交見室
手術手技:「膀胱尿管逆流に対する逆流防止術」について
寺島 和光
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1聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科
pp.1048
発行日 2011年12月20日
Published Date 2011/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102570
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本誌65巻9号の手術手技:「膀胱尿管逆流に対する逆流防止術」(山口孝則,他;坂井清英;兼松明弘,他の3編)についてコメントさせていただきたい。副題が「指導的助手からみた泌尿器科手術のポイント」とあるように,3編の著者は皆さん膀胱尿管逆流(以下,VUR)について経験豊富な方々である。手術手技の記述はいずれも適切かつ詳細でわかりやすく,随所に細かい配慮が加えられていて,優れた解説書となっている。著者によって手技の違いがいくつかあるが(手術用ルーペの使用,膀胱の切開法,尿管剝離時のステント使用,術後の尿管カテーテル留置など),初心者にとってはこのような違いを知ることも役に立つ。ここで私が指摘したいのは本筋とは離れた,次の2点についてである。
まずVURの術式の選択について,山口氏はCohen法を第1選択としている。兼松氏も同様のお考えのようである。たしかに本法は海外でも最もよく採用されているが,これでよいのだろうか。坂井氏が指摘しているように,本法術後に尿管・腎にカテーテルや内視鏡挿入などの逆行性操作を行うのは容易ではない。このことは以前から懸念されており,私も学会などで機会あるごとに指摘してきた。細径軟性尿管鏡が普及してきた今日でも,この問題が解決したわけではない(将来も多分)。逆行性操作が必要となる確率は確かに低いであろう。しかし,Cohen法を受けた3歳の子が,以後の80年間の人生でその可能性が絶対ないと誰が言い切れるのか。
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