耳鼻咽喉科 45巻9号 (1973年9月)

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 I.はじめに

 鼻アレルギー症状の発現には,抗原抗体反応が主要因子であることはいうまでもないが,抗原抗体反応より発症に至る一連の反応の場となる鼻粘膜の状態と全身的諸要因の関与も十分考慮する必要があろう。

 情動表出が視床下部―自律神経系を介してなされることを考えれば,精神的要因が自律神経系によつて鼻粘膜の状態に影響し,鼻アレルギーの発症,増悪に関与することが理解できる。そして日常臨床においても,鼻アレルギーの発症や増悪が心因に影響されていると予想される場合をしばしば経験する。

 心身症は「身体症状を主とするが,その診断や治療に,心理的因子についての配慮が,とくに重要な意味をもつ病態」であるとされており,われわれは心身症の立場から鼻アレルギーの診療を試みてみた。

 心理的要因と一口にいつても,感情的に未熟な性格のため,心理的ストレスを適度に処理できずに不必要にイライラしたり,緊張したりする場合から,生活環境,対人関係における過度の緊張,葛藤などの慢性状態が続くもの,または明確な心因は把握できずに自律神経緊張不安だけの場合もあり,その診断や治療にわれわれなりの工夫を必要とした。ここに幾つかの知見を得たので報告し,諸賢のご批判を仰ぐ次第である。

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 I.はじめに

 頸動脈小体腫瘍carotid body tumor1)-4)は,頸動脈分岐部に存在する化学受容器,頸動脈小体carotid bodyより生ずる腫瘍で,まれな疾患である。同系統の腫瘍であるglomus jugulare tumor5)-9),aortic body tumor,paraganglioma intravagaleなどとともにnonchromaffin paraganglioma,chemodectomaと呼ばれている。著者らは下顎角部腫瘤と運動時,同側の顔面が蒼白になるという珍しい症状を呈した1例を経験したので報告する。

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 I.はじめに

 小児に見られる機能性難聴は,決して稀な疾患ではなく,われわれの臨床においても最近数例の患児がその診断の下に診療されている。本疾患は成書にこそその記載は少ないが,過去20年程の間に少なからざる研究報告があり,その症状,診断法などについては既にその大要が明らかにされていると言つても過言ではない。それらによると一般に小児の機能性難聴は成人のそれに比して予後は良く,われわれの経験でも,いつの間にか回復している例が少なくないのであるが,しかし中には,かなり長期にわたつて難聴を訴えて治癒し難く,場合によつては補聴器を使用しつつ数年間も難聴児としてとりあつかわれているといつた例さえ報告されている(Baar1),その他)。

 われわれは最近難治性の本症症例に対して新しい治療法を試み,見るべき効果があつたのでここに報告して大方のご批判を得たいと思う。

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 Ⅰ.緒言

 エナメル芽細胞腫すなわちAmeloblastomaはエナメル質形成の潜在力を有する細胞に由来するembryonal typeの腫瘍であり,大部分が下顎と上顎に発生し,鼻中隔に発生する事は稀であり,本邦においては未だ鼻中隔より発生したAmeloblastomaの報告はなく,今回私はこのような症例を経験したので,ここに報告するとともに,併せて本邦における鼻中隔腫瘍症例を統計的にまとめた。

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 Ⅰ.緒言

 上咽頭癌(NPC)患者の血清はしばしばEpstein-Barr Virus(EBV)のV抗原(virion antigen)に対する抗体価の上昇を示すことは既に一般に知られている1)2),また最近NPC患者の血清には日沼ら3)4)によつてEBVより誘導された新しい抗原,すなわち,N抗原(non-virion antigen)に対する抗体がV抗体よりもさらに特異的に証明されることが明らかにされている。

 われわれは,昭和45年以来47年までNPC患者11例をはじめとし,その他の上咽頭悪性腫瘍4例,扁桃悪性腫瘍8例,アデノイド11例,慢性上咽頭炎または慢性扁桃炎5例,上顎悪性腫瘍11例,喉頭癌4例,舌癌2例および悪性肉芽腫2例,計58例の患者について,血清中のV抗体価(Anti-V)ならびにN抗体価(Anti-N)を測定した。なお,そのうち上咽頭癌患者の数例については,病床経過を追つて血清中の両抗体価をしばしば測定し局所所見やその他の病状と抗体価の推移について比較観察した。いまだ例数も少なく,検査続行中であるが,若干の知見を得たので以下発表する次第である。

