特集 小児の入院と成長・発達
児童精神科における小児の入院と発達
今村 美智恵
1
1都立梅ケ丘病院
pp.885-890
発行日 1975年9月1日
Published Date 1975/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917325
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はじめに
医学の体系の中における児童精神医学の登場は決して古いものではなく,事実,1900年以前には,児童精神医学という概念は存在しなかった.我が国でも最も歴史の浅い医学の一分野である,従って,児童精神医学の領域では,まだまだ研究段階を出ないことや,研究中のことも少なくない.
児童の行動の問題の多くは,教育学や心理学の問題であるとして,教育学者や心理学者の手に委ねられてきた.昭和22年,児童福祉法が制定され,厚生省に児童局が新設されて,各都道府県は児童相談所を持つことが規定された.このころより,医療や福祉が一躍児童に焦点を当て,東京都は都立梅ケ丘病院を児童精神病院として発足せしめたのであるが,それは児童精神障害──殊に情緒障害──をもつ児童の入院治療より,むしろ重症精薄児やてんかん児の収容施設化してしまい,本来の目的に運用されるまでには長い年月を要した.しかし,現在よりも,行動上の問題をもつ児童に対して,教育関係の門戸は狭く,諸施設も少なかった時代には,それもやむを得なかったことであろう.
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