耳鼻咽喉科 24巻2号 (1952年2月発行)

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前部副鼻腔炎の手術法に就いて北村　武 24巻2号 , 1952年2月 , pp.47-50

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　先人の長い間の努力にも拘らす慢性副鼻腔炎の治療は未だ完成されていない．私も一の試みを行い良好の結果を得たと信じて今年の総会に於いて発表した．その大要を茲に記載したいと存する．

　合併症のない慢性副鼻腔の手術は上顎洞をLuc-Caldwell法により，篩骨蜂窩を経顎的に開き，鼻内から補助的手術を加えると云うのが一般の趨勢であらう．後篩骨蜂窩は明視しながら徹底的に開放し得ようが，前篩骨蜂窩の開放は半腰盲目的に行わねばならず，不徹底であることをまぬかれぬ，第1表の示す樣に，前篩骨蜂窩は後篩骨蜂窩よりも強い炎症に罹つていることが多く之を徹底的に開放することが必要なのである．それにも拘らず手術が不徹底に終り，その結果中甲介の後半の浮腫，腫脹は去つても，前半のそれは減退せず，中鼻道前部は分泌物を見ることが多い．更に前額洞に病変があつて之を鼻内手術によつて治癒せしむることは今日猶相当に困難である．

中耳根治手術後の難聽に対する開窓術堀口　申作 24巻2号 , 1952年2月 , pp.51-53

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　Lempert氏の迷路開窓術は耳硬化症に対する劃期的な手術法であるが，本邦に於ては定型的な耳硬化症の比較的少いためかまだあまり行われて居らない．然しながらこの手術は必ずしも耳硬化症に限られたものではなく鐙骨癒着のある患者に対しては常に有効であることは一般に知られた所でいわゆる臨床的耳硬化症の症例ならば本邦に於ても必ずしも稀な疾患とは考えられない．殊に問題を一歩進めて鐙骨癒着に問題を限定するならば或種の慢性中耳炎や，中耳根治手術後の聽力障害の多くのものはその対照となり得る．例えば根治手術に於ては砧骨を除去した場合に鐙骨はその支点を失いそのために鐙骨筋は収縮を行つて鐙骨は卵円窓の中に陥入するといわれるのである、兎に角中耳根治手術が定型的に行われた症例に於ては一般に60db内外の聽力損失を示し骨導値正常，Gellê陰性で耳硬化症によく似た伝音系難聽像を示すことが認められる．そこで私は中耳根治手術によつて惹起された難聽に対する治療法として之に開窓術を施行した所非常によい成績を収め得たので報告する次第である．まだ症例が少いので今後症例を重ねたく考えているが，大方の御追試を願うか或はこの樣な患者を御送り戴ければ幸甚と存する次第である．

2つの抗生物質／優生学 24巻2号 , 1952年2月 , pp.53

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　2つの抗歯剤或はスルフアミン剤の結合によつて，作用が減殺されるものがあるだろうか，Jochimsなどによると，ベニシリンとクロロマイセチンの2剤は，結合抗菌療法でいつしよに用いてはならない．この2つは拮抗的に働いて互の効力を減殺しあうという．

　その他のものでは現在わかつたもので，2つのものを用いて効力が減殺しあうような作用のある相互関係のものはないらしい．それよりも病原歯の別々の部分に働くためにより有効に作用するものと考えられている．更に同一溶液内に2種を混ぜても化学的に破壊されるようなこともないとが確められた．例えばペエシリンとストレプトマイシンは同一溶液に溶して一度に注射してもよいという．けれどもわざわざ混合することをせず出来れば別々に用うるべきであろう．これは未だ多くの実験がないからである．