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 I.はじめに

 近年,耳鼻咽喉科学においても内視鏡による病態記録という点で写真撮影が活発に行なわれるようになつてきている。光学系,照明系の長足の進歩に加えて感光材料の開発には目を見張るものがある。しかしながら,実用的な撮影方法という決め手に欠け,それぞれの研究者が独自の立場にて苦労しているのが現況である。私も主として,喉頭の写真撮影による喉頭生理に取り組んでいるのであるが常に難渋している。最近になつて,確実に,容易に,しかも安価な方法でという点に主眼をおいて喉頭の写真撮影というのを見直してみたので報告する。今回は先ず,喉頭直達鏡下のスチール写真撮影ならびに16mm映画撮影について述べる。

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 I.はじめに

 耳下腺周囲および,頸部皮下組織に好発し,リンパ濾胞形成を伴い,著明な好酸球浸潤を示す肉芽腫,すなわち軟部好酸球肉芽腫症は,病因不明の疾患の一つである。主病変とともに,しばしば近在のリンパ節にも同様の変化を認めることから,悪性腫瘍などとの鑑別を要することがある。

 われわれが過去6年間に経験した症例の内,典型的な14例を選び,臨床症状,検査成績,治療成績などを検討し併せて文献的考察を加えてみたいと思う。

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 Ⅰ.はじめに

 耳鼻咽喉科領域における良性腫瘍のうちで骨線維腫はさほど珍しい疾患ではない。しかし悪性化して肉腫を発生したという報告は本邦だけでなく外国の文献においても非常にまれである。われわれは13年前に右上顎洞の骨線維腫として治療を受け,その後再発もなく経過しながら最近骨肉腫の発生をみたまれな一症例を経験したので報告する。

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 I.はじめに

 播種性紅斑性狼瘡(sistemic lupus erythematosus,以下SLEとする)は,ふるくは結核性の皮膚疾患としてしられてきたが1942年にKlemperer1)2)によつて膠原病の中核的疾患として提唱されてより,臨床医学の各分野で注目をあびるようになつてきた。本症の診断法も確立され,たとえ典型的な紅斑が現われなくとも各種検索によつてその診断は内科臨床的に比較的容易である。しかし一方,本症の経過はいわば系統的全身疾患ともいうべきものであり,じつに多彩な症状を次次にしめすためその全貌の把握は一律にSchematicにはゆかないことがある。とくに神経症状は末期の昏睡時だけでなく本症の初期にも発現することが最近注目されて来ている。

 今回,私はメマイを伴い顕著な眼振をみとめたSLEの1症例を経験したので神経耳科学的所見を中心にその概要を報告するとともに若干の文献的考察を加えた。

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 Ⅰ.緒言

 前頭洞嚢腫の初発症状の大部分が,眼症状で現われるため,患者の多くが眼科に受診することは広く知られていて1)-5),その眼症状としては眼球突出,眼瞼腫脹,複視などを伴うのが大部分である1)-9)。しかし初発症状が軽微で,たとえば軽度な視力障害のみにて他の症状が現われていない場合などには,前頭洞嚢腫であることの診断が容易でないことがあり,かかる場合には,原因不明の視力障害などとして取り扱われることもあると考えられる。

 ここに報告する症例は10年以上も前から「片眼近視」の状態で過ごしてきたが,前頭洞ピオツェーレの手術後に,その近視が消退したという患者である。ごく限られた特殊な場合かも知れないが,原因不明とされた片眼近視のうちにも前頭洞嚢腫が原因であることもあり得ると考えられ,このことは眼科学の成書にもあまり記載されていないので興味あると思われる。その症例を報告するとともに,併せて前頭洞ピオツェーレの成因に関して若干の考察を加えた。

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 I.はじめに

 頸部甲状腺より胸腔内へ進展したと考えられる甲状腺腫を治療したので報告する。この症例は両側反回神経麻痺を伴い,あたかも悪性甲状腺腫を考えさせた。

 甲状腺腫はわれわれ耳鼻咽喉科医もしばしば経験するところであるが,いつたん腫瘍が胸腔内へ進展した場合には外科領域で取扱われることが多い。このような胸腔内へ進展した甲状腺腫について文献的考察を行ない,両側反回神経麻痺の原因について推論したので,諸賢のご批判を仰ぐ次第である。

