連載小説
三つの輪(最終回)
關口 修
pp.50-53
発行日 1954年2月15日
Published Date 1954/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909512
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(20)めぐる春
3月になり白石の楯跡の小山が青む頃漸く龍子は元の身体になつてきた。脳の打撲で失われた記憶……それはたとえば雲のようなものだつたかも知れない。その雲の中をさまよつてきた幾十日。その間のきれぎれになつた記憶の1コマ1コマをつなぎ合せるのが,このごろの龍子の日課だつた。
(……だしぬけの電報にピックリして,私がかけつけた時には,お前さんもう駄目かと思つたよ)
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