レ線的粘膜機能検査より区分せる慢性上顎洞炎の影像に就て高橋　良 , 權田　一郞 24巻2号 , 1952年2月 , pp.54-56

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1）造影剤を副鼻洞内に注入して其の排泄移動状態をレ線的に観察し粘膜機能を検査しようとする企ては約15年程前より試みられその排泄の原動力である粘膜上皮繊毛運動の生理学的研究と相俟ち種々の成績が挙げられ最近の我邦でも大藤教授石川氏又小倉氏等の興味ある成績が報告せられている．私共も年来慢性副鼻洞炎の診断治療等に関心を持つていたのでこのレ線的粘膜機能検査がどの程度に診断に寄与し得るやに就て先ず検討した所認むべき成果を得たので此処に第1報的にその影像型に就て御報告し度い．

2）私共は造影剤の洞内注入と撮影に次のような方法を採つた．造影剤は10％の上行性モルヨドール（以下Mと略す）を使つた．この10％をルンバール針を通じて下鼻道側壁より4〜5c.c，穿剌注入し以後撮影迄座位にて数10分以内に腹臥位前後脛左右脛の撮影を行い（内容のある時も之を排除しない）次いで3-4日後前後脛撮影を行つたが尚過半数の症例に於てMの注入前に普通の前後左右徑のレ線撮影を行い各の比較検討をした今迄の検査撮影数500側の中本報告では其の半数に就ての検討の結果を述べる．穿剌にルンパール針を用いたのはシユミツト針より疼痛が少い為めである．

モルヨドール造影剤に依る上顎洞粘膜氈毛運動陰影像石川　実 24巻2号 , 1952年2月 , pp.57-61

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緒言

　上気道の一部をなしている副鼻腔及び腔粘膜の氈毛運動に就いての研究は古くより種々の方法に依つてなされ，直接顕微鏡下に氈毛運動を観察する方法，粘膜上に置かれたる指標の移動に依つて間接に観察する法，更に副鼻腔内に注入した溶液の排泄状況より氈毛運動を間接に観察する方法等がある．而してJates（1）は副鼻腔内注入溶液にIndigocarminを使用し，Phillips（2）は墨汁を用ひて其の排泄状況を肉眼的に観察し，又　King（3），Müller（4），最近ではProetz（5）が注入溶液に造影剤を用ひて其の排泄状況を「レ」線的観察してをり，いづれも洞内注入溶液の排泄は洞粘膜氈毛運動に依つて直接行われると為している．

　而して洞内に注入された造影剤（モルヨドール液）の氈毛運動に依る影響，即ち正常乃至病的上顎洞に於ける特異的な造影剤陰影像並びに其の排泄状況を観察しているものは予の渉猟せる範囲に於ては未だ之を見ない．そこで予は〓に昭和25年度昇鼻咽喉科学会総会に於て恩師大藤教授と共に種々の状態に於ける上顎洞内に注入しだモルヨドール陰影像（以下「モ」像と略す）並びに其の排泄状況に就いて，腹臥位に依る顔面前後経「レ」線撮影法にて観察し得た成績を報告して諸先生の御批判を仰いだ．

メニーエル氏病に對する重曹注射藤崎　茂巳 , 藤崎　一克 24巻2号 , 1952年2月 , pp.62-63

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緒言

　メニーエル氏病に対する治療は従来種々の保存的或は手術的方法が行われているが，重症例では屡々再発する事はよく経験する所である．

　長谷川教授は〓に重曹注射により，加速度病の予防及び治療に新機軸を開かれた，此の原理及び治療法を翼に展開し「眩暈」の探及に前進され，メニーエル氏病数例に成功された．

耳性化膿性髓膜炎に於けるオーレオマイシン試用治験例簑和田　寛子 24巻2号 , 1952年2月 , pp.64-65

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　緒言

　ペの発現以来耳性化膿性髓膜炎の治癒率は夫以前に比し向上した事は事実だが未だ甚だしく隔靴掻痒の感が深い．其拠つて来る所以は，全身的投与では髓液内への移行が不充分であり，髓腔内注入では副作用が強く，グラム陰性菌には奏効しないという3点に要約する事が出来る，オヽマは経口投与で充分な有効濃度の髓液内移行が可能だとせられ且つグラム陰性菌にも奏効するとせられるから，理論上は優秀な治療剤と考えられる．そこで私はペがどうしても奏効しなかつた耳性化膿性髄膜炎にオ・マを試用したところ，幸い治癒した1例を得たので其の概要を報告する．

