看護学雑誌 39巻9号 (1975年9月)

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 小児は 病院に入院している間にも成長・発達を続けている.病院の環境が小児に及ぼす影響が社会的にも問題になっている昨今 医療スクッフはこの方面への対応も もう一度見直す時点にあると考えられる.

 現在の小児の入院環境を考え その心理的・生理的な成長・発達へのかかわり方と これからの小児看護の方向性を 様々な角度から探ってみた.

小児の入院環境と成長 諏訪 珹三
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はじめに

 成長異常は種々な原因で起こってくる.体質的なこともあるが,小児期の慢性疾患の多くのものは成長異常という症状を示してくる.環境が変わるということも成長の様子を変える重要な因子である.患児が入院するということは,大きな環境の変化であり,特に長期間にわたる入院の場合には無視できない.成長障害の原因検査のために入院した患児が,入院したということだけで成長促進をみる場合もあるが,それとは逆に,入院したために食事をとらなくなりやせてしまう場合もある.同じ病院生活であっても,患児の性格やそれまでの家庭環境の相違によって,現れてくる影響は様々である.病気をもった子が入院した場合,環境の変化がどのように成長に影響を及ぼしているかを分析することは容易ではない.病気と治療の双方が成長に影響を及ぼすからである.極端な,なるべく単純な事例について環境の変化と成長との関係を探り,入院環境が成長にどのような影響を与えている可能性があるかを考えてみるしかない.

 小児が正常に成長しているということは,その小児が健康であることのバロメーターの1つともなる.入院中に成長異常が起こってくるということは,疾病状態の変化を反映する場合もあるし,小児の情緒や精神状態に変調があることを物語っている場合もある.成長の様子をみることは,肉体的・精神的異常を把握するバロメーターの1つでもある.

小児看護の歴史と現状 常葉 恵子
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はじめに

 小児看護の歴史について書くことに,私が適当かどうか分からないまま,経験と少しの資料をもとにして,特に小児の入院生活に焦点を当ててまとめてみたいと思う.終戦の翌年から,学校保健を振り出しに約27年間の小児看護とのかかわり合いを,今振り返ってみると,やはり何かひとつの変遷を感じる.

 看護が患者の側から見直され,また看護とは何かということが真剣に考えられ,討議されるようになったのは,我が国においては,残念ながら戦後になってからだった.多くの問題を含みながらも,当時の占領軍であったアメリカ軍のGHQの指導のもとに,画期的な改革がなされたことは,高く評価されることだった.当時日本には,世界的な水準をもつ医学はあっても,患者のための病院がないといわれており,病院医療の代表的なものである国立病院が,現在のように一般国民のものでなく軍病院であり,日赤病院も,その働きの大部分が軍人・兵隊のために使用されていたことは一般によく知られていることだった.

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はじめに

 医学の体系の中における児童精神医学の登場は決して古いものではなく,事実,1900年以前には,児童精神医学という概念は存在しなかった.我が国でも最も歴史の浅い医学の一分野である,従って,児童精神医学の領域では,まだまだ研究段階を出ないことや,研究中のことも少なくない.

 児童の行動の問題の多くは,教育学や心理学の問題であるとして,教育学者や心理学者の手に委ねられてきた.昭和22年,児童福祉法が制定され,厚生省に児童局が新設されて,各都道府県は児童相談所を持つことが規定された.このころより,医療や福祉が一躍児童に焦点を当て,東京都は都立梅ケ丘病院を児童精神病院として発足せしめたのであるが,それは児童精神障害──殊に情緒障害──をもつ児童の入院治療より,むしろ重症精薄児やてんかん児の収容施設化してしまい,本来の目的に運用されるまでには長い年月を要した.しかし,現在よりも,行動上の問題をもつ児童に対して,教育関係の門戸は狭く,諸施設も少なかった時代には,それもやむを得なかったことであろう.

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はじめに

 小児にとっては,例え短期間で治ゆする見込みの疾患であっても,入院という事態に遭遇する場合の心理的動揺や情緒の不安は,はなはだ大きいものである.不安な情緒下にある小児の医療・看護において,単に病理学的立場だけからのアプローチだけではなく,その心理・情緒を把握して扱うことが,医療・看護の効率に大きくかかわるということについては既に周知されていることである.

 進行性筋ジストロフィー症(以下DMP症)は,その多くが幼少児に発現し,しかもその進行は間もなく,通院,家庭環境,社会環境などの限界を超えて,入院を余儀なくされ,しかも現在では,病状の進行を抑止する治療も確立されていないために,極めて長期の在院という特殊な情況下において生活せざるを得なくなっている.

