看護学雑誌 60巻6号 (1996年6月)

特集 フォーカスチャーティング—看護の中身が見える記録・2

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導入前の状況

 当院では,1989(平成元)年11月,看護記録および看護に関する記録用紙の内容充実を図るため記録検討委員会が発足した.現在の構成員は,11セクションより1名ずつの委員と担当課長と筆者の13名である.

 検討を開始した当時は,POSで記録をしていたが,内容の不備や各病棟の間に差がみられるなど,その改善と充実が検討された.具体的には,

●S,Oの連続でA,Pが出てこない,書けない

●サマリー自体が書けていない病棟が多かった.つまり看護過程が表現・記録されていなかった

●9か所ある病棟のうち,2病棟でPOSを用いていなかった(産科婦人科・小児科病棟では行なった処置・薬物投与等を経時的に記録していた.精神科病棟では,患者の反応—看護婦のかかわり—患者の反応・変化を経時的に記録していた)という状況だった.

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はじめに

 今日では,患者を全人的に把握したうえで,個別性を重視し,継続した看護が要求されるようになった.私たちはこのような充実したケアを行なうために日頃から,記録に費やす時間の短縮を図る必要性を痛切に感じている.同時に,本来看護記録には,患者の個別性・症状の変化・全体像が把握できるもの,そして看護の継続性がみえるもの,簡潔明瞭な記述であることが望まれる.

 当病棟でも,記録の充実を目指し検討を重ねてきた.そこで1994年に記録システムを変更したが(後述),依然として次のような問題が残った.

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はじめに

 病院におけるCQI(Continuous Quality Improvement)活動は,いまや第三者医療機能評価と絡んで医療界の関心事である.益田赤十字病院では1994年から95年にかけて看護記録から質の評価を試みた.さまざまな評価の切り口のなかで,「看護記録」にしぼったのは次のような理由による.

 過去10年間,看護の質の改善に努力した結果,看護内容は明らかに向上し,期待どおり職場の活性化も図れたが,筆者は折にふれて見る看護記録に,実際の看護活動に見るこまやかなケアが表われていないもどかしさと,患者の状態変化が明確に拾えないこと,記録の重要性に気づいていない看護婦の存在が気になっていた.また,看護記録の土台はいうまでもなく『看護』であり,看護過程という問題解決の方法を用いてヘルスケアを必要とする人々に,可能な限り最高の看護ケアを保証する看護活動の記録であるべきである.看護記録は患者の管理に不可欠であり,基準看護の審査や看護学校の実習施設の審査の重要なポイントともなっていることから,看護の質の向上に連動した記録の充実,ケアに生かせる記録を実現する目的で監査した.

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Part 1

導入に関するQ & A

Q:フォーカスチャーティングはどの科でも可能なのでしょうか?適さない科があればそれはどうしてですか?

A:どの科でも可能です.適さない科はないと思います.

連載 カラーグラフ

切手のなかの看護婦たち・6

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1 ドミニカ 世界保健機関(WHO)の25周年を記念して発行された.(1973.8.20)

2 ガボン ガボン赤十字社のために発行された.(1965.6.25)

なるほど人体—Human Body World・6

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 人間の身体は,外から見ると一応のところ,左右対称です.顔などをじっくり見ると,わずかに非対称なところもありますが,全身の骨格と筋肉は,左右がちょうど対応します.

 これに対して身体のなかの内臓を解剖してみると,とても左右対称とはいえません.心臓は胸のやや左側によっていますし,大動脈は脊柱のやや左側で大動脈弓というアーチをつくります.そしてなによりも消化器は,左右対称からほど遠いものです.胃と腸は,まさにお腹のなかでねじれて,とぐろを巻いています.胃腸は,最初からこんなにねじれた形をしていたわけではありません.もともとは,口と肛門をつなぐ真っすぐな管でした.でも真っすぐなままでは,長さがたりません.胃腸は栄養分を消化吸収するために,十分な粘膜の表面積と,そして長さが必要なのです.

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 絵に多少でも関心のある人は,ルノワールといえば,やわらかな明るい色調の絵を思い浮かべるだろう.この作品も一目でそれとわかる作品である.陶磁器の絵付け師から始まった画家ルノワールの生涯の終わりに近い頃の作品である.実はこれと同じ構図の絵を何度も描いている.最初の作品は1886年,白と紅殻のチョークで描いたデッサンである.ルノワールはその前年にはじめて父親になった.その感動をこの絵に託したのであろう.丸い乳房を無心に吸う赤ん坊の口のデッサンを何枚も描いている.小さな足をいじりながら安心しきって乳を飲む赤ん坊,素直なしぐさで授乳する母親のおおらかな気持ち.この世でこれほど平和で美しいものはない.同じテーマの作品のなかで,一般によく知られているのは1887年に描かれたパステル画「アリーヌとピエール」である.

