薬剤
喉頭内手術における創傷内Kenacort-A注入について
小山 高司
1
,
菰口 英夫
2
,
菅田 溥
3
,
荒川 清
4
,
芝 侃司
4
1国立岡山病院耳鼻咽喉科
2岡山労災病院耳鼻咽喉科
3岡山川崎病院耳鼻咽喉科
4岡山大学医学部耳鼻咽喉科
pp.677-682
発行日 1973年9月20日
Published Date 1973/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492207966
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Ⅰ.緒言
近時Laryngomicrosurgeryの開発,普及1)2)3)4)5)によつて精密な喉頭内手術が可能となつた。一方,Laryngomicrosurgeryがもつとも適応であるポリープ様声帯,増殖性喉頭炎,喉頭角化症,乳頭腫などでは単純な喉頭ポリープと比べて病変の範囲ないし程度がより大きい場合が多く,顕微外科的方法によつても相応の手術侵襲は免れ得ない。一般に侵襲の程度が高度となるほど術後,損傷組織の修復に問題を生ずる可能性が大きく,それが円滑に営まれるか否かはPhonosurgeryとしてのLaryngomicrosurgeryの予後に重大な影響を及ぼすこととなる。喉頭内手術では術後,創を無菌的に保つことが部位的制約により困難であり,また嚥下,咳嗽,発声などの生理的な動作による機械的刺激が創に直接加わるなど,創傷治療に関しては不利な条件が少なくない。したがつて,もし術後に続発する炎症を最小に抑えて,しかも上皮による創面の被覆を促し,円滑かつ速やかな治癒に導く方法があれば非常に有用である。この点に着目して,われわれは今回,効果持続性のCorticosteroidであるKenacort-A(以下K-Aと略す。一般名Triamcinolone acetonide)を声帯術創内に注入して,創の治癒経過に及ぼす影響を動物実験および臨床の両面より検討した。それらの成績を述べ,若干の考察を加えてここに報告する。
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