臨床泌尿器科 65巻13号 (2011年12月)

珍しい外陰部疾患・5

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陰茎皮下異物(subcutaneous foreign bodies of penis)

 主として性的目的で陰茎皮下に異物を挿入,あるいは注入することがある。注入されたものが流動性のものであると,長期間経過すると陰茎先端あるいは陰囊下方に沈下し,陰茎の変形や硬結を生じ,感染を併発してさらには皮膚壊死を起こすことがある。陰茎を大きくしようとする試みには,経口薬からシリコン注入,外科的手術までいろいろあるが,これまでのところ手術こそが唯一科学的に実証された確実な方法であるとする,興味ある論文が最近出ている(Nugteren HM, et al:J Sex Marital Ther 36:118-123, 2010)

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要旨 WHOは,精索静脈瘤が精巣機能の悪化や男性不妊症に明らかに関連していると結論している。当科での精索静脈瘤高位結紮術は,主に切開線,到達方法,器具の使用の変化がみられ,ルーペを用いてから精巣水瘤の発生はない。顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術は,局所麻酔での日帰り手術や再発の原因とされる外精静脈などの結紮ができるという利点がある。われわれは再発例の検討や術中血流方向の観察から,精管静脈と外精静脈も結紮することで良好な結果を得た。最近では精索静脈瘤の手術によって,精子のDNA fragmentation indexや異常染色体が減少,精液所見が改善し,妊娠率も改善,さらに顕微授精の妊娠率,生産率の向上,流産率の低下などが報告されている。

手術手技 指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント・8

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要旨 根治的膀胱摘除術の最も大きな合併症は出血である。DVC,側方靱帯などの処理では1つ間違えば大量出血の危険がある。さまざまなシーリングデバイスの出現により,そのリスクは減っている。しかし,道具を過信しているとしっぺがえしをくうことも肝に銘じるべきである。骨盤内の解剖を熟知し,確実な止血テクニックを持つことが重要であることを指導医も心にとめる必要がある。

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要旨 筋層浸潤膀胱癌に対する根治的膀胱全摘除術について,われわれの施設で行っている手術法を紹介した。注意すべきポイントはいくつかあるが,解剖をきちんと理解し,確実に止血を行いながら手術を進めることが肝要である。

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要旨 浸潤性膀胱癌に行っている根治的膀胱全摘除術において,若手医師へどのように手術を指導しているか解説する。術者には術前に骨盤臓器の解剖の理解を求め,指導医は十分な視野の確保に努めることが重要である。

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 G. Thieme社といえば,古くからのドイツの名著,解剖学教科書Rauber/Kopschを出版している。一方,図と説明が見開きとなった新様式のTaschenatlas der Anatomieも発行し,伝統と革新を兼ね備えた信頼できる出版社である。

 本書の,LernAtlas der Anatomie(物事を知る,考える)という冠をつけて,的確なたくさんの説明がある点と,その努力と工夫を高く評価したい。書物を読まなくなった今の学生にも将来必ずや大きな糧になると確信している。このたび刊行となった第2版では,大きな改訂として臨床的重要テーマ(関節に関する疾患と画像診断,末しょう神経障害とブロック,筋肉の作用と障害など)をいち早く追加した点は特筆に値する。

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 本書は,三潴先生がこれまでに上梓された“はじめての漢方診療”シリーズの“十五話”“ノート”に続く第3弾としての役割を果たすもので,かつこれまでにも求められていたものであり,三潴先生グループの経験を余すところなく読者に伝えることをめざしたものです。

 内容は,日常診療においてすぐにでも参考にしたい場合,ある程度漢方診療を行ってさらなる向上をめざす場合の双方の読者にとっても有用なものになっており,診察室や自己学習の場面など多方面での活用が期待できるものになっています。

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 ああ,またですか。抗菌薬の選択が議論にもならずスルーされていくのをみて,僕はため息をつきます。しかも,よりによってカテーテルをそのまま残しておいていただいているなんて,培養はどうなっているのでしょうか? もう提出済みですか? しかも,そのサンプルは2セットともカテーテルから取ったから問題ない? いやあ,感激です。これで緑膿菌が出たらコンタミでも何でも治療を開始できますね。え,もうメロペネムが使われている? それはもう神の一手ですね。文字通りいうことは何もありません。

 臨床感染症というのはもっといろんな科の先生が知っていてもいいのではないかと思います。その上で身近な疑問に答えていただけるエキスパートがいてくれるとありがたいのですが,そんなぜいたくは望んではいけませんよね。かといって成書を読んでもきめ細かいところがわかりません。分量も多いし,別にわかっていることを全部書いてくれなくてもいいのですよ。培養の取り方とカテ抜去のタイミング,そこが知りたいのです。