 ルノワールは1898年頃から父親と同じリウマチ性関節炎に悩まされた.発作が度重なるごとに悪化していった.1900年に手と腕が変形し,1911年からは車椅子の生活を余儀なくされていたが,指は手のひらに向けて折れ曲がったまま硬直し,リウマチ特有のひどく変形した手に絵筆をくくりつけてキャンバスに向かった.亡くなるまで病に負けず,あの美しい明るい,色の絵を何点も描き上げたのである.この母子像が描かれた1915年はルノワール74歳,妻アリーヌが56歳で亡くなった年である.妻の一番美しい姿の母子像が再び描かれた.

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看護から建築に転身—「家」を支え,生活を支える

 澤田さんは,外科病棟,透析,循環器クリニックと,看護現場を経験されたのち,現在,住宅リフォームをメイン事業とする「(株)ヤシマデザイン」に勤務されている.肩書はケアコーディネーター.営業,プランニング(エイド機器,社会資源の活用なども含む),工事監理,アフターケアに至るまで顧客と現場との間に立つ.ときには顧客に代わって行政とかけ合う場面もあるという.そして,看護を建築という領域でかたちにしつつある.

 がん末期の祖父を在宅で看取った経験が,澤田さんの看護婦となった伏線であり,同時に「家」へのこだわりのはじまりでもある.看護界から建築業界へと転じた直接の動機は,みずから病いに伏し,車椅子での生活を送った経験.いまでも,ひと頃ほど深刻ではなくとも「病いと上手に付き合う生活」に変わりはないのだそうだ.そして,障害を身をもって知った澤田さんの目が,クリニックからの往診・訪問看護でかかわった患者の家に,ある「欠落」をとらえた.「障害を持った方,高齢の方が,自分の生活,社会を取り戻せる空間になっていないんですよね.たとえ手すりがあったとしても,これがなければ動けないんだと思わせるような,剥き出しの機能性でしかなかったり…….風景が見えない部屋もあります.動きたいって思える空間ではないんです」.

連載 「付添看護」とは何だったのか・2

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 「付添婦になる!」と決意したものの,早々ふっきれたわけではない.病室に泊り込む毎日にはたして耐えられるだろうか.顔見知りに会って気まずい思いをしないだろうか.さまざまな不安,看護婦としての不合理なプライドが,足を引っぱる.しかし迷ったところで停滞するばかり.思いきって求職活動を開始する.

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 看護理論には好き嫌いがあるようだ.大学教員でも看護理論積極派と,あまりふれたがらない派とに分かれる.研究をする際には,その研究の方向性を定める概念の枠組み(Conceptual framework)が必要だが,看護理論でなくて,看護以外の分野の概念を使ったり,さらに自分で概念を組み立てる人などに分かれる.博士課程になると,既成の理論を使うよりは,自分で組み立てることを推奨される.しかし,大学によっては,看護理論を積極的に使うことをすすめているようだ(たとえば,テキサス大学,アラバマ大学など).

連載 援助場面からまなぶ家族看護学・12(最終回)

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 筆者である私たちも,透析部門を持つ総合病院をフィールドとして,実際に家族看護実践を試みています.そこで,締めくくりとなる今回は,私たちが援助を試みた患者・家族から看護職へ送られたメッセージを紹介し,家族看護を実践の場でどう機能させたら良いのか,現場での経験をふまえて描いてゆきたいと思います.

連載 しなやかな人間関係・6(最終回)

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 この連載では,私たちナースがふだん職場で遭遇するさまざまな出来事を取り上げながら,「しなやかな人間関係」を築くためのいわばコツを紹介してきました.これまでの5回では,ナースの目を通して見たかたちで話題を展開してきました.最終回の今回は,少し視点を変えて,患者サイドに映るナース像について筆者の体験談を交えながらいくつか紹介します.

連載 法の目でみるあなたの職場・12(最終回)

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職場の仲間と手をつなごう

医療従事者の地位向上を目指す労働組合

 前回まで,労働条件に関する医療従事者の権利や労働条件を改善していく方向について考えてきました.

 ただし,職場で現実に権利を行使できなかったり,改善してほしいことがあっても経営者に要求できないというのでは意味がありません.実際,「そうは言っても,職場の状況を考えると言いづらい」などと悩んでいる方も多いのではないでしょうか.

連載 —海外文献紹介—Current Nursingピックアップ・27

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ケア/ケアリングについて

 ケア/ケアリング(care/caring)という言葉には「心配する,気にかける」「世話する,看病する」などの意味がある.看護ではケアという言葉は,従来より「慢性疾患患者のケア」「褥瘡ケア」のように広く看護行為を指すものとして用いられてきたが,今世紀前半よりケア/ケアリングを,看護の本質を意味するものとして扱う傾向がみられるようになった.

 たとえばクルーター(Frances R. Krueter)は,1957年のNursing Outlook誌で「ケアとは治療とは同類ではない……ケアはお情け(sufferance)や寛容さ(tolerance)ではなく同情(compassion)を,責任を果たすという気持ち(asense of duty)ではなく優しさ(tenderness)と思いやり(consideration)を,無関心さ(indifference)の代わりに関心(respect)と配慮(concern)を求めている」と述べ,「この人々のために手助けをするという姿勢のない看護活動はすべてケアではない」と言いきっている.