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小児の看護とは,決して病院のみで行われるものではなく,まして入院している小児のみを対象とするものでないことは,今更いうまでもないことである.入院する小児は,健康を障害された小児の中でもごく一部であり,まして本来健康であるべき全体の小児の中では,ほんのひと握りの数であるに違いないと思われる.しかし入院ということは,小児にとっては一大事件であり,入院の原因となった疾患の治療処置の苦痛に加えて,入院することによって,いろいろな意味で傷つく条件を数多くそろえている.不幸な事件である‘入院’の弊害をできるだけ小さくしてやることは,病院における小児看護の重要な役割であり,ここでは小児看護を入院している小児だけに限定し,小児の入院環境を中心に,主として将来への展望を考えてみたい.

職場のユニホーム

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 正方形の白の木綿地に糊を効かせ ピシッとアイロンを当てて作ったキャップは えり元をスッキリさせ気持ちを引き締めてくれます.独特の型はフランスにその起源があリ シスターのベールから変形されたもの.形良く整えるのに多少年期がいるのが難点ですが捨て難い魅力があります.

 どの年齢にも合う着やすいえりのユニホームはエプロンと重ねて着るため 少々暑いのですが 吸湿性に富んだ木綿地なので着心地はまあまあです.エプロン無しで着るには 布地・デザインともにもう少し検討する必要があるようです.

アイディア

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 整形外科病棟においては 術後長期にわたって安静臥床を必要とする患者が多く 長期臥床による褥瘡の予防や排泄の管理など 身の回りの世話に対する患者のニードが高い.

 そのような患者の看護において最も注意しなければならないことは ①褥瘡の予防と治癒促進 ②患部の安静 ③排泄時における苦痛の緩和 ④ベッド上の機能訓練である.

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 知惠遅れの子供たちが 担任の先生と一緒に社会的自立を目ざして一途に生きる日常を描いた映画“太陽の詩”(監督・山田典吾)が公開され 話題を呼んでいる.

 子供たちの埴輪作りで知られる広島県呉市・広中央中学の養護学級“たけのこ学級”の担任藤岡博昭先生と生徒・卒業生らが ユニークな埴輪作りを通して 太陽と土と流れる汗の実践によって自立し 自らのコミューン(共同社会)である“たけのこ村”を建設しようとする活動を描いたドキュメンタリー映画である.

マイ・オピニオン

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 看護という仕事は,チームで行われるものであり,チーム全体としてのレベルが,看護の質を左右することは,いうまでもない.それゆえ‘チームワークは大切だ’ということがいわれるのだと思う.

 しかし,現実にチームワークを良くする努力がどのくらい払われているだろうか.非常に疑問に思うことが多い.例えば,看護婦が辞めていく理由の中に‘職場の人間関係’が大きい位置を占めているし,若い看護婦の間からは‘うちの婦長は,スタッフの意見を取り上げようとしない’とか‘上からの押しつけばかりで,民主的でない’などという声がよく聞かれる.そして,婦長の悪口が聞こえる職場ほど,辞める人や転科希望者が多く出ており,看護婦の定着という面で,大きなマイナスになっていることは見逃せない.それがまた,看護の発展にマイナスになっているともいえる.

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はじめに

 ここに報告する一事例はガードナー症候群による大腸ポリポージスであり,既に数年前に他病院で大腸全摘術を行い,小腸瘻を造設した後に,当院に入院して来た患者である.根治術を受けていたが,結果がおもわしくなく,がんこな下痢が続き,精神的不安が極めて強く解決しにくい問題を抱えていた一事例である.患者中心の看護を強調しながら,なかなか十分なる看護ができなかったため,反省の意味をもって研究としたい.

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はじめに

 病人は10年間に2.4倍に増え,社会保障の要求が高まる中で老人医療費無料化が実現し,老人の医療需要がどんどんふえている.

 当院内科病棟における入院患者の平均年齢は64.3歳で,老齢化しているが,看護体制は1類看護で,2人夜勤を行っている.老人医療費無料化以後,増え続ける老人患者の中で,とりわけ,社会的にも看護上においても問題の多かった老人の看護について数例症例検討を行ってきた.

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はじめに

 私たちは脳外科病棟に勤務し,手術を対象とした多くの患者をみてきた.日々の忙しい業務の中で処置に追い回され,看護はこれでよいのだろうか?と大きな問題にぶつかり,脳外科における術前術後の管理をまとめることによりなにか得るものがあるのでは?と考え,日常の看護をまとめるためにもケース研究を試みました.

 この事例は悪性脳腫瘍で予後不良と診断され,限りある命をいかにして生くべきか,また私たちはどうアプローチすべきなのか,なんらかの糸口を見いだそうとしてここにまとめてみた.

