総合リハビリテーション 8巻5号 (1980年5月)

特集 地域リハビリテーション

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はじめに

 リハビリテーションにおける,地域活動の基礎は,ADL学にある(今田1)1976).たしかに地域活動を行う際,地域の日常生活面の理解,配慮なしに政策を進めることは出来ない.

 国際児童年から国際障害者年に移る80年台,乳児や幼児のリハビリテーションが,地域活動の中で,どの方向に進むのか,大いに関心が持たれている.

 地域でもこれら障害児に対する対策で,各種の施設が作られ,国や都,県の援助を受けている.今回都内の地域リハビリテーション施設とも言うべき,心身障害児小規模通園施設の問題をとりあげてみる.

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はじめに

 障害者のコミュニティケアに対する関心が近年急速にたかまり「地域を基礎とした障害者・患者に対する包括的な医療・福祉サービス体系の中で組織化され,継続性をもつリハビリテーション活動1)」としての地域リハビリテーションについては,本誌などに多くの報告がなされている2,3,4).一方,学齢期の在宅の重度・重複障害児について,地域リハビリテーションの立場での報告は極めて少ない.一般の健常児童の生活の基盤は家庭であり学校である.したがって,学齢期の障害児の地域リハビリテーションは,その家庭を中心とした地域社会と学校教育の場に対して,医学・教育・福祉が連携して総合的にアプローチすることが重要なことはいうまでもない.

 われわれは,従来より,横浜市教育委員会による障害児の就学指導と,重度・重複障害児の教育措置の一形態である訪問学級に対して,主としてリハビリテーション医学の立場から協力してきた.そこで,今回,横浜市内の学齢期の在宅重度・重複障害児の実態調査の結果と訪問教育における児童の問題を地域リハビリテーションという観点からとらえ検討してみた.

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はじめに

 身体障害者更生相談所(以下身障相談所と略す)は地域リハビリテーション活動(地域リハと略す)における要であるといわれているが,実体についてはその役割を十分に果しているかどうか,いささか心もとない現状にある.この背景には身体障害者福祉法(以下身障法と略す)制定後30年が経過し,身障法のサービス内容が量的質的に大きく変遷してきたにもかかわらず,身障相談所の対応についてほとんど手を加えられなかったことと,身障相談所自体の地域リハに対する関心の低さによるものと考えられる.

 近年施設重点主義の反省から,国政レベルにおいても身障相談所のあり方について考え直すべき気運となり,厚生科学研究によってその実体の把握や,運営指針が検討されつつある.実体については1978年度の時点で詳細な調査がなされ,運営指導指針については,ひきつづき検討がなされている.

 本論文においては,すでに終了した実体調査に関する概略と,指針の中に検討されつつある身障相談所の本質的問題,そしてそれらと地域リハとのかかわりについての解説や私見を述べたいと思う.

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 Ⅰ.動機

 私が地域のリハビリテーションに取り組んだ理由は次のような地域住民の実態を見たからです.ある時農家の軒下に,沢山干してある赤ちゃんにしては大きすぎるネルのオムツが目につき,訪問しますと,そこには1人のねたきり老人がいました.その患者は脳卒中の発作をおこし,某医院に入院しましたが,注射と投薬による治療のみで,だんだん手足が硬直したまま,退院して3年になるということでした.薄暗い部屋に電灯をつけ,観察すると72歳の体格のよいおじいさんの油顔には,垢がこってりつき,口ひげがいっぱいのび,私の声に目を開こうと努力しているが,両眼目やねにおおわれ容易にあかない.便の始末はどうかと陰部に手を当てると1日中ポリ尿器に接触している大腿部の内側と,蓄尿で重くなった尿器に圧迫された陰のうはむれて,ちょうどやけどのただれのようにズルむけになり,常時尿器に頭をつっこんだ陰茎はアンモニヤかぶれで亀頭から膿が出ていました.

 次に足の方はと,棒状になった患側の大腿部をこわごわ支え持ち上げながら,踵に手をあてたとたん,ぬるっとする.ここも褥瘡による膿,3年間十分な清拭もされないままの足の裏は松かさ同様の皮膚で,手足の爪はのびて曲り,爪切りをさし込む余地もありませんでした.