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 松田晋哉氏の著書『基礎から読み解くDPC第3版―実践的に活用するために』が刊行された。著者は評価システムともいうべきDPCについて,設計・開発から普及まで厚生労働省の作業を中心的に主導してきた研究の第一人者である。

 初版から筆者も含め当院職員が利用しており,対象病院にとっては診療や病院運営の見直しや今後の方向を考える際の参考書として,新たに導入を検討されている病院には座右の書としてぜひ購入をお勧めしたい。

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 現在わが国で透析医療を受けている患者は約30万人に達し,新規に導入される患者の高齢化が進んでいる。また,糖尿病を原疾患とする率が高くなってきており,これらのことはほとんどの患者が多臓器の障害を持っていることを意味する。さらに,一昔前には考えられなかったような大手術を透析患者が受ける機会も増えてきており,腎臓内科や透析療法を専門としない医師が主治医になることも多い。彼らは,それぞれの領域の病気の専門家ではあるが,透析をしている患者の特性を理解して,適切に対応しているだろうか? 実際には,透析室に自らおもむいて,透析担当医と相談することも少ないのかもしれない。

 一方,透析は技術的な側面が大きい医療であり,その中にはきちんとした理論に基づくものだけでなく,経験に基づくものが混在しており,施設による差も大きいのが現状である。さらに,技術の世界は日進月歩であるため,常に注意していないと,その施設のローカルルールが,最新の医療から著しく遅れていることに気付かない場合もある。それでは,透析を担当する医師が,すべてをきちんと理解して指示を出しているのだろうか? 大学病院のような施設を除いては,通常の指示は臨床工学技士や看護師に任せてしまっていることも多いのではないだろうか。

セミナー 基礎研究は面白い―私の経験・4

性機能障害に関する研究 辻村 晃
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要約 これまで行ってきた研究の中で,研究を始めた動機と研究を進めた着眼点を交えて,性機能障害に関するものを紹介する。末しょうレベルでは陰茎海綿体平滑筋細胞を用いて,PDE5阻害剤無効例に対する新しい治療法につながる研究を行い,中枢レベルでは,性活動の時期に応じた性中枢の解析と性的興味の統計学的な解析を行ってきた。いずれも臨床に即した研究である。

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症例は61歳女性,倦怠感・腹部腫瘤を主訴に来院し,精査加療目的に入院。入院時に炎症反応や血中SCC,血清カルシウムの高値を認めていたものの,悪性を確定できる所見はなかった。しかし,抗菌薬にて炎症が改善しないため左腎全摘術を施行せざるを得なかった。病理組織学的診断は扁平上皮癌であった。腎盂扁平上皮癌に合併する高カルシウム血症の報告例は非常に少なく,調べ得た限り本邦10例目であった。

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56歳,女性。左乳癌加療中に,左囊胞性腎腫瘍が偶然発見され受診。腹部CT検査にて左腎下極に血流豊富な,直径6cmの囊胞性腎腫瘍を認めた。腎細胞癌の診断にて,根治的腎摘除術を施行した。囊胞内面はマホガニーブラウン色で内溶液は茶褐色であった。組織検査にて囊胞変性を伴った腎オンコサイトーマと診断された。

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症例は67歳,女性。血尿を主訴に当科を受診した。膀胱全摘術および回腸利用新膀胱造設術を行い,組織結果は小細胞癌であった。術後PE療法を3コース行ったが再発し,腫瘍摘出,放射線治療,PE療法3コースを行った。その後再々発しPE療法を行ったが再発病変が増大し,イリノテカンを含む化学療法を行い奏効した。現在イリノテカン単独療法を継続し,初発より8年半の長期生存が得られている。

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70歳男性に対して前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)高値のため超音波ガイド下経直腸的前立腺生検を行った。帰室後,直腸から持続する出血を認めたため,圧迫止血を行ったが,止血困難のため内視鏡下に観察後,クリッピングにて止血した。生検標本の病理検査にて悪性所見が認められた。

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 腎囊胞は腎実質の一部に囊胞が生じた状態で,無症状であれば経過観察するのが一般的である。囊胞による圧迫症状,高血圧,尿路閉塞などがあれば治療対象となり,治療は経皮的穿刺による吸引固定,再発予防のための純アルコールやミノマイシン注入を行うのが一般的である。今回,巨大な腎囊胞に対し有効であると思われる持続吸引ドレナージについて症例を提示して紹介する。

