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Lempert氏の迷路開窓術は耳硬化症に対する劃期的な手術法であるが,本邦に於ては定型的な耳硬化症の比較的少いためかまだあまり行われて居らない.然しながらこの手術は必ずしも耳硬化症に限られたものではなく鐙骨癒着のある患者に対しては常に有効であることは一般に知られた所でいわゆる臨床的耳硬化症の症例ならば本邦に於ても必ずしも稀な疾患とは考えられない.殊に問題を一歩進めて鐙骨癒着に問題を限定するならば或種の慢性中耳炎や,中耳根治手術後の聽力障害の多くのものはその対照となり得る.例えば根治手術に於ては砧骨を除去した場合に鐙骨はその支点を失いそのために鐙骨筋は収縮を行つて鐙骨は卵円窓の中に陥入するといわれるのである、兎に角中耳根治手術が定型的に行われた症例に於ては一般に60db内外の聽力損失を示し骨導値正常,Gellê陰性で耳硬化症によく似た伝音系難聽像を示すことが認められる.そこで私は中耳根治手術によつて惹起された難聽に対する治療法として之に開窓術を施行した所非常によい成績を収め得たので報告する次第である.まだ症例が少いので今後症例を重ねたく考えているが,大方の御追試を願うか或はこの樣な患者を御送り戴ければ幸甚と存する次第である.
HORIGUCHI reports the result of fenestration operations which he performed on two patients who suffered a marked degree of conductive deafness the effects of bilateral radical mastoidectomy perforthed 10 years previously. For 10 days fmmediateiy after the operation no improvement of hearing was observable but, thereafter, in about a period of 1 month one patient showed improvement on the average of 35 db and the other of 15 decibels. The fenestration in these cases was performed through the bony depression of the old mastoidectomy scar and the author places a particular emphasis on the advantage of making use of such deformities in similar cases.
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