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はじめに

 近年,リハビリテーションの分野で,地域におけるリハビリテーションのあり方が論じられる機会が多くなった.しかし,地域のリハビリテーションにおけるゴールともいうべき,在宅障害者の家庭での問題についてふれられることが少ないようである.

 在宅障害者の家庭における問題は,障害の程度,種類により様々であるが,何等かの形での助けが必要な点に要約されよう.この手助け,すなわち援助を分けて考えると,物的な面と,人的な面に分けることが出来る.このうち,人的な面について考えると,障害者の健康を守る立場の医療から,リハ医療に至る広い幅を持った人的な構成が必要であり,さらに,障害者の社会的活動まで考えると,より多くの人的な資源が必要になって来る.しかし,在宅障害者の基本的生活を考えた時に,最も重要なことは,障害者の日常生活を円滑に行えるようにするための援助であろう.

 この点については,家庭という単位の中で,家族によって人的な援助が行われており,またそのような状況があるべき姿であろう.これに対して,家族の援助が得られない在宅障害者への福祉サービスの一環として,家庭奉仕員制度が発足し,かなりの年月が経過した.リハビリテーションの立場からみると,この家庭奉仕員の果たす役割の中でも,障害者の基本的な日常生活の援助について,期待も大きい.そこで,地域のリハビリテーションという観点から,家庭奉仕員のうち,老人家庭奉仕員の現状と,リハビリテーションとの係り合いについて,神奈川県における状況を中心にのべる.

巻頭言

受難の時代 小柳 恭治
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 ユニ鉛筆やブルー・トレインなどのデザインを手がけ,また生活用具の収集家,伝統工芸の研究者としても著名な工業デザイナーの秋岡芳夫氏が,去る1月19日付の読売新聞(夕刊)に,「'80年代は触覚の時代」と題したおもしろい随筆を寄せておられる.

 これまで主として視覚・聴覚情報を流していたテレビや新聞が触覚情報を扱いかねて困惑する年代になるであろう.そしてまた,感触の良し悪しや本来の意味での“手ごろさ”が商品価値を左右し,したがってデザイナーは従来からの視覚造形,つまり色・柄・形の工夫ばかりにうつつをぬかしてはおられなくなる.大きさや重さ,バランス,材感などの触覚デザインを迫られる時代がやってくる,というのである.

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緒言

 個人が自己の身体機能の一部もしくは大半を喪失することは,まことに異常な経験である.そして生じた身体障害を自己の現実として受容するまでの期間,患者の内面におこる心的葛藤は,それぞれの特性(病前性格,自我状態)によって,さまざまの変相があることが知られている.Cohn2)1961,橋倉3)1972,永井4)1973,Guttmann1)1973らはこの心的過程をそれぞれの仕方で経過づけ,心理的支持の技術も多々検討されている5,6)

 このような心的動揺は,ある場合には個々人の内面に沈潜しているだけでなく,心的過程の一部が行動の変容をまねき,リハビリテーション(以下リハと略す)を停滞させる原因となることを,われわれは多く目撃している.然して,あるときは心的葛藤がそのまま身体症状として具現し,原障害を彩色する.

 こういう場合の身体症状は眩暈,心悸亢進,異常発汗,胃腸症状など,不安神経症的なものや,受傷部位,手術部位を中心とした頑固な腰背痛,痙性痛など一元的な症状としてみられるものばかりでなく,時には他の器質的疾患と重さなったり,また時には転換ヒステリーの合併を思わせるほど,多彩な訴えとなり,日常診療上,治療に難渋させられる場合がある.

 これらの場合,みかたをかえて,主治医が患者の心理的な面への接触をはかることにより,治療上思いがけぬ進展をみることがある.われわれは村山病院で加療した脊髄麻痺患者のうち,リハ難行例にこのような接触方法を試み,多くの示唆を得たので報告する.