口腔内に穿孔した上顎洞膿嚢腫症例藤野　彦四郞 24巻2号 , 1952年2月 , pp.70-72

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　緒言

　副鼻腔の粘液嚢腫並に膿嚢腫の中，前顎洞或は篩骨洞のものは，相当多くの症例報告を見るが，上顎洞或は楔状洞に単独に発生した真正のものの報告は，所謂術後性頬部嚢腫（久保教授）を除外すれば極めて少い．

　本邦に於て報告されているものは，河野，羽田野一松国，高島，小山田，後藤（修），森鼻，里村等の諸氏によるもの数例に過ぎない．

オーレオマイシンの副作用 24巻2号 , 1952年2月 , pp.72

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　オーレオマイシン（A. M）の副作用としては，内服時の胃腸障害や，静注時の血栓性静脈炎等が報告されているにすぎないが，稀に急速に静注すると，悪感，不快感，悪心，眩暈，背下部疼痛等が見られる．

　M. H. Lepper等は103例のA. M使用例について研究し，大量投与についで報告した．即ち成人では2gr以下の静注では殆ど障碍がない．但し終日投与を同時に併用する場合は1日1gr. 以下がよく，それ以上は危険である．経口投与不能の場合は，最大静注量1日2gr. を超えぬことで，これ以上であると肝障碍を起こす危険がある．小児では静注最大量は，体重瓩当40mgであると，彼の報告では103例の使用中経口及び静注を併用した場合14例に副作用が現われその中7例に肝障碍が見られた．この肝障碍に早期に発見され投薬を中止すれば治癒し得ると云つている．

肺壞疽を伴いたる進行性壞疽性鼻炎追加補遺佐藤　保信 24巻2号 , 1952年2月 , pp.73-76

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　緒言

　鼻部から始まり漸時周囲組織を潰瘍壞疽に陥いれる顔面部の進行性壞疽性疾病患はKaufmann（1）が30才の男子に就いて始めて報告して以来Arndt（2）Erich（3）Quix（4）本邦に於ても大藤（5），金原（6），川名（7），遠山（8）森（9）其の他の諸氏に依つて報告せられ，敢て珍らしい疾患ではないが，其の名称は区々で，馬鼻疽類似症（5）特発性鼻壞疽（10）壊疽性鼻炎（4）（7）鼻性進行性潰瘍（8）馬鼻疽類似の進行性壊疽性鼻炎（9）鼻腔壞疽性炎（11），更に近年では進行性壊疽性肉芽腫（12）高熱進行壊疸性鼻潰瘍（13）等種々の名称が冠せられているが，依然として其の本態は不明で確立した治療法も無く，予後極めて不良な疾患である，私は近時此の疾患該当すると思われ，且其の症状の激烈な事，愚者の年齢が極めて少ない事等の点で珍らしい1例に遭遇したので此処に御報告し，従来の文献に追加したいと思う．

多形滲出性紅斑粘膜疹の3例高橋　一雄 , 飯田　隆夫 , 平出　靜生 , 浦岡　日出夫 24巻2号 , 1952年2月 , pp.77-79

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　多形滲出性斑の口腔，眼，外陰等の開口部に近い粘膜に主として，或は粘膜のみに激しい症状を現わすRendu（1916），Fiessinger，Volff等の所謂Ectodermose erosive pluriorifieielleは甚だ稀なる疾患にして，本邦文献にては僅かに10数例の報告を見るのみである．而してその病因に関しては全く不明にして定説を欠き，従つて是まで治療法にも一定の方針なく，文献例にても全て対症療法に終始して居る現状である．

