連載 このひと'96
澤田恵子さん—建築会社勤務 ケア・コーディネーター&看護婦
pp.497
発行日 1996年6月1日
Published Date 1996/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905096
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看護から建築に転身—「家」を支え,生活を支える
澤田さんは,外科病棟,透析,循環器クリニックと,看護現場を経験されたのち,現在,住宅リフォームをメイン事業とする「(株)ヤシマデザイン」に勤務されている.肩書はケアコーディネーター.営業,プランニング(エイド機器,社会資源の活用なども含む),工事監理,アフターケアに至るまで顧客と現場との間に立つ.ときには顧客に代わって行政とかけ合う場面もあるという.そして,看護を建築という領域でかたちにしつつある.
がん末期の祖父を在宅で看取った経験が,澤田さんの看護婦となった伏線であり,同時に「家」へのこだわりのはじまりでもある.看護界から建築業界へと転じた直接の動機は,みずから病いに伏し,車椅子での生活を送った経験.いまでも,ひと頃ほど深刻ではなくとも「病いと上手に付き合う生活」に変わりはないのだそうだ.そして,障害を身をもって知った澤田さんの目が,クリニックからの往診・訪問看護でかかわった患者の家に,ある「欠落」をとらえた.「障害を持った方,高齢の方が,自分の生活,社会を取り戻せる空間になっていないんですよね.たとえ手すりがあったとしても,これがなければ動けないんだと思わせるような,剥き出しの機能性でしかなかったり…….風景が見えない部屋もあります.動きたいって思える空間ではないんです」.
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