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 最近わが国においても小児外科,小児眼科というような,小児を対象とする臨床各科の動きが活発化し,それぞれ学会や研究会が設立されつつある。また小児病院もいくつか誕生し,小児のみを対象とする臨床各科の診療が行なわれている。このような傾向はもちろん耳鼻咽喉科でも例外でなく,海外ではpediatric otolaryngologyへの関心が急激にたかまりつつあるように見受けられ,従来から小児耳鼻咽喉科学に興味を持つてきた筆者にとつては大変よろこばしく感ぜられる。最近日本の代表的な小児科医の方々から,耳鼻咽喉科学の研究と診療に対する小児科の立場からの要望をうかがう機会をえたので,その内容をまとめて紹介したいと思う。

 その前に小児耳鼻咽喉科学の成書について簡単にふれておきたい。わが国のものとしては立木豊教授の「小児耳鼻咽喉科疾患」日本小児科学全書第16編,1953,1956,金原出版と猪初男教授の「小児耳鼻咽喉科トピックス」,1967,金原出版とがあり,雑誌「耳鼻咽喉科」も小児耳鼻咽喉科疾患の特集(44巻10号,1972)を出している。後者は読まれた方が多いと思うが,前者は小児科学全書中に包含されている関係上耳鼻科医の方には案外知られていないのが残念である。495頁の大冊に,小児耳鼻咽喉科疾患についての詳細な記述がなされている。また本書の序文で先生はすでに「小児耳鼻咽喉科学ともいうべき,成人の場合とはやや異なつた内容を有する耳鼻咽喉科学の一方面」の必要性を述べておられる。

薬剤

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 耳鼻咽喉科領域の手術でも最近は一般外科と同様,挿管による全身麻酔が多用されているが,中小病院や開業医における手術で頻度の高い鼻副鼻腔の手術や鼓室成形術では,その大部分が基礎麻酔と局麻の併用で行なわれているのが現状である。

 また従来行なわれている基礎麻酔と局所麻酔の併用では,患者がかなりの疼痛を訴えることもあるし,また麻酔を強力に行なえば,血圧の低下や呼吸抑制覚醒の遅延などの欠点があつた。今回,私はNLAの変法として岩月ら1)が報告したDroperidol, Pentazocine併用(以下DおよびPと略す)を試み,耳鼻咽喉科手術における麻酔に満足できる結果を得た。本法は静脈麻酔であるために操作が簡便であり,呼吸系,循環系に対する影響も少なく安全であるし,患者への手術時の不安や苦痛もなく意識下のうちに手術が行なえるので日常臨床上,耳鼻咽喉科麻酔として適していると思われる。よつてその使用方法と臨床成績を報告する。

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 Ⅰ.緒言

 近時Laryngomicrosurgeryの開発,普及1)2)3)4)5)によつて精密な喉頭内手術が可能となつた。一方,Laryngomicrosurgeryがもつとも適応であるポリープ様声帯,増殖性喉頭炎,喉頭角化症,乳頭腫などでは単純な喉頭ポリープと比べて病変の範囲ないし程度がより大きい場合が多く,顕微外科的方法によつても相応の手術侵襲は免れ得ない。一般に侵襲の程度が高度となるほど術後,損傷組織の修復に問題を生ずる可能性が大きく,それが円滑に営まれるか否かはPhonosurgeryとしてのLaryngomicrosurgeryの予後に重大な影響を及ぼすこととなる。喉頭内手術では術後,創を無菌的に保つことが部位的制約により困難であり,また嚥下,咳嗽,発声などの生理的な動作による機械的刺激が創に直接加わるなど,創傷治療に関しては不利な条件が少なくない。したがつて,もし術後に続発する炎症を最小に抑えて,しかも上皮による創面の被覆を促し,円滑かつ速やかな治癒に導く方法があれば非常に有用である。この点に着目して,われわれは今回,効果持続性のCorticosteroidであるKenacort-A(以下K-Aと略す。一般名Triamcinolone acetonide)を声帯術創内に注入して,創の治癒経過に及ぼす影響を動物実験および臨床の両面より検討した。それらの成績を述べ,若干の考察を加えてここに報告する。

基本情報

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耳鼻咽喉科
45巻9号 (1973年9月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9679 医学書院

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