看護学雑誌 15巻2号 (1954年2月)

特集 誌上討論「ナースは非情な方がよい」をめぐつて

  • 文献概要を表示

 大迫氏の論文はたしかに私達看護の道を歩む者に対していくつかの問題を提出しておられる。読後の所感として今自分の感想をまとめてみようと筆を執つたが,結論的にいつて必ずしも大迫氏の所見と同じでないという点から,いさゝか批判めいた言葉になるのを恐れるのであるが,反面,事は私達看護婦全体の問題でもあるので御許し頂きたい。

 氏の第一の論点は,映画や小説,その他ジャーナリズムの上にあらわれる看護婦(長)等は,多くの場合「意地の惡いヒステリックな女」であつたり「デタラメだらけ」だつたり,「あまつたるい安価な女性に限られて」いたり,「全く知性の片鱗もないミーちやんハーちやんむきの低級なやすつぽい女性」としか扱われていなかつたりするのは不満である事。しかしこれは「彼女等の罪ではなく,社会組織というものが軽く扱われていたところから,このような看護婦が過去に世に送り出されていた所に原因があつたのかも知れない」事,従つて今後は「法的に水準の高い学業を」身につけて出るから社会の彼女等を見る眼もあらためられてこなければならないという主張。

——

扉 千歳駅で逢つた人
  • 文献概要を表示

 二重にはめこまれた窓硝子に,今少し前から降りはじめた粉雪が音もなく吹きつけてはとまつている北海道の初冬の汽車の旅。暮れかけた窓外の空を,眞白におゝわれた広い雪の原をぼんやり眺めながら,今頃からこんなに雪が深くては,これから来年5月,雪が溶けるまでの半年余りの生活は,どんなに勞苦が多いことだろうと考えているうちに,汽車は速力をゆるめて千歳駅に入つた。

 こゝは米軍のキャムプがあることゝいろんな意味で有名になつた町。国と国とのやりとりだから致し方のないことだけれど,困つたことだなどと思いめぐらせていると,急にドアが勢いよくあいて,絣モンペに風呂敷を頭にかぶり,かつぽう着に長靴といういでたちの女の人が3人,私の座つている車掌室の横に入つて来ました。“あゝ寒い,寒い”といゝながら眞白に汚れた軍手をぬぎ,手まで汚れているのをみて苦笑し,私の方をみて笑い“洗う暇がなかつたもんネ”と,隣の人にいつている。私は“又降つて来ましたネ”と,愚にもつかないことをいつてしまつた。でも私が声を出したので相手は氣安くなつたらしく,健康な人の好さそうな顏をほころばせて“トラックがおくれたもんでネ”と又いつている。

  • 文献概要を表示

 1.各病棟で必要な器具は供用伝票に書きこまれ,窓口ではこれによつて器具のうけわたしをする。

2.夫々のセツト作成の作業をするナース

  • 文献概要を表示

 アルベルト・シュワイツアが1年遡つて,1952年度のノーベル平和賞を贈られることになつた。

 シュワイツアは1875年に生れたのだから今年は79才という高令である。誕生の地カイゼルスベルグは,今はフランス領だが,当時はドイツ領で,父はそこで牧師をしていた。5才の時父からピアノの手ほどきを受け,教会のパイプオルガンも習い9才の頃には讃美歌の伴奏をつとめたほどの上達ぶりだつた。

治療食餌 原沢 美智
  • 文献概要を表示

三分粥食(1)

 主食 重湯7/10,全粥3/10の割合に混合したもの。

 副食 流動食から徐々に移行して三分粥食に進むが,三分粥食の副食は,流動食から極めて緩漫に移行するのが普通で,胃の滞留時間の少い易消化性のものを選び,強い刺戟性のものはなるべく避ける。

  • 文献概要を表示

刷毛かけと乾燥

 衣類の日常の手入れとして勧めたいことは刷毛かけと乾燥である。織物組織の中にはゴミ,ホコリ,土砂,黴類の胞子,その他細菌等がひどくもぐり込んでいるものである。そしてこれらは不衞生なばかりでなく,そのまゝでも地質に害を与えるが,又濕気がこれに加わると,無機質のあるものは酸性,あるものはアルカリ性を呈して布の地質や色合を著しく損ねるものである。