 61歳女性。高血圧,腹部の圧迫感,頻尿を認め,腹部造影CTで左腎に腎と連続する220×115mmの囊胞性病変を認めた(図1)。充実性病変や造影効果を認めないことより単純性腎囊胞と診断した。囊胞が巨大なため,純アルコール注入や,ミノマイシン注入は効果や副作用に難があると判断し,エコー,透視下にドレナージし,持続吸引する方針とした。腹臥位でエコーガイド下に腎囊胞を穿刺した。ガイドワイヤーを挿入,ダイレーターで16Frまで拡張した後,14Fr Peel-Away Sheath(Cook Medical社,Bloomington,USA)を挿入,内筒を抜去して10FrのJackson-Pratt(JP)drain(Cardinal Health社,Illinois,USA)を留置した。

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 2011年の6月26日~7月1日までの6日間にわたって開かれた,第61回リンダウ・ノーベル賞受賞者会議に参加してきました。会議は,ドイツ南部のボーデン湖に浮かぶリンダウ島という中世の面影を残した美しい島で行われました。(おそらく皆さんと同じく)会議の名前を知ったのもリンダウという場所を知ったのも初めてでしたが,実は知名度のある研究者交流会議の1つで,リンダウも学術会議の開かれるリゾート地として有名な所のようです。この会議は,医学・生理学,物理学,化学,経済学分野のいずれかの分野について毎年1回開かれていて,今年は医学・生理学の年でした。

 この会議には,約25名のノーベル賞受賞者と世界各国からの35歳以下の若手研究者500名ほどが参加して行われます。今回,日本からは,14名(医師は私を含めて3名)の参加があり,このうち半分ほどは,私のように海外に留学中の研究者でした。この会議への日本からの参加は,日本学術振興会からの推薦を受けて,リンダウ・ノーベル賞受賞者会議評議会が最終的に参加者を決定します。私は,現在,九州大学泌尿器科からブリティッシュコロンビア大学のバンクーバー前立腺センターに留学中で,日本学術振興会からの案内でこの会議のことを知り,幸運にも参加することができました。

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 本誌65巻9号の手術手技:「膀胱尿管逆流に対する逆流防止術」(山口孝則,他;坂井清英;兼松明弘,他の3編)についてコメントさせていただきたい。副題が「指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント」とあるように,3編の著者は皆さん膀胱尿管逆流(以下,VUR)について経験豊富な方々である。手術手技の記述はいずれも適切かつ詳細でわかりやすく,随所に細かい配慮が加えられていて,優れた解説書となっている。著者によって手技の違いがいくつかあるが(手術用ルーペの使用,膀胱の切開法,尿管剝離時のステント使用,術後の尿管カテーテル留置など),初心者にとってはこのような違いを知ることも役に立つ。ここで私が指摘したいのは本筋とは離れた,次の2点についてである。

 まずVURの術式の選択について,山口氏はCohen法を第1選択としている。兼松氏も同様のお考えのようである。たしかに本法は海外でも最もよく採用されているが,これでよいのだろうか。坂井氏が指摘しているように,本法術後に尿管・腎にカテーテルや内視鏡挿入などの逆行性操作を行うのは容易ではない。このことは以前から懸念されており,私も学会などで機会あるごとに指摘してきた。細径軟性尿管鏡が普及してきた今日でも,この問題が解決したわけではない(将来も多分)。逆行性操作が必要となる確率は確かに低いであろう。しかし,Cohen法を受けた3歳の子が,以後の80年間の人生でその可能性が絶対ないと誰が言い切れるのか。

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編集後記 郡 健二郎
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 「科研費申請書の書き方」をテーマに,大学や学会で今秋セミナーをする機会をいただいた。3年前に科研費の応募資格が拡大され,必ずしも大学の常勤医でなくとも申請が可能になったこともあり,昨年度は,泌尿器科医の約10%もの方々が申請をしている。セミナーの内容は,秘したこつが特段あるわけでもないが,論文の書き方とも共通した点があるので,その一部をご紹介したい。

 申請書を書く前の心構えとして,私は教室の先生に「2つの研究サイクル」の話をしている。1つは,自分自身の研究は,先輩の業績・指導・研究費によりなし得たもので,その恩恵を後輩に継承していくサイクルであること。2つ目は,研究成果→論文(業績)→助成金(研究費)→研究成果のサイクルである。このサイクルの中で何がスタートか? 多くのケースでは,先輩が獲得した助成金である。最近,論文を書かない風潮がさらに進んでいるが,このことは,ひいては後輩を路頭に迷わせることにつながるものである。この「2つの研究サイクル」を意識しなければ,助成金の獲得は難しいと思う。

基本情報

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臨床泌尿器科
65巻13号 (2011年12月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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