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1.意義
「措置」についての定義は法律上はなされておらず,社会福祉の分野における独特の用語として使われているが,援護・保護の決定や福祉的給付の決定など,福祉サビースの給付とその内容に関する都道府県知事・市長等の実施機関が行政権限に基づいて行う行政行為を意味している.特に,社会福祉施設(以下単に「施設」という.)への入所措置(収容し,または通所させることをいう,以下同じ.)をさすことが多い.すなわち,地方公共団体が自ら設置運営している施設への「措置入所」,社会福祉法人その他のものの設置運営する施設への「措置委託」,そのため必要な費用についての「措置費」,それらを行う行政権限としての「措置権」,その権限を持つ者を「措置権者」というように用いられている.
「措置」の表現が,具体的に法律――特にリハビリテーション分野の法律――の条文の上であらわれるのは,身体障害者福祉法第18条第1項及び第2項,精神薄弱者福祉法第16条第1項及び第2項,児童福祉法第22条~24条,第25条の2~27条及び第28条,老人福祉法第11条各項,生活保護法第30条第3項等であり,いずれも施設への入所又はその委託をさすものがほとんどであるが,これらが,行政権限の行使により実施される意義は,憲法第25条上の国民の生存権を,国家及び地方公共団体の責任において担保する所にあると考えられる.このことは,社会復帰訓練を主要な任務とする身体障害者更生援護施設への入所さえ,「リハビリテーションの理念は,障害を負う故に損われている人権を回復すること」(本誌3月号173頁冒頭)という思想に基づいて行われていることに照らせば,きわめて明確に理解されることである.
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