Japanese
English
研究と報告
脊髄麻痺患者における障害受容の過程にみた精神身体症状について
Psychosomatic Problems in the Adjustment Process to Disability of the Paraplegic Patients.
蕪木 初枝
1
,
満足 駿一
1
,
柴崎 啓一
1
,
大谷 清
1
,
野町 昭三郎
1
Hatsue Kaburaki
1
,
Shunichi Manzoku
1
,
Keiichi Shibasaki
1
,
Kiyoshi Ōtani
1
1国立療養所村山病院整形外科
1Orthopaedic Surgery, Murayama National Hospital.
キーワード:
脊髄麻痺
,
障害受容
Keyword:
脊髄麻痺
,
障害受容
pp.373-379
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104318
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緒言
個人が自己の身体機能の一部もしくは大半を喪失することは,まことに異常な経験である.そして生じた身体障害を自己の現実として受容するまでの期間,患者の内面におこる心的葛藤は,それぞれの特性(病前性格,自我状態)によって,さまざまの変相があることが知られている.Cohn2)1961,橋倉3)1972,永井4)1973,Guttmann1)1973らはこの心的過程をそれぞれの仕方で経過づけ,心理的支持の技術も多々検討されている5,6).
このような心的動揺は,ある場合には個々人の内面に沈潜しているだけでなく,心的過程の一部が行動の変容をまねき,リハビリテーション(以下リハと略す)を停滞させる原因となることを,われわれは多く目撃している.然して,あるときは心的葛藤がそのまま身体症状として具現し,原障害を彩色する.
こういう場合の身体症状は眩暈,心悸亢進,異常発汗,胃腸症状など,不安神経症的なものや,受傷部位,手術部位を中心とした頑固な腰背痛,痙性痛など一元的な症状としてみられるものばかりでなく,時には他の器質的疾患と重さなったり,また時には転換ヒステリーの合併を思わせるほど,多彩な訴えとなり,日常診療上,治療に難渋させられる場合がある.
これらの場合,みかたをかえて,主治医が患者の心理的な面への接触をはかることにより,治療上思いがけぬ進展をみることがある.われわれは村山病院で加療した脊髄麻痺患者のうち,リハ難行例にこのような接触方法を試み,多くの示唆を得たので報告する.
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