおいては心室中隔は左右両心室にとって,重量・表面積ともほぼそれぞれの30%を占めるが,実験的に中隔の44%を切除しteflon feltで置換しても心機能には影響が認められず,中隔は左心室の収縮力に関与するより,むしろ心室腔を正常容積比で両心室に分ける役割りの方が重要であるとしている。しかしcineangiographyにより臨床例における中隔の運動を解析すると,正常例では心室中隔は主に左心室の駆血に相当関与しているように見える2)。一方,右室心筋を破壊しても右室機能低下の徴は出現しないことが以前から報告されているが,この際右室機能の大半を心室中隔が行なっているとする考えもある3)

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 基礎および周辺の技術の進歩が人間をまったく新しい環境に立入ることを可能にしている。この新しい症候群は,そのような時に,予期されない現象が発生する可能性を示すのみでなく,その現象の科学的な解析,裏づけ実験,演繹などの差によって,異なる結論を導びきうる可能性など,きわめて示唆に富むものを汲み取れるので,紹介してみよう。

 1971年にDukeのグループが,その後Pennのグループが,いずれも深度200 feet (7絶対気圧)以上のsimulation divingの際に,皮膚の症状を主とした異常の発生をみた。古くから,急速すぎる減圧の時の皮膚症状がskin bendsとして知られているが,上記の例は安定した圧力環境で発生しており,減圧症の1つとは考え難い。特徴的なことは,いずれの場合も,高圧のヘリウム・O2(O2分圧ではおよそ0.2気圧)環境で他のガス,たとえばN2あるいはネオンを吸入した時に症状の発生をみていることである。Lambertsenらによりisobaric gas counterdiffusion syndromeとして報告されたものは,耐えられないほどのpruritis,皮膚病巣,前庭機能障害を主徴とする。

講座

酸素の化学 諸岡 良彦
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 生理現象に関連した生化学反応には,酸素の関与するものが多い。酸素分子は簡単な二原子分子であるが,分子軌道中の電子配列の違いにより種々の励起状態をとり,化学的にもいろいろ興味ある反応性を示す。

 大気中に存在し,ふつうわれわれが酸素と呼ぶのは,二原子分子中最も安定な電子配列をとる三重項状態のもの(3Σ—g)である。励起分子中,最もエネルギーの低い一重項状態(1Δg)は寿命も長く,これを利用した有機化学反応が盛んに研究されている。また一電子還元体であるsuperoxide ion (O2—)は,接触酸化や電解酸化の活性種の一つであり,oxidaseやoxygenaseによって促進される酵素反応でも重要な役割をはたす。

Flow-volume curve 玉谷 青史
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 Flow-volume曲線に関する研究は古くはDayman1)あたりまで逆のぼることができよう。換気力学的な面からの検討についてはすでに諸先輩によって詳細な報告2〜10)がなされているのでここでは概説程度にとどめる。この講座でFlow-volume曲線がテーマにとりあげられた理由は,最近諸施設でFlow-volume曲線がルチーンに測定され始めているが未だそれによる診断が十分になされていないことにあろう。

 1被験者において経時的,あるいは気管支れん縮剤,拡張剤11〜16)の前後などと比較した用い方には有効であろうが,Flow-volume曲線の正常範囲を決めて異常者を検出するためには未だ多くの問題が残されている17〜20)

Overdriving 杉本 恒明
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 本文でいうoverdrivingとは心臓を固有の自動性の頻度よりも速い頻度でdriveすることをいう。生理的な状態では下位の自動性中枢は洞結節によりoverdriveされているわけである。overdriveは人為的には心臓の電気的ペーシング,交感神経刺激,迷走神経遮断などといった形で行なわれ,overdrive効果を除くためには洞結節破壊,房室ブロックの作成,あるいは迷走神経刺激などが試みられる。overdriveはそれによって心臓の電気生理学的性質が変化することから,不整脈の病態解明に役立ち,また不整脈の診断・治療の目的で応用されているものである。

 不整脈は異所性自動性亢進によるものとリエントリーによるものとに大別されるが,これに対してoverdriveは1)異所性自動性の抑制と促進,2)リエントリー路の新生と中絶,という一見相反する効果をもつ。本文ではまず動物実験におけるoverdriveの不整脈に対する効果を例示し,これにもとづいてoverdriveの臨床的意義を考えてみることにしたい。実験はすべてペントバルビタールナトリウムで麻酔したイヌでの急性実験である。

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 近年,アイソトープによる急性心筋硬塞(以下,AMIと略す)の硬塞巣の描出が注目されており,なかでも,テクネチウム−99mピロ燐酸(以下,99mTc-PYPと略す)を用いた報告が多い。99mTc-PYPは水酸化燐灰石(Ca10(PO46(OH)2,以下,apatiteと略す)に親和性を持ち,本来,骨シンチに用いられてきた1)。AMIの硬塞巣にカルシウムがapatiteの形で集積するとの仮説に基づき2〜4),犬に実験的心筋硬塞を作製し,99mTc-PYPを静注したところ,硬塞巣がシンチ上のhot areaとして表われることが明らかになった5)。この事実に基づいて,1974年から1975年にかけて,米国において99mTc-PYPによる心筋シンチグラム(以下,99mTc-PYPシンチと略す)の臨床応用が行われ,本法がヒトのAMIの硬塞巣の探知および部位の決定にきわめて有用なことが確認された6〜8)。我が国でも,99mTc-PYPシンチの応用は,石井ら9),著者ら10)によって報告されている。

 さらに,最近,99mTc-PYPシンチにより,硬塞巣の面積(以下,MI areaと略す)および重量(以下,MI weightと略す)を知ろうとする試みがなされてきた。

Bedside Teaching

肺塞栓症 長谷川 淳
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I.肺塞栓症例

 患者:H. K.,63歳,男,鉄工。

 主訴:1)胸痛,2)血痰。

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 血中CO2レベルの変動が血流動態に大きな影響を及ぼす事は良く知られている34)。動脈血CO2分圧(PaCO2)が心拍量(Qt)に及ぼす影響に関しては,全身麻酔・調節呼吸下で,換気条件(胸腔内圧)を一定にして,PaCO2を20〜80mmHgの範囲に変動させた場合,QtはPaCO2の増減に正比例して変動する事が報告されている1,7,25,31,37,43)

 一方,全身に亘る各臓器・組織への血流量に及ぼすPaCO2の影響は決して一様ではない。例えば,上記のPaCO2の変動範囲内では,hypocapniaの際には各局所への血流量は脳38),消化管3,27)では減少するが,腎20,22),骨格筋21)では変化しない事が報告されている。更に,hypercapniaの際,血流量は脳38),消化管3,27)では増加し,腎20,32),骨格筋26)では変わらない事が示されている。

基本情報

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呼吸と循環
24巻9号 (1976年9月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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