特集 小児の入院と成長・発達
小児の入院環境と成長
諏訪 珹三
1
1神奈川県立こども医療センター小児科
pp.873-878
発行日 1975年9月1日
Published Date 1975/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917323
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はじめに
成長異常は種々な原因で起こってくる.体質的なこともあるが,小児期の慢性疾患の多くのものは成長異常という症状を示してくる.環境が変わるということも成長の様子を変える重要な因子である.患児が入院するということは,大きな環境の変化であり,特に長期間にわたる入院の場合には無視できない.成長障害の原因検査のために入院した患児が,入院したということだけで成長促進をみる場合もあるが,それとは逆に,入院したために食事をとらなくなりやせてしまう場合もある.同じ病院生活であっても,患児の性格やそれまでの家庭環境の相違によって,現れてくる影響は様々である.病気をもった子が入院した場合,環境の変化がどのように成長に影響を及ぼしているかを分析することは容易ではない.病気と治療の双方が成長に影響を及ぼすからである.極端な,なるべく単純な事例について環境の変化と成長との関係を探り,入院環境が成長にどのような影響を与えている可能性があるかを考えてみるしかない.
小児が正常に成長しているということは,その小児が健康であることのバロメーターの1つともなる.入院中に成長異常が起こってくるということは,疾病状態の変化を反映する場合もあるし,小児の情緒や精神状態に変調があることを物語っている場合もある.成長の様子をみることは,肉体的・精神的異常を把握するバロメーターの1つでもある.
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