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Ⅰ.緒言
前頭洞嚢腫の初発症状の大部分が,眼症状で現われるため,患者の多くが眼科に受診することは広く知られていて1)-5),その眼症状としては眼球突出,眼瞼腫脹,複視などを伴うのが大部分である1)-9)。しかし初発症状が軽微で,たとえば軽度な視力障害のみにて他の症状が現われていない場合などには,前頭洞嚢腫であることの診断が容易でないことがあり,かかる場合には,原因不明の視力障害などとして取り扱われることもあると考えられる。
ここに報告する症例は10年以上も前から「片眼近視」の状態で過ごしてきたが,前頭洞ピオツェーレの手術後に,その近視が消退したという患者である。ごく限られた特殊な場合かも知れないが,原因不明とされた片眼近視のうちにも前頭洞嚢腫が原因であることもあり得ると考えられ,このことは眼科学の成書にもあまり記載されていないので興味あると思われる。その症例を報告するとともに,併せて前頭洞ピオツェーレの成因に関して若干の考察を加えた。
A man, aged 33 complained of double vision, severe myopia 0.3 (1.2×-0.75 D), and decreased visual field of the right eye. Slight myopia is known to have been present for the last 10 years without any treatment. Eight years ago the patient was operated on ethmoid sinus through maxillary sinus approach.
Examination revealed the presence of cysts in the frontal and ethmoid sinuses. Removal of these cysts were effected by surgical intervention. Three weeks after the operation the vision was found to be recovered to 1.2 (nc).
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