 帽子外套などのゴミホコリのかゝるものはそれで,外出先から帰宅後すぐ刷毛かけをするだけでももちが大いに違うものである。襟や肩等がフケでよごれると特に変色や地質の痛みも甚しいものである。土砂は色々な硅酸塩類を含むために,これらが水分と共同すると色々と衣類の地質色合に影響を与えるものである。

講座

背中の訴え 原田 和人
  • 文献概要を表示

 背中の訴えとは普通頸部,腰部,肩を除いた,主として胸椎とそれに附随する胸廓背面部の訴えのことをいう。この部の訴えはその病因を解剖学的立場から考えると次のとおりである。

 a)脊椎骨及びそれ等に結びつく骨,関節,椎間板,さらにこれとむすびつく周囲組織に原因を有するもの。

気管支炎の看護 氣賀澤 よしえ
  • 文献概要を表示

 気管支炎は気候の影響によつて起りやすい感冒の合併症として多く起るが,その他諸種の原因によつても起る。特に小児,及び老人の罹りやすい疾病の一つである。この疾患の看護法について述べてみたいが,まず原因,症状から記してみよう。

病氣と人間関係 淺賀 ふさ
  • 文献概要を表示

 病気の社会性という題を本誌編集室より与えられたが,私はこゝで病気と人間関係と改題することを許していたゞいて,医療社会事業の立場から一言筆をとつて見たいと思う。

 人間は病気に罹ると,どんな病気であつても,健康な時よりは依存的になり,人の注意と関心を要求する。実際に人の世話にならなければならないには相異ないのであるが,それ以上に,健康の破壞された状態からくる苦痛と不安の故に,心理的に依存性が増大する。病人でない人々といえども,他の人々に全く依存せずに生活できるというわけではないが,健康で正常な成熟した成人の依存性というものは相互依存で,人との関係は大体上げたり貰つたり(ギブエンドテーク)の関係にある。病人の依存性は著しく一方的で,受身のそれとなり,それは自己の安否が総べて母親の愛情と世話とにかゝつていた新生児から幼児期にかけて母親に抱いていた古い依存欲求のよみがえつたものと考えることができ,これは一つの退行現象と解釈される。これは病人が我侭になりやすく,又子供つぽくなることを考えれば,容易に理解できる事実であろう。或緑内障の患者が,妻の外出中はいつも特にはげしい眼痛を訴えた例などは,依存欲求のニードが充されない状態と解釈されてよいであろう。

  • 文献概要を表示

病棟外の診斷治療設備(その1)

 診断をつけるのには,患者の状態をよく診る事が必要であるが,同じ診るのにも簡単に,顔色や,脈をしらべる事から,X線や脳波を用いる事までいろいろの段階がある。昔は,医者が聽診器や検温器を鞄に入れただけで1人で完全な診察ができた時代もあるが,その次の段階では,一定の病室に器械をおいて,患者の方を集めて看護婦相手に診断する。

 しかし近代病院では,診療設備はそれぞれ独立した部屋と專門職員によつて行われるようになつて来た。こうする事によつて,より精確な材料をより容易に得る事ができ,又病棟の方も完全な看護に專念できるようになるのである。

2頁知識

位相差顯微鏡について 水平 敏知
  • 文献概要を表示

 1953年度の物理学ノーベル賞がオランダのグロニンゲン大学教授,フレデリツク・ゼルニケに与えられました。皆さんはゼルニケ教授の名前を恐らく初めて聞かれたことでしよう。ノーベル賞に価するような,そんな大きな功績とは一体何でしようか?それは最近,時折耳にすると思いますが,“位相差顕微鏡”という,すばらしい顕微鏡を,もう約20年ほど前に考案したことでした。

 では,そのすばらしい顕微鏡とは一体どんなものでしようか?今まで私達の使つて来た顕微鏡は,皆さんもよく御承知のように,細胞だの,細菌だのを一度フオルマリンやアルコール,或は火焔などで固定をしてからいろいろな色素を使つて染めて見なければ研究をすることができませんでした。