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まえがき

 ベッドは,健常者にとっては「休息」を与えることが本来の目的である.しかし医療の分野においては,診療・手術・介助,等とその性格も大きく分かれている.とりわけリハビリテーション医療では,「介助」の機能が重要な役割りを占めており,対象とする患者の症状や残存機能により多少異なるが,概ね以下の機能が必要とされている.

 i)姿勢補助

 ii)褥瘡防止

 iii)車椅子等への簡便な移動

 iv)訓練器具等の取り付け

 v)トイレ(排尿・排便)動作

 vi)その他

 i)については,自動式および手動式のギャッチベッドが多数市販されている.ii)は,一般的にはべッド本体ではなく付属のマットレスを改良し,水の入ったものや圧縮空気を吹き出すもの,あるいは経時的に圧力分布を変化させる方式等が用いられている.またベッド本体に組み込まれている装置としては,電動式で体位変換を行う方式を用いたものが一部市販されている.iii)は,ベッド本体の高さを変える方式とリフトを使用する方式があり,前者はその機能を組み込んだベッドが市販されているが,後者は単体の製品しか市販されていない.iv)は,ベッド本体に4本の支柱(既存のものでも可)を取り付け,その上に枠を組み訓練装置や牽引装置を設置する方法で行われている.v)は,ベッド本体の臀部に相当する部位をくり抜きベッド上のマットレスと同じ高さの便器を挿入する方式と,ベッド本体はそのままで患者の臀部をエアマット等で持ち上げておき,その隙間に小型便器を挿入する方式とがあり,いずれも市販されている.vi)については,取り付け部品として多種市販されている.

 このようにベッドは多くの機能を必要とするが,さらに最近注目を集めている環境制御システムの被制御機器としても欠くべからざるものであり,基本的機能とともに十分な操作性能が要求されている.

 そこで,ベッドにおける各機能と操作系の設計ならびに試作を行ったので報告する.

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はじめに

 脳卒中患者の発作時の状態,臨床症状および既往歴から脳出血か脳梗塞かを区別したり,その病巣部位を正確に診断することは,救急処置,予後の判定,患者を移送すべきか否かの判定のために不可欠である.近年わが国の大病院にはCTスキャナーをはじめ各種の最新検査装置が設畳され,それを用いて正確に病変の種類や病変部位を知ることが容易となってはいるが,ベッドサイドや往診先にCTスキャナーは持っていけないし,またCTスキャナーがある病院でも患者が運ばれて直ちに検査ができるとは限らない.

 脳梗塞の病巣部位を臨床的に正確に診断するためには患者を詳しく診察することと同時に,脳の機能と解剖およびそれらと脳の血管支配領域との関係を熟知することが必要である.

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はじめに

 呼吸器疾患のリハビリテーションの歴史は古く,その体系も,かつての国民病であった肺結核について打ち立てられていた.その詳細については私が結核1)にくわしく述べたので参照されたい.肺結核の減少と共に他の呼吸器疾患,特に慢性閉塞性疾患,肺線維症が時代と共にクローズアップされてきた.これらの疾患の病因,疫学,治療と共にリハビリテーションのあり方も検討されている.慢性閉塞性肺疾患2,3,4)については前号でくわしく述べたし,わが国では公害健康被害補償法の中で公けにそのリハビリテーション対策として取り上げられている.肺線維症についてもかって本誌に紹介した5).一方肺結核は激減したといっても,それは肺結核を感染症・伝染性疾患としての観点からであって,かつて300万人を擁した本疾患は形態的変化を残したまま治癒した例が多い.だからその変化により二次的に起こった機能障害,すなわち呼吸不全の問題は決して解決していない.また神経・筋系の疾患の代表であったポリオもその予防対策によりほとんどなくなったが,同じ筋・神経系疾患で呼吸の障害をきたすものがなお多く存在する.そしてその長期に管理が及ぶことで,呼吸不全リハビリテーションの一つの大きな問題疾患である.

 このように特に慢性に呼吸不全をきたす疾患は平均余命の増加と相いまって増加し,また注目を集めている.そこでこのような状態――呼吸不全――もまた他の慢性疾患と同じくそのリハビリテーションを当然考慮せねばならない.そこでここでは呼吸不全の管理の中で特にリハビリテーション的視点からみたいくつかの問題点について述べる.