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〔商品名〕ワソラン Vasolan(エーザイ)

〔作用〕冠動脈を拡張し,心筋へ十分量の血液を供給する.冠血流量を増加させるが心拍出量に影響を与えず,更に緩徐な降圧作用を示すため,心運動量はやや減少し,心筋における酸素の需要・供給のアンバランスを改善して心筋を安定化する.カルシウムイオンの心筋・平滑筋細胞への移行を阻止する.やや大量では心筋に対しキニジン様の抑制作用があり,心収縮力の低下,心拍数の減少傾向を示し,異所性異常刺激発生による頻脈にキニジン様の抗不整脈作用として現れる.

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注射薬名をめぐって

 ‘患者には,どんな薬を飲まされているか.知る権利がある.ところが,看護婦は隠す.病院長に申し入れるから,立ち会ってください’

 山口県下関市在住の市民会議会員の1人,Eさんから電話が掛かってきた.国立下関病院内の1件である.Eさんは,片麻痺の治療に‘セルシン’を多用され,薬害のほうも背負い込み,開業医の病院から,国立下関病院に転院,療養中だった.薬害にはこりて,一方的‘投薬’には不信感を持っていた.

老人相談コーナーの目

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 老人に接するときに,まず気を付けねばならないことは,(1)身体的状況,(2)精神・心理的状況,(3)家族環境,家庭環境である.健康・不健康とを問わず,これら3つのチェックは接し方の基本的項目であるが,病院でさえもこれらの基本がおろそかにされている.

 そこで,最近相談を受け経験した例を紹介しながら老人患者の接し方とその反応について述べてみたい.

褥瘡の病理・予防・治療・8

手術的療法について 木村 哲彦
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 褥瘡の手術は,それを担当する医師にとっても,看護婦にとってもあまり気の進まない部類に属するといってもよい.なぜならば,他の外科的手術と比較し,一般的に手術創の治癒率は低く,70-80%が正常な経過で治癒するにすぎず,担当する医師の技量がいかに卓越していようとも90%を超えることは考え難い.

 そのため抜糸1-2週間後に創の治癒が確認されるまでは,それにかかわったスタッフ全員気掛かりな毎日を過ごさねばならない.成功したときは患者さんともども喜び合えるが,その後も再発しないとはだれも保障してくれるわけではなく,筆者もできることならば手術をしたくないと思っている者の1人である.しかし客観的にみて,そうもいってはいられず,しかたなく手術に踏み切ることが多い.

ストレスと病気・5

呼吸器系の心身症 毛塚 満男
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はじめに

 呼吸器疾患の中でも,気管支喘息と過呼吸症候群の両疾患は,その症状の発現に,心理的因子が強く関与することが多い.従ってこれらの疾患を治療する際,心身医学的知識が必要とされる.そこで今回は,精神身体医学的立場から,気管支喘息と過呼吸症候群の症状発現・診断・治療について考えていくことにする.

加齢と婦人科疾患・5

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はじめに

 性成熟期とは,婦人の生殖年齢期(reproductive years)ともいわれるが,妊娠・分娩という,身体的にも精神的にも,女性にとって最も重要な役割を果たさなければならない時期で,女性のライフスパンの中でも,ピークとなる時代であるといえる.そして,正常性周期を基調とする婦人の内分泌的環境が,思春期についで,さらに大きく生体に左右することとなる.したがって,妊娠・分娩期を中心とした各種の性器疾患の発生が,加齢に伴う病気として重要となってくる.

 しかし,性成熟期の疾患をすべて網らすることは,本講座の範囲外となるので,まず性周期のリズムと内分泌動態にふれ,ついで主要疾患について概説したいと思う.

注射事故について・2

皮下注射 赤石 英
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上腕の前後内外の決め方

 英・米・独および日本の主な看護学教科書で指示されている<皮下注射部位>は,表1のとおりですが,私どもが問題提起した後で改訂されました日本のある教科書を除けば,内外のほとんどの教科書で,‘上腕外側’が皮下注射の第1選択部位に挙げられており,実際,どこの医療機関でも広く慣用されておりました.ところが,この上腕外側注射による橈骨神経麻痺が,各種の医療事故の中で最も多い(あるいは多かった)ことは前号で述べたとおりであり,紛争になったケース,あるいは,裁判になったケースも少なくありません.

 ところで,注射部位としての上腕の是非を論ずるためには,まず,上腕の前後内外の決め方を理解しなければなりません.解剖学では,直立し,腕を伸ばして体の外側につけ,手掌面を前方に向けた状態で,上腕のみならず,身体各部位の上下前後内外を決めております.一方,整形外科など臨床医学では,手掌面を内側に向けた状態で決めております.この2つの方法で,方向が大きく変わるのは前腕(肘関節から下)と手だけであり,前腕も主として下半です.

基本情報

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看護学雑誌
39巻9号 (1975年9月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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