ルボルタージュ

  • 文献概要を表示

待たれる接收解除

 「赤十字」これ程多くの人々の耳に親しまれている言葉も少いだろう。

 ことに赤十字の看護婦さんは尊敬と憧れをもつて眺められている。私自身も幼ない頃より赤十字の看護婦さんをみるたびに胸をふくらませたものであつた。

写真でみる看護技術・2

診察の介助 鵜野 愛子
  • 文献概要を表示

 診察を受ける為に医師を訪れる人々には,現に病気の苦しみを持つている人。健康に対して不安を持つている人。或いは健康診断の目的で来る人等。さまざまの人(患者)が参ります。然しこの患者を診察するのは医師の役目で,私共看護婦は,この苦痛と不安でいる患者にできるだけ楽な気持で疲れないようにして充分診察を受けられるように心を配つてあげなければならない務めがあります。その為には医師が診察しやすいように必要な診察器具を手近に用意して診察介助に当らなければなりません。そして能率的に診察し得るように心掛け,診察介助を通して,患者及患者をとりまく周囲の人々にも保健指導が充分行われるように,心掛けなければならないと思います。

 こゝに載せられてあります診察介助の過程は,大体,内科,外科の病室や外来等で普通診察の場合に行われる介助について,一通りのものをまとめてみたのですが,專門の各科によつて,診察の器具及び診察介助も各々特徴を持つて来ると思いますので,ほんの一般的診察介助の御参考に御覧いたゞければ幸に思います。

私の工夫

  • 文献概要を表示

 みな樣方のお勤めになられる病院の内に,ストレプトマイシンの使用後の空びんを,大切に保存なされる所もあるかは存じませんが,数多い所では,無益にお捨てになる所もあると存じます。当院もその一例にもれません。

 その無益に捨てますストマイの空びんを,一寸拾い上げてみて頂きたいのでございます。そう大して時間はかゝりません。空びんの口に挾みを入れてゴム栓をはずしてはがしたゴム栓を,私は血沈用のゴムの代用品に使いました。皆樣方の内には,すでにお気付きでそのようにお使いの所もおありでしようが,もしお知りにならない方は,どうぞ一度試して下さいませ。

メロデイーの泉・5

“別れの曲”シヨパン 山本 金雄
  • 文献概要を表示

 ピアノといえばショパン,ショパンといえばポーランドという位,ショパンにピアノと祖国ポーランドは切つても切れない関係にあります。

 今から144年前の1810年「流浪の民」を作曲したロバート・シューマンより4ヵ月早い2月22日ポーランドの首府ワルソーの近郊に生れました。同じ年に生れた大作曲家にはショパンより125年も前の1685年に生れたバッハとヘンデルがおり,ロマン派音楽の中心をなす作曲家ショパンとシューマンがおります。偶然の一致にしても余りにも偶然過ぎ,共に比較対象的に論ぜられております。しかもショパンは当時の大音楽家メンデルスゾーン,シューマン,リストと共に親しく交わり,幾多の曲を捧げております。数年前,日本にも封切された映画「別れの曲」はショパンの自叙伝で,その主題歌はショパンの練習曲作品10番の3番目ホ長調の曲の甘い美しいメロディーをとつたもので,ショパン自身「こんな美しいメロディーは一生のうちに二度と書いた事がない」といつている程美しい悲哀をこめた名曲「別れの曲」です。

連載小説

三つの輪(最終回) 關口 修
  • 文献概要を表示

(20)めぐる春

 3月になり白石の楯跡の小山が青む頃漸く龍子は元の身体になつてきた。脳の打撲で失われた記憶……それはたとえば雲のようなものだつたかも知れない。その雲の中をさまよつてきた幾十日。その間のきれぎれになつた記憶の1コマ1コマをつなぎ合せるのが,このごろの龍子の日課だつた。

 (……だしぬけの電報にピックリして,私がかけつけた時には,お前さんもう駄目かと思つたよ)

基本情報

03869830.15.2.jpg
看護学雑誌
15巻2号 (1954年2月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
5月18日~5月24日
)