注射事故について・2
皮下注射
赤石 英
1
1東北大学医学部・法医学教室
pp.933-936
発行日 1975年9月1日
Published Date 1975/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917334
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上腕の前後内外の決め方
英・米・独および日本の主な看護学教科書で指示されている<皮下注射部位>は,表1のとおりですが,私どもが問題提起した後で改訂されました日本のある教科書を除けば,内外のほとんどの教科書で,‘上腕外側’が皮下注射の第1選択部位に挙げられており,実際,どこの医療機関でも広く慣用されておりました.ところが,この上腕外側注射による橈骨神経麻痺が,各種の医療事故の中で最も多い(あるいは多かった)ことは前号で述べたとおりであり,紛争になったケース,あるいは,裁判になったケースも少なくありません.
ところで,注射部位としての上腕の是非を論ずるためには,まず,上腕の前後内外の決め方を理解しなければなりません.解剖学では,直立し,腕を伸ばして体の外側につけ,手掌面を前方に向けた状態で,上腕のみならず,身体各部位の上下前後内外を決めております.一方,整形外科など臨床医学では,手掌面を内側に向けた状態で決めております.この2つの方法で,方向が大きく変わるのは前腕(肘関節から下)と手だけであり,前腕も主として下半です.
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