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自分を本当に愛し,人間・身体・健康をもっと大きな目で理解するために

米国セラピーの最前線から

 『からだのスピリチュアリティ』の著者A・ローエン(医学博士)はその著作を通じて私が敬愛する米国人セラピストである.以前彼の最初の主著『からだと性格』(創元社)を読み,その身体と人間についての深い洞察と理解に,そしてなによりも多くの事例からうかがわれる彼の治療と患者に対する真摯で誠実な態度,人間への愛情とに深く心を打たれた.この印象は今回紹介する本書でますます強まったが,著者80歳で執筆の本書ではさらに人間・健康・世界観の広まりと円熟,ユーモアが伝わってくる.

 ところで私はすでに多くの療法(セラピー)にかかわっていたが,初作『からだと性格』で自分について多くの気づきを得,非常に感動したので彼の創始した療法,バイオエナジェティクスのセラピストをすぐに探した.現在私の住む旧西ドイツでは彼の療法は相当有名で,こんな片田舎にもすぐ数名のセラピストを近隣に見つけることができたほどだ.

連載 ほんとの話をしようよ—直子の車椅子探訪記・6

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入院友だち

 皆吉さんってE.Tに似ているよね,なんて言ったら,「もう,なんて子やの!」と,うんと叱られちゃうかも.でも,皆吉さんのクリクリッとした瞳,小さな身体,丸い顔は,世界中の人たちに愛された,宇宙から来た友だちE.Tと,どこか似ている.

 皆吉さんの小さな身体は,25年来の慢性多発性関節リウマチによって萎縮したもの.そして丸い顔はステロイド剤の副作用だから,本人はそれほど気に入っていないようだけど,私にはそのままの皆吉さんがたまらなくいとおしい.もちろん,E.Tの何百倍もね.

連載 当世フェミニン事情—ゆれる女性たち・10

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 今月は,Jさんの,夫との別れから,1人の女性として母親として立つまでの,紆余曲折を経た人生行路について一緒に考えてみたい.夫からの突然の離婚の申し出は,好きな女性ができたからでなく,部下の若い男性と暮らしたいからという理由だった.「突然そう言われても……」というJさんの困惑は,彼女ならずとも女性としてどう対処すれば良いのかを私たちに問いかけてくる.

 Jさんは,辣腕経営コンサルタントで一代で大きな財を成した父親と,良妻賢母の母親のもとに生まれた,温室育ちのお嬢様である.きょうだいは,3歳違いの兄と2人で,兄妹仲は悪くない.Jさんは,蝶よ花よと可愛がられ,特に父親は彼女を目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりだった.Jさんは,有名女子中・高校育ちで,大学もあまり苦労せずストレートで有名私立大学に入り,学生時代から30歳を越える今のいままで,ほとんど大きな挫折を知らずに過ごしてきた.

連載 私が老人看護に魅かれる理由・2

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 神経内科の個人病院に併設された老人保健施設は,2階建ての小じんまりとした建物だった.個室8,2床室2,4床室9の計48床あり,患者1人当たりの居室面積は,医療法で定められている8.0平方メートル以上というゆったりとしたものだった.一般病院の患者1人当たりの居室面積(4.3平方メートル以上)の約2倍近い.

 このほか内装も木目調の壁紙や明かり取りの窓に障子を入れるなど,一般の建物に近づけた柔らかく落ち着いた感じになっていた.各室の入り口に洗面台とアコーディオンカーテンで仕切られたトイレがあり車椅子がはいれるスペースと手すりが取りつけられている.食事は療養食でなく,1階の食堂に移動してとることになっていた.リハビリによって家庭での生活に戻ることを目的としているので,入所者は起床後は必ず私服に着がえ,寝間着で1日過ごすということはなかった.

連載 プッツン看護婦物語・70

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 看護婦更衣室―ただの女が天使に化ける場所、とまでは言わないけど、知らない人は、結構興味をそそられる場所かもね。

 心も実態は、不潔な奴、きれい好きな奴、噂好きな奴……。今回は、更衣室の裏話で〜す。

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 北海道室蘭市にある日鋼記念病院では,理事長の西村昭男氏の強力なリーダーシップのもと,患者の回復過程・生活の視点を重視した医療を展開するため,回復の程度に合わせて病棟編成する段階的医療,PPC(Progressive Patient Care)システムを取り入れている.

 今回ご紹介するのは,このシステムの象徴ともいえる「セルフケア病棟」での看護婦たちの試み.

フランス看護短信・1

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 フランスでは,全看護職の12%が“独立開業形態で働く訪問看護婦”なのだそうです.いったい彼女たちは,どのような仕事を,どのような仕組みで行なっているのでしょうか.

 しかし,そもそもフランスの看護事情について触れられること自体があまりありません.とりあえずは,フランスの看護職について概観し,次回で少し詳しく“独立開業形態で働く訪問看護婦”についてお伝えすることにいたします.

基本情報

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看護学雑誌
60巻6号 (1996年6月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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