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Ⅰ.緒言
悪性腫瘍の細胞診は,肺癌,子宮癌,腹水癌その他の癌について以前から広く行われ,癌診断の助とされているが,耳鼻咽喉科領域に於ては余り行われていない。その理由としては,細胞診がその判定に熟練を要することと,当科領域では視診と組織診(試験切除)が比較的容易で確実な診断が得られることが挙げられる。然し細胞診には材料採取の操作が簡単であること,手術的侵襲を加えないので癌の進展を早めたり,播種したりする危険がなく,又患者に苦痛を与えないこと等の長所もあるので,スクリーニング・テストとしての価値は否定出来ない。当科領域では特に上顎癌に於て,早期診断が困難とされ,試験切除も可能とは限らないところから,我々は上顎癌の疑いある患者の鼻汁,上顎洞穿刺液,時には鼻内腫瘍を掻把したものから癌細胞を証明し,細胞診の価値を検討した。一方摘出標本の腫瘍部分を掻把して標本を作,判定の参考とした。尚対照の意味で,当科領域に見られる喉頭,舌等の癌及び単なる慢性副鼻洞炎についても同様な検索を試みた。
染色法として,従来のGiemsa染色の他に,特に螢光色素による染色をも併せ行つた。螢光色素による癌の診断には,mellor等がBerberin Sulfateを,Bertalanffy等がAcridine Orangeを,堂野前等がPrimoflavin 8 GO及びNTSを試みている。我々は住友化学の提供によるNTS NO.23を用い,堂野前等と略同様の方法で染色を行い,更にBertalamffyの推賞するAcridine Orange(以下AOと略す)を試みた。
In tissue diagnosis of cancer particularly taht of maxillary cancer two new fluorescent stains NTS No.23 and Acridine Orange were used in addition to the usual Giemsa stain. By these additions the diagnosis and recognition of cancer cells were much focilitated.
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