　私等は本年当初より斯かる症例3例に逢遇し，概ね一定の方針の下に治療を施行し，幸い好結果を得たので茲に報告し，諸賢の御追試，御批判を乞うものである．

吉田式吸引剥離器と余の扁摘法吉田　申次 24巻2号 , 1952年2月 , pp.80-81

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　扁桃腺摘出の術式は種々あるが，要は出血を少くし，手術時間を短縮し且つ手術後全く出血を来さないことにある．然るに元来咽頭は，血管に富み出血し易く，加うるに唾液粘液等のため，手術野は汚染されて視野は妨げられ其結果不用意に血管を損傷して更に出血を増し，患者は嘔吐を催したり「げえ―げえ―」云つたりして手術に手間取ることが屡々である．私はかぬてからこの困難を除き度いものと種々構想を練つていたのであるがメスや剥離子の尖端から血液や唾液等を吸出し之を排除することが出来れば，ガーゼや綿で拭く手数が省けて手術野は常に明療で凡ての操作が極めて迅速円滑に行われるのではないかとの考えの下に，吸引を兼ねた一種の剥離器を作り，之を吉田式吸引剥離器Aspirating Dissectorと命名し，種々改良を加えて漸く理想に近いものを作ることが出来た．

　本器の構造は極めて簡単で，約20糎の長さを有し管状をなす一種の剥離器で，尖端は稍々彎曲し頂きの刄部の内側には小さい孔（吸引口）を有して居る（第1図）．把柄の一端をゴム管によつて吸引ポンプに連結すると，剥離や切開によつて生じた血液等は尖端の小孔から絶えず吸出排除され従つて手術野は常に清淨に保たれ視野は極めて明療で，ガーゼ等で拭く手数を必要としない．即ち剥離，切開と同時に手術野の清拭が出来るのが特長である．又本器の構造上の特異点としては，尖端は稍々彎曲し其頂点の内面に吸引孔を有して居るので，剥離中に吸引孔が血液等で閉塞されるととは絶対にない．

追憶—久保猪之吉先生を偲びて颯田　琴次 , 佐藤　重一 , 小野　讓 , 山川　強四郞 , 立木　豊 , 大野　喜伊次 , 石井　俊次 24巻2号 , 1952年2月 , pp.81-89

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　吾国耳鼻咽喉科の泰斗であり，且つ本誌嘗ての主幹，短歌俳句界の重鎭でもあられた久保猪之吉先生を偲びするよすがにもと，先生の嘗ての教え子，今は各大学の要職につかれた方々，又友人知己の方々の思い出話を下記に綴りました．先生を知ると知らざるとにかゝわらず，此の一文によつて先生の御人格を偲び度いと存じます．尚会場の模樣その他すべては大藤敏三先生に御執筆頂きました．

CURRENT MEDICAL LITERATURE 24巻2号 , 1952年2月 , pp.90-91

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Ann. Otol. Rhinol. 59：3 Seot 50

LAFF H I Fishbone in mediastinun removed by esephagoscoiy. 691-3.

BALLENGER J J The production of negative pressure by respiratory cilia. 694-8.

臨床講義

軟口蓋麻痺中村　文雄 , 水越　治 24巻2号 , 1952年2月 , pp.66-69

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　軟口蓋の麻痺は病名ではなく症状の名称であるが，口蓋麻痺と云へばその大部命がヂフテリー後麻痺によるものである．

　そのヂフテリー後麻痺であり乍ら原病であるヂフテリーの徴候が殆んどなかつたために診断が困難であつた症例と筋無力症の初期症状として現はれた2例の軟口蓋麻痺の患者を供覧する．

基本情報

耳鼻咽喉科
24巻2号
(1952年2月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0386-9679 医学書院

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