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 筆者は,米本恭一,千野直一両氏を団長とする研修ツアー(総勢9人)の一員として,昨年11月11~16日の6日間,ハワイで開催された米国リハビリテーション医学会に参加する機会を得た.そこで,米国のリハビリテーション医学研究の最近の動向を知ると同時に,日米両リハビリテーション医学会の種々の違いについても膚で感じることができた.以下,その概略を報告する.

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 佐々木智也君は昭和19年東大医学部を卒業.短期海軍軍医として勤めた後,物療内科に戻り三沢敬義先生の下でリウマチ学を学んだ.

 日本リウマチ協会,つづいて日本リウマチ学会が生れると始めからその幹事役をつとめ,ローマの学会で現国際リウマチ学会会長ロビンソン博士らがSEAPAL結成を呼びかけた時からの相談相手であったから今春2月マニラで開かれたSEAPAL会議の会長となったのも宜なるかなとうなづけよう.

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 九州各地から約80名が集い,内容ある討論をすることができた.

 本会では,特別講演を佐賀医科大学,渡辺英夫教授,福岡教育大学,城戸正明教授にお願いし,それ以外は一般演題を募集することにしたが,13題と多くの申込みがあり,会員の熱意あるとり組みに,おどろかされた.ただ労災病院の長尾先生,鹿児島大学霧島分院の新村先生の申込みがおくれ,プログラム作製に間に合わず,次回にまわしましょうとの申し入れもあって,11題ということになった.

一頁講座 リハビリテーションと法律・5

措置 昆 精一
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 1.意義

 「措置」についての定義は法律上はなされておらず,社会福祉の分野における独特の用語として使われているが,援護・保護の決定や福祉的給付の決定など,福祉サビースの給付とその内容に関する都道府県知事・市長等の実施機関が行政権限に基づいて行う行政行為を意味している.特に,社会福祉施設(以下単に「施設」という.)への入所措置(収容し,または通所させることをいう,以下同じ.)をさすことが多い.すなわち,地方公共団体が自ら設置運営している施設への「措置入所」,社会福祉法人その他のものの設置運営する施設への「措置委託」,そのため必要な費用についての「措置費」,それらを行う行政権限としての「措置権」,その権限を持つ者を「措置権者」というように用いられている.

 「措置」の表現が,具体的に法律――特にリハビリテーション分野の法律――の条文の上であらわれるのは,身体障害者福祉法第18条第1項及び第2項,精神薄弱者福祉法第16条第1項及び第2項,児童福祉法第22条~24条,第25条の2~27条及び第28条,老人福祉法第11条各項,生活保護法第30条第3項等であり,いずれも施設への入所又はその委託をさすものがほとんどであるが,これらが,行政権限の行使により実施される意義は,憲法第25条上の国民の生存権を,国家及び地方公共団体の責任において担保する所にあると考えられる.このことは,社会復帰訓練を主要な任務とする身体障害者更生援護施設への入所さえ,「リハビリテーションの理念は,障害を負う故に損われている人権を回復すること」(本誌3月号173頁冒頭)という思想に基づいて行われていることに照らせば,きわめて明確に理解されることである.

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意見と声 兼子 昭一郎

意見と声 片岡 好亀

文献抄録

編集後記 大川 嗣雄
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 地域リハビリテーションという言葉が,我我の目に映り,耳に届くようになってから,かなりの年月が経過してしまった.実際には,その基盤となるべき行政的な体系や,施策が,掛け声ほどには整備されたとは思えない.にもかかわらず,末端である現場では,その掛け声への対応を迫られている.そこで,それぞれの現場では,地域の状況やマン・パワーの能力に応じて,地道な努力がなされているように思われる.

 このような状況にある地域リハビリテーシションを,今回は幼小児から老人にいたる成長過程の順に問題点を追って特集とした.

基本情報

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総合リハビリテーション
8巻5号 (1980年5月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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